あらすじ
第1巻
金曜の夜、業務を終えたマオは、飲みに行こうという先輩社員の誘いを断り、会社をあとにする。その足で彼が向かったのは一軒の居酒屋で、マオが奥の座敷に足を踏み入れると、そこには幼なじみにして飲み仲間のハルが待っていた。マオはビール、ハルはカルピスソーダで何はともあれ乾杯し、二人は互いにこの1週間の出来事について報告し合う。そんな中、先に来ていたハルがすでに注文していた料理の皿が三つ、二人の前に運ばれてくる。ハルはさっそく料理に箸を伸ばしながら、今日は来ていないほかの飲み仲間のかしわ、天、ドンちゃんのことについて語り出すが、一方のマオは急に口数が減り、相槌を返すのみで料理にも手を付けないでいた。その様子を不思議に思ったハルは、マオにも食べるよううながすが、マオは鶏のから揚げ、軟骨のから揚げ、ゲソのから揚げが並んだテーブルを叩きながら、から揚げばかり3種類もあるのはどういうことなのかと、ハルに詰め寄る。(1杯目。ほか、6エピソード収録)
第2巻
ハルをはじめ、マオ、かしわ、天、ドンちゃんら五人の飲み仲間たちは、BBQの計画を立てていたが、迎えた当日はあいにく雨が降っていた。そこで一行は予定を変更し、ハルの家で飲み会を開くことにする。各々のメンバーはBBQで使うはずだった食材を持ち寄り、ハルの家に集合することとなった。その途中、天と行き会ったかしわは、二人いっしょにハルの家を訪れる。だが、かしわが玄関のチャイムを鳴らすと、その横で天は、いきなりサングラスをかけ、浮き輪を膨らまし始める。突然のことにかしわは困惑するが、そんな彼を出迎えたのは、海パン姿でゴーグルとシュノーケル、さらに浮き輪を身につけたマオだった。そしてその奥には、室内にもかかわらず満面の笑みでバーベキューコンロを組み立てるドンちゃんの姿があった。そんな常軌を逸した光景を前に、かしわの脳裏には、「一酸化炭素中毒」「通報」「炎」「バカッター」などの単語が浮かび上がる。そしてかしわは、具体的な死、または社会的な死が間近に迫っていることを悟り、思考停止してしまう。(8杯目。ほか、6エピソード収録)
登場人物・キャラクター
ハル
会社員の青年。マオをはじめとした五人組の飲み仲間の一人。年齢は26歳。本名は「真中ハル」。五人組のうち、マオと天とは幼なじみで、ドンちゃんを含めた四人でかつて同じ高校に通っていた。マオやドンちゃんとは同学年で、天より1学年上。また、かしわとは大学時代にアルバイト先がいっしょだったことで知り合った。少々天然で子供っぽいところがあるが、ハル自身は世話焼きのマオのストレス解消のために、仕事を与えてあげているだけと開き直っている。ちなみに飲み会には誰よりも積極的に参加しているが、五人の中で唯一、酒を飲むことができず、いつもソフトドリンクを飲んでいる。また、食べ物の好き嫌いが多く、特に辛いものが苦手。実は料理がうまく、おだてられるとなんだかんだ言い訳しながらいろいろなものを作ってしまったりと、こと料理に関してのみツンデレなところがある。会社の同僚女性の原田にあこがれているが、彼女が既婚者ということもあり、その思いは内に秘めたままでいる。
マオ
会社員の青年。ハルをはじめとした五人組の飲み仲間の一人。本名は「丹波真央」。五人組のうち、ハルと天とは幼なじみで、ドンちゃんを含めた四人でかつて同じ高校に通っていた。ハルやドンちゃんとは同学年で、天より1学年上。眼鏡をかけた知的な男性で、外見にたがわずさまざまなジャンルのことに詳しく、長々とうんちくを披露するのが大好き。基本的につねに冷静で気が利いて面倒見もよく、五人組の中でも特にハルの母親的な存在となっている。一方で、自分の処理範囲を超えることからはなりふり構わず逃げ出す性質で、その様子ははたから見てもあまりに露骨。酒はビール派で、酔うと泣き上戸になる。
かしわ
