あらすじ
大学生の宮川晴人と岩本カナは高校時代からの腐れ縁で、互いに気を遣わない良好な関係を築いていた。そんなある日、「ベランダから桜が見える」という宮川の発言をきっかけに、岩本は宮本の部屋に遊びに行くことになった。夜桜で花見をしようと、岩本は期待感いっぱいで酒やつまみを買い込んで宮川の部屋へと向かったが、実際は遠くにちょっと桜の木が見えるだけ。気落ちしながらも岩本は部屋に入り、宮川と昔話をしながら宴会を始める。もともと高校の購買で数少ないタマゴサンドを奪い合う仲だった二人は、互いにひそかな思いを寄せていた。当時の岩本は髪が短かったこともあり、男の子のようだったが、今ではすっかり女性らしくなっていた。岩本自身も、髪を伸ばし始めてからモテるようになったことを自覚しており、実はこの日も大学の先輩に誘われ、デートに行った帰りだった。結局、翌日が日曜日であることから、岩本は一方的に宮川の部屋に一泊することを決めてしまう。当初は二人別々の場所で眠りにつくものの、宮川は岩本から声をかけられて同じベッドで眠ることになる。ふと目を向けると、岩本はパジャマがはだけて下着が見え隠れするあられもない姿で、何も警戒する素振りも見せずに眠りについていた。一瞬、宮川は岩本に唇を近づけるものの、すぐに思い直して、結局二人は何もないまま朝を迎える。翌日、宮川が二人にとって思い出のタマゴサンドを手作りし、改めて花見に出かけようと提案。桜の木の下でタマゴサンドを食べていると、岩本はふいに声をかけられる。その男性は、岩本に告白した大学の先輩だった。友だちと花見に来た先輩は、宮川が岩本の彼氏ではないことを確認すると、自分といっしょに飲もうと岩本を強引に連れて行こうとする。だが、宮川はそれを制止し、岩本の手を引いてその場を離れる。そして宮川は、自分はタマゴサンドを毎日食べたいわけではなかったと明かす。その言葉を聞いた岩本は、宮川が耳まで赤くなっていることに気づき、彼の真意を知ることになる。(MENU1「タマゴサンド」)
鬼ヶ島萌は、現在決まった相手はいないものの、交際相手に求める収入には人一倍執着があった。あの日、若手実業家と会食を予定していた鬼ヶ島は、社長夫人の座をモノにできるかもしれないチャンスをつかもうと、いつになく意気込んでいた。実際に会ってみると若手実業家の彼はスマートな印象で、自らの仕事について熱く語りながら、海外に行った時の写真を鬼ヶ島に見せる。だが、写真を見ようとスマートフォンを覗(のぞ)き込んだ鬼ヶ島の目に、「パパ今日夕飯は?」「帰りにオムツ買って来て」という妻からのメッセージが飛び込んでくる。これで彼が既婚者であることに気づいた鬼ヶ島は、不倫はNGなのでとその場をあとにしようとするが、若手実業家からいい子ぶっているが目的は金だろうと暴言を吐かれる。いくら払えばいいのかと現金をちらつかせる彼に、鬼ヶ島は赤ちゃんと奥さんがオムツを待っていると言い放ち、中指を立てながら店を出る。落ち込んだ気分のまま町を歩いていた鬼ヶ島は、会社の同僚の桃川航と遭遇。元気がない鬼ヶ島を心配した桃川からの誘いを受け、いっしょに酒を飲むこととなる。ヤケ酒しながら今起きたことを桃川に話す鬼ヶ島は、そこで思いがけず温かい言葉をかけてもらう。その後、泥酔した鬼ヶ島は、桃川の優しさに惹(ひ)かれて体の関係を求めようとするが、直前で猛烈な吐き気に襲われ、嘔吐(おうと)してしまう。そして翌朝、鬼ヶ島は見覚えのない場所で目を覚ます。そこは桃川の実家だった。実は桃川は五人兄弟で、両親と共に暮らす大家族だった。鬼ヶ島は、桃川が貧乏な家庭で育ったことに驚くものの、笑顔で用意されたお茶漬けをいただき、癒された気持ちになる。実は鬼ヶ島の実家も貧乏で、お金がないことでつらい思いをした過去があり、鬼ヶ島は桃川に対してより親近感を抱く。そして鬼ヶ島が、交際相手の収入に執着する理由がそこにあることを知った桃川は、精一杯稼ぐので自分に興味を持ってもらえないかと鬼ヶ島に改めて告白する。(MENU15「お茶漬け」)
フリーターの直樹は、スーパーで見つけた特売品の竹の子を購入し、竹の子ご飯をたくさん作って数日間をしのごうと思いつく。竹の子ご飯の作り方を知らない直樹は、いろいろと調べながらどうにか竹の子を下茹(したゆ)でして処理するが、茹でた竹の子は翌朝まで寝かせる必要があり、すぐに竹の子ご飯を作ることはできなかった。そんな中、スマートフォンに大学時代に学校に馴染(なじ)めず、逃げ込んだ喫煙所で知り合った大月みことから、メッセージが送られてくる。みこととは、互いの境遇が似ていることもあり、会うたびになかよくなった二人は、いつしか体を重ねるようになる。しかしみことは、海外に行くという夢のために勉強を始め、多忙となる。直樹も何かを探そうと必死にもがくも、夢中になれるものと出会うことができなかった。みことの夢が現実味を帯びていくにしたがって、直樹はみことから距離を置くようになり、直樹は学校を辞め、二人は疎遠になってしまう。一方のみことは、直樹からは嫌われたと思い込んでいたが、大学卒業を機に思い切って直樹にメッセージを送ってみたのである。こうして二人は数年ぶりの再会を果たし、直樹はみことから、カナダへの渡航が決まったことを報告される。そして直樹は、当時夢を見出したみことに嫉妬していたことを明かすと、みことは嫌われたわけではなかったことを知り、胸をなでおろす。その後二人は久しぶりに体を重ね、一夜を共にする。迎えた翌朝、直樹は仕込んでおいた竹の子を使って竹の子ご飯を作り、みことのために朝ごはんを用意し、みことはそのおいしさに感動する。その時直樹が、人においしいと言ってもらえることに喜びを感じたと語ると、みことは直樹に料理人を目指すようアドバイスを送る。みことが日本を発つ直前、お店を出したら教えて欲しいとのみことの言葉に背中を押され、直樹は前を向いて歩み始める。(MENU19「竹の子ご飯」)
失恋をきっかけに新たなマンションに引っ越して来たばかりの角田は、実家から送られて来たたくさんの栗(くり)をどう扱っていいものかと思案する中、ベランダに出て金木犀(きんもくせい)の香りに秋を感じていた。そして「秋の匂いだ」と口走った瞬間、ベランダで酒を飲んでいた隣人の里見と目が合ってしまう。その場を取り繕って、部屋に戻ったものの、角田は翌日ゴミ捨て場で再び里見と顔を合わせることとなる。改めて挨拶を交わして自己紹介を済ませると、角田は里見に引っ越しのあいさつにと栗をおすそ分けすることにした。笑顔で栗をもらってくれた里見の優しさに、角田はここに引っ越してきてよかったと安堵(あんど)するのだった。しかし後日、隣室のベランダに見知らぬ男性がいることに気づき、角田は里見に恋人がいることを知る。気落ちしつつも、角田が仕事から戻ると、酔いつぶれた里見が角田の部屋の前で座り込んでいた。話を聞けば、彼氏と別れることになったらしく、すっかり傷心の様子の里見を部屋に送り届けるが、里見は帰ろうとする角田にもたれかかり、話を始める。そして角田は、自分も失恋したことで引っ越して来たことを明かすと、里見は互いに傷心した者同士、慰め合おうと角田を誘う。このまま一線を越えると思われたものの、里見が涙を流していることに気づいた角田は、結局この日は何もしないまま部屋へと戻る。翌朝、若干バツが悪そうな笑顔で、里見は角田の部屋を訪れて昨日のことを謝罪し、先日渡した栗で作った栗ご飯を角田に手渡す。角田は、そのまま帰ろうとする里美を引き止め、この栗ご飯をいっしょに食べないかと誘うのだった。(MENU28「栗ご飯」)
大学2年生の青山は、近所の金物屋「ホームセンターはっぴぃ」でアルバイトを始めた。そして青山は、同じ読書が趣味の職場の先輩で主婦の山本麻子と、12歳という年齢差がありながらもなかよくなる。青山が純粋に麻子に好意を抱き始めた頃、夕飯のメニューに悩む麻子の発言から、麻子には夫がいるという現実を改めて突き付けられることになる。青山は大きなショックを受けるが、麻子は自分にかまってくれない夫から、浮気の気配を感じ取っていた。そんなある日、元気のない麻子に声をかけた青山は、麻子の夫が出張で不在であることを知り、麻子を食事に誘う。二人は食事を共にし、まるで学生カップルのようにはしゃいで楽しい時間を過ごす。その後、二人は離れがたさから麻子の部屋で飲み直し、青山が酔った勢いで夫婦関係について尋ねると、麻子は夫の浮気が確定したことを打ち明ける。やるせなさと悔しさをあらわにする青山の様子を見て、麻子は自ら青山にキスをし、二人はこのまま一線を越えると思われた。しかし、20年生きて来てこんなに人を好きになったのは初めてだと、青山が自分への気持ちを伝えた瞬間、麻子の顔色は変わる。麻子は、純真な青山の思いを受け止めることができず、結局二人は何事もないまま朝を迎える。翌朝、目を覚ました青山と共に菜の花パスタを作って食べ、二人はそれぞれの日常へと戻る。その後、テストが終わった青山は、やっと麻子に会えると息を切らして店に向かうが、そこには彼女の姿はなかった。(MENU37「菜の花パスタ(前編)」、MENU38「菜の花パスタ(後編)」)
半崎仁は、同じ建築現場で働く仲野富雄(ナカトミ)と共に、月に一度の給料日に風俗店「ソープランドふぅゾク♡」に行くのがお決まりのパターンとなっていた。いつも指名するのは決まってさくらだが、部屋に入っても性的サービスを受けることはなく、時間一杯になるまでさくら相手に将棋を指すだけ。さくらは、仁がナカトミとの付き合いだけのために、お店にやって来る彼の行動を不思議に思いながらも、そんな仁に好感を抱いていた。実はさくらには同棲している彼氏、アツキがいた。アツキは会社を立ち上げるという名目で日々忙しい様子を見せ、たまに帰って来てもさくらに金の無心をして、またふらりとどこかへ出掛けることを繰り返していた。さくらが風俗店で働き始めたのも、もとはと言えばアツキに勧められたからだった。しかし、アツキに不信感を抱きながらも、最初に自分を好きだと言ってくれた男性だったため、アツキへの依存心は強く、彼から離れることができないでいた。そんなある日、仁はナカトミに誘われて珍しく2度目の来店をして、いつものようにさくらを指名する。さくらは、どうして自分を指名してくれるのかと仁に尋ねると、言いにくそうに誰でもよかったと話す。するとさくらは、仁に今日こそ性的サービスを受けてもらうと服を脱いでせまる。しかし、それでも仁は応じようとせず、結局時間終了を知らせるタイマーの音が鳴り響く。その帰り道、ナカトミに誘われ飲み屋に行った仁は、近くに座っている男性客から、彼女を風俗で働かせて金を貢がせていると得意げに話す声を聞く。それだけではなく彼女を見下す発言もあり、その男に不快感を抱いていると、そこにやって来たのはさくらだった。そして仁は、アツキに働けるなら自分で稼げと声をかけるが、聞く耳を持たないアツキの様子を見て、仁はさくらに「そいつと付き合って本当に幸せなのか」と言い放つ。(MENU43「アンパン(前編)」、MENU44「アンパン(後編)」)
