古オタクの恋わずらい

2021年、42歳の佐東恵は16歳の娘を持つシングルマザー。娘はアニメキャラの服を着こなし、オタクを隠すことなく、イケてる友達とつるんでいる。いまはオタクが市民権を得ている時代。しかし、恵が青春時代を送っていた26年前、こんな未来を予想することはできなかった。 1995年、17歳の恵は転入先の高校でオタクを隠そうと必死だった。やりすぎないルーズソックス、ほどほどのスカート丈、普通に見える髪型。しかし元気な人気者キャラを演じようとして「サトメグって呼んでください」と自己紹介し、ダダすべりしてしまう。もう高校生活は終わったと落ち込む恵に、オールバックで見た目ヤンキーの学級委員長・梶正宗が声をかけてくれ、すんなりクラスメートになじむことができた。クラスメートに学校を案内してもらい、体育館へ行くと、正宗がバスケをしている姿が。バスケをする正宗はかっこよく、大好きなスラムダンクのルカワが実体化したのかと興奮する恵。ファンクラブまであるところもルカワと一緒だった。そんな彼が恵に「周辺を案内するから一緒に帰ろうぜ」と言ってくれた。正宗の自転車の後ろに乗せてもらい、下校する恵。不良に絡まれ、正宗に助けてもらうという少女漫画的展開になるものの、恵は「ジャンプ」の脇役のようにケンカの解説をしてしまう。恵のつっこみに正宗は吹き出し、「なんかわかる」と言ってくれた。ジャンプの話で盛り上がり、正宗には本当の自分をわかってもらえるかもと勇気を振り絞って「オタク系の人ってどう思う？」と尋ねる恵。彼はにこやかに「死ぬほど嫌い」と返答するのだった。こうして正宗に恋をしてしまった恵は、必死でオタクという本性を隠し、好きなものを好きと言えない自分に苦悩する。