ワルキューレ

ワルキューレ

未来世界を舞台にしたSF作品。科学技術の進歩により、見た目から振る舞いまで人と見分けのつかないほど精巧になったアンドロイドと人間との争いを描く。

正式名称
ワルキューレ
ふりがな
わるきゅーれ
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
関連商品
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概要・あらすじ

未来世界において、ユニットZ型のリース業が、新たな投資の品目として注目を浴び始めていた。ユニットZ型は人そっくりの外見を持つが、中身は機械でできたアンドロイド。そのため人権は適用されず、使い勝手のいい道具兼投資先として人気を博した。資産家の青木は、投資目的で自分の娘であるいちづ(娘)の細胞から作成したユニットZ型を購入し、歓楽街のヨシワラ・シティに少女娼婦としてリースに出す。

一方、裕福で優しい両親と暮らす人間の少女・いちづは、そんな事情は知らずに生活していたが、夜な夜な自分が娼婦として手ほどきを受けるリアルな夢に悩まされるようになる。やがて、娘から夢の内容を打ち明けられた青木は、ユニットZ型を入手したガーリック博士のもとを訪ね、ことの仔細を問いただす。

そこで、人類がアンドロイドと信じて疑わなかったユニットZ型は、実は複製人間に僅かな機械ユニットを組み込んだだけで、ほぼ人間と変わらぬ存在であることを知らされる。時を同じくして、世間ではアンドロイドが凶暴化して主人を殺害する事件が頻発して問題視され、「アンドロイド狩り」が激化していく。

登場人物・キャラクター

いちづ(アンドロイド)

いちづ(娘)の細胞をベースに作られた新型のアンドロイド・ユニットZ型。見た目は10代半ばほどの少女で、いちづ(娘)にそっくり。投資目的で資産家の青木によって買われ、ヨシワラ・シティにある娼館にリースに出された。人間らしい豊かな感性を持ち、心の支えとして、思い出の詰まったアルバムが欲しいと願っている。 そのアルバムを探すために、娼館所属の調教師の少女・紫夜とともに娼館から脱走。レジスタンスの一員でいちづ(アンドロイド)と同じユニットZ型のロック・ガウディに助けられる。ユニットZ型の中でも24体しか作られていない希少な「S型(スペシャルタイプ)」で、ゲシュタポ館の女主人であるクイーン・マリアの追手に追われている。

紫夜 (しや)

いちづ(アンドロイド)が在籍している「夜光娼館」所属する14歳の少女。新人に、娼婦としての手管を教える仕事に就いている調教師。年齢は赤ん坊の頃にコインロッカーに捨てられ、その後、乳児院に引き取られた。その乳児院にいた頃に、同じくコインロッカーから発見された、兄と慕っていた7歳年上の少年に「14歳になったら迎えに来る」と言われている。 その言葉を頼りに、いちづ(アンドロイド)とともに娼館を抜け出す。実は兄と慕っていた少年はシダだが、お互い成長した姿で再会した時には、気づかないままだった。

さそり姉さま (さそりねえさま)

いちづ(アンドロイド)が在籍する娼館「夜光娼館」の責任者。長い黒髪に櫛や簪(かんざし)を挿した、妙齢の美女。技術もなく不慣れないちづ(アンドロイド)に、自ら娼婦の手管を指導した。手を掛けたいちづ(アンドロイド)と調教師の紫夜が娼館から逃げた際にも、まず彼女たちの身を案じる心優しい性格。

クイーン・マリア(アンドロイド)

ゲシュタポ館の女主人。サルバドール博士の娘・マリア(娘)の細胞から作られている。反抗する相手には容赦なく鞭を振るい、廊下ですれ違っただけでも、部下に忠誠を誓わせる際に膝をつかせ、這いつくばらせてブーツにキスをさせる。その名の通り、女王様然とした振る舞いを見せる人物。冷酷で残忍なイメージを周囲に与えるために派手に振る舞っている。 しかし、少年兵のユニットZ型・ライン・ワルトを気に入り、彼の前では自身の帯びた任務の大きさに対し、不安に揺れる心情を吐露している。自身の心の拠りどころとして、手元に留めて置きたいがために、ラインに対しては特別に、配下のユニットZ型すべてに受けなければならない洗脳を免除している。

デイビット・ザウサー(クローン)