メディア化
テレビドラマ
2022年8月5日から、本作『ワンナイト・モーニング』のテレビドラマ版『ワンナイト・モーニング』がWOWOWで放送された。監督・撮影を柿本ケンサク、脚本を蛭田直美が務めている。キャストは、宮川晴人を前田旺志郎、岩本カナを池田朱那、重松純を青木柚、満島穂乃果を筧美和子が演じている。
登場人物・キャラクター
宮川 晴人
MENU1「タマゴサンド」ほかに登場する。一人暮らしの男子大学生。生真面目ながんばり屋。岩本カナとは同じ年齢で、高校時代は同じ学校に通っていた。当時、学校の購買にサンドイッチを買いに行った際、タッチの差で岩本に取られてしまったことがあり、それ以来、タマゴサンドを買う競争相手になった。当初は短髪の岩本を男子とカンちがいしたこともあり、男友達のような関係が続いた。だが、女性とわかってからは内心意識するようになり、人知れず岩本に思いを寄せていた。大学生になったあと、自室から桜が見えると誘ったことで、岩本が家に遊びに来て一晩泊まることになったものの、同じベッドの岩本にキス一つする勇気が出せないまま朝を迎えてしまう。翌日、自作のタマゴサンドを持って花見に行った際、互いの気持ちを確認し合うことができ、交際へと発展した。その後はなかなか一線を越えられないまま時間だけが過ぎていくが、交際1か月の記念日に無事に体の関係を結ぶこととなった。社会人となり、岩本とは同棲(どうせい)生活を始めた。仕事は順調で多忙の中、彼女の妊娠が発覚して結婚することを決めた。朝ごはんはタマゴ蒸しパンを食べることが多い。
堀田 誠 (ほった まこと)
MENU2「そば」ほかに登場する。社会人の男性。年齢は30歳。5年交際していた彼女に浮気され、振られてしまう。傷心な様子を同僚に心配され、勝手にセッティングされた合コンに無理矢理参加させられた際、三津目と知り合った。恋愛はしたくないが一人は寂しいという、なんともいえない気持ちを美津目に打ち明けた。すると三津目が共感してくれたことをきっかけに、勢いでラブホテルに入り、その日に体の関係を持った。翌朝、互いに空腹に襲われたため、立ち食いそばを食べながら体だけの関係、いわゆるセックスフレンドの関係でいることを約束した。そのまま半年が過ぎ、週末になると決まったホテルでセックスを楽しみ、翌朝決まった立ち食いそば店でそばを食べて帰るというお決まりのパターンを続けていた。しかしある日、見合いのために実家に帰ることを決めた美津目から、関係を終わらせたいと告げられる。一度は素直にその申し出を受け入れたものの、次第にモヤモヤとした気持ちになり、自分がいつしか美津目のことを好きになっていたことに気づく。美津目が長野の実家に出発する日、駅までこっそり見送りに行ったところ、美津目に見つかってしまう。そこで堀田誠自身の気持ちを打ち明け、結婚を申し込むと、美津目は困った様子を見せながらもプロポーズを受け入れてくれた。その後は一進一退ありながらも交際を続け、結婚に向かって歩みを進めている。
須藤 (すとう)
MENU4「ハニートースト」に登場する。大学4年生の男性。眼鏡をかけている。おとなしい性格で、恋愛に関しても奥手な一面がある。女性とまともに話すこともできず、色恋沙汰がないまま現在に至る。味気ない日常がこの先も続くことに嫌気が差し、人生初の彼女を作るため、勇気を振り絞って出会い系のアプリに登録。「トースト」名義で知り合ったリリーと会うことを決め、彼女とひとしきり話をしたのちに誘われるままにホテルに向かった。これで脱童貞となるかと思った瞬間、リリーの彼氏を名乗る男性が現れ、人の女に手を出したと激昂(げきこう)。誠意を見せろと脅され、下ろしたばかりのなけなしの5万円を差し出す羽目になった。恥ずかしさのあまり警察に届け出ることもできずに帰路につくが、姿をくらましたリリーと再会。彼氏に捨てられて行く先を失い、雨でずぶ濡(ぬ)れになったリリーを放っておけず、仕方なく自宅に連れて帰った。その後、言われるがままに体を重ねて脱童貞を果たした翌朝、二人でリリーお手製のハニートーストを食べ、彼女との未来を夢想する。しかし、どこからか、かかってきた電話に出るため、外に出て行ったリリーが戻って来ることはなく、須藤は再び味気ない日々を送ることになる。それから数年後、赤ちゃんを抱き、当時の彼氏といっしょにいるリリーの姿を目撃する。
重松 純 (しげまつ じゅん)
MENU5「肉まん」ほかに登場する。コンビニエンスストアで働いている男性。子供の頃から三白眼で、目つきが悪いことにコンプレックスを抱いている。いつか何かをやらかしそうと揶揄(やゆ)され、周囲から疎まれている。そのため自己肯定感が低く、女性には苦手意識を持っている。アルバイト先の店長には、夜勤でいっしょに入るスタッフは男性にしてくれるよう頼んでいたが、ある日、満島穂乃果と共に勤務することになり、彼女が巨乳だったことで好意を抱くようになる。穂乃果は何かとトラブルやアクシデントに巻き込まれる体質で、その度に重松純が対応に追われ、振り回されることになるが、自分の中で穂乃果の存在がどんどん大きくなっていく。そんな中、酒に酔いつぶれて穂乃果に介抱してもらった翌日から、突然彼女がいつものように話しかけてくれなくなり、自分が何かしたのではないかと思い悩むことになる。しかしその後、その時の状況について説明を受け、互いの気持ちを確かめ合い、交際をスタートさせる。
承 (しょう)
MENU6「カップラーメン」に登場する。漫画家を目指している青年。眼鏡をかけている。キャリア命の母親は、自分の思いどおりにならないとすぐに取り乱し、父親は不都合なことはすべて人のせいにする、という二人のもとで育った。5歳年上の小麦とは家がとなり同士で、互いに親が共働きだったこともあり、子供の頃からよく面倒を見てもらっていた。ある日、小麦がファミリーレストランで財布を忘れて困っているところに遭遇し、久しぶりの再会を果たす。その後、小麦に誘われてカラオケにいくことになったが、そこで小麦が子供の頃からの夢だった、アイドルになっていることを知る。小麦自身は中途半端な現状を恥じている様子だったが、小麦の生歌を聞いた承は素直に感動したことを小麦に伝えた。すると一気に雰囲気がよくなり、二人は一線を越えようとするもののカラオケ店のスタッフに注意されてしまう。小麦の歌に勇気をもらった承は、再び自分の夢に向き合うことを決意し、自分の将来のために両親と戦うことを決める。
村田 (むらた)
MENU8「梅干しのおにぎり」に登場する。同級生たちが続々と地元を離れる中、地元に残っている男性。年齢は28歳。第2中学3年2組の同窓会兼新年会に参加した際、真奈月に再会した。当時クラスメイトだった真奈月は、自分が中学校生活を送る中で唯一の光であり、マドンナ的な存在だった。だが、その時すでに真奈月には交際中の彼氏がいたため、どうすることもできないままの関係に終わった。それでも真奈月に対する気持ちはくすぶり続けていたが、再会を機に再燃した。泥酔した彼女を家まで送り届けたのち、酔った勢いで自分の気持ちを告白し、一線を越えた。だが、翌朝目覚めたと同時に、昨夜と違う彼女の心境の変化に気づく。謝罪する真奈月を制して、自分の気持ちが整理できたと感謝し、その場を離れた。
古賀 (こが)
MENU10「タコさんウインナー」に登場する。塾講師を務めていた男性。授業を受け持っていた当時高校生の若葉に対し、ひそかに思いを寄せていた。しかしある日、若葉から志望校に合格したら付き合って欲しいと思いを打ち明けられた。年齢が一回りも違うこともあり、当然断るつもりでいたが、手を震わせながら言った彼女の思いをむげにすることもできず、考えておくと返答を濁すに留めた。結局、彼女の合格を見届けたのちに塾を退職し、若葉の前から姿を消した。その後、スーパーで買い物中に、偶然にも若葉と再会。若葉の前から逃げようとするが、強引に引き止められ、紆余(うよ)曲折の末に自宅に招かれることになった。再び若葉から交際をせまられることになるが、古賀は頑(かたく)なに拒否する。実は古賀は、親から愛情を注がれた記憶がないまま育ったためか、愛されるということをよく知らず、人を愛せる自信もなく、自己肯定感が異常に低かったのだ。自分に自信がないこともあり、若葉に対する思いはあるものの、若葉を受け入れることができないでいる。だが、そんな自分の境遇を打ち明けてもなお、自分に思いを寄せてくれる若葉にほだされ、若葉の思いを受け入れる。一線を越えた朝、若葉が作ってくれたタコさんウインナーを食べ、そのおいしさに感動する。本当にこんな自分でいいのかという葛藤はあるものの、改めて若葉を幸せにしたい気持ちを強くする。子供の頃からつねに汚れた部屋で孤独に過ごし、食事は主にコンビニで購入したものばかり。そんな生活を続けていたため、当時から友達のお弁当にはあこがれを抱き、中でもタコさんウインナーには強い思い入れがあり、自分で作るお弁当には決まってタコさんウインナーを入れている。
安田 (やすだ)
