あらすじ
第1巻
高校に入学して以来、瀬戸一貴はクラスメイトで演劇部に所属している葦月伊織に片思いをしていた。これまでおとなしく目立たない存在の伊織だったが、演劇部の宣伝も兼ねて引き受けた雑誌の水着グラビア企画が大いに話題になり、みんなの注目を集めるようになっていた。伊織が急に遠くに行ってしまったようで複雑な感情を抱く一貴だったが、新入生歓迎会の係に伊織と共に抜擢。伊織とまともに会話を交わした事のない一貴はうまく振る舞えないものの、打ち合わせを通じて二人の距離はゆっくりと縮まっていく。そんな中、伊織が演劇部の練習中に素行の悪い男子生徒達から、卑猥な言葉を浴びせられる事件が発生。一貴は怒りに震えて、その男子達に飛びかかったところ、運悪く演劇部からは一貴が暴言の主だと誤解されてしまう。これにより一貴は伊織に勘違いされたと落ち込むが、伊織は最初からその声が一貴のものではない事を理解していた。この事件を通じていい雰囲気になった一貴と伊織だったが、寺谷靖雅が作成した伊織の顔とヌードモデルを合成した写真を伊織に見られてしまい、最低だと幻滅される。新入生歓迎会の係も解散だと絶望した一貴だったが、担任の花園広巳から「一貴と伊織の二人羽織りを出しものにしよう」と提案を受ける。二人羽織の練習を通して伊織は一貴に言い過ぎたと謝罪し、二人の関係は再び良好なものへと変わっていく。そんな中、一貴と伊織は二人羽織の小道具を購入しに土曜日に街へ行こうと約束をするが、一貴は寝坊してしまう。しかし、寺谷が待ちぼうけしていた伊織を見かけて一貴の自宅へ連れて来た事をきっかけに、一貴は自室で伊織と二人きりになる。
第2巻
瀬戸一貴は自室で葦月伊織と楽しい時間を過ごしていた。伊織がトイレのために部屋を出ていくと、入れ替わるタイミングで下着姿の秋葉いつきが入って来る。アメリカで暮らしていたいつきは、日本の学校に通うために帰国していたが、一貴はそれを知らせる母親からの手紙に気づいていなかったのだ。焦った一貴は慌てていつきをベランダに押し出し、会話をしていると、既に伊織は部屋に戻って来て、会話の一部を聞いていた。伊織に片思いしている事が、ばれてしまったのではないかと慌てる一貴の様子を見て、伊織は一貴がいつきと付き合っていると誤解するのだった。後日、一貴は学校で伊織の誤解を解こうと、彼女の目の前でいつきを傷つけるような発言をしてしまう。罪悪感を抱いた一貴はいつきを新入生歓迎会へと誘うが、当日いつまで経ってもいつきは現れない。新入生歓迎会後、打ち上げを断り自宅へと戻ると、いつきから一貴あての別れを告げるメモ書きが残されていた。一貴は衝動的にいつきを探しに出たものの見つからず、二度と会えないのではないかと落ち込むが、実は近所に引っ越しただけだった。
第3巻
夏休み、瀬戸一貴、葦月伊織、秋葉いつき、寺谷靖雅は寺谷の親戚が経営する海近くの民宿「荒波」に旅行へと出かける。一貴はこの旅行中に伊織に告白をしようと決め、夜の海辺に伊織を呼び出す。一貴が勇気を振り絞って伊織に告白の言葉を掛けようとしたところ、伊織は耳をふさいで大声で叫び出し、一貴は告白を拒絶されたのだとショックを受ける。傷心の一貴は海辺で仲よくなった女性と夜に二人で会う約束をするが、伊織の事が吹っ切れていないため、何もせずに終わる。一方、伊織は一貴から告白ではなく、怖い話をされると警戒していただけだった。一貴から避けられていると感じた伊織は、一貴を人気のない場所に呼び出し話を聞こうとするが、一貴は前日に呑んだアルコールのせいで目が回って倒れ、結局告白はできずに夏休みが終わる。9月の始業式当日、一貴は伊織がヌード写真集を出すという噂を耳にしてしまう。何としてでも阻止したい一貴は伊織に断るように言うが、伊織は自身が所属している演劇部をバカにされた事もあり、助言を聞き入れる事を拒否。そのまま学校内で行われる撮影へと向かってしまうが、一貴はどうしてもあきらめきれない。いつきから背中を押された事もあり、一貴は撮影が終わった伊織のもとへと向かう。
