あらすじ
第1巻
時は大正7年。裕福な家庭に育った錦小路瑠璃は、女学校では親しい友達に恵まれ、幸せな日常生活を送っていた。そんなある日、瑠璃は誤って指にケガを負い、流血してしまう。するとそこに白鷺が現れ、無抵抗の瑠璃に襲い掛かる。瑠璃はなすがままに、白鷺から首筋を軽く嚙まれてしまうが、黒曜と名乗る男性が現れて瑠璃を救い出す。黒曜は瑠璃が吸血鬼の白鷺に血を吸われかかった事で「半死人(アンデッド)」になってしまったと語り、これからは自分と瑠璃の曾祖母の錦小路玻璃が残した屋敷でいっしょに住むように伝える。そして黒曜は、自身も白鷺と同じ吸血鬼である事を明かし、同時に玻璃との過去の約束により、瑠璃の事を守ると宣言する。これまでの生活が一変する出来事が起こったうえに、自身が人間ではなくなってしまった事実にショックを受ける瑠璃だったが、追い打ちをかけるように女学校の友達の花絵が白鷺の画策によって吸血鬼になり、瑠璃に襲い掛かる。(エピソード「第一話」。ほか、2エピソード収録)
第2巻
錦小路瑠璃の周辺では、全身の血を抜かれた死体が見つかる事件が多発していた。瑠璃はすぐに吸血鬼の仕業だと気づき、死体の傍から黒い羽根が見つかった事もあり、犯人は黒曜ではないかと疑い始める。もし黒曜が犯人ならば自分が止める必要があると考えた瑠璃は、黒曜が活動するであろう夜中に街を徘徊していた。しかし、瑠璃は街の悪漢どもに声をかけられ、連れ去られそうになる。そんな瑠璃を間一髪のところで白鷺が助け、瑠璃は以前よりも白鷺に対して嫌悪感を抱かなくなっている自分に戸惑う。(エピソード「第四話」。ほか、3エピソード収録)
第3巻
錦小路瑠璃は、これまでさまざまな苦難から守ってくれた黒曜に好意を抱き、初めての口づけをする。本来であれば喜びを感じるはずが、瑠璃はなぜか白鷺を強く求めているもう一人の自分に気づく。そんな中、瑠璃は両親から「女学校を卒業したあとは名門一族出身の男性を婿にとり、錦小路家を守って幸せな人生を歩んでほしい」と伝えられる。自分は何者なのか、そしてどう生きていけばいいのかわからなくなった瑠璃は、これまで真実を知る事が怖くて避けていた錦小路玻璃の日記を読む事を決意をする。そして瑠璃は、白鷺と生前の玻璃は愛しあっており、黒曜は凶暴な吸血鬼化してしまった白鷺を封印するために手を貸した人物だと知ってしまう。すると瑠璃の意識は、生まれていた時から眠っていた玻璃の人格に支配され、黒曜の前から行方をくらます。(エピソード「第九話」。ほか、3エピソード収録)
登場人物・キャラクター
錦小路 瑠璃 (にしきこうじ るり)
華族の血を引く裕福な「錦小路家」に生まれ育った女学生。学校からの帰宅途中にケガをして流血した事がきっかけで白鷺に血を吸われ、半死人(アンデッド)として生きる事になってしまう。その後も白鷲から命を狙われ続けるが、黒曜の助けもあり、難を逃れている。半死人になってからは曾祖母の錦小路玻璃が住んでいた屋敷で、黒曜と礼緒、飄と暮らすようになる。そして明確な理由もわからず、玻璃や黒曜、白鷲のあいだに起こった過去の因縁に巻き込まれていく。
黒曜 (こくよう)
黒髪の若い男性の姿をした吸血鬼。錦小路玻璃との約束で、錦小路瑠璃を白鷺から守っている。自身も吸血鬼ではあるが玻璃と約束をしており、人間の血を吸う事はない。目を合わせた相手を強い暗示にかける能力を持ち、周囲には自分は瑠璃のいとこという事にしてある。太陽の出ていない時間は黒い羽根を背中に生やし、空を飛ぶ能力を持つ。
白鷺 (しらさぎ)
錦小路瑠璃を狙う吸血鬼。金髪の若い男性の姿をしている。一度は黒曜と錦小路玻璃の力によって封印されたが、眠りから復活。その後すぐに瑠璃を見つけ、彼女の血を少量だけ吸って半死人(アンデッド)にしてしまう。瑠璃の事を「玻璃」と呼んでいる。太陽の出ていない時間は白い羽根を背中に生やし、空を飛ぶ能力を持つ。
錦小路 玻璃 (にしきこうじ はり)
錦小路瑠璃の曾祖母で故人。瑠璃とそっくりの外見をしている。25歳の若さで他界したため、瑠璃の存在は知らない。不思議な力を持っており、困った人がいるとお祓いのような真似をして助けていた。生前に黒曜、白鷺とかかわりがあった。
礼緒 (れお)
黒曜に雇われた使用人の若い男性。錦小路瑠璃の身の回りの世話をしている。ふつうの人間ではなく、猫の怪異で、飄とそっくりの外見をしている。瑠璃を異性として意識していないため、ややデリカシーに欠ける言動をする。過去に瑠璃とかかわりがあるようで、理由は不明ながら精一杯尽くしている。
飄 (ひょう)
黒曜に雇われた使用人の若い男性で、錦小路瑠璃の身の回りの世話をしている。ふつうの人間ではなく、猫の怪異。礼緒とそっくりの外見をしている。過去に瑠璃とかかわりがあるようで、理由は不明ながら精一杯尽くしている。
花絵 (はなえ)
錦小路瑠璃と同じ学校に通っていた女学生。ある日突然病が発症し、そのまま回復する事なくこの世を去った。「猫が死体をまたぐと、その亡骸は吸血鬼になる」という伝承と白鷺の画策により、吸血鬼化してしまう。しかし花絵本人の意思は僅かながら残っており、瑠璃と黒曜に対して自分を殺してほしいと訴えた。
竜児 (りゅうじ)
魚河岸で働く青年。幼い頃に翡翠で彫られた女神の像を海で拾い、以降お守りとして身につけている。しかし、海で泳いでいた時に運悪く紛失。その出来事が「磯女(いそおんな)」という、人の生き血を吸う怪異を呼び寄せるきっかけになる。
白ヶ崎 藤子 (しらがさき ふじこ)
錦小路瑠璃と同じ学校に通っている少女。瑠璃にとっては後輩にあたる。華奢で可憐な容姿をしており、学校中のマドンナ的存在。しかし恋愛対象は女性で、好きになった相手には積極的にアプローチをするが、相手が好意を寄せて来ると興味をなくしてしまう悪癖を持つ。瑠璃に好意を抱いて急接近したものの、実はすでに吸血鬼になっており、白鷺の支配下に置かれていた。