MENU11「ステーキ」ほかに登場する。とある大学に通う男子。映研の先輩の野田から誘われ、同じ大学の経済学部に在籍するユリカの部屋に遊びに行くことになった。もともと乗り気ではなかったが、後輩に選択肢はないと無理矢理連れて行かれたものの、ユリカといっしょにいたのは、以前から気になっていた同じ大学の先輩、樋口多絵だったため、心の中でひそかに驚喜した。童貞ということもあり、女性に対しては控えめで奥手なため、なかなか多絵と距離を縮めることができなかった。だが、二人きりで多絵の筋トレを手伝うことになり、多絵がメンタルを強くするためにトレーニングをしていることを知り、尊敬のまなざしを向けた。その後、多絵からの挑発に乗る形で、ぐっと距離感が近くなるものの、野田とユリカが戻って来たため一線を越えることはなかった。しかし野田から、ギャルは筋トレをやめた方がいいと言われたことに腹を立て、反論した。先輩と後輩という立場を忘れ、言い合いからつかみ合いのケンカになった。筋肉体質の野田とひょろひょろの自分では、勝ち目があるはずもなかったが、多絵のために立ち向かったことで、多絵との関係はいい方向に向かっていく。多絵と筋トレをしたり、夜のジョギングを共にするなど親しくなったものの、それ以上の関係に進展することはなかった。そんなある日、多絵の部屋に忘れたものを取りに行くと、多絵が元カレと押し問答になっているところに遭遇。慌てて彼を止めに入り、さらに勢い余って多絵に告白した。多絵からもその場でOKの返事をもらうことになり、一足飛びに一線を越えることに成功する。
山田 孝雄 (やまだ たかお)
MENU12「カレー」に登場する。サラリーマンの男性。バツイチで、年齢は51歳。日常的に心が躍るようなこともなく、昼は公園で一人カレーをむさぼり食っており、夜は安い居酒屋で一人酒を飲んでいる。唯一の楽しみは漫画を読むこと。そんなある日、居酒屋のカウンターでとなりに座った女性、香山が絡まれているところを助けたことがきっかけで、意気投合。好きな漫画の話で盛り上がり、久しぶりに楽しい酒を飲むことができた。その後、香山に誘われるがまま、カレーがおいしいと評判のラブホテルに入り、一線を越えた。翌朝、カレーを食べながら香山と、久しぶりに胸が高鳴る夜を過ごしたことに満足する。香山に連絡先を聞こうとするも、彼女にはうまくはぐらかされ、結局一夜だけの関係に留まった。
鬼ヶ島 萌 (おにがしま もえ)
MENU15「お茶漬け」ほかに登場する。三津目と同じ会社に勤める女性。交際相手には高収入を求めており、お金に執着している。ある日、若手実業家と食事に行くことになり、絶好のチャンス到来とばかりに気合を入れて臨んだ。だが、彼のスマートフォンに送られてきたメッセージで、若手実業家は既婚者であり、子供がいることを知ってしまう。お金持ちでも不倫だけはだめと確固たる考えを持っていたため、その場を去ろうとしたが、若手実業家からいい子ぶっているが金が目的だろうと暴言を吐かれた。ショックを隠し切れないまま町を歩いていた時、同じ会社の桃川航に遭遇し、いっしょに酒を飲むことになった。会社では桃川は変わり者という印象だったが、泥酔した自分を心配してくれた優しさに心が緩み、自分から体の関係を持とうとした。だが突然吐き気に襲われ嘔吐し、翌朝目を覚ましたのは、桃川の実家だった。桃川が五人兄弟で、貧乏な家庭で育ったことに驚きながらも、質素ながらも暖かいもてなしを受け、清々(すがすが)しい気持ちとなる。実は自分の実家も、父親が仕事をクビになったことがきっかけで貧乏になり、それ以来毎日ケンカが絶えなかった。そのため、お金がすべてと考えるようになり、お金に執着するようになった。桃川にその事実を打ち明けると、自分が精一杯稼ぐから交際してもらえないかと告白される。鬼ヶ島萌自身も桃川に心惹かれるが、この時にはっきりと返答しなかったことが災いして、その後、なかなか仲が進展せず、恋人同士になるまでにかなりの時間を要した。
春原 (はるはら)
MENU18「肉じゃが」に登場する。一人暮らし中の男子学生。友人のタカシの家に遊びに行き、タカシの姉のチカと出会った。その後タカシが自分を残して彼女に会いに行ってしまったため、チカと二人きりになる。チカといっしょにゲームをしたり、酒を飲んだりと楽しく過ごし、タカシには似ても似つかない美人なチカにどぎまぎし始める。チカが夫とケンカした理由が夫の風俗通いであると聞き、こんなにきれいな人がいるのに風俗へ行く意味がわからないと、チカに寄り添った発言をした。それをきっかけに、酒を飲んでいたチカが我を忘れて体の関係を求めようとしたため、抗(あらが)わずに受け入れようとするが、結局チカが眠ってしまったため、一線を越えることはなかった。翌朝、チカが作ってくれた肉じゃがを食べながら、二人で朝のひと時を過ごし、夫のもとに帰るというチカを見送った。心の中では、チカの存在が大きくなっていたが、タカシにチカが離婚したら教えてと冗談発言に留めた。
直樹 (なおき)
MENU19「竹の子ご飯」に登場する。フリーターの男性。大学時代は互いに学校に馴染めず、学校の喫煙所で大月みことと知り合った。いつしか体の関係を持つようになったが、みことが海外に行くために勉強を始めたため、次第と疎遠となった。自分も今の現状を変えたいとの思いから、色々と試行錯誤してみたものの、夢中になれるものに出会うことができず、結局大学をやめてしまう。ある日、大学を卒業したみことがカナダへ渡航するための最後の挨拶に家を訪ねて来たことで、久しぶりの再会を果たす。そこで直樹は、みことならやっていけると太鼓判を押し、当時日々成長しているみことに嫉妬していた自分の胸の内を明かすと、互いにわだかまりがなくなり、久しぶりに体の関係を持つ。翌朝、前日に仕込んでおいた竹の子を使って、竹の子ご飯を作ると、みことが予想以上に喜んでくれたため、人においしいと言ってもらえることに喜びを感じると素直に伝えた。すると、その言葉を受けて料理人を目指せばいいと、みことからアドバイスを受けたことで、前向きに考え始めた。
砂沢 (すなさわ)
MENU20「ハンバーガー」に登場する。「エビバデバーガー」駅前店でアルバイトを始めたばかりの男子。趣味は音楽鑑賞。実は客としてお店に行った際、店員の水戸に好意を抱いたことがきっかけで、アルバイトを始めた。その後、店長の田中の送別会で親しくなり、水戸に言われるがままに彼女と一線を越えた。翌朝、田中と水戸が親密な関係であることを知り、さらに田中が既婚者であることを黙っていたことを知って激怒。転勤先の田中が働くお店に出向き、あんたの腐った性根とウソくさい笑顔を見ると食欲がなくなると暴言を浴びせ、水戸の代わりに復讐を果たした。その後、水戸が自分と関係を持ったのは、田中へのあてつけだったことを知って落ち込むが、今は違うとの水戸の言葉を信じ、元気を取り戻した。
柏木 弓弦 (かしわぎ ゆづる)
MENU22「焼鮭」に登場する。サラリーマンの男性。片田舎で生まれ育った。東京へ行けば何か価値のあるものが見つかるのではないのかとの思いから上京。しかし現実は甘くなく、会社でも確固たる存在価値を見出せず、何も得られないまま都会にしがみつくだけの日々を送っている。久しぶりに地元に戻った際、思い切って高校時代に片思いをしていたクラスメイトの紅野に連絡を取った。高校卒業以来の再会となったが、ホテルで一線を越えることになった。そして柏木弓弦は、いっしょに東京に行かないかと紅野を誘ってみたものの、紅野には4歳になる息子の風太がいるため、地元を離れられないことを知る。どうすることもできずに翌日、紅野の忘れ物を彼女の家に届けに行くと、思いがけずに風太と顔を合わせることになり、話の流れで三人で食事をして思い出の焼鮭を食べた。風太が懐いたこともあり、楽しいひと時を過ごした。風太とはまた遊ぼうと約束だけしておとなしく帰ろうとしたが、結局自分の気持ちに噓をつくことができず、紅野に本当の気持ちを伝える。
はじめ
MENU23「ツナマヨトースト」に登場する。とある大学に通う男子。瑠璃と翔太の三人で遊んでおり、仲がよかった。だが、翔太の彼女である瑠璃を好きになってしまったことに後ろめたさを感じ、次第に距離を置くようになる。そんなある日、偶然にも瑠璃と遭遇し、翔太との関係があまりよくないことを知る。立ち話中に天候が悪化し、はじめは瑠璃を家に招き入れ、二人で過ごすことになる。朝までの長い時間の中で、はじめは瑠璃に思いを寄せていることを明かし、勢いで一線を越えかけるものの、冷静になって思い留まる。翌朝二人でツナマヨトーストを作って食べていると、翔太との写真に目をやる瑠璃に気づき、黙って雨が止むのを待った。
牛尾 (うしお)
MENU24「牛丼」ほかに登場する。強面のヤンキーの男性。その見た目から何かと誤解を受けやすい。高校時代、旗本たまことクラスメイトだった。学校では授業をサボって教室の前で牛丼を食べるなど、豪快かつ自由奔放に振る舞っていたため、教師に目の敵にされていた。そんな中、教師の手を振り払った際、殴ったと言いがかりを付けられ、結局高校2年で学校を退学することとなる。それから2年ほどが経過したある日、公園で一人ブランコに乗っているたまこに気づき、声をかけた。たまこが勢いで家出したことを知り、親切心で近所のネットカフェ「マンガまんぼ」を紹介して、朝まで泊まれるように手配した。その後、たまこからいっしょにいて欲しいと懇願され、結局一晩同じ部屋でいっしょに過ごすことになった。教師に言いがかりを付けられた高校時代、殴っていないと必死に言い続けたものの信じてもらえず、たまこだけが擁護してくれたため、たまこには個人的に恩を感じている。翌朝、漫画喫茶を出るとたまこからお礼がしたいと言われ、二人で牛丼を食べることになった。そこでも財布を盗んだと言いがかりを付けられるが、たまこが毅然とした態度で誤解を解いてくれたため、事なきを得た。これをきっかけに、たまことは頻繁に連絡を取るようになったが、たまこの両親からは、牛尾自身の見た目と偏見から、かかわり合いを持つことすら反対されてしまう。その後、たまこが自分のことで両親とケンカし、再び家を飛び出した彼女と一夜を共に過ごしたのち、改めて両親に挨拶に出向く。そして、たまこの弟の正の協力もあり、両親から交際を認めてもらった。
岸田 (きしだ)
MENU27「焼きそば」に登場する。とある大学に通う男子。去年までは眼鏡をかけ、服装や身だしなみを気遣うことのない、いわゆる陰キャとして大学生活を送っていたが、一念発起。外見にも気遣い、おしゃれな純平と知り合って、純平の女友達の夏鈴とりさの四人で花火大会にやって来た。女子と共に遊んでいる今の状況が、震えるほど嬉しく感じている。夏鈴を好きになりそうな予感を感じており、花火大会にひょんなことから二人きりになり、夏鈴からアプローチされたこともあり、自宅に連れて帰った。その後も積極的な夏鈴のおかげで、一線を越えた翌朝、花火大会で買った焼きそばを温め直して二人で食べたのち、何もなかったように帰ろうとする夏鈴に交際を持ちかけるも、結局断られてしまう。