第4巻
瀬戸一貴は、秋葉いつきと寺谷靖雅に断られてしまったからと理由を付け、自分の誕生日を祝ってほしいと葦月伊織をデートに誘う。しかし、偶然にも一貴と伊織がいっしょにいる場面にいつきが現われ、一貴に対して「誕生日は盛大に祝ってあげる」と告げる。伊織はいつきがいるならと、デートの日に演劇部部長との約束を優先するが、一貴はいつまでも待っていると食い下がる。そして一貴の誕生日当日、伊織はいつになっても現れず、一貴が落胆したまま自宅へと向かうと、目の前にいつきが現われる。そして一貴はいつきからのキスを受け入れ、いつきはずっと一貴が好きだったと告白。次の日、キスをしたにもかかわらず態度を変える事もしないいつきに心を揺さぶられながら登校すると、実は伊織は待ち合わせ場所に行っており、行き違いになっていた事が発覚する。そんな中、一貴達は京都へと修学旅行へ向かう。自由時間には男女ペアで行動し、最終的に旅行のレポートを提出する事になり、一貴は伊織とペアが組めるように祈るが、結果は女子でもない男性の担任、花園広巳とペアを組む事になった。落胆する一貴の前に、伊織とペアを組んだ越苗純が度々視線を向けている事に気づく。その後も越苗と一貴は頻繁に目が合い、一貴は伊織を巡るライバルだと警戒する。しかし実際は、越苗は花園に片思いしており、一貴とペアを交代してほしいと依頼するのだった。こうして一貴と伊織は急遽ペアを組む事となり、自由時間を満喫する。
第5巻
瀬戸一貴は葦月伊織を誘い、二人でカップルで参拝すると恋が叶うと噂される神社へと行く。そんな中、一貴の母親から秋葉いつきの家が火事になり、いつきがどこにもいないと連絡が入る。一貴の母親は花園広巳には「自宅が火事だ」と言っていた事もあり、一貴は伊織との時間に後ろ髪を引かれつつ、一人東京へと戻る。すると、いつきの住むアパートは全焼していたものの、いつきは無事であった。これをきっかけにいつきは再び、一貴の家に居候する事となったが、ある日突然、行先も告げずに出て行ってしまう。一貴の心は伊織といつきのあいだで揺れ動いており、それを見抜いた越苗純は、伊織に対しての思いを問う。越苗から痛いところを突かれた一貴はやけになり、自分は伊織が好きではないと発言。運悪くその場面を伊織が目撃してしまうが、彼女はまったく気にせず、いつも通り笑顔を見せるのだった。その瞬間、一貴は完全に自分の片思いだと確信し、いつきを選ぶ事を決意。帰宅途中の電車内で偶然いつきと会った一貴は思いを伝えようとするが、いつきは造形の師匠、竹沢隆志のもとに住み込みで勉強させてもらっていると告げ、突然電車を降りてしまう。一貴はいつきを追う事もできずその日は終わったが、後日一貴の通う高校に竹沢が臨時の美術講師として訪れ、そのアシスタントとしていつきも姿を見せる。
第6巻
瀬戸一貴が所属するクラスでは、竹沢隆志と秋葉いつきの歓迎会が行われた。竹沢が仕事のため参加できない事もあり、いつきのみが参加する。妙にいつきを意識してしまう一貴に対し、葦月伊織は「もっと自然体でいい」などアドバイスをする。そんな中、久々にいつきと二人きりになれた一貴は、今度の土曜日に会おうと約束を取り付け、その時にいつきに告白する事を決意。一方、越苗純は中学時代の友達から校内新聞にかわいい他校の女の子の写真を掲載したいから、今度の土曜日に伊織を撮影させてほしいと依頼を受ける。伊織は越苗の友達だからと承諾したものの少し怖いとも感じ、一貴についてきてほしいと声を掛けるが、一貴はデートの約束があるからときっぱり断る。そして土曜日、伊織の撮影に同行した越苗は撮影現場の雰囲気がおかしい事に気づく。そして早めに一貴の携帯電話に連絡を入れ、万が一に備えてこちらに来てほしいとお願いをするが、一貴はいつきとデート中だからと電話を切る。実際に越苗の友達は、伊織を辱めようとしていた不良グループに脅されて伊織を呼び出したのだった。