イラストレーターを生業とする青年。ハルやマオをはじめとした五人組の飲み仲間の一人。1995年11月28日生まれで、年齢は24歳。本名は「鴨居かしわ」。もともとはフリーターで、大学時代のハルとアルバイト先が同じだったことで知り合った。小柄で童顔なうえ仕草が子供っぽいため、未成年、あるいは女性と間違えられることが多いが、かしわ自身も自ら進んで「かわいいキャラ」を演じている節がある。明るく屈託のない性格だが、実は極度の人見知りで、アルバイト先の同僚だったハルとまともに口をきくのにも1年を要したほど。一方で、心を許した相手には厳しい言葉がポンポン飛び出す、毒舌家な一面もある。辛いもの好きで、酒はジャンルを問わずなんでも飲む。
天 (てん)
ハルやマオをはじめとした五人組の飲み仲間の一人である青年。年齢は24歳。本名は「飯津天」。五人組のうち、ハルとマオとは幼なじみだが1学年年下で、小学生の頃に引っ越しにより一度離れ離れになった。高校時代は、ハルたちと同学年のドンちゃんといっしょに生徒会活動をしており、その縁でハルやマオと再会した。いつもにこやかな笑みを浮かべた柔らかい印象の男性だが、それゆえに拭いようのない胡散臭(うさんくさ)さを醸し出しているうえ、気に入った相手に対しては距離が近く、思わせぶりな発言を連発する。酔うとその傾向にさらに拍車がかかるため、女性をカン違いさせやすく、相手からの告白を受けて付き合い始めるものの、すぐにその本性を知られてふられるということを繰り返している。最近知り合ったかしわとなかよくなりたいと積極的なアプローチをしているが、そのような性質から、人見知りのかしわにも警戒されている。実はハルやマオと再会した時、彼らが自分のことを覚えていてくれたことは嬉しく思いながらも、離れていた期間の長さからどこか遠慮があり、心底からは彼らの輪に入っていけないように感じて寂しさを覚えていた。だがのちに、ハルとマオから「いくつになってもお前は俺らの弟分だ」という言葉を聞き、わずかに残っていた壁も氷解し始める。テンションが上がると、満面の笑顔で放送倫理に抵触するような言葉を連発する癖がある。酒の肴としては、じゃがバタ酒盗のせ、いぶりがっこのクリームチーズのせなどの珍味を好む。
ドンちゃん
高校の教師を生業とする青年。ハルやマオをはじめとした五人組の飲み仲間の一人。本名の「土井」をもじって、「ドンちゃん」と呼ばれている。五人組のうち、ハルとマオとは同じ高校の同学年で、1学年下の天とは、いっしょに生徒会活動をしていた。がっしりした体格の男性で、仲間たちの悪ノリをさりげなくいさめてブレーキ役になったりと、ほかの飲み仲間たちと比べて精神的に大人。また、女性に絡んでいる酔っ払いを柔道技で転ばせながら、穏やかな態度でその場を丸く収めたりと、胆力にも優れる。ほかにも、押しつけがましくないながらも的確なアドバイスで、仲間たちの人間関係を円滑に進める手助けをすることもあり、仲間たちからは全幅の信頼を寄せられ、仲間の誰もがドンちゃんの言うことは素直に聞き入れる。この立場と性質は、高校時代から変わっていない。野菜が好きで、野菜不足になりがちな仲間たちを心配し、有無を言わさず野菜ばかりを大量に食べさせる癖がある。そのため、ドンちゃんが飲み会に参加する際は、鍋と相場が決まっている。ただし、職業がら非常に忙しく、飲み会には頻繁に参加できずにいる。
原田 (はらだ)
ハルの会社の同僚の女性。既婚者で、旦那も同じ会社で働いている。明るく豪快な性格ながら気配りもできる美女で、非常に酒が強く、悪気なくハルに対しアルハラめいた言動をしては我に返って自分を責める部長と、当事者であるハルの関係をうまくフォローしている。ハルのあこがれの存在。
書誌情報
呑むならお前らとこんな時 全3巻 KADOKAWA〈it COMICS〉
第1巻
(2019-11-15発行、 978-4049128741)
第2巻
(2020-03-14発行、 978-4049131017)
第3巻
(2020-08-12発行、 978-4049133424)