八犬士

八犬士

犬塚信乃は動乱の世に生まれた剣術に長けた若者。バラの形のあざ、考の字を持つ珠、そして宝刀村雨丸に、信乃の運命は翻弄される。滝沢馬琴の伝奇小説「南総里見八犬伝」を題材に描かれた歴史活劇。

正式名称
八犬士
ふりがな
はっけんし
作画
原作
ジャンル
和風ファンタジー
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概要・あらすじ

犬塚信乃は故郷の大塚村で平和に暮らす闊達な若者。しかし、信乃の父親が持つ宝刀村雨丸を狙って、叔父の蟇六が陰であれこれ画策していた。信乃の愛犬であるヨシロウが代官の使いを襲った咎(とが)でヨシロウを処刑するか、父親の犬塚番作が自害するか、村雨丸を差し出すかを迫る。信乃は、この事件をきっかけに、自らが大きな運命を背負っていることを知ることとなる。

登場人物・キャラクター

犬塚 信乃 (いぬづか しの)

大塚村で剣の修行に励む若者。昔から左上腕部にバラのあざがある。優しげな風貌に似合わずかなりの剣の使い手で、熱血漢。父親の犬塚番作、親友の犬川宗助、許婚者の浜路と穏やかな生活を送っていた。ところが、蟇六と亀篠の策略により、愛犬のヨシロウと番作を同時に失うことになる。死んだヨシロウの体から現れた「考」の文字か浮かぶ珠、番作より託された宝刀の村雨丸、この2つが信乃の運命を変えていく。

犬川 宗助 (いぬがわ そうすけ)

犬塚信乃の幼なじみで、槍の達人の男性。6歳のときに大塚家の下男になる。元は伊豆の200石取りの武将の息子だった。背中にバラのあざがあり、「義」の文字の浮かび上がる珠を持っている。信乃と同じあざがあること、似たような珠を手に入れたことにより、信乃と共に大きな天命を受けたのだと確信する。

浜路 (はまじ)

犬塚信乃の許婚者で、蟇六と亀篠の娘。外見も性格も美しい娘で、信乃を心から愛している。しかしその美しさから、蟇六と亀篠は、彼女を利用して領地を増やそうと、好色な代官の簸上宮六に嫁がせるべく画策する。

犬塚 番作 (いぬづか ばんさく)

犬塚信乃の父親で、病の床についている。かつて父親と共に参加した結城合戦で、父親から宝刀村雨丸を託されている。その後、元の領地であった大塚の地で手束と夫婦になり、信乃を授かった。手束は早逝するが、信乃と2人で手を携え、日々の生活を送っていた。蟇六の策略で自害することになるが、死ぬ直前に村雨丸を信乃に託す。 蟇六が村長になり荘園を継いだため、「大塚」から「犬塚」に名を改めた。

手束 (たつか)

犬塚番作の妻で、犬塚信乃の母親。結城合戦から大塚村に戻った番作と結婚。子供を授かるようにと弁天参りを続けているときに、白い子犬と牛のような巨大な犬に乗った神女に出会う。神女から「考」の文字が浮かび上がる珠を渡され、その後信乃を身籠った。この話を、死ぬ直前に糠助に託した。

蟇六 (ひきろく)

犬塚信乃の叔父。犬塚番作の腹違いの姉の亀篠を妻としている。村長として荘園と使用人を牛耳り、策略により番作が継ぐべき財産を奪った。欲深い性格で、亀篠と共に、卑怯な手を使ってでも、領地を広げることばかりを考えている。そのために娘の浜路を使い、さらに村雨丸をも欲している。

亀篠 (かめさき)

犬塚信乃の叔母で、犬塚番作の腹違いの姉。夫の蟇六と共謀して村の財産を抑え、村雨丸をも狙っている。浜路を利用して、領地を増やすことを常に考えており、その点では夫の蟇六と非常に意見が合っている。

ヨシロウ

手束が弁天参りの際に拾ってきた子犬。白い立派な犬に成長し、いつも犬塚信乃の傍らにいた。穏やかで賢いが、蟇六と亀篠の策略により、代官の使いを噛んで文書を引きちぎったとされ、処刑される。亡くなったヨシロウの体からは、「孝」の文字の浮かび上がる珠が現れた。

糠助 (ぬかすけ)

犬塚家の下男。蟇六が犬塚番作の土地を奪い、犬塚信乃に辛くあたるので、彼を軽蔑している。信乃の母親である手束から、信乃の出生の秘密を託されていた。番作とヨシロウを失って意気消沈する信乃に対し、「考」の珠と村雨丸の2つを手にしたのは、大きな使命を持っているからだと諭す。また関東公方の足利成氏のもとに向かおうとする信乃に、生き別れの息子である玄吉を見つけてほしいと頼む。

ゝ大法師 (ちゅだいほうし)

珠を持つ者を探して旅をする僧。傘を目深にかぶり顔はよく見えないが、しっかりした体つきの壮年男性。犬塚信乃が生まれる20年以上前に起きた、珠を巡る始まりの物語を語り、珠を持つ信乃と犬川宗助が、里見家を守る八犬士なのだと伝える。

里見 義実 (さとみ よしざね)

源家の嫡流の武将。結城合戦の後、安房に落ち延びた。落ち延びた先の滝田の惨状を見かね、山下定包と玉梓を処刑する。しかし命乞いする玉梓を一度許したあと、家臣の八郎に諌められ、もう一度処刑を言い渡した。そのため、一度口にしたことを覆す愚将、と玉梓にののしられ、首を落とされた後も里見家末代まで呪う、と告げられる。実在した人物、里見義実がモデル。