しかし、武術の達人の越苗の活躍と駆けつけた一貴の介入により、伊織は難を逃れる。そして一貴はいつきのもとへと戻るが、いつきは「自分が好きなのは伊織の事が好きな一貴」と告げ、再びアメリカへと戻っていった。その後、一貴は高校3年生に進級し、再び伊織と共に新入生歓迎会の係に抜擢。しかし、今年は寺谷靖雅やナミといったクラスメイトも手伝ってくれる事となる。そしてゴールデンウイーク、両親が旅行中のナミの自宅で新入生歓迎会の出し物について話し合い合宿が行われ、「王様ゲーム」が行われる。最初は友達同士の戯れ程度だったものの、次第に内容は過激なものへと変わっていく。
第7巻
ナミの自宅で行われた「王様ゲーム」は佳境を迎え、瀬戸一貴と葦月伊織はベッドの中で抱き合いキスする命令を受けるが、寸前のところで停電になってしまう。すると真っ暗な中、伊織から一貴にキスをする。伊織も自分を思ってくれていたのだと喜ぶ一貴だったが、次の日の伊織はいつもと変わらない態度で接して来る。そんな中、新入生歓迎会の出し物は寺谷靖雅が脚本を務める短編映画作品と決まり、女装した一貴と男装した伊織の恋愛ストーリーが撮影される。撮影中、さまざまな台詞をやり取りしていく中で、一貴はやはり伊織の事が好きだと確信。映画撮影が終わって帰宅後、一貴の家に秋葉いつきからビデオテープが届く。気持ちが揺らぐから見ないと決めた一貴のもとに、伊織からの電話が入る。ナミが撮影したテープを学校内のどこかに置き忘れてしまったというものだった。一貴は夜の学校へと向かい、伊織、ナミ、寺谷らとテープを探し回る。その最中に一貴は伊織と共に旧校舎へと行き、痛んでいた床が抜けて地下部分へと落下してしまう。人が助けに来るまで待つ事になった一貴と伊織だったが、夜の学校に二人きりといったシチュエーションもあり、一貴は伊織に二度目のキスをしようとする。しかし、一貴は伊織から平手打ちを受け、激しく拒否されてしまう。
第8巻
葦月伊織にキスを迫って平手打ちをされてから、瀬戸一貴は伊織との関係がギクシャクしている状況に悩んでいた。そんな中、一貴は寺谷靖雅の親戚が経営する海近くの民宿「荒波」に行く事になった。メンバーには伊織も入っており、一貴はどのように声を掛けるべきか落ち着かない。そんな中、一貴は人気のない場所で一人たたずむ磯崎泉を見かけ、会話を交わす。泉は失恋の傷を癒すために旅行に訪れており、一貴に対して夏のあいだだけ恋人になってほしいとお願いし、積極的にかかわり合いを持とうとして来る。そして夜、寺谷のいたずらによって一貴は女湯に入ってしまい、そこには伊織とナミが入浴していた。絶体絶命のピンチに陥る一貴だったが、偶然その場に居合わせた泉のおかげで一時は誤魔化せたものの、結局は伊織とナミに見つかってしまい、二人から軽蔑されてしまった。寺谷は激怒している伊織とナミに真実を伝えるタイミングがなく、仲間の中に居場所がなくなった一貴は泉と共に行動する。そして泉は「五十一石の穴」という、岩穴に入っている石をすべて積み上げると、永遠の愛が守られる言い伝えのあるスポットに連れていく。そこに泉と寺谷の説得によって伊織が現われ、一貴と伊織は再び普通に会話が交わせる関係へと戻る。そして夏休みも終わり、学校生活に戻った一貴の前に、泉が再び現われる。
第9巻
瀬戸一貴と葦月伊織は表面上は会話を交わすが、何となく不穏な空気が漂っていた。また、伊織からは一貴と磯崎泉の関係を疑うような発言も多く、一貴は戸惑う。そんな中、文化祭の準備のために夜遅くまで学校に残っていた伊織から一貴の自宅に電話が入ったが、用件は「泉が文化祭準備を手伝ってほしいと言っている」というものだった。一貴が泉が所属するクラスに行くと泉の元彼氏も現われ、泉が一貴を現在の彼氏だと紹介した事もあり、殴り合いの喧嘩へと発展。しかし元彼氏の気持ちもわかる一貴は、泉の彼氏ではないと元彼氏に真実を伝える。喧嘩は収まったものの、彼氏ではないと言ってしまった埋め合わせとして、泉は一貴に対してクリスマスイブデートをしてほしいとお願いする。驚きつつもどうせクリスマスイブに予定は入らないだろうと高をくくっていた一貴だが、寺谷靖雅と寺谷に思いを寄せる森崎祐加、そして伊織からクリスマスイブのパーティーをしようと持ちかけられる。一貴は泉とのクリスマスイブデートを断るが、泉は納得せずずっと待っていると宣言。そしてクリスマスイブ、それとなく寺谷と祐加、一貴と伊織のペアになり、四人はカラオケルームでケーキやアルコールを楽しむ。
