概要・あらすじ
どこにでもあるような日本の田舎町直江津町。阿良々木暦は、この町の学校に通う高校3年生だ。ある日学校で、阿良々木はクラスメイトである、戦場ヶ原ひたぎの秘密を知ってしまう。阿良々木は、バナナの皮に滑って階段を踏み外した戦場ケ原をとっさに受け止めたのだが、彼女には体重と呼べるものがほとんどなかったのだ。
その日の放課後、戦場ケ原は、背後から近づき、阿良々木の口中にカッターを突きつける。戦場ケ原はさらに、口中にホチキスを突っ込んで、自分の秘密をばらさないようにと脅しをかける。彼女は、2年前、巨大な蟹に出会い、体重を根こそぎ持っていかれたという。秘密を口外しない事を約束する阿良々木に対して、戦場ケ原は文房具を収めるが、その際、ホチキスの針を、阿良々木の右頬に打ち込んで去っていく。
その猟奇っぷりに驚く阿良々木だが、それでも彼女の力になろうと考える。あとを追いかける阿良々木に、戦場ケ原はハサミやカッターなど、あるだけの文房具で攻撃を仕掛けようとする。しかし、阿良々木の口中の傷が消えていることを知り、動きを止める。実は阿良々木も、春休みに吸血鬼に襲われた経験があり、その後遺症で驚異的な治癒能力を持っていたのだ。
吸血鬼に襲われた際、阿良々木は忍野メメという中年男性に助けられた。忍野は「怪異」の専門家である。阿良々木は、忍野が住む学習塾跡の廃墟に、戦場ケ原を連れていく事にした。話を聞いた忍野は、戦場ケ原に取り憑いた怪異は、宮崎県の山間部の民間伝承である「おもし蟹」だと推測する。
人から重さを奪う怪異だという。忍野は戦場ケ原に、一度家に帰り、冷水で体を清め、清潔な服に着替えた後、夜中の0時に来るようにという。戦場ケ原はその言葉に従った。彼女の家は「民倉荘」という古びたアパートだった。母親が怪しい宗教に貢ぎ、多額の借金まで背負った事が理由で両親が離婚。今は父と二人暮らしだが、その父も借金返済のために働きに出ていて、滅多に帰ってこないのだという。
阿良々木が戦場ケ原に抱いていた「病弱深窓令嬢タイプ」というイメージと、事実はまったく異なっていた。午前0時。着替えを済ませ、再び学習塾跡に向かうと、神官姿の忍野がいた。怪異は古くから当たり前に存在するだけで、自分の方から触れないと取り憑く事はない。
だから去ってくれるようにお願いするだけなのだ。そんな話をしながら、忍野は結界の中に戦場ケ原を招き入れる。忍野は、折り紙の蟹に文字を書きながら質問する。戦場ケ原が、忍野の質問に答えていくうちに、彼女の心に重くのしかかっていた「思い」があきらかになっていく。かつて、悪徳宗教に騙された戦場ケ原の母は、幹部たちを家に連れてきて、「浄化」という口実で娘を強姦させようとした。
戦場ケ原は抵抗し、未遂に終わったのだが、母親は娘を罵り、殴ったのだという。「浄化」ができなかったため、母親はペナルティを食らい、多額の借金を背負う事になった。そして戦場ケ原の家庭は崩壊したのである。戦場ケ原の「思い」は、あの時自分が抵抗しなかったら、家族は壊れなかったんじゃないかという事であった。
その「思い」の「重さ」に潰されてしまわないように、「重し蟹=思し神」という怪異が、支えてくれていたのだ。戦場ケ原の心に感謝が溢れ、涙がこぼれ落ちる。これで一件落着かと思いきや、蟹の折り紙に涙が落ちた瞬間、結界が弾け飛ぶ。ふっ飛ばされて壁に叩きつけられそうになる戦場ケ原の体を、阿良々木がかばう。
折り紙の蟹は、ものすごい力で二人を壁に押し付けていた。忍野は、折り紙の蟹をひょいとつまみ、裏返しにして地面に叩きつけた。爆音とともに、ものすごい圧で床がへこんだ。そしてそのまま、蟹を踏みつけながら、蟹なんてひっくり返せばこんなものだと、さらりと言ってのける。忍野によれば、戦場ケ原が頭を上げた事に怒ったのか、少女の涙に欲情したのか、蟹=怪異の考えはわからないという。
このまま蟹を踏み潰そうかという忍野を制止して、戦場ケ原は三つ指をついて蟹に土下座する。彼女はすべてをさらけ出していたわけではなかった。彼女の問題の根っこは、母の歪んだ愛に、自分が耐えきれなくなった事であった。母親の盲信のきっかけは、戦場ケ原が小学5年生のときにかかった大病だった。
生死をさまよう娘を救いたくて、母親は宗教にすがったのだ。そしてたまたま、娘が一命をとりとめた事で、母親は宗教にのめり込んだ。戦場ケ原は、母に心配をかけまいとして、その後、勉強にスポーツに打ち込んだ。そして超人のように完璧になったのだが、それすらも、母親は教義のおかげだと思い、ますます宗教に傾倒した。悪循環が続き、母親はついに良かれと思って、宗教団体の幹部に娘を強姦させようとする。
その歪んだ重すぎる愛に耐えかね、戦場ケ原は、母娘の縁を切って欲しいと神に願ったのだ。しかしそれは間違いだったと気づき、戦場ケ原は涙を流しながら、蟹が切ってくれた母との縁を返してくれと懇願する。戦場ケ原が、現実と立ち向かう覚悟を決めた時、怪異は消えた。
そして、彼女の体に重さが戻った。こうして戦場ケ原の怪異はすべて終わった。そして阿良々木は、蟹の代わりに彼女を支える友達となった。
登場人物・キャラクター
阿良々木 暦 (あららぎ こよみ)