伏姫 (ふせひめ)

里見義実の娘。縁起が悪いとされる一つ子の子犬を引き取り、八房と名付けて可愛がっていた。安西景連に滝田城が攻められた際には、全員での自害を覚悟する。しかし、八房が安西を討ち取ったため、城も領土も助かることとなった。その後、八房に伏姫をやると約束した父親の言葉通り、人里離れた山奥で八房と共に読経、写経をしながら暮らす道を選ぶ。 八房とは体こそ交わることはなかったが、その通じ合う心と気の交わりによって、八つの珠を産み落とす。

玉梓 (たまずさ)

神余光弘の側室。山下定包を利用して謀反を起こす。国を手に入れてからは贅を尽くし、逆らうものは凄惨な拷問にかけて殺害。村人の拷問を見ながら、その生き血をすするとも言われた。里見義実に処刑されるが、首を落とされた後も、里見家を末代まで呪うと叫び、里見家に取り憑いた。

八房 (やつふさ)

里見義実が安房滝田を治めてから7年後に生まれた犬。普通は5、6匹で生まれる犬の子だが、この犬は1匹だけで生まれた。犬の一つ子は縁起が悪いと言われるも、伏姫に気に入られ、里見家で飼われることになる。身体に黒いぶちが8つあるため「八房」と名付けられた。のちに虎を凌ぐほど大きく育つ。安西景連の首を取ってくれば伏姫をやる、という義実の言葉を受け、本当に景連を討ち取った。

洲崎明神の化身 (すさきみょうじんのけしん)

老人の姿で幼い伏姫の前に現れた神。伏姫には恐ろしい女の怨念により、呪いがかかっていると告げ、肌身離さずつけるようにと数珠を渡す。その数珠には、義、孝、仁などの文字が浮かび上がっている珠がついていた。また里見義実の夢に現れ、伏姫の危機を知らせる。

安西 景連 (あんざい かげつら)

安房の半分を治める領主の男性。残り半分の領土を里見義実から奪おうと、虎視眈眈と狙っている。義実の源氏を鼻にかけた領主ぶりも、気に入らないでいた。義実の治める滝田がすさまじい凶作に見舞われたのを機に、兵糧不足に陥るであろうと見越して滝田城に攻め込む。しかし、あと一歩のところで八房により討ち取られる。

金碗 大輔 (かなまり だいすけ)

里見義実の家臣で勇猛な若者。伏姫の許婚者であったが、八房と共に去った伏姫を見送った後、自らも城内から姿を消した。それは富山に籠り、八房と共に在る伏姫を見守るためであった。誤って伏姫を撃ってしまったために出家し、伏姫から飛び散った八つの珠を探す旅に出る。のちのゝ大法師。

網乾 左母次郎 (あぼし さもじろう)

浜路に舞いの稽古をつける、なよなよとした色男。かつては関東管領の上杉定正の家来であったが、今は牢人の身。下女たちにはうっとり憧れられるが、自身への恋心を見透かした浜路には避けられている。亀篠より、村雨丸を犬塚信乃から奪うように依頼されるが、自らが村雨丸に魅せられてしまう。

簸上 宮六 (ひがみ きゅうろく)

好色で有名な代官の男性。外見も性格も下劣で、宴で舞った美しい浜路に、早速目をつける。浜路が犬塚信乃の許婚者と知ると、信乃を始末するように蟇六に促す。それは、大きな荘園を手に入れるため、浜路を差し出そうとしていた蟇六の思惑通りであった。

玄吉 (げんきち)

糠助の生き別れの息子。赤子の頃に母親に死なれ、父親の糠助に背負われたまま、死のうとしていたところを、通りすがりの侍に養子として貰われた。その侍の名は不明だが、関東公方の足利成氏に仕える者であることだけがわかっている。また玄吉の頬には犬塚信乃、犬川宗助と同じバラの痣があり、「信」の文字が浮かぶ珠も持っている。

犬山 道節 (いぬやま どうせつ)

山伏のような格好をした若い男性。修行により不老不死の身体を手に入れた、とうそぶく。顔は浜路に少し似ている。関東公方の足利成氏に会うために旅立った犬塚信乃と道中で出会う。そのとき、信乃が近づくと、肩がコブのように盛り上がって痛み出し、花の形のあざが浮かび上がった。なお、「寂寞道人」は仮の名で、本名は「犬山道節」。 浜路の実の兄である。

場所

大塚村

犬塚番作の荘園だった土地。番作の腹違いの姉の亀篠の策略により、蟇六が村長になり、荘園もすべて蟇六のものになっている。犬塚信乃、犬川宗助、浜路は、ここで幼少より青年までを過ごす。

滝田 (たきた)

安房にある村。神余光弘が治めている土地であったが、側室の玉梓が悪臣の山下定包を唆し、謀反を起こして略奪。彼らが贅を尽くした生活をした結果、村は困窮を極めることになった。村に火を放とうとしたところ、落ち延びてきた里見義実が現れ、玉梓と山下定包を討ったことにより平和な村になった。

その他キーワード

村雨丸

源家に伝わる重宝。霊験あらたかな護身刀。殺気を持って抜けば露がしたたり、血を受ければ、ますます露がほとばしり飛散する。足利持氏が割腹した際に、犬塚番作の父親に預けた護身刀。番作の父親が結城合戦にて敗色濃厚となった際、まだ少年の番作に託して落ち延びさせた。のちに番作は息子の犬塚信乃に託し、関東公方の足利成氏に渡すようにと伝える。

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