第10巻
クリスマスイブの夜、寺谷靖雅の計らいで瀬戸一貴は葦月伊織と二人きりになった。そこに磯崎泉の元彼氏が乱入し、泉とデートの約束をしていたのではないかと問い詰める。一貴は泉には断ったと言うものの、元彼氏はずっと待っているような女だと言い切り、その場を去る。それを受けて一貴は、伊織に待っていてほしいと告げ、泉の様子を見るためその場を去る。待ち合わせ場所ではやはり泉が待っていたが、彼女は一貴に伊織の方に行くよう優しく声を掛ける。そして一貴はもう帰っているかもしれない伊織のもとへと戻ると、伊織はその場で待っていた。しかし、寺谷に告白してもふられてしまい、泣きじゃくる森崎祐加もおり、三人で帰宅をする事となる。その途中、電車内で眠ってしまった祐加の前で、一貴は伊織に告白。その後、一貴の部屋で二人はキスをして抱き合うが、伊織の一言によって一線は越えないまま、その日は解散となる。冬休みとなり、一貴は伊織としばらく会わない日が続いた。そんな中、ようやく伊織から連絡を受けた一貴が会いにいくと、伊織に「もう会わないほうがいい」と言われてしまう。
第11巻
ある日、瀬戸一貴は森崎祐加から、なぜ葦月伊織をふったのかと連絡を受ける事となった。心当たりのない一貴が伊織を呼び出すと、伊織は受験前の一貴を思い、勉強の妨げにならないよう「もう会わないほうがいい」と発言したと語る。そして、それ以来勇気を出せずに一貴を避けてしまったと打ち明ける。こうして互いの思いを知った一貴と伊織は交際をスタートしたものの、伊織の芸能活動が本格化する事もあり、寺谷靖雅、ナミ、祐加など親しい友人達を除き、その関係を周囲に伏せる事となった。一貴と伊織の交際については磯崎泉にも打ち明けられず、泉はこれまでと変わらずに一貴に対して強引なアプローチを続ける。そんな中、一貴は大学受験に失敗し、とりあえず実家を出てフリーターになる事を決意。そして、一貴は寺谷やナミ達から強引に卒業旅行に誘われる。そこには当初不参加と言っていた伊織がおり、一貴は伊織と同じ部屋に二人きりで宿泊する事となった。
第12巻
瀬戸一貴と葦月伊織は同じホテルの一室に宿泊したが、さまざまな要因が重なり結局一線は越えられないままだった。翌日、寺谷靖雅から伊織が芸能人になった事で、萎縮して先に進めないのではないかと指摘された一貴は改めて自分を省みて、その言葉に納得しながらも、伊織に対する自分の思いを再確認するのだった。そんな中、卒業旅行先に木田と磯崎泉が押しかけ、メンバーに加わる。相変らず泉が堂々と一貴にアプローチをするため、伊織や越苗純は、泉にだけは伊織との交際を打ち明けた方がいいのではないかと提案する。しかし一貴は、行動力のある泉が交際を周囲に吹聴する心配をし、打ち明けられずにいた。それどころか、泉に対し伊織との関係を激しく否定する場面を伊織本人に見られてしまう事となり、伊織は一貴に不信感を抱く。そしてその夜、くじ引きで木田と伊織、一貴と泉が同室になる。泉は一貴に対し、身体の関係を持とうと誘惑して来る。
第13巻
