概要・あらすじ
3歳の時に両親を鬼に殺された鼓倫太郎は、生駒狛一郎を祖父代わりに、切法師になるよう鍛えられ、育てられた。15歳になって切法師の免状を取得した倫太郎は、切法師としての修行も兼ねて、そのまま鬼退治へと旅立ち、その道中で、鬼によって被害をもたらされているさまざまな人々と出会う。倫太郎は、切法師としての力を振るって困っている人々を助けていくが、そんな中、鬼を組織的に操る魁鬼連との出会いから、より大きな戦いへと巻き込まれていく。
登場人物・キャラクター
鼓 倫太郎 (つつみ りんたろう)
陰陽連に所属する切法師の少年。年齢は15歳。生駒の隠れ里で育ち、3歳の時に父親の赤馬と母親の青華が鬼に殺され、両親の師匠だった切法師の生駒狛一郎に育てられた。10歳の時に狛一郎から切鬼剣を譲り受け、15歳で切法師の免状を取得すると同時に、鬼退治の旅に出る。まっすぐな性格の持ち主で、人が困っているところを見ると手を差し伸べずにはいられない優しい人物。 「如是我聞」と呼ばれる槍を武器としている。
生駒 狛一郎
陰陽連に所属する切法師の男性。100年以上も切法師として活動している老人で、陰陽連で指導者のような立場にある12人の師匠のうちの1人。かつては切法師として名を馳せた実力者だが、現在は生駒の隠れ里で後進の育成にあたっている。鼓倫太郎や倫太郎の両親も、生駒狛一郎の弟子だった。
命 (みこと)
陰陽連に所属する切法師の女性。年齢は18歳。血は繋がっていないが、鼓倫太郎の姉のような存在。生まれつき視力が弱いため、切法師ではあるものの鬼退治をするために外界に出たりはせず、生駒の隠れ里で生駒狛一郎と暮らしている。
田留間 平八 (だるま へいはち)
田留間妙の息子。もじゃもじゃのひげを生やした巨漢の男性。一見すると強面だが、実際は気が弱く心配症で、誰かが傷つけるのも、傷つくところを見るのも嫌、という心優しい人物。父親は百姓ながら、戦に出れば必ず手柄を立ててくるほどの猛者。父親のように戦で手柄を立てて、大名まで出世するよう母親から期待されている。
田留間 妙 (だるま たえ)
田留間平八の老母。気弱で臆病な平八を、戦場で手柄を立てるような強い男になってもらうべく、自らのことを「母上」と呼ばせるなど、武士として厳しく教育している。しかし平八に関して無理解なわけではなく、平八が自分で進む道を決めた際には、その背中を押すような優しい女性である。
繭 (まゆ)
鱗谷村に住む少女。耕太の姉で、耕志郎の娘でもある。気が強く元気な女の子。言葉遣いは乱暴だが、心優しく面倒見が良いので、村中の子供から慕われている。戦乱から逃れて来た自分たち家族を受け入れてくれた鱗谷村を愛している。兄が膿泥児に殺される瞬間を目の当たりにしており、膿泥児の生贄に指名された時には、村を守るために大人しく差し出されようと覚悟を決める。
耕太 (こうた)
鱗谷村に住む少年。繭の弟で、耕志郎の息子でもある。村の側を通るという兵隊を見に行き、軽邏に襲われたところを鼓倫太郎に助けられる。倫太郎が剣頭吏と戦った際には、強力な火術を使うための下準備をするなど活躍し、倫太郎を勝利に導く手助けとなった。
耕志郎 (こうしろう)
鱗谷村に住む男性。もとは町医者をしていたが、戦乱によって故郷を追われて繭の兄、繭、耕太とともに鱗谷村へ流れ着いた。以降は百姓として暮らしている。繭の兄が膿泥児に殺されてしまったため、繭が膿泥児へ生贄に差し出されることになった。その際にも、膿泥児たちには勝てないことと、村の安全とを考えて、なにも言わずに繭を送り出そうとしていた。
麗 (うらら)
陰陽連に所属する切法師の女性。命よりも年上で、血は繋がっていないが、鼓倫太郎の姉のような存在。生駒の隠れ里で生駒狛一郎に師事して育ち、光を操る法術を得意としている。後ろ髪に付けた2つの大きな鈴が特徴。
棗 (なつめ)
陰陽連に所属する切法師の女性。命よりも年上で、血は繋がっていないが、鼓倫太郎の姉のような存在。生駒の隠れ里で生駒狛一郎に師事して育った。切法師が使える基本的な法術の他に、鍛え上げた肉体を使った格闘術を得意としている。女性ながら男性のような顔つきと話し方をしている。
瘤狸 (こぶり)
蛙に取り憑いた鬼。蛙の特徴を活かして、長い舌を使った攻撃を得意とする。舌で捕まえた獲物は丸呑みし、体内でじっくりと消化していく。背中にいくつもある瘤の中には毒液が入っており、なにも知らずに潰してしまうと、目潰しにあってしまう。
陰夫 (いんぷ)
野ネズミに取り憑いた鬼。どんな物でもかじってしまう。群れで行動しており、獲物を見つけると俊敏に襲いかかり、鋭い歯と強靭な顎の力で噛みちぎってしまう。死人の骨を拾っては持ち歩いており、骨に宿る怨念を糧として生きている。
誇吠人 (こぼえど)
