乙嫁語り

乙嫁語り

19世紀後半の中央アジアが舞台。衣食住、しきたり、民族間の争いなど、広大な自然の中で暮らす人々の生活や風俗を、見目麗しい女性達の嫁入りにまつわる話を通して描いた作品。2014年のマンガ大賞受賞作品。タイトルの「乙嫁」とは、古語で「若いお嫁さん」「美しいお嫁さん」という意味。

正式名称
乙嫁語り
ふりがな
おとよめがたり
作者
ジャンル
恋愛
レーベル
青騎士コミックス(KADOKAWA) / ハルタコミックス(KADOKAWA)
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あらすじ

第1の乙嫁・アミル(単行本第1巻~2巻)

時は19世紀後半。中央アジアのカスピ海周辺のとある町で、一組の歳の差夫婦が誕生した。弱冠12歳の夫、カルルク・エイホンと、20歳の妻、アミル・ハルガル。この土地、この時代の人々からすれば、20歳での結婚というのは相当な晩婚で、アミルはいわゆる「行き遅れの嫁」であった。8歳の差もあってか、アミルもカルルクも、お互いに夫婦としての実感を持てずにいたが、エイホン家での穏やかな日々を送るうちに、徐々に夫婦らしい間柄となっていく。

そんなある日、アミルの兄・アゼルが妹を連れ戻しにやってくる。ハルガル族から、一帯の有力者であるヌマジの氏族に嫁がせた娘が死んでしまったため、姻戚関係を継続させようと、まだ子を生(な)していないアミルに目をつけたのであった。だが、アミルを家族の一員だと受け入れていたエイホン一家は猛反対。アミルとカルルクが外出していたこともあって、その場は事なきを得たのであった。

しかし、その後もまたハルガルの一族は、アミルを取り返すためにカルルクたちの町を訪れる。実力行使に出ようとした彼らに町の住人たちは憤り、一致団結してハルガルたちを撃退したのだった。その結果、アミルは実家と縁を切ることになってしまう。しかし、騒動のなかで自分を決死の覚悟で守ったカルルクの姿を見て、アミルはエイホン家の嫁であることを自覚、二人の仲はいっそう深まっていく。

第2の乙嫁・タラス(単行本第3巻)

ハルガル家に居候をしていたイギリス人学者、ヘンリー・スミスは、当初の目的地であったアンカラへと出立。カラザの町で案内人と待ち合わせる予定だったが、案内人が現れず、その上うっかり馬と荷物一式を盗まれてしまう。スミスが馬を探し歩いていると、同じく大切な白馬を盗まれたという女性、タラスと出会う。二人は市場の長の力を借り、無事に馬と荷物を取り返すことに成功。タラスはお礼にと、スミスを自分の家に招待する。

タラスは5人の男と結婚していたが、その全員に先立たれ、義理の母と二人で暮らしていた。スミスは翌日去ろうとするが、息子を失って意気消沈していた義理の母を元気づけるため、とタラスに請われ、しばらく逗留することに。

共に過ごすうちに、次第に心を通わせていくスミスとタラスだったが、そこにタラスの義伯父が現れ、彼女を息子の後妻によこせと言い渡す。義母は働き手がほしいだけだと強く反対し、スミスが彼女と結婚すると宣言。老い先短い義母はタラスの行く末を案じ、スミスに彼女を連れて行って欲しいと懇願する。それに応じず、カラザの町に戻ったスミスだが、彼を疎ましく思った義伯父の密告により、諜報員だと見なされて捕らえてしまう。

その後に現れた案内人、アリのおかげで無事に釈放されたスミスは、彼を案じて駆けつけたタラスと再会。実はタラスはスミスに惹かれており、彼と結ばれたいという想いを秘めていたのだった。スミスはそれに応え、旅が終わったら必ず戻ると約束し、結納品として金時計を手渡した。そして義理の母のもとへ戻った二人だが、状況は一変。義母と義伯父が婚約し、義伯父がタラスに新しい男を見つける、ということになっていたのだった。スミスはタラスと引き離され、取りつくしまもないまま追い返されてしまう。納得のいかないスミスであったが、互いの文化の違いであることを理解。金時計を砂漠に放り捨て、目的地へと旅立っていくのだった。

