三河物語

三河物語

戦国時代~江戸時代初期の武将で旗本の大久保彦左衛門忠教が、徳川氏の事績と大久保一族の功績を綴った「三河物語」をベースに安彦良和が描く歴史マンガ。講談や時代劇などで有名な一心太助を主人公に置き、独自の視点から彦左衛門の晩年と江戸幕府成立期の時代状況を描く。平成9年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した作品。

正式名称
三河物語
ふりがな
みかわものがたり
作者
ジャンル
その他歴史・時代
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概要・あらすじ

侍になることを夢見る太助は老中の大久保忠隣に仕えようと江戸に出てくるが、ひょんなことから忠隣の叔父で旗本の大久保彦左衛門忠教に召し抱えられる。彦左衛門は家中の者を集めて軍(いくさ)語りをするのを日課にしている偏屈な男性で出世ともほど遠い人物だったが、太助のことを気に入って可愛がり、太助もまた不器用だが気性の真っ直ぐな彦左衛門に好意を抱くようになっていく。

そんななか、大久保家に連なる大久保長安の一族縁者が粛清されるという事件が発生。大久保家の惣領である忠隣も謀反の疑いをかけられて改易となってしまう。

登場人物・キャラクター

太助 (たすけ)

本作『三河物語』の語り手を務める少年。三河の百姓の息子で、侍になりたいと願って単身江戸へとやって来た。戦で手柄を立てて出世するのが夢で、当初は老中で大久保家の惣領である大久保忠隣に仕官するつもりだったが、たまたま出会った大久保彦左衛門忠教に気に入られ、草履取りとして仕えることになる。講談や時代小説などの登場人物として知られる架空の人物、「一心太助」がモデル。

大久保彦左衛門忠教 (おおくぼひこざえもんただたか)

徳川家の古参の武将。短気で頑固な偏屈老人で世渡りが下手なため、徳川譜代の名門である大久保家の者でありながら、わずか二千石取りの旗本に甘んじている。武勇や忠勤を何よりも重んじることから謀臣の本多正信やその息子の本多正純に強い反感を抱いていて、甥で大久保家の惣領である大久保忠隣が取り潰された際には、激高のあまり正信らと一戦交えようとした。 同時に大久保一族をないがしろにする主君の徳川家康に失望を覚えるようになる。実在した人物、大久保忠教がモデル。

大久保 忠隣 (おおくぼ ただちか)

徳川家譜代の中でも屈指の名門である大久保家の惣領で小田原城城主。大久保彦左衛門忠教は叔父にあたるが、忠隣のほうが7歳年上である。筆頭老中として幕府内で重きをなしていたが、政敵である本多正信の讒言によって徳川家康に謀反の疑いをかけられ改易処分となった。実在した人物、大久保忠隣がモデル。

徳川 家康 (とくがわ いえやす)

江戸幕府の創始者。天下人となった英雄であるが、年のせいか耄碌し始めていて、大久保忠隣を改易処分としながら大坂の陣の時には、そのことを忘れつつあった。夏の陣で真田幸村の軍に攻め入られた際、本陣の旗が倒れたかの詮議で、旗は立っていたと主張する大久保彦左衛門忠教と対立する。実在した人物、徳川家康がモデル。

本多 正信 (ほんだ まさのぶ)

徳川家康の側近。三河の一向一揆の際に家康のもとを離れるが、のちに帰参。江戸総奉行などを務めた。切れ者の政治家で謀臣として息子の本多正純ともども家康に重宝されるが、武勇を第一とする大久保彦左衛門忠教には蛇蝎のごとく嫌われている。実在した人物、本多正信がモデル。

松前屋 (まつまえや)

浅草の蔵前で米穀商をしている商人。津軽藩の家老の息子だったが、侍の世界や流儀に嫌気がさして故郷を捨てて江戸で町人となった。元武士だけあって腕の立つ男性で、他家の武士といさかいを起こして、斬られそうになっていた太助を助ける。実在した人物、松前屋五郎兵衛がモデル。

本多 正純 (ほんだ ますずみ)

本多正信の息子。父親と同じく政治的駆け引きに長けており、大坂冬の陣で豊臣方との和睦をとりまとめるなど徳川家康の側近として活躍するが、家康の死後、後を継いだ「徳川秀忠」に謀反の疑いをかけられ改易処分となった。実在した人物、本多正純がモデル。

真田 幸村 (さなだ ゆきむら)

2度の大坂の陣で奮戦し、徳川軍を苦しめた豊臣方の武将。大久保彦左衛門忠教は真田幸村の父親の「真田昌幸」が徳川軍に勝利した上田城攻めに徳川の武将として参加しており、かねてより昌幸や幸村のことを「日本一の武将」とほめたたえていた。実在した人物、真田幸村がモデル。

小栗 又一郎 (おぐり またいちろう)

徳川家の旗本。大坂夏の陣において徳川の陣の旗が倒れたかどうかの問題が起きた際、徳川家康に盾突いた大久保彦左衛門忠教のもとを訪問。なぜ彦左衛門が旗は立っていたと主張するのか、その真意を聞き出す。実在した人物、小栗忠政がモデル。

大久保 長安 (おおくぼ ながやす)

甲斐のあぶれ者だったが、大久保忠隣に見込まれて大久保の姓を与えられた。徳川家康に登用され金山開発などで辣腕を振るい、その資産を武器に絶大な影響力を持つに至るが死後に不正な蓄財が発覚。大久保忠隣失脚のきっかけとなった。実在した人物、大久保長安がモデル。

三太夫 (さんだゆう)

大久保彦左衛門忠教に仕える武士。主人とは正反対の温厚な人物で、大久保忠隣が改易となった時は激高する彦左衛門を必死でなだめた。大久保一族が落ち目となり、彦左衛門の屋敷から次々と人が去った後も真摯に彼に仕え続ける。

保坂 金右衛門 (ほさか きんえもん)

徳川家の家臣。大坂夏の陣で庄田三太夫と共に徳川家康の陣の御旗奉行を務めるが、真田幸村の軍勢が突入してきた時に家康の馬印を見失ってしまい、大久保彦左衛門忠教に一喝されて右往左往する。実在した人物、保坂金右衛門がモデル。

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