乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ

乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ

1420年、少女シャールカは十字軍が村人を皆殺しにしたのを目撃。生き残ったシャールカは戦略家のヤン・ジシュカに拾われ、「ピーシュチャラ」(銃の原型)を与えられる。フス戦争を題材にした作品で、実在した天才軍師ヤン・ジシュカの活躍を、オリジナルキャラであるシャールカの目で追うという形式で描かれている。当時のフス戦争の様子や中世ヨーロッパのうんちくが、マンガの後に添えられている。

正式名称
乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ
ふりがな
おとめせんそう でぃーゔちー ゔぁーるか
作者
ジャンル
その他歴史・時代
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概要・あらすじ

1420年のボヘミアでは、本来の目的を失った十字軍が殺戮を繰り返していた。少女シャールカが暮らす村も皆殺しにされ、強姦されつくしていた。一人生き残ったシャールカは戦略家のヤン・ジシュカに拾われ、女子供でも使える軽量の武器「ピーシュチャラ」(銃の原型)を与えられた。当時は聖書に基づいた平等を説くフス派と、教会の権威を重んじるカトリック派が対立し、「フス戦争」を起こしていた。

フス派の中でも少ないヤン・ジシュカの軍隊は、銃と地形を活かした独自の戦術で、騎士の大群をなぎ倒し、戦局をひっくり返していく。シャールカはその戦いに身を投じ、勝利のために健気に働き続ける。順風満帆に勝ち進むフス派。

ところがカトリック派の暗殺者によってヤン・ジシュカは狙撃され、同時にプラハの街では黒死病が流行。フス派は混迷の極みに至る。復帰後目が見えなくなりつつあるヤン・ジシュカと共に、さらに戦いの最前線にシャールカは進む。人が死ぬのを嫌う彼女は、少しでも生命を救おうとし、苦しみ続ける。

登場人物・キャラクター

シャールカ

金髪ロングヘアの幼い少女。心根が優しく、誰も殺したくない、死なせたくないと常に思っているが、戦乱の中でそれが叶わないことを知り、苦しんでいる。住んでいたボヘミアの村にやってきた十字軍に、家族と村人を皆殺しにされ、自分も強姦された後、さまよっていた。ヤン・ジシュカに拾われてから、「ピーシュチャラ(銃の原型)」を渡され、フス派の兵士として戦うことになる。 士気を高めるために結成された、少女たちの聖歌隊「ターボル天使隊」に参加、他の少女たちと交流を深めていく。戦いの最中、炎に囲まれ死にかけた時に、カトリック派のドイツ騎士、ヴィルヘルム・フォン・シュバルツに救出されたことがある。 ヤン・ジシュカには強い信頼を抱きながら、彼を守るための行動を取るが、自分の義にそぐわない時は強く言い返す気丈さを持っている。

ヤン・ジシュカ (やんじしゅか)

フス派の天才戦術家。左目を眼帯で覆っている。少人数の素人集団で、騎士の軍勢を倒していく戦術を組み立てることから、「騎士殺しのジシュカ」と呼ばれている。自らの戦いのためなら残忍な行為を顧みない性格だが、あくまでも軍のためを考え行動する冷静な知将。銃器のなかった時代に、ピストルの原型になる「ピーシュチャラ」を、女子供でも戦場で戦える軽い武器として開発、大量生産することで戦局をひっくり返していく。 家族を亡くし、強姦されて行くあてなくさまよっていたシャールカを拾い、「ピーシュチャラを操る少女」の代表として育て上げる。シャールカには信頼されているが、彼女の義に背く行動を取った時は激しく非難されることもある。 モデルは同時代の実在人物ヤン・ジシュカ。

カレル

フス派の戦術家ヤン・ジシュカのもとで、「ピーシュチャラ」(銃の原型)を量産していた少年。ヤン・ジシュカに拾われたシャールカの手助けをし、彼女を励まし続けた。後にプロポーズをするも、十字軍とともに爆死する。

ヴラスタ

戦術家ヤン・ジシュカの部下。セミロングで、右目に傷がある女性。巨大な体躯の騎士たちに真っ向から挑み、ひけを取らずに剣で戦う女傑。軍を率いて最前線で戦闘し、ヤン・ジシュカの戦略に誘導していく。またヤン・ジシュカの用心棒として、傍らで彼を守る。

ターニャ

シャールカの世話役を頼まれ、後に友人となった少女。農家の娘で、一家が全財産を売り、家を焼き払って、フス派の集まる町に引っ越してきた。その際、火が髪に燃え移ってしまったため、少年のようなショートカットにしている。その時の恐怖がトラウマになっており、戦争の時、火に囲まれて逃げることができず、焼死。