角田 (かくた)
MENU28「栗ご飯」に登場する。マンションアキノの302号室に引っ越して来たばかりの男性。実家から送られて来た大量の栗の実を持て余しつつも、引っ越しの荷物の片づけをしていた。ベランダに出て金木犀の匂いを嗅いでいると、隣室の里見と初めて顔を合わせる。その後、自己紹介をしたついでに引っ越しのあいさつと称して栗の実をおすそ分けし、それ以来何となく話をするようになった。美人の里見との出会いに心の中で感謝したものの、里見に彼氏がいることを知り、がっかりすることになる。そんな中、自宅前で酔いつぶれていた里美に遭遇し、彼氏と別れたことを知る。そして角田は、自分も失恋して引っ越して来たことを里見に伝えると、互いに傷心している者同士慰め合おうと体の関係を求められ、応じようとした。しかし、里見が涙を流していることに気づき、結局何事もなく終わる。翌朝、以前渡していたおすそ分けの栗を使って、里見が栗ご飯を作って持ってきてくれたため、二人でいっしょに食べたあと、里見が引っ越しを決めたことを知る。寂しさを感じながらも、いい出会いがあるといいですねと里見にエールを送り、笑顔で別れを告げた。
柳 (やなぎ)
MENU29「くるみパン」ほかに登場する。いじめが原因で引きこもりがちだった男性。自分を変えたいとの思いに駆られ、物流倉庫でアルバイトを始めた。だが、疲労困憊(こんぱい)しても夜眠ることができず、仕事を辞めようかと考えている。祖父からもらった、くるみ2個を紐(ひも)でつなげたものをいつも握りしめており、それが精神的に落ち着く拠り所となっている。ある夜、眠れずに外を歩いている時、同僚の二階堂と出会ってバッティングセンターに行くことになった。柳はバッティングが苦手だからと、やろうともしないことを二階堂に鋭くつっこまれ、まったく打たないまま帰るのはダサいと咎(とが)められ、タジタジになる。しかし互いのことを話す中で、彼女にもいじめられた過去があり、理解し合える部分があることに気づく。なんだかんだでバッティングに熱中していると、最終的には二階堂のアドバイスを受けてホームランを打つに至った。その後飛んできたボールが、二階堂にぶつかりそうになったところを身を挺(てい)して守った際、大切にしているくるみの実を潰してしまう。翌朝、二階堂からお詫(わ)びのくるみパンを渡され、朝食代わりにいっしょに食べた。それ以来、職場では二階堂とふつうに会話しているが、何かと感情の起伏が激しい彼女の対応には苦慮しながらも、少しずつ距離を縮めていく。二階堂に好意を抱いているため、彼女が突然不機嫌になった時には柳自身が何かしてしまったのではないかと思い悩むことが多い。
志田 (しだ)
MENU30「焼き芋」ほかに登場する。東京画報大学に通う男子。美術を学んでいるが、最近何を描いていいのかわからないスランプ状態に陥っている。ある日、学校で焼き芋をむさぼる女子を目撃し、何だか絵になると視線を向けるも、彼女はすぐにその場を去ってしまう。それから1年後、友人に誘われ、千歳望美の自宅で行われた飲み会に参加。そこで、かつて焼き芋をむさぼっていた女性が千歳であることに気づいた。千歳は1年前よりも垢抜けていたが、陰キャだったことをいじられて所在なさそうにしていたため、買い出しと称してその場から連れ出した。その後、千歳から誘われて彼女の家へ向かい、一線を越えた。翌朝、ふと横で眠る千歳に目を向けると、そこにはまぎれもなく焼き芋を頰張っていた当時の彼女がいた。思わずノートとペンを手に取ると、スランプがウソのように楽しく絵を描くことができた。千歳の家を出ると、焼き芋を売っていたので彼女に勧めるも、頑として食べようとしないために半分こにして、いっしょに食べることにした。その時、飾らない千歳に魅力を感じていることを素直に話した。
隆弘 (たかひろ)
MENU31「クリームシチュー」に登場する。とある会社に勤務している男性。年齢は24歳。大学時代、めぐると四人でロックバンドを組んでいた。今でもギターは部屋に置いているが、時おり触るくらいで、昔のように弾くことはない。ある日、仕事から帰って来ると、家の前でめぐるが待っていた。バンドを解散して以来の再会だったが、泊めて欲しいと頼まれたため、それに応じた。めぐるはもともと自由人だったが、隆弘の家でも好き勝手に振る舞う。だが、冬の暗く冷え切った部屋がとてつもなく寂しく感じていた自分にとって、朝は明るく送り出してくれ、夜はおかえりなさいと迎えてくれるめぐるの存在は、とても重要なもののように思えた。そんなある夜、めぐるからせまられて一線を越えた。翌朝、めぐるの手作りのクリームシチューを二人で食べたのち、北海道の牧場で住み込みのアルバイトを見つけたと伝えられる。このままいっしょにいようと引き止めてみたものの、それは無理とすぐに返され、願いは叶(かな)わなかった。この一件から、無性に彼女が愛(いと)おしいと思うようになる。
正 (ただし)
MENU34「カツ丼」に登場する。旗本たまこの弟。堅物の両親のもとで暮らしている受験生。自分とたまこが理想の子供でいることで、何かと厳しい両親からの圧力を分散させることができると考えている。そのため、最近たまこの帰宅時間が遅いことに少しヤキモキしている。受験を控えたこの時期に、余計な気苦労はしたくないとたまこに打ち明けた。しかし、たまこの牛尾に向ける真剣な思いを知り、両親から理不尽に牛尾と会うことを禁じられたたまこを見て、応援することを決意。その際、今すぐにでも家を飛び出そうとするたまこに携帯電話を差し出し、外は寒いから連絡してから向かうようにと気遣った。その後、両親のもとに挨拶に来た牛尾が、頭を下げても受け入れようとしない両親と、それに腹を立てたたまこの様子を見て、たまこを擁護した。そして牛尾に頭を下げ、たまこをよろしくと託した。これに両親も二人を認めざるを得ない状況となり、二人にとってのキューピッド役となった。
小山 ひより (こやま ひより)
MENU34「お雑煮」に登場する。書店で働く女性。年齢は24歳。職場の後輩で新人の高崎から、餅っぽいと言われたことを気にしている。正月をのんびり過ごし、太った脂肪を運動で取り戻そうと外に出たが、ウォーキング中に転んでひざを痛めてしまう。そこに偶然通りかかった高崎が自宅で手当てをしてくれたが、何となく高崎には苦手意識があり、すぐに帰ろうとした。しかし、高崎から二人で新年会をしないかと誘われ、結局そのまま高崎の家で飲むことになり、告白された流れで体の関係を持った。その頃には、苦手だったはずの高崎がかわいらしく見えるようになっており、自分の短絡思考には少々あきれる。翌朝、実家にも帰らずに正月らしいこともしていないと話す高崎に、お雑煮を作ってあげた。
大輔 (だいすけ)
MENU35「コーンスープ」に登場する。地元のにこにこ食品に勤務する男性。ある日、ファミリーレストランで高校生のカップルがコーンスープを飲んでいるのを見て、高校時代に仲がよかった凛を思い出す。受験前まで、よく凛とはファミリーレストランでいっしょに勉強しており、コーンスープは二人にとっての思い出の味だった。凛とは進路問題で疎遠となっていたが、思い切って凛にメッセージを送って久しぶりの再会を果たした。酒を飲みながら思い出話に花を咲かせたあと、懐かしのファミリーレストランでコーンスープを飲むことになる。しかし、レストランはすでに潰れて更地になっており、その裏手にあるラブホテルに入ることとなる。凛とはそのまま一線を越え、迎えた翌朝、二人で缶のコーンスープを飲んだのちに、大輔は凛への思いを打ち明ける。
和也 (かずや)
MENU36「鍋焼きうどん」に登場する。3か月前、友達との飲み会で真緒と知り合った男性。その日のうちに意気投合して関係を持った。それ以来、時おり自宅を訪れ、セックスをするだけの友達以上恋人未満の関係を続けている。真緒を思う気持ちは強く、きちんと恋人同士になりたい思いがあるが、真緒がこれ以上の関係を求めていないように感じ、もう一歩踏み出すことができないでいる。そんな中、いつものように部屋を訪れた真緒と一晩を過ごした翌朝、予想外に積もった雪でテンションが上がり、真緒への思いを口にした。だが、それを好きな人ができたから、今の関係を終わりにしようとしていると真緒が誤解し、一度は二人の関係は終わろうとしたが、二人で鍋焼きうどんを食べながら再度話し合ったことで、誤解が解ける。そして真緒も同じ気持ちだったことで、晴れて恋人同士になる。
青山 (あおやま)
MENU37「菜の花パスタ(前編)」ほかに登場する。とある大学に通う2年生の男子。年齢は20歳。近所の金物屋「ホームセンターはっぴぃ」でアルバイトを始めた。職場の先輩の山本麻子とは、12歳という年齢差がありながらもお互い読書好きなこともあり、なかよくなった。麻子が既婚者であることを知りながら、青山の気持ちはどんどん彼女に向いていく。麻子の夫が出張で不在の日、麻子を食事に誘って楽しい時間を過ごした。その後、麻子に誘われるがままに彼女の自宅で飲み直すことになるが、麻子の夫が浮気していることを聞いて、悔し涙を流す。そして青山は、20年生きてきてこんなに人を好きになったのは初めてと、自分の気持ちを麻子に打ち明けた瞬間、彼女の顔色が変わる。結局何ごともなく迎えた翌朝、二人で菜の花パスタを作って食べ、それぞれの日常に戻った。その後、麻子が退職したことを知り、居ても立っても居られなくなり、改めて麻子に気持ちを伝えた。
干谷 (ほしたに)
MENU39「鯵(あじ)の開き」に登場する。とある会社に勤務する男性。社会人になって半年が経過したが、新しい環境と人間関係にうまく馴染めずにいる。心の拠り所を求めてマッチングアプリを利用して、このみと会うことを決めた。自分好みで好印象の彼女と酒を飲んだあと、カラオケにいくつもりだったが、どこもいっぱいだったためラブホテルに入る。ホテルのカラオケでひとしきり盛り上がったあと、シャワーを浴びて準備万端整ったものの、このみが眠ってしまったことで、結局何事もなく朝を迎えた。翌朝、このみが好きな鯵の開きがおいしいという店で朝食を済ませたあと、付き合って欲しいと打ち明けるも、受け身すぎるのは苦手との理由で断られてしまう。その後、何ごとにも及び腰な自分自身を反省し、会社の同僚の玲奈と鯵の開きをきっかけに親しくなる。