瀬戸一貴は磯崎泉に、ついに葦月伊織と交際している事を明かした。泉は彼女がいるのは構わないと言いつつも、秘密にされていた理由が、自分が信頼されていなかったためである事にショックを受け、涙を流しながら一貴の前から姿を消すのだった。卒業旅行も終了し、一貴は寺谷靖雅の伝手で、古いアパートで一人暮らしをスタートした。となりの部屋には伊織に似た雰囲気の麻生藍子が住んでおり、失くした鍵を一緒に探したり、藍子の部屋にゴキブリが出たりといった縁で急速に接近する。一方、伊織はドラマ出演が決まるなど芸能活動が順調で、一貴は恋人としての自信を失っていく。さらに伊織はマネージャーから外でのデートを禁じられており、自由に会えない日々が続く。やっとの思いで伊織とデートの約束を取り付けるものの、当日、伊織は舞台演出家のカミノギイサイとの打ち合わせを優先。一貴はショックを受けるが、実は伊織は演技で悩んでおり、一貴の「好きな事してるんだから、がんばれ」との言葉がプレッシャーとなり、一人で思い悩んでいた。いつの間にかすれ違っていた事に気づいた伊織は、このままではお互いに辛いだけだと一貴に別れを告げる。しかしまだお互いに恋心を抱いている二人は別れを選択せず、伊織が出演する舞台の稽古の空き時間などを利用して顔を合わせ、互いに理解を深めるよう努力するのだった。
第14巻
瀬戸一貴が一人暮らしをするアパートに、磯崎泉と寺谷靖雅が突然やって来た。泉達は麻生藍子も誘い、四人で罰ゲーム付きのツイストゲームを始める。一貴は相変らず積極的な泉の色仕掛けや藍子の水着姿に戸惑いつつも、その日は終了する。そして次の日、一貴は葦月伊織から舞台の稽古の見学をしないかと誘われる。そこで現在フリーターで明確な夢もない自分と、芸能人として生きる伊織との差を感じ、一貴は落ち込む。さらに伊織のマネージャーからは遠回しに別れるよう指示され、しばらく稽古に打ち込むからと、伊織と最後のデートをしておくように命じられる。デートの日、マネージャーから別れるように圧力をかけられているとは知らない伊織は、一貴に対して近況報告の一環として芝居の稽古の話ばかりをする。不機嫌になった一貴は伊織に対して不快感をあらわにし、そのまま一人暮らしのアパートへと戻る。すると部屋の前にはご機嫌な藍子がおり、明日は遠距離恋愛中の彼氏が部屋に来るため、一貴にプレゼント選びをしてほしいと依頼。そのまま一貴と藍子はショッピングへと出かけ、楽しい時間を過ごす。しかし次の日、藍子のもとに彼氏は現れず、準備していた食事もプレゼントもすべてが無駄になってしまった。関係をはっきりさせた方がいいと考えた一貴は、藍子に付き添い、遠距離恋愛中の彼氏が住む街へと向かう。
第15巻
瀬戸一貴は寺谷靖雅の兄から、マリオネット・キングと名乗る謎の人物が、「葦月伊織を殺害する」とインターネット上で殺害予告をしていると聞かされる。寺谷はいたずらだろうから相手にしなくていいとアドバイスするが、一貴は越苗純から護身術を習い、伊織を守るため万が一に備える。そして、舞台の稽古の出入りを監視するものの、逆に一貴が伊織のファンからマリオネット・キングだと誤解され、襲撃を受けてしまう。その後、カミノギイサイから呼び出しの連絡を受けた一貴は、カミノギから単刀直入に別れるように命令される。二人の交際は伊織のためにならないと言い切られた一貴の前に、カミノギと入れ替わるように伊織が現われる。そこで伊織はやはり一貴といっしょにいるのが一番落ち着くし、好きだと涙を流す。その姿を見た一貴は伊織が女優として大成するため、身を引く事を決意。一貴は磯崎泉と身体の関係を持ったと嘘をつき、伊織に対して一方的な別れを告げるのだった。伊織の舞台の初日が行われるクリスマスイブ、一貴は寺谷、越苗、ナミ、森崎祐加といった高校時代からの仲間に泉を交え、舞台を観に行く。そこでマリオネット・キングを見つけた一貴は彼を撃退するが、自身も傷を負って意識を失い、病院へと運ばれる事となった。意識を失っている最中、一貴は高校時代の夢を見る。そこにはまだぎこちない雰囲気の伊織と自分がいた。
登場人物・キャラクター
瀬戸 一貴 (せと いちたか)