第3の乙嫁・ライラとレイリ(単行本第4巻~5巻)

アラル海沿岸で、スミスはアンカラへの旅の途中でうたた寝をしていたところ、うっかり湖に転落してしまう。溺れかけたスミスを助けたのは、双子の少女、ライラとレイリ。二人に招かれたスミスは、自分を医者だと思い込んだ人々からひっきりなしに訪問を受け、やむなくしばらく漁村のムナク村に滞在することになる。

結婚に憧れるライラとレイリは、相手を探してさまざまな作戦を行うが、おてんばが過ぎるあまり失敗ばかり。だが、やがて幼馴染のサマーンとファルサーミの兄弟と結婚することが決まる。二人は過酷な花嫁修業を経て、家族や周囲の人々の祝福のなか、盛大な結婚式を挙げるのだった。

ハルガル一族の侵攻(単行本第6巻)

ヌマジの氏族に牧草地を追われたハルガル一族は、自らが生き残るためにエイホン一家の暮らす町を奪うことを決め、遠縁のバダンと手を組む。しかし、アゼルはロシアと通じているバダンを嫌い、作戦に反対。アミルにだけ襲撃があることを知らせるが、彼女は夫のことを思い、残って戦うことを選択する。

そして襲撃の日、ロシア製の強力な兵器を持つバダンの力を背に押し進むハルガル一族だったが、戦いの最中、突如としてバダンが彼らを裏切る。バダンは初めから協力するつもりはなく、ハルガルもろとも町を奪い取るつもりだったのだ。

バダンを信じていなかったアゼルは一族を率いて脱出を促し、単身でバダンの長の首を取った。そして戦いの末にアゼルは捕まり、処刑されそうになってしまう。しかし、アゼルがカルルクや町の人々を守っていたことを、一部始終見ていた女性たちが証言したことにより、彼らは命だけは助けられ、辺境へと放逐されたのであった。

第4の乙嫁・アニス(単行本第7巻)

ペルシアに到着したスミスたちは、町の富豪の客人となる。富豪の妻であるアニスは、何不自由なく優雅に暮らしていたが、心のどこかに寂しさを抱えていた。そのことを従者のマーフに相談したアニスは、女性同士が一生の「姉妹妻」を持つべきだと勧められ、女性たちが集う浴場へと誘われるのだった。そこでアニスは、猫を思わせる美しい女性、シーリーンと出会う。浴場での会話を重ねるうちに二人は友人となり、やがてアニスはシーリーンに姉妹妻となることを申し入れる。彼女もそれを受け入れ、二人は浴場で姉妹妻の儀式を執り行うことになる。しかしその時、シーリーンの夫が急死。もともとあまり裕福ではなかったうえに、老いた義理の父母と幼い息子を抱えたシーリーンは途方に暮れてしまう。アニスはシーリーンを助けるため、彼女に夫の二人目の妻となるように持ちかける。夫の承諾も得て、シーリーンは第二夫人として、家族とともにアニスの家に迎え入れられたのだった。

第5の乙嫁・パリヤ(単行本第8巻~9巻)

アミルの友人、パリヤの一家はハルガルの襲撃によって家を壊され、エイホン家に身を寄せていた。率直すぎる性格が災いして、なかなか結婚相手に恵まれていなかったパリヤだが、偶然出会った少年、ウマルとの縁談はまとまりそうであった。しかし、嫁入り道具の布などもすべて失われてしまったため、結婚式は先延ばしとなってしまう。そのうえパリヤはウマルを目の前にすると緊張して、素っ気ない態度を取ってしまってばかり。そんな自分を変えるため、パリヤは近所でも気立てがよいと評判のカモーラを見習おうと決意。はじめは素直になれない性格のせいで、彼女からも嫌われていると勘違いされてしまうパリヤだが、アミルのとりなしもあって誤解は解け、二人は友人同士になったのだった。

