あらすじ
第1巻
初夏のある日、姉の赤兎の仕事を手伝うために風景写真を撮っていた青蛙は、路地の先に廃墟を見つける。廃墟の写真を撮っていた青蛙は、そこにいた一人の青年、木下闇に招かれて廃墟の中に入るが、会話している最中に木下闇が姿を消してしまう。木下闇の事が気になった青蛙はその後も廃墟を訪れるものの、再会する事はできなかった。そんな中、街を散策中に見かけた俳句の発表会で季語に触れ、季節を意識し始めた青蛙は、文字が見えなくなるほどの暗い影を作る神木の下で、木下闇と再会するのだった。(第1話「初夏」。ほか、3エピソード収録)
登場人物・キャラクター
青蛙 (せいあ)
双子の姉である赤兎の、仕事の手伝いをしている少年。15歳から18歳の3年間眠り続けて、最近ようやく外出できるまで回復した。今はリハビリを兼ねて赤兎の執筆の資料となるスケッチを描いたり、写真を撮ったりしている。小さい頃から感受性が強く、季節を感じた者のみが見る事ができる「季節の住人」と呼ばれる存在と接しているうちに、四季の移り変わりや季語を強く意識し始める。
赤兎 (あかえ)
青蛙の双子の姉。学生時代に作家デビューしており、高い人気を誇る。作家以外にも記者、モデル、占い師、探偵もやっていて、多忙の日々を送っている。双子ゆえに青蛙が体験した事や記憶が伝わりやすく、感受性の強い青蛙に執筆のための資料集めを任せている。
木下闇 (このしたやみ)
青蛙が廃墟で出会った男性。和服を着ていて穏やかに話す温和な人物だが、時々鋭い目つきになる。また、葉が茂った大きめの枝をつねに日傘のように持っている。正体は季節を感じた者のみが見る事ができる「季節の住人」と呼ばれる存在で、木下闇は初夏の季語「木下闇」が人の姿をした状態。青蛙と話して彼の感受性の強さに気づき、抽象的な言葉ながらさまざまな事をアドバイスする。
水無月尽 (みなづきじん)
青蛙が雨宿りしている時に出会った少女。明るく元気な性格をしていて、異常なまでに梅雨を毛嫌いしている。季語に詳しく、季語に興味のある青蛙にいろいろ教える。正体は季節を感じた者のみが見る事ができる「季節の住人」と呼ばれる存在で、水無月尽は晩夏の季語「水無月尽」が人の姿をした状態。梅雨を終わらせる季語としてふだんは6月30日に現れるが、青蛙が6月26日に梅雨の終わりを感じたため、4日早く現れた。
夏草 (なつくさ)
青蛙が小学校高学年の時に出会った少年。和服姿にウサギの耳の付いたお面をつけ、帯刀している。一人で遊ぶ青蛙に声を掛けて、いっしょにチャンバラごっこや虫取りなどをして遊んだ。少年ながら落ち着いた雰囲気と時代がかった物言いをし、古い事にも詳しい。正体は季節を感じた者のみが見る事ができる「季節の住人」と呼ばれる存在で、夏草は夏の季語「夏草」が人の姿をした状態。青蛙とは長いあいだ会っていなかったが、祭りが終わった会場で再会する。
玄帝 (げんてい)
青蛙を3年間眠らせていた存在。人間の骨に黒いロングコートを羽織った姿をしている。季節を感じた者のみが見る事ができる「季節の住人」で、玄帝は冬の季語「玄帝」が人の姿をした状態。冬こそが季節の王だと信じており、夏を一番感じる青蛙がいると夏の勢力が強くなると思って、青蛙を恐怖で支配して眠らせる。3年後に青蛙が目覚めると、赤兎の幻影を使って同じく恐怖で支配しようと企む。