ガブリエラ

シャールカの世話役を頼まれ、後に友人となった少女。髪の毛を後ろで三つ編みにしている。元修道女で、ヤン・ジシュカに殺されたミクラーシュを敬愛していた。聖書の教えに造詣が深い才女。シャールカと行動をともにし続け、少女たちの聖歌隊「ターボル天使隊」に参加する。

ミクラーシュ

フス派の人々を集め、山に町を作って暮らしている僧侶。元は傭兵で、ヤン・ジシュカとはかつての戦友。人々の心を救うために尽力している。戦争について悩むシャールカたちに対し、争いのない世が訪れるように祈り続ける。ガブリエラなど多くの人に敬愛されていた。 フス派の人々の信仰心を利用して戦術に使おうとしたヤン・ジシュカによって刺され、死亡。シャールカは彼に、ヤン・ジシュカを頼むと言われ、その言葉に従って行動し続けている。

ジギスムント

神聖ローマ帝国の皇帝(兼ハンガリー王)。フス派の指導者ヤン・フスを火炙りで処刑した。これがきっかけでフス戦争が勃発。ヤン・フスが殺されたことをヤン・ジシュカは激しく恨んでいる。

ヴィルヘルム・フォン・シュバルツ (ゔぃるへるむふぉんしゅばるつ)

カトリック派のドイツ騎士団員。ジギスムントに仕え、フス派との決戦の地プラハを目指す。黒塗りの甲冑をまとい、「黒騎士」と呼ばれた。皇帝ジギスムントの后、バルバラに一目惚れし、忠誠を誓った。戦場で炎に囲まれたシャールカを助けだした。

サーラ

10歳。元従軍娼婦の少女。ロングヘアにリボンをしている。普段からおとなしく、笑顔を見せない。シャールカと共に「ターボル天使隊」に参加して、聖歌を歌う。母親は兵士だった父親に痴話喧嘩で殺されており、義理の姉に養われていた。かつて娼婦として幼くして客を取っていたことを「ターボル天使隊」の少女たちに噂されることがあり、コンプレックスを抱いている。

ラウラ

金髪長髪の少女。カトリック派に捕らえられ、陵辱を受けてきた恨みから、ヤン・ジシュカのもとで戦うようになる。カトリック派への復讐を強く望んでおり、ピーシュチャラ(銃の原型)を手にして騎士たちを殺せるようになったことを、ヤン・ジシュカに感謝している。

イルムガルト

前髪を編みこんでいる少女。プラハでシャールカたちと合流して、「ターボル天使隊」に参加する。ヤン・ジシュカの隠れ家が騎士にバレたことで、内通者容疑をかけられ、拷問される。実はプラハの騎士団付属病院の院長、グスタフの娘で、黒死病を兵器として開発しているのを知りつつ、彼に喜んでもらうために忍び込んだスパイ。 死体と糞尿があふれる井戸に入り、街中に黒死病の病原菌をばらまく。

ヤン・イスクラ (やんいすくら)

「閃光」の二つ名を持つ。ブランダ・ダ・カスティリオーネ枢機卿に雇われた殺し屋。ナイフを使うことに長けており、静かに近寄って喉元を十字に切り裂いて即死させる。弓矢にも長けており、遠距離からヤン・ジシュカを狙撃する。ヤン・ジシュカの側近の女傑ヴラスタと互角に戦う。

ヨハン・フニャディ (よはんふにゃでぃ)

ワラキアの貴族の子で、皇帝ジギスムントの小姓を務める少年。カトリック派に捕らわれていたシャールカを助けだした。スパイとして働きながらも父親に厳しく諌められる、イルムガルトを励ます。か弱い女の子の味方を名乗っている。

その他キーワード

ピーシュチャラ

『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ』に出てくる武器。現在の銃の原型となる武器。形状から「笛」の意味の「ピーシュチャラ」と呼ばれる。大砲を出来る限り小さくする、というコンセプトで、木の棒に鉄の管を組み合わせ、火薬を詰めた後、火の着いた縄を差し込むことで弾を打ち出す。長距離射撃はできない。突進してくる騎士を、近距離で正確に射抜くことができる。 重い剣を振り回せない女子供が使える上に、大量生産が可能なため、ヤン・ジシュカがこれを採用して騎士たちであふれる戦場の戦局をひっくり返していった。身体能力にすぐれてはいない少女シャールカも訓練で使いこなし、屈強な騎士相手に戦えるようになった。

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