ある日パリヤはお使いを頼まれ、ウマルと二人きりで町の外へ出ることになる。何事もなく用事は終えたが、帰り道で二人は行き倒れになった女性を介抱する。そのお礼に家に招かれた二人は、日も暮れてきたこともあって宿を借りることに。その帰り、パリヤは意を決して、あなたと結婚したいから布支度が終わるまで待っていて欲しいと告白。ウマルもそれに応え、二人は結婚の約束を交わすのだった。

登場人物・キャラクター

アミル・ハルガル

目元のはっきりした20歳の女性。遊牧民のハルガル族からエイホン家へと嫁ぎ、8歳年下の少年、カルルク・エイホンの妻となる。20歳という年齢での結婚は、この土地、この時代の人々からすれば相当な晩婚で、アミルはいわゆる「行き遅れの嫁」であった。遊牧民の出ということもあり、弓馬の扱いに非常に長けており、馬を走らせながら、すばしっこく動き回るウサギを射止めるほど。当初、その年齢差のためか、カルルクに対しては、異性というより年長者として振る舞うことが多かったが、エイホン家とハルガル族の抗争をきっかけに、男性としてのカルルクに惹かれるようになる。明るくマイペースで、どこか摑みどころのない性格をしているが、身内が風邪を引いたり怪我をすると、異常なほどにうろたえてしまう。好物はザクロ。

カルルク・エイホン

短髪の少年で、エイホン家の末っ子。弱冠12歳にして、8歳年上のアミル・ハルガルを嫁にもらう。年齢相応に幼さが残る顔とは裏腹に、柔和で落ち着いた性格をしている。時には、敵の襲撃に怯えるアミルに優しい言葉をかけたり、敵を恐れず立ち向かっていく勇敢さを見せたりと、芯の強さを見せることがある。遊牧民社会では、末子が跡を継ぐのが慣わしであるため、エイホン家の次期家長である。まだまだ男として、そして夫として未熟な自分に不満を抱いており、アミルにもっと男として頼ってほしいと思っている。

ヘンリー・スミス

眼鏡をかけたイギリス人の男性。中央アジアの人々の暮らし、風俗に関心があり、単身で旅をしている。当初はエイホン家に居候していたが、後にアンカラへと旅立つ。その最中、街外れの草原で義母と2人暮らしをしている未亡人、タラスと出会い、彼女の家にしばらく滞在することになる。タラスの義母に、タラスとの結婚を頼み込まれ、初めはその気がなかったが、タラスの本当の気持ちを知って婚姻の約束をする。しかし、義母と再婚した義伯父の手によって、タラスと引き剥がされてしまったため、その恋が実ることはなかった。ムナク村では、エイホン家で居候していた際に身につけた医学知識と、自らの経験をもとにして、医者をすることになる。

タラス

第2の乙嫁。ヘンリー・スミスがアンカラへ向かう途中に出会った女性。子供を産まないまま5人の夫に先立たれ、義父も亡くなってしまったため、現在は街から離れた草原で義母と二人暮らしをしている。街で偶然知り合ったスミスを自分の家へと招き、よければこのまま滞在しないかと誘った。非常に穏やかで慎ましやかな性格だが、誰もいないところでは山羊と戯れるといった無邪気さも見せ、それをスミスに目撃されたときは、恥ずかしさのあまり逃げ出してしまった。スミスにタラスとの結婚を懇願する義母の強引さを申し訳なく思いながらも、出会った当初からスミスの人柄に惹かれていた。最初の夫の愛馬であった白馬、チュバルを大切にしている。

ライラとレイリ

第3の乙嫁。褐色の肌の女の子。双子の姉妹で、玉の輿を狙っているおてんば娘たち。サマーンとファルサーミの兄弟と結婚することになるが、どちらも区別が付かないため、2組になって分かれて話したところ、ライラはサマーンを、レイリはファルサーミを気に入り、結婚相手として選ぶ。今までほとんどの時間を二人一緒に過ごしてきたので、一人きりになることがほとんどなかった。そのため、離れた場所にいても、ついつい癖で互いの名を呼んでしまう。家事全般が苦手で、結婚直前になって母親のミナーから短期集中で花嫁修業を受ける。

