概要・あらすじ
重度の聴覚障害を患う武田美栄子は、自らの希望で会社へと入社するも健常者との差に苦しみ、悩むことになる。そんな中、先輩社員の野辺博文は美栄子に手を差し伸べ、やがて二人は恋に落ちていく。周囲の人たちを説き伏せた美栄子と博文は結婚し、一子・千鶴を設ける。聴覚障害を患っていることで、様々な困難が美栄子に襲いかかるが、その一つ一つを美栄子は持ち前の明るさと行動力で解決し、周囲と良好な関係を築いていく。
そんな中、頼りの夫である博文の仙台への出張が決まる。博文と暮らしやすい環境のどちらを取るかで悩む美栄子だが、家族の情を重視して博文とともに仙台に向かうことを決意。新天地でも、美栄子は博文や千鶴の力を借りながら、奮闘してくのだった。
登場人物・キャラクター
武田 美栄子 (たけだ みえこ)
幼いころに高熱のせいで重度の聴覚障害を患うようになった女性。ある程度の読唇術を心得ているものの、普通の会話についていけるほどではなく、また発音もたどたどしく伝えづらいため、もっぱら手話や筆談を主な伝達手段として利用している。障害故に引っ込み思案な性格をしていたが、自分を変えるために一般企業へと就職。 当初は健常者たちとの差を感じ、部内でも足手まといのような扱いを受け退職も考えたが、先輩社員である野辺博文の協力を受けて次第に性格も明るくなっていき、企画も任されるほどに成長していく。ワープロの打ち込みが早く、また障害者ならではの着眼点とそれを活かす発想力も持っている。その後、長女・千鶴を出産。 障害者であることで様々な困難が立ちはだかっていくが、持ち前の行動力と博文や千鶴 の協力を得て一つ一つ解決していく。そのためか、ややおせっかい焼きなところがあり、困っている人を見過ごせない。
野辺 博文 (のべ ひろふみ)
武田美栄子の先輩社員であり、彼女の夫。美栄子との初対面時は、彼女が聴覚障害を持つことを知らずに、感じの悪い人だと勘違いをしていた。その後、職場に馴染めずに孤立する美栄子がワープロに秀でていることを知ると個人的に仕事を振り始め、その中で次第に美栄子に興味を持つようになっていく。 その際、美栄子と会話をするために手話を勉強したおかげで一通りの会話をすることが出来る。やがて美栄子と結婚し、一子・千鶴をもうける。美栄子との生活の中で、最初こそ戸惑うことも多かったが、彼女のことを信頼するようになっていく。
野辺 千鶴 (のべ ちづる)
野辺美栄子と野辺博文との間に生まれた女児。活発で心優しい少女。幼い時には、母親の持つ障害のせいで悩むことも多かったが、成長するに従い理解を示すようになり、美栄子の大きな助けとなる。幼い時から手話に触れて育ったため、一通りの会話が出来るほか、美栄子と同様に困っている人を放っておけない性格。
武田 真知子 (たけだ まちこ)
しっかりもので頼りがいのある武田美栄子の妹。障害を持つ姉に両親が構いっぱなしであったため早くから自立しており、またそのことを成長してからも引きずらずに、姉との仲も良好。
武田 晴子 (たけだ はるこ)
幼い頃に聴覚障害を患ってしまった武田美栄子を全力でサポートしてきた彼女の母親。美栄子にとって一番の理解者であるが、反面やや過保護気味なところがある。
野辺 正江 (のべ まさえ)
野辺美栄子の姑であり、野辺博文の母親。博文のことを溺愛しており、当初は聴覚障害を患う美栄子との結婚に反対し、彼女に直接話しにいった。しかし、その場で美栄子の心優しさと愛の強さを知り、彼女にウェディングドレスを送って応援する側に回る。その後は美栄子をちゃん付けで呼ぶなど距離を縮めるが、彼女と孫の千鶴を心配するあまりに無理やり同棲をしようとしたこともある。
奈保子 (なおこ)
武田美栄子の 聾学校での同級生で一番の親友。健常者の恋人がいたが、ある日相手の負担になっていることを知って自分から別れを告げた過去があり、健常者である野辺博文と交際をしている美栄子に対して止めた方が良いと忠告をする。しかし、その後美栄子の強い決心を聞くと彼女を応援する側に回り、自分ももう一度頑張ろうと決意する。
続編
新・君の手がささやいている (しん きみのてがささやいている)
軽部潤子の代表作『君の手がささやいている』の続編。重度の聴覚障がい者である野辺美栄子と、夫の野辺博文や娘の野辺千鶴、近所の人たちとの触れ合いを描いたハートフルヒューマンドラマ。生まれつき耳が聞こえない... 関連ページ:新・君の手がささやいている