北北西に曇と往け

北北西に曇と往け

火山と氷河の島と呼ばれるアイスランドを舞台に、車や電化製品と会話できる能力を持つ御山慧が繰り広げる探偵活劇。北緯64度に位置するアイスランドの過酷で美しい自然環境や、観光名所も描かれている。慧の弟・御山三知嵩のダークな謎が次第に明らかになっていく、ジュヴナイルミステリー風な一面もある。KADOKAWA「ハルタ」32号から掲載の作品。「マンガ大賞2019」で第6位、第3回「みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」で第8位に選出。

正式名称
北北西に曇と往け
ふりがな
ほくほくせいにくもといけ
作者
ジャンル
探偵
 
異能力・超能力
レーベル
青騎士コミックス(KADOKAWA)
関連商品
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あらすじ

第1巻

両親の死後、アイスランドの祖父、ジャックの家に身を寄せ、探偵業で生活費を稼ぐ日々を送っていた17歳の御山慧には、車や電化製品と会話できる不思議な能力があった。ある日、日本にいる弟の御山三知嵩、さらに三知嵩を預かっていた叔父とも連絡がつかなくなり、慧は急遽ジャックと日本に帰国。しかし叔父夫婦は既に亡くなっており、一方の三知嵩はアイスランドに向かった事が判明する。そんな中、アイスランドに戻った慧の前に、三知嵩を追う刑事が現れる。彼は叔父夫婦を殺害したのは三知嵩だと主張し、慧に暴力を振るう。気絶した慧は三知嵩に助けられ、気がつけばジャックの彼女、カトラの家にいた。すると、感受性の強いカトラの姪、リリヤは、三知嵩に拒否反応を示すのだった。

第2巻

御山慧の祖父、ジャックが、アイスランドに来た御山三知嵩と慧を無理に引き離したため、慧は腹を立てていた。一方、兄に会いたい三知嵩は、有刺鉄線を壊し羊を放すなどの奇行を繰り返していた。そんな中、慧の親友、がアイスランドに到着。慧はレイキャビクの観光名所を清と巡りながら、アイスランドの圧倒的な自然の力を感じると共に、その過酷さと美しさに感銘を覚える。小学生の頃から慧と心を通わせていた清は、そんな慧の生き生きした姿を嬉しく感じながら、旅を漫喫していた。その後、慧達は露天温泉で、リリヤと遭遇する。女性が苦手な慧とエキセントリックなリリヤは反発し合うものの、清の眼にはお似合いのカップルに映っていた。

第3巻

親友のが帰国し、探偵業を再開した御山慧は、家出少年のヨウンの捜索のためセーフハウスを訪れる。そこでヨウンを見つけた慧は、この家を訪れた事があるような既視感を感じていた。後日、ヨウンを匿っていたシグルーンは、ヨウンの秘密を探り当てた慧に、フレイヤの行方を追ってほしいと、彼女の携帯電話を手渡す。すると、そのフレイヤの携帯電話に御山三知嵩から連絡が入る。少し前、フレイヤは行き倒れていた三知嵩をセーフハウスに招き入れたが、彼の依存心の強さに辟易し、距離を置くようになっていた。そんな中、セーフハウスで不審死が続出。フレイヤはそれが三知嵩の仕業である事を察知し、レイキャビクからの脱出を図っていた。三知嵩はまさに、そのフレイヤを追っていたのだった。

登場人物・キャラクター

御山 慧 (みやま けい)

探偵を生業とする17歳の少年。御山三知嵩の兄。両親は既に亡くなっており、アイスランドのレイキャビクでフランス人の祖父、ジャックと暮らしている。見た目は非常に大人っぽく、背が高い。瞳は青く、ラフな黒髪のショートヘアにしている。愛車は祖父から譲り受けたジムニーで、車や電化製品と話ができる能力を持つが、その事は親友の清にしか話していない。酒とタバコと美人が苦手で、女性とは付き合った事がない。何にでも表と裏があると考えており、特に女性は噓がうまいとの思い込みが強い。無愛想で居丈高な態度を取るが、実は非常に愛情深い性格をしている。探偵業を生業としているのは生活費を稼ぐためと、ヒマが嫌いという理由からで、特に人探しが非常に得意。好物はコーヒーと肉。中学も出席日数ギリギリで卒業し、高校は2週間で中退したアウトローだが、自然力が強いために、過酷なアイスランドでは生きやすさを感じている。