狼に取り憑いた鬼。下級の鬼ではあるものの陰夫や瘤狸よりも体が大きく、群れをなしていることが多い。鋭い牙や爪を使った攻撃で敵を追い詰める他、耳をつんざくような大きな叫び声も武器としている。
軽邏 (がるら)
足軽に取り憑いた鬼。複数集まると陣形を組み、生前兵士だった体を活かして、息の合った連携攻撃を仕掛けてくる。一匹一匹は大した力を持っていないが、複数集まると非常にやっかいな強敵となる。剣や弓、槍など、さまざまな武器を使うことができる。
剣頭吏 (けんとうり)
騎馬武者に取り憑いた鬼。豪鬼といわれるほど強力な力を持っており、切法師のような法術を操ることもできる。機動力と防御力、攻撃力を兼ね備えた強敵で、騎馬を使った突進攻撃を得意とする。戦況を冷静に分析できる程度の知性も持っている。
膿泥児 (うんでいご)
山猿に取り憑いた鬼。下級の鬼ではあるものの、知能が高く法術を使うこともできる。集団で1人の敵を包囲するような戦闘を得意とし、時にはだまし討ちや敵を罠にかけることもある。山猿らしく山の中でも機敏に駆け回る。
覇奴万 (はぬまん)
膿泥児を束ねる女性の鬼。覇奴万自身も膿泥児であり、長い年月をかけて生き長らえ、巨大化した彼女を尊敬する意味で、他の膿泥児と区別して「覇奴万」と呼ばれる。1000年前に起きた人間と鬼との大戦で、鬼側の将軍として活躍した英雄。強力な法術と怪力を使って、地形をも変えてしまうような戦闘を展開する。
長轡 三毛右衛門 (ながくつ みけえもん)
魁鬼連に属する鬼。「結党使」と言われる伝令役を務める。子猫の頃に死にかけていたが、少年だった烏枢沙摩明王に助けられてから、烏枢沙摩明王に仕えることになった。従者の堡治左衛門(ぽちざえもん)を使って移動している。
烏枢沙摩明王 (うすさまみょうおう)
若き魁鬼連の男性党首。日本に数多といる鬼の中でも、古からの鬼の王族たる「王禍」の血を引く。日本各地に散っている鬼を集めて、人間社会に反旗を翻そうとしている。高いカリスマ性を誇っており、配下の鬼からは尊敬の意を持たれている。
春霧 (はるきり)
烏枢沙摩明王直属の部下で、女性の豪鬼。物や生物に憑依している下級の鬼とは違い、自然現象である風に憑依している上級の鬼である。額から生えた角にはいくつものリングがかかっている。戦闘になると、そのリングを自在に飛ばして敵を切り刻む。風になって移動することができる。
燻手 (いぶりで)
烏枢沙摩明王直属の部下で、男性の豪鬼。物や生物に憑依している下級の鬼とは違い、自然現象である火に憑依している上級の鬼である。戦闘になると口から高速で火を吹き出して攻撃する。火の姿になって移動することも可能。
集団・組織
陰陽連 (おんみょうれん)
切法師の多くが所属する組織。1000年前に発生した鬼と人間との戦争があって以降存在している。人に害をなす鬼退治の他にも、鬼の王の始祖を倒したとされる「七刀」の探索を使命とする。12人の師匠たちが後進の切法師たちの育成にあたっている。
魁鬼連 (かいきれん)
烏枢沙摩明王が率いる鬼の集団。人が支配している世の中を壊して、鬼による支配を実現しようとする。烏枢沙摩明王が1000年前の鬼の王の血を引く存在なので、陰陽連の存在も警戒している。組織としてはまだまだ未熟で、各地にいる豪鬼に呼びかけて仲間を増やそうとしている。
場所
生駒の隠れ里 (いこまのかくれざと)
鼓倫太郎が育った地。日本にいくつかある切法師の修行場の1つ。かつて強力な切法師として名を馳せた生駒狛一郎が住んでおり、幾人もの切法師たちを育て上げてきた。人里離れた山奥にあり、巨大な犬の兵士のような像が里の中央にそびえ立つ。
鱗谷村 (うろこだにむら)
戦で住む場所を追われた人たちが集まってできた村。繭や耕太たちが住んでいる。人々が少しずつ集まって村が形成されていき、100年をかけて集まった人達によって積み上げられた岩は、巨大な棚田となっている。流れ者が集まってできた村のため、外部から来た人も比較的たやすく受け入れる空気がある。
その他キーワード
切法師 (きりほうし)
鬼を退治することを生業とする人々。その多くは陰陽連に所属している。鍛え抜かれた肉体と精神力は並の人間を超越しており、法術も操る。高度な精神集中が必要な「切鬼剣」を使って、鬼の本体である「業煤徒(ごうすと)」を消滅させることができる。
鬼 (おに)
この世のありとあらゆる物に取り憑く妖怪のような存在。他者の「霊」を食らうことで存在を維持しており、実体は持っていない。取り憑いた肉体だけを壊しても、また別の肉体に憑依することができる。「切鬼剣」を使って鬼の本体である「業煤徒(ごうすと)」を消滅させなければ、倒すことはできない。
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