直江津町に住む高校3年生の男子。左目が隠れるほど長い前髪と頭頂部の「アホ毛」が特徴。春休みに、地元の直江津町で、吸血鬼に襲われ、一時は吸血鬼化した過去を持つ。忍野メメという中年男性に救われるが、そのときの名残で、現在も超人的な治癒能力を持つ。戦場ケ原ひたぎが何かしらの「怪異」に取り憑かれている事を知り、その道のスペシャリストである忍野のもとに彼女を連れて行く。
戦場ケ原 ひたぎ (せんじょうがはら ひたぎ)
阿良々木暦のクラスメイト。高校3年生の女子。線の細い長髪の美少女。中学時代は陸上部のスターで活発な少女だったが、高校では、体育の授業にも参加しない「病弱深窓令嬢タイプ」に変身した。その理由は、高校入学前に「おもし蟹」という怪異と出会い、体重をほとんどなくしたせいである。天の邪鬼で毒舌家だが、素直な一面もある。自分の秘密を守るため、自衛手段として、カッターやはさみ、ホチキスなどあらゆる文房具を体に忍ばせている物騒な人物でもある。
忍野 メメ (おしの めめ)
学習塾跡の廃墟に住む中年男性。ボサボサ頭に無精髭、派手なアロハシャツという胡散臭い外見が特徴。怪異のスペシャリストで、阿良々木暦が吸血鬼化した際に、彼を救っている。戦場ケ原ひたぎに取り憑いた、蟹の怪異を祓うことになる。怪異の相談は有料で、阿良々木のケースは500万円、戦場ケ原は10万円と、結構いい加減である。
クレジット
- 原作
- キャラクター原案
-
VOFAN
書誌情報
化物語 22巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2018-06-15発行、 978-4065116173)
第2巻
(2018-08-17発行、 978-4065123331)
第3巻
(2018-11-16発行、 978-4065133132)
第4巻
(2019-01-17発行、 978-4065139387)
第5巻
(2019-04-17発行、 978-4065148891)
第6巻
(2019-07-17発行、 978-4065153147)
第7巻
(2019-10-17発行、 978-4065171660)
第8巻
(2020-02-17発行、 978-4065181720)
第9巻
(2020-05-15発行、 978-4065188538)
第10巻
(2020-08-17発行、 978-4065203347)
第11巻
(2020-11-17発行、 978-4065212561)
第12巻
(2021-02-17発行、 978-4065220702)
第13巻
(2021-05-17発行、 978-4065231425)
第14巻
(2021-08-17発行、 978-4065244814)
第15巻
(2021-11-17発行、 978-4065260050)
第16巻
(2022-02-17発行、 978-4065268957)
第17巻
(2022-05-17発行、 978-4065279120)
第18巻
(2022-08-17発行、 978-4065286593)
第19巻
(2022-11-17発行、 978-4065296356)
第20巻
(2023-01-17発行、 978-4065303474)
第21巻
(2023-03-16発行、 978-4065309216)
第22巻
(2023-05-17発行、 978-4065315750)
化物語 特装版 22巻 講談社〈講談社キャラクターズA〉
第1巻
(2018-06-15発行、 978-4065120569)
第2巻
(2018-08-17発行、 978-4065123348)
第3巻
(2018-11-16発行、 978-4065133149)
第4巻
(2019-01-17発行、 978-4065139394)
第5巻
(2019-04-17発行、 978-4065148907)
第6巻
(2019-07-17発行、 978-4065153154)
第7巻
(2019-10-17発行、 978-4065171639)
第8巻
(2020-02-17発行、 978-4065181737)
第9巻
(2020-05-15発行、 978-4065188521)
第10巻
(2020-08-17発行、 978-4065203354)
第11巻
(2020-11-17発行、 978-4065212578)
第12巻
(2021-02-17発行、 978-4065220719)
第13巻
(2021-05-17発行、 978-4065231456)
第14巻
(2021-08-17発行、 978-4065245019)
第15巻
(2021-11-17発行、 978-4065260043)
第16巻
(2022-02-17発行、 978-4065268988)
第17巻
(2022-05-17発行、 978-4065279199)
第18巻
(2022-08-17発行、 978-4065286609)
第19巻
(2022-11-17発行、 978-4065296349)
第20巻
(2023-01-17発行、 978-4065303405)
第21巻
(2023-03-16発行、 978-4065309285)
第22巻
(2023-05-17発行、 978-4065315699)