ジャック

御山慧と御山三知嵩の祖父。フランス人で、北極圏や高地の生態学を大学で教えている。死んだ親友に研究と車を託されて、アイスランドのレイキャビクに住むようになった。妻は既に亡くなっており、慧といっしょに暮らしている。容姿は慧とよく似ているが、無類の女好きで、「ンッフッフ」という独特の笑い方をする。女性を口説く時には、また会えたら運命だからと、名前を名乗らないのが常套手段。現在はそのやり方で知り合ったカトラと付き合っている。不思議な能力のある血筋で、子供の頃に鳥の中に入って旅して回り、戻った時は意識不明で入院していたという経験がある。ジャック自身の能力については明言していないものの、あらゆる野鳥に懐かれている。遊びに来た慧の親友、清を手厚くもてなすなど、彼をとても気に入っている。アイスランドに来た三知嵩と慧を離して住まわせているが、その理由は明かされていない。

カトラ

アイスランドの女優。ボリュームのあるウェービーヘアをした美人で、現在仕事は休業中。20年来の恋人と別れたばかりだが、温泉で出会った男性に恋をし、御山慧に捜索を依頼する。すぐにそれが慧の祖父、ジャックである事が判明する。自称強運の持ち主で、一見すると海千山千のように見えるが、意外に純情でかわいいところがある。姉の子供であるリリヤが自宅に滞在している事が多い。

リリヤ

カトラの姉の娘。音楽家で、金髪のロングヘアをした美人。アイスランドの北の方の町に住んでいるが、コンサートのためレイキャビクのカトラ宅によく滞在している。御山慧とは初対面で水浴びする姿を見られ、そのお返しに彼のパンツの中を見ようとするなど、非常にエキセントリックなところがある。また、感受性が非常に強く、御山三知嵩が話すと汚れた音がすると、生理的に受けつけない。日本語がわからないものの、彼が噓つきだと直感的に感じている。

御山 三知嵩 (みやま みちたか)

御山慧の弟。小柄な体型の金髪の少年で、年齢は15歳。両親の死後、日本の叔父の家に預けられていたが、ある時、連絡が取れなくなった。慧が急遽帰国した際には、叔父夫婦は亡くなっており、御山三知嵩は既にアイスランドに旅立っていた事が判明。甘え上手で、依存心が異常に強く、幼い頃から残酷な一面を持っていた。憎いと思った相手に触れると、その箇所の肉が裁断されたかのような衝撃を与える事ができる特殊能力を持つ。アイスランドで行き倒れになっているところを、フレイヤに助けられ、セーフハウスに運ばれた。また、慧が刑事から暴行され気絶した際には、慧をセーフハウスに運んでいる。セーフハウスでは、三知嵩が滞在するようになってから、不審死する人間が続出している。セーフハウスでは「ミッチ」と呼ばれている。

叔父 (おじ)

御山慧の母方の叔父。日本で御山三知嵩を預かっている。就寝や起床の時間が40年間変わらない几帳面さで、まじめな性格をしている。三知嵩と連絡が取れなくなった慧が、急遽日本に帰国したところ、叔母が事故で亡くなり、叔父も急に身体を悪くして亡くなった事が判明する。

(きよし)

御山慧の親友で、日本に住む少年。年齢は17歳。全体をツンツンに立たせたショートヘアで、背が低く黒縁の眼鏡をかけている。パソコン好きなオタクで、アプリを作るのを趣味としている。一人で企業相手に交渉するほどの実行力の持ち主ながら、内気で温厚な性格をしている。非常に頭がよく、受験生ながら勉強する事がなくなり、ヒマ過ぎるために慧のいるアイスランドに遊びに来たという経緯がある。小学生の時、不良達からパソコンを取り上げられ、慧に取り返してもらったのをきっかけで慧と仲よくなった。慧がまだ日本にいる時に、慧の探偵業を手伝っていたため、アイスランドで探偵業を続けている事を知って安心する。リリヤと慧をお似合いのカップルだと思っている。「それいけプリン君シリーズ」のファンで、キャラクターのマスコットを持ち歩いている。