月本 (つきもと)
MENU42「ぬか漬け」に登場する。とある会社に勤務する男性。吉岡の後輩。吉岡は仕事に厳しく、口調もキツいが、そんな吉岡に好意を抱いている。ある日、仕事で吉岡から厳しいダメ出しをされ、同僚に飲み会に誘われて飲んでいた。同僚たちは吉岡の悪口で盛り上がっていたが、月本はそれに同調しないでいると、すぐ近くに吉岡が一人で飲んでいたことが発覚。話を聞かれたことに動揺する同僚たちを尻目に、吉岡は店を出て行ってしまう。月本が飲み会を終えて帰路についた時、別の店の前でべろべろに酔った吉岡に遭遇。店のスタッフが心配するほどの泥酔状態だったため、嫌がる彼女を無理矢理家まで送ることにした。吉岡の自宅に到着して颯爽(さっそう)と帰るつもりだったが、尿意が限界に達して急遽(きゅうきょ)トイレを借りるため部屋に入れてもらうことになる。すると吉岡が、ぬか床に手を入れている姿を目撃し、吉岡の家庭的な一面を垣間(かいま)見ると同時に、手をかければかけるほどおいしくなると言う吉岡が、ふだん自分たちに厳しく接する理由を知ることになる。そして月本は、勢いで吉岡への好意を口にしてしまったことがきっかけで一線を越えた。翌朝、吉岡が仕込んだぬか漬けで朝食を食べ、いつもどおり出社した。
半崎 仁 (はんざき じん)
MENU43「アンパン(前編)」ほかに登場する。建築現場で作業している男性。あんこ好きで、アンパンと牛乳の組み合わせが好み。仕事仲間のナカトミと親しく、仕事終わりに飲みに行ったり、月に一度風俗店に誘われたりしている。風俗店「ソープランドふぅゾク♡」では、いつも決まってさくらを指名するが、性的なサービスを受けず、時間いっぱい将棋の相手をしてもらっている。さくらに好意を抱いており、ある日、飲み屋で偶然近くに座った男性、アツキから、彼女を風俗で働かせて金を貢がせているとの最低な発言を耳にした。その後、その彼女がさくらであることを知り、さくらに「アツキと付き合って本当に幸せなのか」と言葉をかけた。その言葉でさくらは心を動かされ、アツキに別れを告げて町へと飛び出した。その後公園で朝を迎え、大好きなアンパンと牛乳を手に互いの気持ちを確認し合った。
玲奈 (れいな)
MENU45「冷や汁」ほかに登場する。画報社大学に通う2年生の女子。学校の視聴覚コーナーでホラー映画を観ていた時、宮崎と知り合った。ある日の学校帰り、宮崎が飲み会をドタキャンされたと落ち込んでいたため、いっしょに飲もうと誘い、宮崎の家で飲むことになった。いっしょにホラー映画のビデオを観たあと、怖いからといっしょに入った風呂でいいムードとなり、一線を越えた。翌朝、冷蔵庫の中に入っていた材料で冷や汁を作り、いっしょに食べた。しかし、それからしばらくして宮崎からメッセージの返信が来なくなり、モヤモヤしたまま新学期を迎えることになる。そんな中、女性といっしょにいる宮崎の姿を目撃。女優の彼女と一度別れたが、最近復縁したという噂を耳にした。のちに大学を卒業し、同じ会社に勤める干谷と親しくなる。
安堂 (あんどう)
MENU47「ドーナツ」に登場する。寝付けない夜はいつも名画座でオールナイトの映画を観ている若い男性。とある映画が好きで、何度となく観たことがあるにもかかわらず、主人公がドーナツを食べるお決まりのシーンで毎回泣いてしまう。その日も同じシーンで涙していると、ふと近くの座席からの視線に気づいた。その後、鳴海と喫煙所でいっしょになり、同じシーンで涙が出ると話したことから意気投合し、場所を変えて映画の話をしないかと誘った。ファミリーレストランでひとしきり話し込んだあと、タバコを買いに寄ったコンビニエンスストアで、鳴海が買って来たドーナツをベンチに座って二人で頰張った。その途端涙があふれ出し、鳴海といっしょに食事をしたり、映画の話ができたことに感動し、自分が寂しかったことに気づかされた。意を決して鳴海に、自分の側に来ないかと言ってみたものの、「そっち側には行けない」ときっぱり断られた。そっち側という言い方に疑問を抱いた瞬間、自分の体が透けていることに気づき、自分が事故で死んだことを思い出す。
黒木 (くろき)
MENU48「かぼちゃの煮物」に登場する。ハロウィンイベントの帰り、終電に間に合わず帰れなくなってしまった女性。露出度が高めの衣装に悪魔の角を付け、手には友達にもらったかぼちゃを持っている。しつこいナンパに困っていた時、突然現れたゾンビ姿の男性、橙山に助けられた。最初は警戒していたが、橙山が自分と同じ朝田高校出身の同級生だと知り、男性に見覚えはなかったが、彼の家に一晩泊めてもらうこととなる。高校時代はギャルで、校内では偏見の目で見られることが多かった。そんなある日、校庭のベンチで眠り込んでしまったことがあり、起きたら足元にジャージがかけられていた。それ以来、そのジャージの持ち主が気になっていたが、結局卒業するまで持ち主はわからなかった。その話を橙山にしたのち、パジャマ代わりに借りた服が、当時のジャージと同じ匂いがすることに気づく。翌朝、持っていたかぼちゃで煮物を作り、橙山といっしょに食べた。陰キャの自分を変えられないことを悩んでいるという橙山に、そのままでいいとアドバイスを送った。自分的にはアリと遠回しに自分の気持ちを橙山に伝えた。
岩本 カナ (いわもと かな)
MENU1「タマゴサンド」ほかに登場する。一人暮らしの女子大学生。宮川晴人とは同じ年齢で、高校時代は同じ学校に通っていた。当時、学校の購買にサンドイッチを買いに行った際、タッチの差で宮川に取られてしまったことがあり、それ以来、タマゴサンドを買う競争相手になった。高校時代はソフトボール部に所属していたため、ベリーショートヘアで、一見すると男の子に見える。そのため、当初宮川には男子と間違えられたが、この一件をきっかけに親しくなり、ひそかに思いを寄せるようになった。現在のヘアスタイルは、セミロングのストレートヘア。髪を伸ばし始めた頃から、男性にモテるようになったことを自覚しており、大学生になって同じ大学の先輩から告白された。ちょうどその頃、部屋から桜が見えるという宮川の発言をきっかけに、一方的に家に遊びに行くことを決めた。しかし宮川の部屋に一晩泊り、同じベッドで眠ったにもかかわらず、何もないまま朝を迎えた。翌日、宮川が作ってくれたタマゴサンドを持っていっしょに花見に行き、互いの気持ちを確認し合ったことで交際へと発展した。その後はなかなか一線を越えられないまま時間だけが過ぎていくが、交際1か月の記念日に無事に体の関係を結ぶこととなった。社会人となり、宮川とは同棲生活を始めるが、その後妊娠をきっかけに結婚することになる。怒ると怖いが、基本的に思いやりがあって優しい性格の持ち主。料理は人並みにできる方で、日常的に宮川にも食べさせている。
三津目 (みつめ)
MENU2「そば」ほかに登場する。社会人の女性。長野出身。2か月ほど前に彼氏に浮気され、振られてしまう。それを機に染めていた髪色を黒く戻し、メイクも控えめにして眼鏡をかけるようになり、女子力高い系だったが地味系女子へとガラッと変貌を遂げる。失恋したことが露骨にわかりやす過ぎるため、その様子を心配した同僚の鬼ヶ島萌から飲みに誘われた際、堀田誠と知り合った。堀田と互いに境遇が似ていたこともあり、恋愛はしたくないのに一人は寂しいという気持ちに共感したことをきっかけに、勢いでラブホテルに入り、その日に体の関係を持った。翌朝、互いに空腹に襲われたため、立ち食いそばを食べながら体だけの関係、いわゆるセックスフレンドの関係でいることを約束した。そのまま半年が過ぎ、週末になると決まったホテルでセックスを楽しみ、翌朝決まった立ち食いそば店でそばを食べて帰るというお決まりのパターンを続けていた。しかし、父親の仕事の手伝いと結婚を急(せ)かされ、見合いをして欲しいと泣きつかれたこともあり、実家に帰ることを決断。一度は堀田との関係を清算したが、その後も堀田から呼び出されたり、出発する日に駅で堀田の姿を見かけたりと、堀田のことが気になるようになる。そんな中、肩を落とした様子で駅のホームの立ち食いそば店に入ろうとした堀田に思い切って声をかけたところ、思いがけず堀田から告白を受け、結婚を申し込まれることになった。これにより、自分の中にあったモヤモヤが晴れ、堀田との交際を開始した。その後は、自分が交際する人に対して重い女になりがちなことを思い悩んだり、再び傷つくことを恐れたりと、一進一退ありながらも交際を続け、堀田と結婚に向かって歩みを進めている。
リリー
MENU4「ハニートースト」に登場する。ツインテールの髪型の女子。たれ目が特徴。交際中の彼氏と結婚資金を貯めるため、出会い系のアプリを利用し、知り合った相手から金銭を奪おうと計画を立てる。計画どおりアプリで知り合った「トースト」こと須藤と会うことを決め、ひとしきり話をしたあとに自分からホテルに誘った。これからという段になって、予定どおり彼氏が激昂しながら部屋に乱入。須藤が男から金を巻き上げられるのを横目にリリー自身はその場を去る。しかし、彼氏から本気でセックスしようとしただろうとキレられ、別れを告げられる。そして持っていたかばんを川に捨てられ、所持金もなく途方に暮れていた。そこで偶然に須藤と出くわし、雨に降られてずぶ濡れの状態で泣きながら訴え、須藤の家に泊めてもらえることになった。須藤と体を重ねた翌朝、ハニートーストを作って食べたあと、彼氏からの電話に出るため部屋の外に出て、そのまま戻ることはなかった。それから数年後、赤ちゃんを抱き、当時の彼氏といっしょにいる姿を須藤に目撃された。本名は「静子」。
満島 穂乃果 (みつしま ほのか)