アニス

第4の乙嫁。流れるような長い黒髪を持った、すっきりした顔立ちの女性。華奢な体つきをしており、女性らしくない自分の身体にコンプレックスを抱いている。ペルシアにある豪邸に住んでおり、家族は夫と息子の二人。それまでは知り合いも少なく、積極的に社交するようなことはなかったが、使用人のマーフとの会話をきっかけに、姉妹妻を持ちたいと思うようになる。マーフの勧めにより公衆浴場へと足を運び、シーリーンに出会って徐々に距離を縮めていく。

アクンベク

カルルク・エイホンの父。太い眉毛にあごひげを蓄えた、威厳のある顔つきの男性。家長らしく非常にどっしりと落ち着いた物腰で話す。時には、カルルクに夫としてのあり方や振る舞い方をアドバイスすることもある。

サニラ

カルルク・エイホンの母。穏やかな立ち振る舞いの女性。女性らしく丁寧な言葉遣いで話す。一歩引いた視点でカルルクとアミル・ハルガルの仲を見守っている。

バルキルシュ

カルルク・エイホンの祖母。高齢ながらも、エイホン家の中で最も威厳がある女傑。もとはハルガル族の出身のため、ベルクワトとは遠い親戚である。弓の扱いに長けており、ハルガル族との抗争の際には自ら弓を持ち、敗走するベルクワトにとどめを刺した。また、山羊に乗せれば右に出るものはおらず、馬が上れないような険しい岩山を軽々と登ることが出来る。

セイレケ

カルルク・エイホンの姉で、ユスフの妻。4人の子供がいる。毅然とした態度で子供たちを叱りつけるが、その裏で子供たちを甘やかしてしまう部分も多い。怒るときは厳しくなりすぎてしまい、思わぬ事態には必要以上に狼狽(うろた)えてしまうことも。

ティレケ

セイレケとユスフの娘。三つ編みが特徴。長女として弟達の面倒を良く見ている。幼いながらも手先が器用で刺繍も得意だが、鷹好きが高じて鷹の模様の刺繍ばかりをしていた。だが、エイホン家に代々伝わる刺繍の鮮やかさに魅了され、他の刺繍にも興味を示すようになる。

ロステム

セイレケとユスフの息子で三男。丸刈り頭とまん丸な目が特徴。セイレケに任せられた掃除をサボっては、近所の木彫り職人の老人のところへ遊びにいっている。

ベルクワト

アミル・ハルガルの父であり、ハルガル族の族長。アミルの姉妹を有力地主であるヌマジに嫁がせ、結婚には遅い年齢となったアミルを、山向こうのエイホン家へと嫁がせる。しかし、ヌマジに嫁がせた娘が亡くなり、ヌマジとの縁が切れそうになったため、アミルの結婚を一方的に破棄して連れ戻そうとする。後にバダン族と手を組み、エイホン家が住む街を襲撃するが、バダン族の裏切りにあって計画は失敗。自身もバルキルシュの矢によって絶命する。

アゼル

アミル・ハルガルの兄。眉目秀麗な青年。生真面目な性格で、ジョルクの冗談もなかなか通じない。父の命に従い、アミルを連れ戻そうとエイホン家にやってくるが、自身はアミルの結婚を力ずくで取り消すことを望んでいないようである。バダンたちを信用しておらず、アミルたちの町を襲撃した際も、いち早く裏切りに気づき、長であるオル=タムスを殺害した。その後捕縛される。しかし、戦いの中でアミルや町の人々を助けていたため、命だけは助けられ、国境近くへと放逐されて一族の長となる。

ジョルク

アゼルの従兄弟。アミル・ハルガルをハルガル族へと連れ戻すためにアゼルと共に行動している。アゼルと同じく、アミルの結婚を力ずくで取り消すことには反対している模様である。飄々とした性格で、アゼルの生真面目さに時々不満を漏らすこともある。

