吉原遊女絵伝

吉原遊女絵伝

遊郭を舞台とした遊女たちの人間ドラマ。江戸時代の吉原で花魁としてたくましく、また慈愛に満ちて生きる女性たちを、5つの異なる遊郭にスポットライトを当ててオムニバス形式で描いている。

正式名称
吉原遊女絵伝
ふりがな
よしわらゆうじょえでん
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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あらすじ

花魁・紅の姫言

遊郭「月光楼」の花魁であるは、ある日、馴染みの客から花魁に登りつめるまでの苦労話を尋ねられる。そこから、紅は幼い頃に吉原に売られてきた日からこれまでの日々を話し始める。「遊女は歌舞の菩薩たれ」と教えた姉女郎、紅葉の言葉を胸に刻む紅に、馴染み客の男は1つの真実を打ち明ける。

初見世の名代

初見世を目前に控えた遊郭「鏡美屋」の見習い遊女、乙羽が突然失踪してしまう。このことが見世側にバレると乙羽が厳しい仕置きを受けると心配し、姉女郎の胡蝶たちは病であるとごまかし、その間に乙羽を探すことにする。そんな折に乙羽と瓜二つの外芸者、藤千代と出会い、初見世までの間、乙羽として振る舞ってもらうように依頼する。

花魁人形 恋の駆け引き

遊郭「鬼灯屋」の遊女、は顔つきや体つきの幼さからなかなか客がつかず、三文遊女としてこき使われていた。そんななか、鬼灯屋の若旦那である幽之介が別の遊郭「十文字屋」に飾られている花魁人形を嫁として迎え入れる。しかし花魁たちがこの人形を壊してしまったことで、蛍はその身代わりに仕立て上げられる。

玉響花魁俄之怪談

夏も盛り、遊郭「甲羅屋」では1年前に井戸に身を投げて死んだ花魁玉響が化けて出ると噂になる。しかしその正体は玉響の妹女郎だった玉絹とその禿(かむろ)であるちとせによる芝居であった。玉響の死に納得のいかなかった2人は、玉響の幽霊となってその真相を探っていたのである。

羅生門河岸雪色慕情

客のつかない遊女たちの掃き溜め羅生門河岸で生まれた花魁、舞雪は、舞い落ちる雪を見て自身の過去を振り返る。母親である雪川の死後、大見世「美鈴屋」の人気花魁である菊川の禿(かむろ)として引き取られた舞雪は、育ちが卑しいという理由でほかの女郎たちに疎まれていた。しかし若衆の宵之介と親しくなったことで、ほかの禿たちからさらに疎まれることになる。

登場人物・キャラクター

(くれない)

エピソード「花魁・紅の姫言」に登場する。遊郭「月光楼」に身を置く花魁。幼い頃、女衒の猿蔵に連れられて吉原へと売られた。馴染み客の男性の求めに応じ、売られてから花魁になるまでの日々を語って聞かせる。

乙羽 (おとは)

エピソード「初見世の名代」に登場する。初見世を控えた遊郭「鏡美屋」の見習い遊女。しかし水揚げを嫌い、幼い頃からひそかに想いを交わしていた若衆の蚕太郎とともに入った裏茶屋に身を隠す。蚕太郎に何度も抱いてくれとせがむものの、水揚げ前の遊女を傷モノにはできないと断られている。

(ほたる)

エピソード「花魁人形 恋の駆け引き」に登場する。遊郭「鬼灯屋」に身を置く遊女。15歳を過ぎて売られてきたため遊女としての躾をろくにされず、床技もぎこちない。さらに顔つきや体つきが幼く、無口なために客がつかないことから三文女郎として働かされている。他の花魁たちが花魁人形を壊してしまった際、その身代わりにされてしまう。

玉絹 (たまぎぬ)

エピソード「玉響花魁俄之怪談」に登場する。遊郭「甲羅屋」の花魁。井戸に身を投げて死んだ姉女郎の玉響の話に納得がいかず、真相を突き止めようと自身の禿(かむろ)であるちとせとともに幽霊騒ぎを巻き起こす。

舞雪 (まいゆき)

エピソード「羅生門河岸雪色慕情」に登場する。遊郭「美鈴屋」の花魁。吉原でも最下層の女郎屋がひしめく羅生門河岸で生まれたが、母親である雪川が病死したことで、「美鈴屋」の花魁である菊川の禿(かむろ)として引き取られる。若衆の宵之介とよく話をしていたことから、ほかの禿たちからねたまれることになる。

猿蔵 (さるぞう)

エピソード「花魁・紅の姫言」に登場する。紅を月光楼へ売った女衒。しかし貧窮に陥った親兄弟を助けようと自ら身を売った紅の孝行ぶりを気にかけ、折に触れて優しい言葉をかける。

紅葉 (べには)

