概要・あらすじ
安永5年の江戸、博識だが変わり者で有名な浪人の平賀源内のもとに、とある商人から奇妙な依頼が舞い込む。その商人の息子である庄九郎が乗った商船は遭難しており、唯一生還した水夫の話によると、庄九郎はニルヤカナヤという島で生き残っているという。商人の依頼は、そのニルヤカナヤという島を探し、息子を連れ戻してきてほしいというものだった。ニルヤカナヤに莫大な黄金があると聞いた源内は、巨大船「ゑれき丸」を建造し、琉球を経由してニルヤカナヤに到着する。ニルヤカナヤこと方丈国は、人間だけでなく巨大な龍が生息している奇妙な島であり、庄九郎は紆余曲折を経てそこの王になっているのだった。数年前から火山活動が活発になっており、島がいずれ沈むことを予見した庄九郎は、島民全員で島を脱出し、江戸沖の無人島に移住しようとする。しかし出航間際、庄九郎に懐いていた人喰い龍の饕餮が、ゑれき丸に乗り込んでしまうのだった。こうして江戸に連れてこられた饕餮だったが、見世物小屋に押し込められてしまう。方丈国の島民を人質に取った薩摩藩は、饕餮と庄九郎を倒幕に利用しようとするが、空腹のあまり饕餮は暴れ出し、江戸の町を破壊し始めるのだった。
登場人物・キャラクター
平賀 源内 (ひらが げんない)
脱藩浪士の男性。もじゃもじゃの総髪で目つきが鋭い。博識で知られ、暗号文の解析や巨大船の設計など、様々な知識を持つ。しかし、ふだんは怪しげな発明品の実験や鉱山の採掘など、胡散臭いことばかりしている。そのため変わり者扱いされ、詐欺師だと思われがちだが、友人の医者の杉田玄白は、幕府の財政が傾いたときに庶民が苦しまないように金策を行っていると指摘している。ところが、当人はそのことを他人に知られるのは嫌がっている。また、それとは別に日本を自分好みの面白い国に変えるという野望も持っており、そのために多額の資金を必要としている。ニルヤカナヤに多額の金があることを知り、庄九郎の捜索に乗り出す。子供の頃、犬に嚙まれたことがきっかけで、動物が苦手。歴史上の人物の平賀源内がモデル。
庄九郎 (しょうくろう)
大坂にある大店、越五屋の主人の息子。乗っていた商船が遭難し、ニルヤカナヤに流れ着く。そこで人食い龍に食べられそうになったところを、ニルヤカナヤの王女の樊と彼女が育てた龍の饕餮に助けられる。その後、生贄となった樊の遺志を継ぎ、饕餮と共に反乱を起こし、ニルヤカナヤの新しい王となった。饕餮をあやつる龍笛を持つ。遭難する前は太っていたが、ニルヤカナヤに来てからの暮らしでかなり瘦せた。
樊 (はん)
ニルヤカナヤの王女。自分の父親である国王が、地震や火山の噴火をおさめるために民を生贄にしていることに心を痛め、最後は自ら生贄となって死亡している。かつてのニルヤカナヤのように、人喰い龍と人間が共存できる方法を古い書物から調べ、肉食龍を人間に懐かせることに成功していた。
伝七 (でんしち)
「ゑれき丸」の水夫の一人。右手の肘から先が欠損している男性。水夫として雇われたものの思うように作業ができずに落ち込んでいたが、平賀源内から義手を与えられる。薩摩藩の出身であり、大井川洗堰工事の件で幕府に抗議し、切腹した父親を持つ。平賀源内に取り入り、ゑれき丸を乗っ取るという密命を帯びている。
春 (はる)
ニルヤカナヤから持ち出された卵から孵った、鳥のような生き物。大店の主人が平賀源内の家に卵を置き忘れ、源内の家で孵化した。そのため源内のことを親だと思っているらしく、よく懐いている。しかし源内は卵の由来を知らず、変わった鳥がどこからか入り込んできたと思っている。
饕餮 (とうてつ)
ニルヤカナヤに生息していた巨大な人喰い龍。ティラノサウルスのような見た目をしており、人間の何倍も大きい。巨大な口と爪を持ち、体は鱗と体毛で覆われている。卵から孵ったときから樊に育てられたことで、人間に懐いている。
場所
ニルヤカナヤ
琉球国の南方にある島。秦の時代に徐市という中国人が発見したとされる。その時に持ち込まれた2種類の龍、人喰い龍と草食の龍が生息している。かつては人喰い龍も人間と共存できていたが、いつの頃からか人間を襲うようになっている。十数年前から火山活動が活発になっており、それを神の怒りととらえた時の王によって生贄の儀式が始まり、そのことをきっかけとして内乱が起こっていた。
クレジット
- 原作
- 脚色
-
やまあき 連理