オル=タムス

ハルガル族と遠縁のバダン族の族長。エイホン家のある街を襲撃するためにハルガル族と手を組む。しかし乱戦となったところでハルガル族を裏切り、街の住人共々皆殺しにしようと画策した。ロシア製の武器を持っており、実はロシアに寝返ったのではないかと噂されていたが、ベルクワトは聞く耳を持たなかった。

タラスの義母 (たらすのぎぼ)

街から離れた草原で、義娘タラスと二人暮らしをしている女性。息子を全員失い、夫にも先立たれてしまった。自分と二人きりで寂しく過ごすタラスに申し訳なく思っている。偶然家に立ち寄ったヘンリー・スミスに、タラスと結婚してくれないかと懇願する。

タラスの義伯父 (たらすのおじ)

禿頭で、白いヒゲを生やした老齢の男性。結納金なしで結婚できるという理由だけで、息子の後妻としてタラスを嫁がせるよう要求するが、タラスの義母にきっぱりと断られている。ヘンリー・スミスとタラスが親密になるのを良く思っていないようである。

アリ

精悍な顔つきをした青年。自分の結婚用の結納金を稼ぐために、アンカラまでの案内役としてヘンリー・スミスに同伴する。世渡り上手で、損得勘定で動くことが多い。しかし、食べ物の話題に関しては目を輝かせ、ご馳走を食べるためならば、滞在期間を数日延ばすことさえ厭わない。

ミナー

ライラとレイリの母親。おてんばなライラとレイリに手を焼いている。結婚を間近に控え、身の回りの家事もろくに出来ない二人が、一人前の妻となれるよう、短期集中で花嫁修業を施す。言うことを聞かない娘たちにはいつも厳しい態度で接しているが、二人との別れが近づくと、涙ながらに抱きしめて、愛しい娘たちへの想いを口にした。

サマーンとファルサーミ

褐色の肌の少年たち。双子の兄弟。ライラとレイリの幼馴染。父親同士の話し合いの結果、ライラとレイリのどちらかと結婚することになる。その時まで、彼女ら二人の違いを意識したことはなかったため、どちらと結婚しても良いと思っていた。

シーリーン

グラマラスな女性。姉妹妻の相手を探しに公衆浴場を訪れたアニスが出会った。物静かな性格で、表情の変化に乏しいが、無愛想というわけではない。見た目に似合わず健啖家で、皿いっぱいに盛られた肉をペロリと平らげてしまうほどである。染物屋の夫がいるが、稼ぎがよくないため、貧乏暮らしをしている。雨の日には公衆浴場に行くという約束を、アニスと交わす。アニスと姉妹妻の儀式を交わした日に夫を失ってしまい、幼い息子と老いた義父母を抱えることになってしまう。その後アニスに説得され、彼女の夫の第2夫人となる。

アニスの夫 (あにすのおっと)

アニスの夫。真面目で誠実な男性で、妻を心の底から大事にしている。豪邸に住んでおり、非常に裕福な暮らしをしている。当時の一夫多妻制のペルシアでは、平等に接することが出来れば4人まで妻を持つことが出来るが、アニスが嫌がると思い、他に妻を持っていなかった。身寄りのいなくなったシーリーンを2人目の妻にしてくれないか、というアニスの頼みを受け入れてしまうほど、寛大な心の持ち主である。

パリヤ

第5の乙嫁。エイホン家の近所に暮らす少女。嫁いできたアミル・ハルガルの初めての友人となった。性根は優しいが、物言いが率直なうえに人付き合いが苦手で、無愛想な態度をとりがちなため、近所の評判はあまりよくない。そのため、結婚相手探しに難航していたが、カラザの町で出会った少年、ウマルには気に入られ、縁談がまとまりかけていた。 しかし、ハルガル族の襲撃によって家を壊され、嫁入り道具も失ってしまったため延期となってしまう。ウマルに対して好意を持っているが、会うたびに緊張のあまり、つっけんどんな態度をとってしまっている。パンを焼くことが得意だが、刺繡は大の苦手。