MENU5「肉まん」ほかに登場する。コンビニエンスストアで働いている女性。かわいらしい顔立ちをしている。明るい性格ながら、天然気味で何かとアクシデントを巻き起こしがち。目を見張るほどの巨乳のため、客によく声をかけられ、モテるだけでなく不快な思いをすることも少なくない。実は小学校の終わり頃から急に胸だけが成長し始め、「肉まん」とあだ名を付けられる。その後も、胸のことばかりいじられ続けた結果、満島穂乃果自身のコンプレックスになっていく。そのため仕事中、売れ残って捨てられる肉まんを見ると放っておけず、残った肉まんをできる限り購入するようになった。巨乳のため男性から視線を集めるだけでなく、同性からもからかわれたり、心ない言葉を投げかけられることもある。ある日、重松純と夜勤でいっしょになった際、トラブルやアクシデントが重なり、何かとサポートしてくれた純と親しくなる。純自身が気にしている目つきの悪さについては、きれいな三白眼と感じており、むしろ好意的に見ている。純を男性として意識していなかったが、その後もバイトでいっしょになることが増え、何かとやらかしがちな自分のフォローをしてくれたり、いつも優しい純を、頼りがいのある友達として認識するようになる。純の前ではいつも無防備だったが、酒に酔った純を介抱した際、転んだ拍子にキスをしたことがきっかけで、純を異性として意識するようになる。自分の純への気持ちに気づいてからは、それまでのようにふつうに接することができなくなり、一時はぎくしゃくしたが、互いの気持ちを確かめ合い、交際をスタートさせる。
小麦 (こむぎ)
MENU6「カップラーメン」に登場する。5歳年下の承のとなりの家に住んでいる女性。年齢は24歳。互いに親が共働きだったこともあり、子供の頃から承の面倒をよく見ていた。将来の夢は宇宙一のアイドルになることだと宣言しており、実際にアイドルになったが、まったくと言っていいほど売れていないため、アイドルをあきらめて実家に戻って来た。しかし親からは罵倒され、居場所も拠(よ)り所も失っている状況にある。そんな中、ファミリーレストランで泥酔するも、清算時になって財布を忘れていることに気づき、偶然通りかかった承に助けられ久しぶりの再会を果たし、カラオケに誘った。自分の歌った歌を、承が感動したと言ってくれたことがきっかけで、一気に雰囲気がよくなり、一線を越えようとするもののカラオケ店のスタッフに注意されてしまう。その帰り道、いっしょにカップラーメンを食べながら、承にまぎれもなく宇宙一のアイドルだと言ってもらえたことに感動し、再び前向きな気持ちを取り戻すことができた。
真奈月 (まなつき)
MENU8「梅干しのおにぎり」に登場する。第2中学3年2組の同窓会兼新年会に参加した女性。クラスメイトの村田と再会した。年齢は28歳。当時はバスケットボール部に所属する彼氏がいた。お昼休みには人目もはばからずに二人でお弁当を食べており、周囲からも公認の間柄だった。その後、地元を離れて結婚したが、夫が19歳の女性と浮気したため離婚して地元に戻って来た。真奈月自身は、いい嫁になれるよう一生懸命がんばっていたつもりだったため、自信を喪失していた。そんな中、村田が同窓会で泥酔した自分を介抱してくれたため、自宅に招き入れたところ、今でも好きだと告白されて村田と一線を越えてしまう。だが、翌朝目覚めたと同時に後悔し、勢いでしてしまったこと、交際は考えられないことを告げ、村田に謝罪した。
若葉 (わかば)
MENU10「タコさんウインナー」に登場する。試食販売のアルバイトをしている女子大学生。年齢は19歳。高校生の時に通っていた塾の講師だった古賀と偶然の再会を果たす。実は古賀に思いを寄せており、志望校に合格したら付き合って欲しいと思いを打ち明けた。それを糧に受験勉強にまい進し、みごと合格するが、古賀が塾を辞めてしまったため、古賀とはそれっきりとなっていた。再会した古賀に対しても、改めて付き合って欲しいと再度アタックした。しかし、何を言っても受け入れてもらえなさそうだったが、あきらめることなく食い下がり続けた。紆余曲折の末、古賀の部屋に入れてもらえることになった。そこで自分を受け入れてもらえない理由でもある、古賀の生い立ちについて話を聞くことになった。これまで古賀は人に愛されたことがないため、人を愛する自信がないことを知るが、人に幸せになって欲しいと言える気持ちがあるなら大丈夫と声をかけ、古賀を抱きしめた。その後一線を越えて朝を迎えると、古賀が大好きなタコさんウインナーを大量に作って朝ごはんを用意した。人に食事を作ってもらったことがないという古賀に、若葉は自分が古賀を幸せにすると宣言した。
樋口 多絵 (ひぐち たえ)
MENU11「ステーキ」ほかに登場する。安田と同じ大学に通う女子。元カレと別れたばかり。日課として筋トレを始めたが、その理由はメンタルを強くしたいから。見た目はギャルっぽいが実は泣き虫で、ちょっとしたことで傷ついてしまうことから、強くなるために体を鍛え始めた。学食では、筋肉を付けるために朝から人目をはばからずステーキを食べる姿が大学の後輩の安田に目撃されている。ある日、ユリカの部屋で安田と彼の先輩である野田と四人で酒を飲むことになる。安田と二人きりになった際に彼を挑発して、いい雰囲気になったが、結局一線を越えることはなかった。その後、野田からギャルが筋トレをすると男性が寄って来なくなるからやめた方がいいとの暴言を受けたが、樋口多絵自身よりも先に安田が反論した。結局、野田と安田はケンカになってしまったが、それを機に安田も筋肉をつけようと頑張り始めたことを知る。安田とは筋トレや、夜のジョギングをするなどいっしょに過ごす時間も増えるが、なかなかそれ以上の関係には進展しなかった。そんな中、元カレが突然家に押しかけて来て、復縁をせまられることになった。強引な彼を必死に拒絶していた際、忘れ物を取りに来た安田が異常に気づいて彼を制止し、さらに勢いで告白されてしまう。自分も勢いでその告白を受け入れ、安田と一線を越えることとなる。
野田 (のだ)
MENU11「ステーキ」に登場する。安田と同じ大学に通う男子。眼鏡をかけている。映研に所属する安田の先輩でもある。気さくに見えて何かと高圧的で、上下関係や女性に対して偏った考えを持っており、自分の価値観を人にも押し付けるタイプ。最近狙っていた同じ大学のユリカが、女性二人対男性二人なら部屋に来てもいいと言われたため、強引に安田を誘ってユリカの家に遊びに行った。安田は気乗りしていないが、そのことには気づいていないし、気にもしていない。
香山 (かやま)
MENU12「カレー」に登場する。居酒屋のカウンターで一人酒を飲んでいた若い女性。しつこい男性客に絡まれ困っていた際、となりに座っていた山田孝雄に助けられる。それをきっかけに好きな漫画の話で盛り上がり、楽しい時間を過ごした。泥酔したたため、カレーがおいしいと評判のラブホテルに山田を誘い、一夜を共にした。行為後はぐっすり眠ってしまい、寝ぼけて山田をお父さんと言い間違えるなどの失態もあったが、翌朝、噂(うわさ)のカレーを食べて満足した。山田には別れ際に、今日限りの関係であることを暗に伝えた。実は自分の父親は子供の頃に離婚しているため、顔も覚えていない。しかし加齢臭が好きだったり、山田の匂いに興奮するなど、至るところに父親への執着を思わせる様子を見せている。
桃川 航 (ももかわ わたる)
MENU15「お茶漬け」ほかに登場する。鬼ヶ島萌と同じ会社に勤める男性。お昼休みはデスクでお茶漬けを食べているため、同僚からは変わり者扱いされている。実は五人兄妹の大家族で、貧乏家庭で育ったが、両親は優しく朗らかで、弟妹との仲も良好。お茶漬けの素のおまけのカードを集めているのも、実は弟のため。ある夜、町中で鬼ヶ島が落ち込んでいる様子が気にかかり、いっしょに飲みませんかと声をかけた。鬼ヶ島が若手実業家に騙(だま)されたことや、暴言を浴びせられたことを親身になって聞き、さらに泥酔した鬼ヶ島を優しく介抱した。そんな中、鬼ヶ島からキスされ、体の関係を求められるものの、直後に彼女が嘔吐してしまう。そこで鬼ヶ島を実家に連れて帰り、一晩泊めることとなる。お金に執着する鬼ヶ島は貧乏家庭を嫌悪すると思っていたが、自分の家族を羨ましいと言ってくれたため、自分が精一杯稼ぐので交際してくれないかと鬼ヶ島に告白。だが、はっきりした返答をもらえなかったため、しっかり稼げるようになったら改めて告白しようと、一途に鬼ヶ島を思い続けた。その後、なかなか仲が進展せず、恋人同士になるまでにかなりの時間を要した。
若手実業家 (わかてじつぎょうか)
MENU15「お茶漬け」に登場する。若手実業家の男性。妻子持ちながら、日常的には独身として振る舞っている。ある日、鬼ヶ島萌と食事に行くことになり、「仕事をしているというよりも、自分が興味を持ったものが金になっているだけ」とか、「人と違う稼ぎ方をするなら視野が広くないとだめ」などと、いかにもモテる実業家らしく格好をつけて語った。しかし、自分の写真を鬼ヶ島に見せていた際に、妻から送られてきたメッセージが表示され、既婚者で、子供もいることが明らかになってしまう。不倫はNGとその場を去ろうとする鬼ヶ島に対し、いい子ぶっているが金が目的だろうと暴言を吐き、いくら払えばいいのかと現金をちらつかせた。
元カレ (もとかれ)
MENU16「納豆」に登場する。樋口多絵の元彼氏。元カレが浮気していることがばれて別れたばかり。最近多絵との復縁を目論み、連絡を取ろうとしている。しかし、多絵から無視されたため、多絵の自宅に押し掛けて乱暴な振る舞いを見せた。その時、多絵の部屋に忘れたものを取りに来た安田が二人の話に割って入って来たため、追い返そうとするも、突然安田が多絵に告白。多絵も安田の告白を受け入れたため、自分だけが一気に蚊帳(かや)の外になり、悔しさを滲(にじ)ませながらしぶしぶその場を去った。
チカ
MENU18「肉じゃが」に登場する。タカシの姉で既婚者の女性。夫の風俗通いが発覚し、ケンカしてタカシの部屋に家出して来た。そんな中、タカシの友達の春原が遊びにやって来るが、タカシが彼女に会いに行ってしまったため、初対面にもかかわらず、二人きりで一晩を過ごすことになった。実は酒に弱く、すぐ酔って乱れるタイプなため、ふだんは酒を飲まないようにしていた。しかし夫との一件もあり、久しぶりに酒を飲み始め、夫婦げんかの理由が風俗通いであることを春原に打ち明けると、こんなにきれいな人がいるのに風俗へ行く意味がわからないと、自分に寄り添った発言をしてくれたことをきっかけに、酒乱の悪癖が暴走。服を脱ぎ捨て、春原に体の関係をせまったが、結局睡魔に負けて眠ってしまったため、春原と一線を越えることなく朝を迎えることになった。朝酔いがさめたチカは、自分の軽はずみな行いを反省。夫から長文の反省文が送られてきたこともあり、夫ときちんと向き合うことを決めた。朝食は春原に肉じゃがを作って食べさせ、お礼を言って自分のあるべき場所へと帰っていった。
