世界観
33世紀頃の世界が舞台。人類が流星群の衝突や疫病などによって劇的に数を減らし、旧大陸と呼ばれる大陸の西部の一部地域にのみ、かろうじて文明を維持している状況にある。旧大陸の南には「新大陸」と呼ばれる新しく生まれた大陸が存在し、その大陸には大陸人と呼ばれた、人間とよく似た亜人が暮らしていた。新大陸については多くの事が謎に包まれており、亜人と旧大陸で暮らす人類、すなわち旧人の関係がどのようなものであるのかもよくわかっていない。
あらすじ
第1巻
新大陸にいる新大陸調査隊で警備班の班長を務める村上静馬は、天然で自由奔放な性格のR・J・セイバーヘーゲンの護衛に手を焼いていた。ある日、「大陸人」と呼ばれる現地の子供から、「運命の石」と呼ばれる大振りの鉱石のようなものを受け取ったセイバーヘーゲンは、それを静馬と共に握ったところ、静馬の近くにいるだけで怪力を振るう事ができるという特異体質を手に入れる。調査したところ、運命の石というのは本来は大陸人が繁殖に使うための道具であり、「片方が妊娠するまで、その効力は消えない」という。一時は途方に暮れた静馬であったが、ともかく護衛は努めなければならないので、フェロモンさえ嗅がなければ効果が発動しない事を発見して、酸素マスクをしてセイバーヘーゲンの護衛にあたるようになる。そんな日々の中、看護士の友能まきをが新大陸調査隊にやって来て、仲間に加わる事になる。
第2巻
R・J・セイバーヘーゲンの存在を知った一部の大陸人が、新大陸調査隊のキャンプを襲撃して来る。ゼーンを出せと迫る大陸人達を、セイバーヘーゲンは「自分はゼーンではない」と言って説き伏せようとするが、その時、さらに別の存在、すなわちゼーン本人とその使役する虫がキャンプを襲った。その虫は炎をまとった、火の粉の塊のような虫であり、強力な戦闘能力を持っていた。
第3巻
村上静馬はかろうじてゼーンを撃退し、虫を倒す。しかし、倒したはずの虫の仲間が卵から孵化し、その状況を受けて新大陸調査隊はキャンプを放棄して旧大陸へと撤退する事になる。それを支援したのは、「海賊」を自称するチェリー・ジャックという青年であった。新大陸調査隊は解散し、人々は旧大陸の都市に戻って、それぞれの人生に戻ったかに見えた。ところが、友能まきをは仕事先の病院を辞めてしまい、チェリーの部下のもとへやって来て、R・J・セイバーヘーゲンに渡したいものがあるからコンタクトを取りたい、と言い出す。
第4巻
場面は変わり、新大陸では、R・J・セイバーヘーゲンの友人だったアルビレオという子供が、部族の掟を破って追放され、旅に出た先でゼーンと出会い、運命の石の儀式を行っていた。友能まきをは、新大陸調査隊が引き上げる直前にまきをが出会った、ノアヴィースから受け取った箱であった。中身は新大陸の地図と、謎の物体であった。一方、何者かに襲撃されそうになったセイバーヘーゲンは、個人的に雇った村上静馬とチェリー・ジャックを連れ、逃走がてらそのまま新大陸に向かう事になる。
第5巻
船旅が始まった。村上静馬は旧大陸に戻ったあいだに運命の石の効果を克服し、R・J・セイバーヘーゲンの匂いを嗅いでも耐えられるようになっていたが、セイバーヘーゲンはそれを却って寂しく思うのだった。船は巨大なイカやクジラに襲われるが、航海の途中で発見した謎の船の中にあった装置を使ったセイバーヘーゲンは、超音波によってクジラをあやつる事ができるようになり、危機を乗り切る事ができた。そのクジラを利用して、一行は新大陸に向かう事になる。
第6巻
新大陸に到着した一行は、大陸人の集落に到着し、持参したチョコレートなどを利用して友好的な接触に成功する。彼らは20年ものあいだ女性となる者が現れず、全滅に瀕しているので、もしかしたら子供ができるかもしれないから友能まきをを置いて言ってほしいと申し出る。しかし、激怒したまきをによって即刻却下された。彼らの生活を観察するうち、R・J・セイバーヘーゲンは、大陸人は厳密には生殖活動を行っているわけではなく、もしかしたら同じ遺伝情報を延々と繰り返し保存するだけの存在なのではないか、という仮説に辿り着く。
第7巻
一行はノアヴィースの地図に示されていた島にやって来る。R・J・セイバーヘーゲンははここで、自分とゼーンとノアヴィースが、現在の世界を形づくる事になった三人の天才科学者の一人、ルノーのコピーとして作り出された事を知り、ルノーの記憶を垣間見る。同時に、セイバーヘーゲンとノアヴィースとゼーンの母親が「モールドレ」という存在である事を知る。その後、一行が中央の島にあった施設の奥に向かおうとすると、検問のようなシステムが「その場にモールドレがいる」というメッセージを発する。