マハトベク

カルルク・エイホンの祖父。穏やかな性格で、カルルクやアミル・ハルガルの相談相手となることも多い。

ユスフ

カルルク・エイホンの義兄で、セイレケの夫。しっかりとした性格で、家族を守るという気持ちが強い。

バイマト

アゼルの従兄弟。アゼル、ジョルクと行動を共にしている。物静かで穏やかな性格で、周囲からの信頼も厚い。

マーフ

アニスの家に仕える女性。どこか物足りない日々を送るアニスに対し、姉妹妻を作ることを提案し、彼女を公衆浴場へと誘った。

ウマル

パリヤの縁談相手の少年。パリヤとはカラザの町で出会った。病弱だった母を、幼いころに亡くしているためか、パリヤのはっきりして物怖じしない性格を好いている。以前、父が隊商宿を営んでいたため、読み書きやソロバンを得意としている。

カモーラ

パリヤの近所に住む少女。気立ての良い性格で、町内での評判も随一。パリヤは彼女の振る舞いを参考にしようと思い、後を付けて覗き見していた。そのため、パリヤがカモーラを妬んで嫌がらせをしていると噂されてしまう。その後、アミル・ハルガルが間を取り持ったことで誤解は解け、友人となった。

集団・組織

エイホン家

カスピ海周辺のとある街に住む一家。元々は遊牧民であったが、何代か前に街に定住するようになった。ハルガル族からアミル・ハルガルを嫁にもらうが、ハルガル族が一方的に結婚を取り消そうと武力行使に出たため、ハルガル族との縁を切る。

ヌマジ

広大な牧草地を持つ有力者の地主たち。血縁となった一族には富が分配され、姻戚関係にあるかぎり、ハルガル族等の遊牧民は非常に大きな恩恵を受けることになる。しかし、女への扱いが悪く、ハルガル族がヌマジへ嫁がせたアルテイが死んだのは、彼らに蹴られて骨を折ったからという噂も立っている。

ハルガル族 (はるがるぞく)

アミル・ハルガルの実家。夏だけ移動をし、冬は決まった冬営地で暮らすといった移牧タイプの遊牧民。ヌマジに嫁がせた娘が亡くなり、最後の頼みの綱であるアミルの奪還も叶わなかったため、ヌマジとの姻戚関係がなくなって土地を追われることになった。

その他キーワード

姉妹妻 (しまいづま)

結婚して子供のいる女性同士が、互いに生涯の親友であることを誓い合うことにより成立する関係。姉妹妻はお互いにとって唯一無二の存在であり、姉妹妻よりも仲の良い友人を作ってはいけない。お互いの心の本当の理解者となり、嬉しいことや悲しいこと、悩み事をすべて打ち明けられる仲となる。姉妹妻となるには、儀式を行う必要がある。

書誌情報

乙嫁語り<ワイド版> 14巻 KADOKAWA〈青騎士コミックス〉

第1巻

(2021-08-20発行、 978-4047365827)

第2巻

(2021-09-18発行、 978-4047365834)

第3巻

(2021-09-18発行、 978-4047365841)

第4巻

(2021-10-20発行、 978-4047365858)

第5巻

(2021-11-20発行、 978-4047365865)

第6巻

(2021-12-20発行、 978-4047365872)

第7巻

(2022-01-20発行、 978-4047365889)

第8巻

(2022-02-19発行、 978-4047365896)

第9巻

(2022-03-19発行、 978-4047368316)

第10巻

(2022-04-20発行、 978-4047368323)

第11巻

(2022-06-20発行、 978-4047368330)

第12巻

(2022-08-20発行、 978-4047368347)

第13巻

(2022-10-20発行、 978-4047368354)

第14巻

(2022-12-20発行、 978-4047373341)

乙嫁語り 11巻 KADOKAWA〈ハルタコミックス〉

第1巻

(2009-10-15発行、 978-4047260764)

第11巻

(2018-12-15発行、 978-4047353435)

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