大月 みこと (おおつき みこと)
MENU19「竹の子ご飯」に登場する。大学を卒業したばかりの女性。大学時代は互いに学校に馴染めず、学校の喫煙所で直樹と知り合った。いつしか体の関係を持つようになったが、海外に行くことを見据えて本格的に勉強を始めたため、直樹と距離を置くようになった。そのため直樹からは嫌われたと思い込み、そのまま疎遠となっていたが、大学卒業を機に思い切って直樹の家を訪れ、カナダへの渡航が決まったことを報告した。そこで初めて直樹が自分を嫌っていたのではなく、夢に向かっている自分に嫉妬していたことを知る。その日、久しぶりに体の関係を持ち、迎えた翌朝に直樹が作った竹の子ご飯を食べて、そのおいしさに感動する。人においしいと言ってもらえることに喜びを感じると語る直樹に、料理人を目指せばいいとアドバイスを送った。
水戸 (みと)
MENU20「ハンバーガー」に登場する。「エビバデバーガー」駅前店でアルバイトをしている女子。店長の田中と体の関係を持っていたが、田中の転勤が決まった途端に妻子があることを打ち明けられ、別れをせまられる。何も知らないまま一方的に不倫をさせられたことに怒りを感じており、田中の送別会であてつけのように砂沢となかよくなり、自宅に連れ帰って体の関係を持った。その後、砂沢に田中との不倫関係が知られ、自分以上に田中に対する怒りを顕(あらわ)にする砂沢に驚いた。自分の代わりに田中に報復してくれたことで、心から砂沢を慕うようになる。
田中 (たなか)
MENU20「ハンバーガー」に登場する。「エビバデバーガー」駅前店の店長を務めていた男性。既婚者であるにもかかわらず、お店のスタッフの水戸と体の関係を持っていたが、転勤が決まった途端、自分が既婚者であることを打ち明け、水戸に別れをせまった。自分の送別会で、水戸と砂沢が仲のいい姿を気にしている様子を見せていたが、翌日二人にお幸せにねと笑顔を振りまいた。しかし砂沢から、あんたの腐った性根とウソくさい笑顔を見ると食欲なくなると、店で暴言を浴びせられ、怖い思いをすることとなった。
紅野 (こうの)
MENU22「焼鮭」に登場する。事務員の女性。片田舎で生まれ育った。柏木弓弦は高校時代のクラスメイトで、久しぶりに地元に戻って来た弓弦から連絡をもらって会うことになった。以前、体育倉庫で弓弦から小さな声で告白されたことがあり、聞こえないふりをしてはぐらかしたことがある。そのため、弓弦への思いは少なからず引きずっており、再会した弓弦とホテルで一線を越えた。弓弦からいっしょに東京に来ないかと誘われるが、紅野には4歳になる息子の風太がいるため、東京へのあこがれはあるものの、その言葉を簡単に受け入れることはできなかった。そのことを弓弦に包み隠さず明かし、これ以上の接触を絶とうとした。しかし翌日、忘れ物を家に届けに来た弓弦と風太が顔を合わせ、三人で食事をすることになった。風太が思いがけず弓弦に懐いたこともあり、思い出の焼鮭を食べつつ楽しいひと時を過ごした。
瑠璃 (るり)
MENU23「ツナマヨトースト」に登場する。とある大学に通う女子。はじめと翔太の三人で遊んでおり、翔太と付き合っていた。しかし、いつしかはじめと遊ばなくなり、次第に距離を置くようになる。その後も翔太との交際は続いているが、最近はケンカばかりしている。翔太には雑に扱われていると感じており、飽きられているのではないかと思い悩んでいる。そんなある日、友達の家から帰る途中にはじめと遭遇。天候が悪化したため、はじめの家で二人で過ごすことになった。朝までの長い時間の中で、はじめが自分のことを好きだったことを知り、一度は体を許そうとするも、冷静になって思い留まる。翌朝二人でツナマヨトーストを作って食べていると、翔太といっしょの写真に目をやって雨が止むのを待った。
旗本 たまこ (はたもと たまこ)
MENU24「牛丼」ほかに登場する。引っ込み思案でおとなしい性格の女性。昔から自分の意見を主張するのが苦手で、これまで家族や周囲の人の言うことばかりを聞いて生きてきた。しかし、それが最近つらく感じるようになり、思い余って家出を実行するが、泊めてくれるような友達もおらず、行くあてもないまま公園のブランコで途方にくれてしまう。そんな時、高校時代にクラスメイトだった強面(こわもて)のヤンキーの牛尾に声をかけられる。牛尾が学校を辞めてから2年ぶりの再会だったが、あまりの怖さに黙って話に応じていたところ、現状を理解した牛尾にネットカフェ「マンガまんぼ」を紹介してもらった。その後いったんは一人になるものの、不審な男がうろついていたため、恐ろしさのあまり牛尾にいっしょにいて欲しいと頼み込み、朝まで同じ部屋で過ごすことになった。牛尾は一見強面のため、高校時代はあらぬ誤解を受けていた。当時それを旗本たまこは必死に弁明しようとしていたが、結果として牛尾が学校を辞めたことで、申し訳なさを感じていた。しかし、牛尾はたまこだけが自分を擁護したことを覚えており、それに恩すら感じている様子だったことに安堵する。翌朝、お礼として牛丼をおごることになり、いっしょに牛丼を食べた際、そこでも牛尾が財布を盗んだと言いがかりを付けられそうになるが、たまこが毅然(きぜん)とした態度を取ったことで、事なきを得る。それ以来、牛尾と連絡を取り合うようになった。堅物の両親からは、その見た目だけで牛尾を否定され、かかわらないようにと口うるさく言われているが、弟の正の協力もあり、のちに交際を認めてもらう。
夏鈴 (かりん)
MENU27「焼きそば」に登場する。友人の純平を通じて知り合った岸田の女友達。友人のりさと四人でいっしょに花火大会に行った際、岸田と二人きりとなり、岸田の家に遊びに行きたいと頼み込んだ。途中で寄ったコンビニエンスストアで、岸田がコンドームを購入したことをひそかに確認し、家に着いてから積極的にセックスをせまった。翌朝、花火大会で買って来た焼きそばを温め直して二人で食べ、何もなかったように帰ろうとした。そこで岸田から交際を持ちかけられるが、毎日お祭りじゃつまらないと言い残し、その場を去った。
里見 (さとみ)
MENU28「栗ご飯」に登場する。マンションアキノの303号室に住んでいる女性。ベランダでお酒を飲んでいた時、隣室の角田と初めて顔を合わせた。その後、引っ越しの挨拶と共に栗の実をおすそ分けしてもらい、顔を合わせれば話をするようになった。実は交際中の彼氏がいたが、別れることになり、傷心で酔いつぶれて帰宅した際、自宅と間違えて隣室の角田の部屋に入ろうとしたことで、角田に介抱してもらうこととなる。その時、角田も失恋を理由に引っ越して来たことを知り、互いに傷心している者同士慰め合おうと体の関係を求めようとするが、途中で角田から涙を流していることを指摘され、結局何事もなく終わる。翌朝、角田からもらった栗で栗ご飯を作り、角田の部屋に持って行った。角田に誘われていっしょに栗ご飯食べたのち、改めて心機一転やり直すことを決めて引っ越しを決意。そして角田に栗ご飯のレシピを同封した手紙を渡し、新居へと引っ越した。
二階堂 (にかいどう)
MENU29「くるみパン」ほかに登場する。柳と同じ物流倉庫でアルバイトをしている女性。思ったことは何でもはっきり口にしてしまうが、素直になれずに肝心なことは言えないために、周囲から誤解されやすく、学生時代はいじめられたこともある。恋愛に関してはかなり奥手。ある夜、バッティングセンターに行こうとした際に柳と遭遇し、いっしょに行くことになった。そこで、柳にもいじめられた過去や引きこもっていたことを知り、理解し合える部分があることに気づく。バッティングに熱中していると、飛んできたボールがぶつかりそうになった際に、柳が身を挺して守ってくれた。その時、柳が大切にしているくるみの実を潰してしまったため、翌朝お詫びとしてくるみパンを買って手渡し、二人で朝食代わりに食べた。それ以来、柳を男性として意識するようになり、職場ではふつうに接しているものの、内心はドキドキしている。気さくに話かけてくれる柳に対し、どうしても素直な言葉を返すことができず、感情の起伏が激しくなりがち。そんな自分の言動をいつも反省している。
千歳 望美
MENU30「焼き芋」に登場する。東京画報大学のメディア情報学部に在籍する女子。以前は眼鏡をかけた陰鬱な雰囲気を漂わせた、いわゆる陰キャだった。当時は学校で一人で焼き芋をむさぼることもあり、友人は「イモがイモを食べる共食い」と揶揄(やゆ)していた。地味な自分が嫌になり、キラキラした友達を作ったことで垢抜け、以前の自分を脱することができた。ある日、自宅で友達と飲み会をしていた時、陰キャだった頃のことをいじられて困っていたところを、志田が買い出しと称して外に連れ出してくれたことに安堵する。その後、志田の優しさに触れ、自宅に誘って一線を越えた。翌朝、人目を気にして食べなくなった焼き芋を志田から手渡され、いっしょに食べた。飾らない自分をいいと言ってくれた志田に好意を抱く。
めぐる
MENU31「クリームシチュー」に登場する。大学時代、隆弘と四人でロックバンドを組んでいた女性。年齢は24歳。これまで女友達とルームシェアしていたがうまくいかず、ロックバンドを組んでいた隆弘の家に突然押し掛けた。隆弘とはロックバンドを解散して以来の久しぶりの再会となった。当時から非常に自己中で、やりたいことをやらないと気の済まない自由人。ロックバンドも人気が上昇している中、やりたいことはやりきったいう理由で突然やめてしまう。隆弘の家でも、好き放題に振る舞い、今したい気分だからと隆弘を誘ってセックスをせまった。翌朝、めぐる自身が手作りしたクリームシチューを二人で食べたのち、北海道の牧場で住み込みのアルバイトを見つけたからと、あっさり隆弘のもとを去った。
高崎 (たかさき)