短髪で右目に眼帯をした壮年男性。クイーン・マリアの側近を務めている。その正体は、サルバドール博士とともにユニットZ型を設計した生体工学の権威であるデイビット・ザウサー(助手)のクローン。通常のアンドロイドとは比較にならない戦闘力を誇る。

サラ

クイーン・マリアの部下で、同性愛者の女性。肩につくくらいの長さの髪型で、左眼を長い前髪で覆っている。ユニットZ型のいちづ(アンドロイド)を捜索し、その過程で捕らえた、自身と同じ位の年齢の紫夜を気に入る。紫夜が奴隷契約を結んだクイーンの許可も得ずに、紫夜を性的に弄んだ。

メル

クイーン・マリアの部下。少し毛先の跳ねた、背中の半ばまで届く長髪の少女。同僚のサラに捕らえられた後に、クイーン・マリアが奴隷にした紫夜を、サラと一緒に弄んだ。流されやすい性格。

ライン・ワルト (らいんわると)

アンドロイド・ユニットZ型の少年。大手兵器製造メーカー「ワルト重工業」の社長の一人息子をベースに作られた。作られて直ぐに行方不明になっており、その捜索が、戦闘型のユニットZ型のロック・ガウディに、依頼された。クイーン・マリアの統治するゲシュタポ館に配属され、クイーン直々の指名により彼女の側近となる。

シダ

アンドロイドハンターの青年。首にかかる位の長さの黒髪をしている。喫煙者で、サイドカーの付いたバイクに乗っている。養父母をアンドロイドに殺され、敵を討つためにアンドロイドハンターになった。養父母を殺された際に自身も重傷を負っており、身体の大部分を機械化している。紫夜とは同じ乳児院の出身で、2人ともコインロッカーで発見されたため、兄妹のように育った。 義理堅い性格で、7年前に、「14歳になったら迎えに行く」と、紫夜にした約束も忘れていない。

カブト警部 (かぶとけいぶ)

警察機構の、ポリス内第一アンドロイド部に所属している壮年の男性。サングラスをかけ、口ひげを生やしている。アンドロイドハンターのシダに、金銭と引き換えに情報提供する。それによりシダを上手く誘導し、自身の捜査に有利になるように仕組んでいた。正義のためには裏工作もいとわない切れ者。

ロック・ガウディー(オリジナル)

ロック・ガウディー(アンドロイド)のもとになった人間の青年。秘密部隊の長官を務めている。アンドロイドの反乱を制圧する、シダ、カブト警部、大手武器製造メーカー社長のハンス・ワルトらと共同戦線を張る。

ロック・ガウディー(アンドロイド)

ロック・ガウディー(オリジナル)をもとに作られた戦闘型のアンドロイド。軍では超A級の戦士だったが、現在はレジスタンスに所属し、アンドロイドの反乱に加担している。短髪でがっしりとした体格の青年の姿をしている。軍を脱走する際に兵士を2人殺害し、現在は指名手配されている。ヨシワラ・シティに逃げ込み、そこで自身と同じユニットZ型のいちづ(アンドロイド)を助けた。 いちづ(アンドロイド)が自分の心の支えにするため、アルバムを探していると聞いて、レジスタンスの計画が成功したら、一緒に取りに行こうと約束する。心の温かい一面も持ち合わせている。

ハンス・ワルト (はんすわると)

大手兵器製造メーカー「ワルト重工業」の社長の男性。一人息子が事故に遭って危篤状態に陥ったため、やむなく息子の細胞からユニットZ型のライン・ワルトを作った。しかし作った直後にラインは失踪してしまい、ハンス・ワルトはラインの身柄と引き換えに、ゲシュタポ館への武器供給を要求されることとなった。これに対し、ハンスは戦闘型のユニットZ型・ロック・ガウディー(アンドロイド)に息子の救出を依頼し、武器供給の要望を拒否している。

ワルキューレ(アンドロイド)

ユニットZ型の試作第1号。超巨大兵器ワルキューレ(兵器)の心臓部にして頭脳を兼ねており、ユニットZ型が支配する世界を作る、というプロジェクトの遂行に固執している。サルバドール博士の娘であるマリア(娘)の細胞から作られている。

青木 (あおき)