第8巻
見渡せど、探せど、「モールドレ」の姿は誰も見る事ができない。モールドレは現在、人間の形態としては存在しておらず、この島においてアンドロイドのような形で疑似的に存在しているだけのものであった。島で、一行はこの世界の成り立つ秘密の深奥に迫ったものの、豹変したノアヴィースが世界を滅ぼすために核兵器の作動スイッチを操作してしまう。R・J・セイバーヘーゲンはこれを食い止めるべく、島のさらなる秘密を探りにかかるのだった。
登場人物・キャラクター
村上 静馬 (むらかみ しずま)
タツミ世界警備(ワールドガード)社の社員。新大陸調査隊警備班の班長を務める男性で、年齢は25歳。身長190センチ、体重85キロの巨体だが、足が速く、100メートルを10秒で走れる。新大陸調査隊の中では「班長」と呼ばれているほか、古い付き合いの友能まきをからは「馬男」というあだ名で呼ばれている。運命の石の力によって、R・J・セイバーヘーゲンの匂いで発情し、身体能力を大きく失う体質になった。
R・J・セイバーヘーゲン (れいじーんせいばーへーげん)
七つの博士号を持ち、七つの古代言語を解し、世界屈指の頭脳の持ち主と評される男性。年齢は28歳。身長186センチ、体重70キロと体格はいいが、身体能力は低く、運動神経も鈍い。新大陸調査隊の中では「博士」と呼ばれている。新大陸調査隊の結成を最初に提唱した人物である。男の身でありながら「美しい」と評されるほどに容姿端麗。運命の石の力によって、村上静馬の匂いで発情し、身体能力を超人的に向上させる体質になった。 新大陸調査でゼーンと出会うまではR・J・セイバーヘーゲン自身も知らなかったが、実は大陸人である。
友能 まきを (とものう まきを)
24歳の女性看護師。新大陸調査隊医療班に配属される。顔はかわいいと多くの人から評されているが、実は男色愛好家であり、男同士の恋愛に目がない。村上静馬とは中学校から6年間クラスメイトで、当時はガールフレンドだったが、今は恋愛関係にはない。
チェリー・ジャック (ちぇりーじゃっく)
海賊を自称する青年。新大陸調査隊がゼーンの襲撃を受けてキャンプを放棄して撤退した時、その救出と収容に当たった。またその後、R・J・セイバーヘーゲン、村上静馬、友能まきをらが再び新大陸に向かった時、その冒険に同行する。まきをに思いを寄せている。
アルビレオ
新大陸調査隊の調査の際、R・J・セイバーヘーゲンが出会った大陸人の未成年男性。セイバーヘーゲンに恋愛感情を抱くようになり、彼を追って旅に出たが、その途上でゼーンと出会う。ゼーンと賭けをし、運命の石を握ったアルビレオは女性の身体になり、ゼーンの伴侶となった。以後、いつしかゼーンに対してほだされるようになる。
ゼーン
新大陸の言葉で「魔神」という意味の名を持つ大陸人。外見はR・J・セイバーヘーゲンと瓜二つである。新大陸に生息する巨大な虫を使役する能力を持っている。理由はよくわからないが、多くの大陸人を襲って殺害している危険な存在。のちにアルビレオを伴侶にするが、それは力を得るために利用する事が目的であるので、手は出していない。
ノアヴィース
R・J・セイバーヘーゲン、ゼーンと共に生まれたもう一人の存在である大陸人。ゼーンからはノアと呼ばれている。幼少期はゼーンと共に育てられていた。身体が弱く、現在は視力を失ってしまっている。この世界の秘密の鍵を握っている人物である。
その他キーワード
大陸人 (たいりくじん)
新大陸に居住する亜人類。外見は人間に酷似しており、また知能も高く、人語を解する。必ず三人揃って生まれてくるが、それぞれが兄弟関係というわけではなく、「1番目」「2番目」「3番目」と呼ばれる。ほかに、成体になるまでは無性の状態であるなどの特徴がある。伴侶を得る事で性別が決定するが、繁殖活動を行ったあとは再び無性の状態に戻り、それを繰り返す。
運命の石 (うんめいのいし)
二人の大陸人が同時に触れると性決定し、片方が男になり、もう片方が女になる。同時に、双方がお互いの体臭に発情するようになり、かつ男の方は超人的な身体能力を手に入れ、女の方は無力化される。この状態は、女がその男の子を産んだ際に解除される。旧大陸の人間が使った場合は、体臭への発情と身体能力の変化という効果だけが生じる。