概要・あらすじ
江戸幕府第十一代将軍・徳川家斉の時代、六尺六寸の大男がふらふらになって取手の街に現れた。駒形茂兵衛というその男は、横綱になるために江戸を目指しているのだが、一文無しのうえに空腹でふらついていた。茂兵衛が、やくざの船戸の弥八に絡まれているのを救ったのは、安孫子屋という宿にいた遊女のお蔦だった。茂兵衛の身の上話を聞いたお蔦は、しっかり相撲に励んで立派な横綱になるんだよと茂兵衛を励まし、有り金すべてと身につけていた櫛、簪、巾着ぐるみまですべてをくれてやる。これまで、これほど優しくされた事がなかった茂兵衛は涙し、必ずや横綱になってお蔦に土俵入りの姿を見せると約束し、何度も礼を言いながら江戸へ向かうのだった。
それから10年後、茂兵衛は渡世人になっていた。取手を訪れた茂兵衛は恩人であるお蔦が今は飴屋を営んでいる事を知る。お蔦の家を訪ねるが、そこへイカサマばくちを働いたお蔦の亭主を追って、川向うの親分・波一里儀十が多数の子分を引き連れて襲撃して来る。乱暴を働く儀十の子分たちをなぎ倒していく茂兵衛に、儀十は一騎打ちを申し出る。儀十も倒してお蔦一家を救った茂兵衛は、船で旅立つお蔦に土俵入りを見せて、10年前の約束を果たす。それを見たお蔦は、かつて出会った若い相撲取りの記憶が鮮やかに蘇るのだった。
登場人物・キャラクター
駒形 茂兵衛 (こまがた もへえ)
上州勢多郡の駒形の生まれで、身長六尺六寸(約2メートル)という巨躯の若い力士。父親は20年前から行方知れずで、母親を亡くし、兄弟もおらず、実家は灰になってしまったという天涯孤独の男性。横綱を目指して江戸へ向かう旅の途中、一文無しになり、さらにやくざの船戸の弥八に絡まれたところを、遊女のお蔦に助けてもらう。それから10年後、渡世人になった駒形茂兵衛は再会したお蔦に恩返しを果たす。 演じるのは小林まことの『1・2の三四郎』に登場する成海頁二。
お蔦 (おつた)
越中八尾の出身で、取手にある安孫子屋という宿にいた遊女。やくざの船戸の弥八にも動じる事のない気の強い美女。弥八に絡まれた駒形茂兵衛を救い、身寄りのない茂兵衛に同情し、横綱目指してしっかり頑張るよう助言した。そのうえ、一文無しの茂兵衛に自分の有り金をすべてくれてやり、身につけていた櫛、簪、巾着ぐるみまで渡した、心優しい女性。 10年後、遊女をやめて飴屋を開き、娘のお君と二人でつつましく暮らす。演じるのは小林まことの『1・2の三四郎2』に登場する本間ほたる。
お君 (おきみ)
お蔦と船印彫辰三郎の子供。十歳ほどと思われる女の子。父親の顔は知らず、母親と二人で暮らしている。近所の子供から、酌とり女のててなしっ子だと悪口を言われたことで泣きじゃくる。死んだと思われていた父親が戻って来て、初めて対面する。演じるのは小林まことの『格闘探偵団』に登場する五頭もも。
船印彫辰三郎 (だしぼりたつさぶろう)
お蔦の亭主で、お君の父親。腕のいい船印彫師で、遊女だったお蔦を見受けする金を作るために江戸へ行ったが病を患い、その後、金欲しさに手を出したイカサマばくちがもとで、波一里儀十らから命を狙われる事となる。演じるのは小林まことの『1・2の三四郎』に登場する五頭信。
船戸の弥八 (ふなどのやはち)
やくざの若い男。手のつけられない暴れ者で、駒形茂兵衛にも因縁をつけて金を巻き上げようとしたが、茂兵衛のぶちかましを受けて吹き飛ばされる。10年後、死んだ親分の跡を継ぐと、立派な親分になり、地元の人々からも信頼されている。演じるのは小林まことの『格闘探偵団』に登場する水谷研。
波一里 儀十 (なみいちり ぎじゅう)
中相馬の親分。自分の縄張りでイカサマばくちを働いた船印彫辰三郎を追って、子分を引き連れて辰三郎の女房であるお蔦の家へやって来る。冷たい性格の乱暴な男。力自慢で、お蔦を守るために現れた駒形茂兵衛に一騎打ちを申し出る。演じるのは小林まことの『1・2の三四郎2』に登場する赤城欣一。
クレジット
- 原作
-
長谷川 伸
- 構成