資産家の壮年男性。オールバックのヘアスタイルで、右目に片眼鏡をかけ、口ひげを蓄えた上品な紳士。娘のいちづ(娘)を家族として深く愛している。投資目的でいちづの細胞から作られたアンドロイドZ型を購入するが、そのリース先が歓楽街と聞き、躊躇いを見せる。

いちづ(娘)

父親の青木と、穏やかな口調の母親のもとで何不自由なく暮らす少女。ある時から、ヨシワラ・シティで自身がアンドロイド娼婦になるという、妙に現実味のある夢を見るようになる。このことがきっかけで、人類に対するアンドロイドの大規模な反乱に巻き込まれていくことになる。

ガーリック博士 (がーりっくはかせ)

資産家の青木にユニットZ型のいちづ(アンドロイド)を販売した男性。本名は「ガーゼル」で、5年前に実験中の事故で死んだとされていたが、ガーリック博士と名を変えてユニットZ型のエージェントとして活動していた。自身の身体を機械化させている。ユニットZ型を扇動し、ヨシワラ・シティに集まるように仕向けていた。

マリア(娘)

サルバドール博士の一人娘で、若く仕事熱心な女性。メトロポリスのゴダール美術館に勤めている。いちづ(娘)が、父親の青木とともに美術館を訪れた際に案内した。その際、突如姿を現し、館内に逃げ込んだ指名手配犯のアンドロイドを追い詰めたシダとも面識を持つ。

サルバドール博士 (さるばどーるはかせ)

マリア(娘)の父親。アンドロイドメーカー「サルバドール社」の社長。ユニットZ型の設計者でもある。平和を愛する穏やかな壮年の男性。アンドロイドの反乱事件の黒幕と思われていた。のちに、今回の一連の事件が始まる3か月前、アンドロイドが主人に反乱を起こし始めた頃から、行方不明になっていることが判明する。

デイビット・ザウサー(助手)

生体工学の権威として知られる壮年の男性。かつてサルバドール博士の助手として、ともにユニットZ型の開発に取り組んでいた。サルバドール博士がアンドロイドメーカー「サルバトール社」を立ち上げた際には、会社に名を連ねておらず、現在は行方不明になっている。

場所

ヨシワラ・シティ (よしわらしてぃ)

世界最大の歓楽街。巨大なドームに覆われていて、その中は常に夜の状態に調整されている。ユニットZ型のいちづ(アンドロイド)がリースされた先の「夜光娼館」などが店を構える治安の悪い地区も含む危険な場所だが、ここに出入りする要人たちも数多い。

ゲシュタポ館 (げしゅたぽかん)

ヨシワラ・シティの私設秘密警察組織の本拠地。クイーン・マリアが館長として君臨する。私設警察とは名ばかりで、シティ内で捕えた犯罪者や遊女を残忍な拷問にかけていると悪名高い。ゲシュタポ館に捜索依頼が入ることは、暗黙の了解で、身柄を売られたと同じ意味とされている。研究施設やヘリポート、地下には開発中の空母並みの巨大超兵器ワルキューレ(兵器)が格納されている。

その他キーワード

ユニットZ型 (ゆにっとぜっとたいぷ)

体内や脳が機械化されたアンドロイドの一種。「サルバドール社」が製造。表面は人間の細胞を複製したものが素材となっており、もととなった人物と外見は瓜二つ。実際は法で禁止されているクローンの身体に、僅かの機械ユニットを組み込んだだけのもの。機械ではなく、人間と同じ脳を持ち、非常に人間に近い存在。左腕にあるエネルギー入力システムから、チャージスティックで定期的にエネルギーを体内に取り込む必要がある。 総数で6万体が存在する。

ワルキューレ(兵器)

空母のように巨大な超兵器。核ミサイルの攻撃にも耐えられるよう設計されている。ゲシュタポ館の地下深くで密かに建造されていた。ユニットZ型を所定位置に配置すると性能を発揮する。ユニットZ型の独立と、先進諸国への軍事的制圧を目的に始動した。内部からのみ、唯一破壊できる手立てが存在する。

ダイレクト・インプット (だいれくといんぷっと)

空母並みの大きさの超兵器ワルキューレ(兵器)に、ユニットZ型を心も身体も同調させる仕組み。これをあらかじめ施されたユニットZ型は、作戦実行と同時に自身の意志を失ってワルキューレと同化し、任務遂行のためだけに動く、自我のない操り人形と化す。

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