エピソード「花魁・紅の姫言」に登場する。紅の姉女郎にあたる花魁。見習い遊女の挨拶に来た紅の顔を一目見て大物になると言い切り、それ以降芸事、床技問わず親身になって面倒を見るようになる。新造として初めて見世に出た紅が客を白けさせてしまった後も、責めることなく吉原遊女としての心得を言って聞かせた。

胡蝶 (こちょう)

エピソード「初見世の名代」に登場する。乙羽の姉女郎にあたる花魁。乙羽の水揚げに際して自身の上客に約束を取り付けるなど、非常に可愛がっている。乙羽が初見世から逃げたと発覚してからも、なんとか見世側に気づかれないようにと策を巡らせる。

蚕太郎 (こたろう)

エピソード「初見世の名代」に登場する。遊郭「鏡美屋」の若衆で、乙羽の想い人の青年。自身も乙羽を憎からず想ってはいるものの、逃げた遊女に課される仕置きや胡蝶たちの苦労、身代わりとなっている藤千代のことを考え、早く見世へ戻るようにと説得を試みる。

藤千代 (ふじちよ)

エピソード「初見世の名代」に登場する。吉原に出入りしている外芸者の少女。乙羽と容姿が瓜二つなため、胡蝶たちに身代わりを頼まれることになる。人助けという言葉に心動かされ、初見世までの間、乙羽として振る舞う。

幽之介 (ゆうのすけ)

エピソード「花魁人形 恋の駆け引き」に登場する。蛍が働く遊郭「鬼灯屋」の若旦那で跡取息子。遊女たちの間でも評判の男前だが、遊郭で騙し騙される遊女たちを見て育ったために女性に興味を持つことができず、初恋の存在だった花魁人形を妻に迎えることにする。

玉響 (たまゆら)

エピソード「玉響花魁俄之怪談」に登場する。かつて遊郭「甲羅屋」で人気のあった花魁。夕鶴に情夫の辰二郎を寝取られても顔色一つ変えずに飄々と過ごしていたが、妹女郎たちに一言も告げることなく、俄の始まる8月1日に井戸に身を投げてしまう。

ちとせ

エピソード「玉響花魁俄之怪談」に登場する。玉絹の禿(かむろ)で、玉響幽霊騒動の協力者。玉絹が幽霊に扮して逃走した際、嘘の証言で痕跡を消したように見せかける。

夕鶴 (ゆうづる)

エピソード「玉響花魁俄之怪談」に登場する。かつて玉響の情夫だった辰次郎を寝取った、遊郭「甲羅屋」の遊女。幽霊騒ぎが起きてから、玉響が自分を恨んでいるのではないかと怯えるようになる。

辰次郎 (たつじろう)

エピソード「玉響花魁俄之怪談」に登場する。かつては玉響の情夫だったが、夕鶴に浮気し、今では3日と空けずに通っている。幽霊騒ぎの話を聞いてからは玉響に謝罪と供養の気持ちを抱き、浄閑寺の門前で成仏を願うようになる。

雪川 (ゆきかわ)

エピソード「羅生門河岸雪色慕情」に登場する。舞雪の母親で、羅生門河岸で身を売る遊女。体調を崩しながらも舞雪を育てるために働いていたが、医者に診てもらうことすらできず、あっけなく病死してしまう。

菊川 (きくかわ)

エピソード「羅生門河岸雪色慕情」に登場する。大見世である遊郭「美鈴屋」の人気花魁にして、舞雪の姉女郎。羅生門河岸出身の舞雪が陰口を叩かれているところを見ても決してかばうことなく、突き放すような言葉をかける。

宵之介 (よいのすけ)

エピソード「羅生門河岸雪色慕情」に登場する。遊郭「美鈴屋」で生まれた若衆の少年。禿(かむろ)たちに人気のある美しい少年で、夜になると舞雪の話や相談を聞いてやっている。

場所

羅生門河岸 (らしょうもんかし)

エピソード「羅生門河岸雪色慕情」に登場する。舞雪が生まれた最下層の女郎屋界隈。病気を患ったり年老いて売れなくなった遊女が、厄介払いにと最後に流れ着く場所である。

イベント・出来事

(にわか)

エピソード「玉響花魁俄之怪談」に登場する。8月1日から30日間にわたって行われる、吉原の夏の催し。期間中は屋台や芝居小屋、大道芸でにぎわい、普段は吉原に足を運ぶことのない人も、老若男女問わず見物につめかける。

その他キーワード

花魁人形 (おいらんにんぎょう)

エピソード「花魁人形 恋の駆け引き」に登場する。大晦日から正月の間、遊郭「十文字屋」の店先に飾られる花魁の人形。若くして亡くなった花魁の「姫菊」をかたどった人形で、幽之介の初恋の相手。元日に遊郭「鬼灯屋」の花嫁として輿入れする。

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