概要・あらすじ
空襲で焼け野原となった大阪。戦災孤児となり、妹の山下美保とともに暮らす山下哲は、同じく戦災孤児の靴磨きたちを取り仕切っていたが、進駐軍の兵士を襲って怪我を負わせ逃亡。ほとぼりが冷め、葛城健二が興した葛城製作所に雇われるが、その傍らでカストリ雑誌で稼ごうとし、漫画家の卵、高塚修にヌードを描かせる。
だが、できあがった本は警察の取り締まりにあってしまうのだった。やがて彼は、マッカーサー将軍を親の仇として暗殺しようとする執念にとりつかれていく。
登場人物・キャラクター
山下 哲 (やました てつ)
戦災孤児となり、妹の美保とともに暮らす。同じく戦災孤児の靴磨きたちを取り仕切っていたが、進駐軍の兵士を襲って怪我を負わせ逃亡。ほとぼりが冷めると、葛城健二が興した葛城製作所に雇われる。カストリ雑誌で稼ごうとして、高塚修にヌードを描かせるが、できあがった本は警察の取り締まりにあう。 刑事の野良久に目の敵にされている。女性と肉体関係に及ぼうとすると、米兵相手の街娼婦、パンパンとなった妹の顔が思い浮かび、童貞を捨てきれずにいる。マッカーサー将軍を、親の敵として憎む。
山下 美保 (やました みほ)
哲の妹。兄に止められながらも生活のために13歳にして米兵相手の街娼婦、パンパンとなる。
荒居 克子 (あらい かつこ)
女スリの仲間となっていたが、哲と出会って梅田のマーケットで働くようになる。哲に思いを寄せる。
高塚 修 (たかつか おさむ)
作者の手塚治虫がモデル。カストリ雑誌で一山当てようともくろむ哲からヌード画を注文される。未完となった本作第一部の最後で、高塚修が後に『鉄腕アトム』を生み出し、その絵が葛城健二が興した葛城製作所の新しい商品に使われることになると語られる。
斉田 知史 (さいだ ともふみ)
困っている人をほっておけない質だが、おなかを減らした人々に安価で煮込みを提供し、その肉にした飼い犬や、飼い猫の飼い主にも振る舞うなど型破りな性格であり、故に官憲などからひどい目に遭うこともしばしば。八尾のヒロやんと意気投合し、2人組で窃盗、詐欺、賭博などを繰り返す。
葛城 健二 (かつらぎ けんじ)
金鵄勲章を製造する葛城製作所の跡取りだが、芸者遊びが過ぎて勘当される。西郷隆盛を崇拝し、その言葉「敬天愛人」を大切にして貧富の差を憎むが、損得勘定にもこだわる性格。後に独立して葛城製作所を再興。哲を社員として雇う。
広沢 明 (ひろさわ あきら)
戦後の食糧難で苦しむ人々を救う義賊と称して、200人からなる盗賊団を指揮する若者。河内のトモやんと意気投合し、2人組で窃盗、詐欺、賭博などを繰り返す。
朴 唱烈 (ぼく しょうれつ)
朝鮮人の組織、在阪朝鮮民族東部連合会長の息子。対立する暴力団・太閤組に襲われたところを、偶然いあわせた哲に助けられる。その後、哲が社員となっている葛城製作所のバックルを大量に買い取る約束をする。
掛川 団治 (かけがわ だんじ)
大阪の暴力団・太閤組幹部。太閤組と在阪朝鮮民族東部連合の対立に巻き込まれ、太閤組に捕らえられた哲と、それを救い出しに来た葛城健二に感心して二人を解放。後に、東京で哲と再会し、マッカーサー将軍暗殺に執着する哲を諭す。
野良 久 (のら きゅう)
哲を目の敵にして追い回す警部。
ジェームズ 醍醐 (じぇーむず だいご)
日本人の父とアメリカ人の母の間に生まれたハーフの日本人。一家はスパイとして日本軍に捕らえられ、両親は日本軍に殺される。そこから救い出してくれたマッカーサー将軍を敬愛し、暗殺を企てて近づいた哲を止める。
横井 福次郎 (よこい ふくじろう)
実在の漫画家、横井福次郎がモデル。『ふしぎな国のプッチャー』『冒険ターザン』などを執筆した。赤本漫画を数作書き下ろしていた高塚修は、尊敬する横井福次郎から自作を活劇だけの「子どもだまし」と批評され衝撃を受ける。
集団・組織
太閤組 (たいこうぐみ)
『どついたれ』に登場する組織。大阪の暴力団。闇市の縄張り争いから、朝鮮人の組織・在阪朝鮮民族東部連合と抗争する。
在阪朝鮮民族東部連合 (ざいはんちょうせんみんぞくとうぶれんごう)
『どついたれ』に登場する組織。日本人からは強い差別を受け、占領軍からは、日本人と同様「敵国人」として扱われた在日朝鮮人たちが作った組織。闇市を巡る争いから太閤組と対立。