あらすじ
第1巻
ある日、寂れた白旗商店通りの近くにある横断歩道で、誰かに言われたわけでもなく一人の少女が横断する歩行者のために交通整理を始めた。少女は24時間そこで交通整理を続けていたものの、名前がわからなかったために商店街のアユミワタリから「信号さん」というあだ名が付けられる。その後、信号さんの正体がロボットだと判明するが、信号さんや周囲の人々は、信号さんの誘導でこれまでと変わらず横断歩道を渡るのだった。(Case:1「そこにいる」。ほか、7エピソード収録)
登場人物・キャラクター
信号さん (しんごうさん)
白旗商店通りの近くにある横断歩道で、毎日渡る人の手助けや交通整理をしている少女型のロボット。人と会話することもでき、ハードとソフト両面で現代の技術を遙かに上回る人工知能を搭載されている。穏やかで優しい性格の持ち主。自分の名前を知らないため、信号機っぽい装飾を付けていることからヤツタナミナによって「信号さん」というあだ名が付けられる。信号さん自身は横断歩道から移動することができず、無理やり移動させられそうになった時はエラーが多数表示され、絶叫しながら号泣した。道に飛び出した子供を助けるために車に轢かれて破損したが、先見与助によって修理された。その際、名前が「フク」であることが判明し、横断歩道以外の場所に行ってもエラーが出なくなった。
相永 工一 (あいなが こういち)
白旗工業大学に通う男性。実家は白旗商店通りにあり、実家から大学に通っている。ヤツタナミナからは「エーくん」、近所の年下の子供から「エーにーちゃん」と呼ばれている。自室から信号さんが立つ横断歩道が見えるため、高校生の時に突然交通整理を始めた信号さんのことがずっと気になっている。素直になれないが面倒見のよい性格をしている。信号さんの正体がロボットだと判明すると、より信号さんのことを知るために大学のロボット研究部に所属するようになる。
ヤツタ ナミナ
白旗商店通りに住む女性で、家族が経営する文房具屋で働いている。幼なじみの相永工一に「エーくん」、名前がわからない少女型ロボットに「信号さん」というように、他人に変なあだ名を付ける癖がある。
アユミ ワタリ
白旗工業大学に通う女性で、大学ではロボット研究部の部長を務めている。泥酔した際に車に轢かれそうになったところを「信号さん」に助けてもらったことがあり、信号さんのことを「人類が目指す理想のロボット」と思っている。大学の近くにある白旗商店通りのいとこの家に居候している。
先見 与助 (さきみ よすけ)
KR工業に勤める男性技術者。SNSで見つけた信号さんの調査を会社から命じられ、白旗商店通りに出向いている。毎日、信号さんと接しているうちに個人的にも興味を持つようになり、会社が信号さんを強引に拉致しようとした時もあまり乗り気ではなかった。信号さんが道に飛び出した子供を助けるために車に轢かれて壊れると、修理の陣頭指揮を執った。ふだんから眼鏡を掛け、作業中はさらにカチューシャで前髪を上げていることから、ヤツタナミナから「カチューシャメガネのヨスケさん」という意味の「カメスケさん」というあだ名が付けられる。
場所
白旗商店通り
営業している店より、シャッターを閉めた店の方が多い寂れた商店街。相永工一の家は昔電気屋で、ヤツタナミナの家は今も文房具店を営んでいる。アユミワタリの実家は別の場所にあり、精肉店を営む従姉弟の家に今は居候している。近くにある横断歩道では信号さんが、渡る人の手伝いや車の交通誘導をしており、その様子はSNSにもアップされている。