アンナ

金髪の高齢女性。御山慧にカールという大型犬の捜索を依頼した。アイスランドに在住している。カールの飼い主の元妻。昔、犬に咬まれた事があり、結婚していた頃は、カールには自分から近づいたりはしなかった。実は元夫に未練があり、カールを連れ戻せば元夫が戻って来ると思い込んでいる節がある。ジャックに教会でナンパされた事をきっかけに、慧に仕事の依頼したという経緯がある。

カールの飼い主 (かーるのかいぬし)

無精ひげを生やした高齢男性。ニット帽をかぶっている。アイスランドに在住している。アンナの元夫。カールという大型犬をかわいがっている。アンナからカールを返してくれとの依頼を受けた御山慧の訪問を受け、アンナは犬好きではなかったはずだと、訝しく思っている。

白洲 (しらす)

コンビニエンスストアで働いている若い女性。叔父の家に住んでいた御山三知嵩が毎日通っており、旅行になにを持っていったらいいかを相談される。いつも慧の事を少女漫画に出て来るようなカッコいい男性だと見惚れていた。三知嵩の行動を探っていた御山慧から、彼についての情報を聞かれる。

刑事 (けいじ)

刑事の男性。日本から御山三知嵩を追ってアイスランドにやって来た。薄毛で屈強な顔つきをしている。叔父夫婦の友人でもあり、御山慧に叔父夫婦を殺したのは三知嵩だと告げ、三知嵩の居場所を教えろと慧に暴行を振るった。

エイナル

アイスランドに住む男性。スキンヘッドにしている。妻はアスディス。狩人、車の整備工、観光ガイドなど仕事をいくつも持っている。趣味は家庭菜園で、温室で野菜を作ろうと考えている。ジャックがアイスランドでできた最初の友人で命の恩人でもある。ジャックとその恋人、カトラ、御山慧を家に招待し、羊の肉などを振る舞ってもてなした。

ヨウン

華奢な体型をした金髪の家出少年。そばかすがある。年齢は15歳。アイスランドのレイキャビクの南、コーパヴォグルに在住している。兄のアレックス・アーロンソンからの依頼で、御山慧がその行方を捜索する事になる。父子家庭で育ったが、2年前に父親が再婚し、母親と兄のアレックスと暮らしている。友人のシグルーンに匿われ、セーフハウスに滞在していたところを慧に見つけ出される。ヨウン自身の携帯電話から、義兄に惚れている事を知られてしまう。

アレックス・アーロンソン

若い男性。大柄な体型で、ロングヘアの金髪を後ろでまとめている。弟のヨウンの捜索を御山慧に依頼した。アイスランドのレイキャビクの南、コーパヴォグルに母親と父親、弟と暮らしていた。2年前に母親が再婚しており、ヨウンは義理の弟。友人が大学でジャックの授業を受講しているつながりで、慧に捜索を依頼したという経緯がある。

シグルーン

ヨウンの友達の少女。肩までのワンレングスヘアにしている。アイスランドのレイキャビクに住む。自宅のとなりのガレージを改造して自室にしているため、すぐにヨウンを匿っていると御山慧にマークされていた。単純な性格で、人の心配ばかりしているお人好しでもある。セーフハウスによく出入りしており、2週間前にフレイヤから携帯電話を預かったが、彼女が姿を見せなくなった事で、慧にフレイヤを探してほしいと話を持ち掛けた。