MENU34「お雑煮」に登場する。小山ひよりと同じ書店で働く男性。ひよりの先輩にあたる。ひよりのことは、日々餅っぽいと感じており、丸くてかわいい印象を抱いていた。正月休みで店も休みだったため、しばらくひよりに会えない日が続いていたが、ひよりが道で転んだところに遭遇。ひざを痛めていることに気づき、手当てするからと、ひよりを少々強引に自宅に連れ帰った。手当てが済むとすぐに帰ろうとするひよりを、二人で新年会をしようと引き止め、酒を飲むこととなった。正月用にスーパーで買っておいたお餅の話をきっかけに、勢いでひよりに告白して一線を越えた。翌朝、ひよりが作ってくれたお雑煮をいっしょに食べ、初めて正月らしいことをしたと実感する。
凛 (りん)
MENU35「コーンスープ」に登場する。大手企業の四菱商事に勤務する女性。現在は関西に住んでいるが、出張で地元を訪れていた際、高校時代に仲がよかった大輔から突然の連絡を受け、久しぶりの再会を果たす。酒を飲みながら思い出話に花を咲かせたあと、大輔から懐かしのコーンスープを飲もうと提案され、思い出のつまったファミリーレストランに向かうが、お店はすでに潰れて更地になっていた。そして、裏手にあるラブホテルに入ることとなる。大輔と一線を越え、迎えた翌朝、二人で缶のコーンスープを飲んでいると、大輔に告白されることとなる。しかし大輔の思いは、昔の自分に向いていると感じたため、凛は自分も大輔が好きだったことだけを伝え、互いに別々の道を歩むべく別れを告げた。
真緒 (まお)
MENU36「鍋焼きうどん」に登場する。3か月前、友達との飲み会で和也と知り合った女性。その日のうちに意気投合して関係を持った。それ以来、時おり和也の部屋を訪れ、セックスをするだけの友達以上恋人未満の関係を続けている。和也に好意を抱いているが、彼は付き合ったりするのが嫌いな人だと思い込み、あやふやな関係から一歩踏み出すことができないでいる。いつものように部屋を訪れた時、何となくそっけない態度の和也を察して、好きな人ができたとカンちがいする。翌朝、今の関係を話し始めた和也の言葉を遮るかたちで、自分から終止符を打った。しかし、二人で鍋焼きうどんを食べながら再度話し合ったことで誤解は解け、和也も自分と同じ気持ちだったことを知り、晴れて恋人同士になる。
山本 麻子 (やまもと あさこ)
MENU37「菜の花パスタ(前編)」ほかに登場する。近所の金物屋「ホームセンターはっぴぃ」で働いている女性。年齢は32愛。既婚者ながら夫には浮気の疑いがあり、寂しさと同時に憤りを感じている。同じ職場のアルバイトの青山とは、12歳という年齢差がありながらもお互い読書好きなこともあり、なかよくなった。夫が出張で不在の日、青山から食事に誘われて楽しい時間を過ごした。その後、青山を自宅に招き入れ、飲み直すことになったが、青山が自分と夫との関係について悔し涙を流してくれたことをきっかけに、自分の中のスイッチが入り、青山と一線を越えそうになる。しかし、青山から20年生きてきてこんなに人を好きになったのは初めてと打ち明けられた瞬間、そのひたむきさに我に返り、踏み留まる。結局何事もなく迎えた翌朝、青山と二人で菜の花パスタを作って食べ、それぞれの日常に戻った。その後、夫とは離婚が成立し、仕事先も退職。青山には何も言わないまま関係を断つつもりだったが、訪ねて来た青山に事の顚末(てんまつ)を語り、改めて彼からの気持ちを伝えられる。
このみ
MENU39「鯵の開き」に登場する。とある会社に勤務する女性。社会人1年目で、年齢は23歳。かわいらしい顔立ちながら、鯵の開きや日本酒が大好き。マッチングアプリで知り合った干谷と、酒を飲んだあとカラオケにいくつもりだっだが、どこもいっぱいだったことでラブホテルに入る。ホテルのカラオケでひとしきり盛り上がったあと、シャワーを浴びて準備万端整ったものの、睡魔に襲われ、何ごともなく朝を迎えた。その後、自分が好きな鯵の開きがおいしいお店に連れて行った際、付き合って欲しいと告白される。しかし、先に眠った自分に手を出さなかった干谷の受け身すぎるところが苦手との理由で申し出を断った。実はマッチングアプリに登録していたのは、遊びの出会いを求めていただけだった。
吉岡 (よしおか)
MENU42「ぬか漬け」に登場する。月本と同じ会社に勤める女性。月本の先輩にあたる。キャリアウーマンで、正論ながらはっきりとした物言いで口調もキツく、後輩からはあまり快く思われていない。あまりの仕事人間ぶりに、家でも仕事ばかり考えていると噂されているが、実は自作のぬか床を毎日管理しているなど、家庭的な一面を持つ。ある日、会社帰りに飲みに行った店で、偶然にも月本をはじめとする後輩社員たちが飲んでおり、自分の悪口で盛り上がるの姿を見てしまう。逃げるように店を出ていったが、悔しさのあまり別の店でべろべろになるまで飲むが、ぬか床に手を入れなければいけないことを思い出し、フラフラになりながらも帰宅しようとした。店のスタッフにも一人で帰るのを止められるほどの泥酔状態だったため、偶然通りかかった月本に送ってもらうこととなる。自宅に到着すると、トイレを借りたいという月本を家に招き入れ、話をする中で月本が自分に好意を寄せていることを知り、一線を越えた。翌朝、仕込んでいたぬか漬けで朝食を作って二人で食べたのち、いつもどおり出社した。
ナカトミ
MENU43「アンパン(前編)」ほかに登場する。半崎仁と同じ建築現場で作業している男性。年齢は67歳。本名は「仲野富雄」で、仲間からは「ナカトミさん」と呼ばれている。給料が入ると仁を誘って風俗店「ソープランドふぅゾク♡」に行くのを月1回の楽しみにしている。妻に先立たれ、一人で暮らしているため、その寂しさに心が折れそうになることがあり、仁を誘っては酒を飲みに行っている。一見ただの飲んだくれに見えるが、意外と肉体派で、その辺の若者には負けない腕力を誇る。
さくら
MENU43「アンパン(前編)」ほかに登場する。「さくら」の源氏名で、風俗店「ソープランドふぅゾク♡」で働いている女性。半崎仁から月に1回指名を受けているが、将棋ばかりしている。最初は将棋のルールをまったく知らなかった。毎回、来店しても性的サービスを受けようとしないことに困惑しながらも、仁に好感を抱いている。実は交際中の彼氏、アツキと同棲しており、風俗で働き始めたのもアツキに言われたからで、会社の立ち上げのために奔走するアツキに日々尽くしている。しかし、たまに帰って来ても金を無心して、すぐに出て行ってしまうアツキに不信感を抱き始める。そんな中、深夜の居酒屋に呼び出されてアツキのもとへと向かったが、仁から「アツキと付き合って本当に幸せなのか」という言葉でアツキに別れを告げて町へと飛び出した。その後、公園で朝を迎え、大好きなアンパンと牛乳を手に互いの気持ちを確認し合った。
アツキ
MENU43「アンパン(前編)」ほかに登場する。さくらと同棲中の男性。さくらからは「あっくん」と呼ばれている。さくらに風俗店で働くように画策し、さくらの金目当てに付き合っている。さくらには、新しく会社を立ち上げるために奔走していると伝えているが、実際はさくらの稼ぎで日々遊び歩いている。友だちの前ではさくらを見下し、単なる金づるとしか思っていない。のちに、さくらが自分から離れようとしていることを知り、逆上してさくらに暴言を吐いた。
宮崎 (みやざき)
MENU45「冷や汁」に登場する。画報社大学の映像学科に在籍する3年生の男子。学校の視聴覚コーナーでホラー映画を観ていた時、玲奈と知り合った。ある日の学校帰り、偶然出会った玲奈に飲み会をドタキャンされたと愚痴をこぼすと、いっしょに飲もうと誘ってくれたため、自宅で飲むことになった。いっしょにホラー映画のビデオを観たあと、怖いからといっしょに入った風呂でいいムードとなり、一線を越えた。翌朝、冷蔵庫の中に入っていた材料で、玲奈が作ってくれた冷や汁をいっしょに食べた。その後しばらくして、以前付き合っていた女優の彼女と復縁することになった。その彼女とは一度別れたが、その後も彼女が出演するホラー映画を観ていた。復縁後は、玲奈と連絡を取らなくなったまま、新学期を迎えることになった。
鳴海 (なるみ)
MENU47「ドーナツ」に登場する。霊感のある若い女性。彼氏とケンカして家に帰りたくなかったことから、名画座でオールナイトの映画を観ていた。いつも涙する主人公がドーナツを食べるシーンで、近くの席に座っていた男性の安堂が涙していることに気づいた。その後、安堂と喫煙所でいっしょになり、場所を変えて映画の話をしないかと誘われる。ファミリーレストランでひとしきり話し込んだあと、タバコを買いに寄ったコンビニエンスストアでドーナツを購入し、ベンチに座って安堂と二人で頰張った。その後、安堂が涙を流しながら、自分の側に来ないかと誘われるが、「そっち側には行けない」と断った。実は最初から安堂が生きた人間ではないことに気づいていた。
橙山 (とうやま)
MENU48「かぼちゃの煮物」に登場する。朝田高校出身の男子大学生。もともと控えめな性格のいわゆる陰キャだったが、外見を変えて大学デビューを果たした。しかし、サークルで参加したハロウィンイベントではまったく盛り上がらず、結局途中で抜け出してしまう。その際、しつこいナンパに困っていた黒木を、ゾンビの仮装をしたまま助けた。ゾンビのマスクがとれなくなってしまい、黒木に警戒されるものの、同じ高校出身であることを明かし、何とか信じてもらうことができた。その後、一人暮らしの自分の家に黒木を一晩泊めることとなり、無事ゾンビマスクを外すことにも成功。高校時代のアルバムを見ながら、当時の話で大いに盛り上がる。実は高校生の時、ひそかに黒木に思いを寄せていたが、黒木は当時ギャルだったため近づくこともできなかった。高校時代、黒木がベンチで眠り込んだ際に、ジャージをかけた張本人ながら、その事実を明かすことができなかった。黒木と一晩を明かした翌朝、黒木が作ってくれたかぼちゃの煮物をいっしょに食べながら、陰キャの自分を変えるのは難しいと打ち明けた。すると、黒木からそのままでいいとアドバイスを受け、さらに自分的には橙山はアリと予想外の答えをもらう。
書誌情報
ワンナイト・モーニング 11巻 少年画報社〈YKコミックス〉
第7巻
(2022-06-27発行、 978-4785971571)
第8巻
(2022-10-24発行、 978-4785972455)
第9巻
(2023-06-26発行、 978-4785974176)
第10巻
(2023-12-11発行、 978-4785975500)
第11巻
(2024-04-22発行、 978-4785976378)