フレイヤ

アイスランドのレイキャビクに住む女性。赤毛のロングヘアにしている。年齢は20歳位。ふざけるのが大好きで、年下に優しい姉御肌な性格。セーフハウスに出入りしており、シグルーンに携帯電話を預け、行方不明となる。誰かに追われている様子で、心配したシグルーンが御山慧にフレイヤを探してほしいと話を持ち掛けた。2か月前、行き倒れになっていた御山三知嵩を助け、セーフハウスに連れて来たが、三知嵩の並外れた依存心の強さに違和感を抱き、距離を置いていた。そのあいだにセーフハウスでの不審死が相次ぎ、次は自分が殺される番だと町から逃げ出した。

サーラ

アイスランドのレイキャビクに住む若い女性。金髪のロングヘアにしている。セーフハウスに出入りしており、フレイヤの不在で寂しがっている御山三知嵩の世話をした事から、彼につきまとわれるようになる。三知嵩とかかわるのに疲れて旅行に行くと噓をついていたが、それが三知嵩にばれてしまい、腕や胴体が切断されるような衝撃を与えられ死亡した。

サーラの友達 (さーらのともだち)

アイスランドのレイキャビクにあるセーフハウスに出入りしている若い女性。サーラの友達。金髪のショートヘアで、そばかすがある。セーフハウスでサーラから御山三知嵩を避けている理由を聞かされるが、その後、突如現れた三知嵩から腕を摑まれ、腕が切断されるような衝撃を受ける。

場所

アイスランド

北緯64度に位置する北欧の島国。火山と氷河の島と呼ばれる。海嶺とホットスポット(マグマがプレートを突き抜けて上がる場所)が重なってできた島で、「地球の割れ目(ギャオ)」と呼ばれる大地の裂け目が見られる事でも有名。また壮大な氷河や豪快に吹き上がる間欠泉など、島全体が自然の驚異に満ちている。暖流と北極海から来る海流がぶつかる良質な漁場もある。溶岩大地のため、米や麦、野菜などは育たずに主食は羊。凍りつく寒さや強風と乾燥に見舞われる過酷な環境だが、活発な地熱地帯があるために地熱発電で電力をまかなっている。そのため、空気は汚染されておらず澄みきっている。また、水道水がミネラルウォーターで、発電所の排水はパイプラインで町に送られるため、蛇口から温泉水が出る場所もある。サバイバル能力に長けている御山慧にとってアイスランドは肌に合っている。

セーフハウス

アイスランドのレイキャビクにある隠れ家的な集合住宅。所有者は不明。行き場のなくなった人々のたまり場となっており、酔っ払いやドラッグに溺れている人達も多い。お互いの事には詮索しないという暗黙のルールがあるだけで、使い方は自由。フレイヤが行き倒れになっていた御山三知嵩を連れて来た場所であり、刑事から暴行された御山慧は、三知嵩によってセーフハウスに運び込まれている。シグルーンが家出少年のヨウンを匿っていた時に、慧は再びセーフハウスに足を踏み入れている。レイヤによると、この家の利用者で三知嵩に命を奪われたのは恐らく八人で、うち病死とされたのが五人、別の場所で事故死したのが二人、不自然に姿を消したのが一人。しかし、それが事実であるかどうかは定かではない。

書誌情報

北北西に曇と往け 7巻 KADOKAWA〈青騎士コミックス〉

第1巻

(2017-10-13発行、 978-4047348318)

第2巻

(2018-03-15発行、 978-4047350526)

第3巻

(2019-01-15発行、 978-4047353459)

第4巻

(2020-01-14発行、 978-4047357921)

第5巻

(2021-01-15発行、 978-4047362635)

第6巻

(2022-11-18発行、 978-4047372320)

第7巻

(2024-02-20発行、 978-4047378674)

北北西に曇と往け<ワイド版> 7巻 KADOKAWA〈青騎士コミックス〉

第1巻

(2021-07-20発行、 978-4047365902)

第2巻

(2021-08-20発行、 978-4047365919)

第3巻

(2021-09-18発行、 978-4047365926)

第4巻

(2021-10-20発行、 978-4047365933)

第5巻

(2021-11-20発行、 978-4047365940)

第6巻

(2022-12-20発行、 978-4047373358)

第7巻

(2024-05-20発行、 978-4047379596)

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