これといった取り柄や特技はないが、顔立ちは良い部類。内面的にはやや優柔不断なものの、正義感が強めで、他人の気持ちを慮ることもできる。場をわきまえずにエッチな妄想に浸りやすい傾向はあるが、それも思春期の男子としては健全といっていいレベルの、ごくフツーの男子高校生。入学時にクラスメイトになった葦月伊織にひと目惚れし、密かに憧れている。 だが、小学6年生のとき、当時好きだった女の子への態度から気持ちを気づかれたうえに、かなりキツい言葉でフラれたため、「同じような経験をするくらいなら片想いでいい」と考えるように。また、態度から気持ちを悟られたくないあまり、好きな相手には本心と真逆の行動(優しく接したいのに冷たい態度で応じるなど)を咄嗟に取ってしまう悪癖「逆走くん」持ちでもある。 そうした自信の無さや失敗を無意識に恐れる心理から、実行委員や修学旅行などで葦月伊織とペアになる機会が巡ってきても、なかなか踏み出せなかった。逆に、秋葉いつきや磯崎泉、麻生藍子といった、自分に対して明らかに好意的な人物には滅法弱く、一時的に抱いた感情にのめり込みやすい。
葦月 伊織 (よしづき いおり)
瀬戸一貴のクラスメイトで、雑誌のグラビアを飾るほどの美少女である。在学する湾田高校の演劇部・劇団わんだこに所属し、将来は役者になるのが夢。明るく優しい性格の誰にでも好かれるタイプだが、自分の主張については控えめで、強引さに欠ける部分がある。そのため、当初から一貴に好意を抱いているにも関わらず、秋葉いつきや磯崎泉のような恋のライバルが現れると、自ら一歩退くケースが多い。 一貴と二人きりになるシチュエーションでは、それなりに積極的になるものの、好きだという気持ちをストレートに表現できるほど成熟してもいない。物語後半には、芸能プロダクションからスカウトされ、大きな舞台のキャストに選ばれるなど、役者への夢に一歩近づいた。 だが芸能人として大成させたいスタッフ側の思惑と、一貴への想いが複雑にぶつかり合うこととなり、夢と恋、どちらを選ぶかという選択肢が突きつけられる。
秋葉 いつき (あきば いつき)
瀬戸一貴の一歳年下の幼馴染でボーイッシュな女の子。家族の事情により、しばらくアメリカで暮らしていた。性格はとても明るく朗らかで自分に正直、かつ行動力がある。誰とでもすぐに打ち解けるコミュニケーション能力の高さも持ち合わせ、竹沢隆志の助手として一貴の高校を訪れた際に、彼のクラスメイトと一瞬で仲良くなった。 小学生の頃から瀬戸一貴のことを好いており、その想いを抱き続けている。が、彼の心の奥底には常に葦月伊織がいることも察しており、自分の想いを胸に仕舞ったまま立ち去った。図工の時間に一貴の胸像を作り、その出来を彼に褒められたことや、天才的な造形の才能を持っていたことから、一流の造形師になる夢を抱いている。
磯崎 泉 (いそざき いずみ)
瀬戸一貴の通う湾田高校の生徒で、二年下の後輩。凄まじい積極性と行動力を併せ持つ女の子で、浮気性の彼氏を捨てて、一貴に乗り換えようと果敢にアタックしてくる。その攻撃は、一貴に意中の女子がいることを知っても、諦めるどころか肉体関係をエサに迫ってくるほど。結局、泉の恋は成就することはなかったが、一貴への想いは彼女の偽りない本心であり、物語の最後まで変わることはなかった。
麻生 藍子 (あそう あいこ)
瀬戸一貴が独り暮らしを始めたときに、アパートの隣室に住んでいた女性。一貴より一歳年上で、少し天然っぽいところがあるが、心の芯はしっかりしたものを持つ。秋田に住む彼氏と遠距離恋愛中だったが、彼氏との仲が疎遠になっていたことから、隣人の一貴の優しさに惹かれはじめる。しかし、一貴の本心を見抜いていたため、葦月伊織を諦めて楽な相手に流れようとする彼を諌めつつ、去って行った。
寺谷 靖雅 (てらたに やすまさ)
瀬戸一貴のクラスメイトで、彼がすべてを打ち明けられる親友でもある。無類のスケベであり、玉砕を恐れず果敢にチャレンジするタフな精神の持ち主。また、一貴に比べると遥かに女性心理に精通しており、彼に様々なアドバイスを与えたり、葦月伊織との関係促進の場作りを行ったりする。それらは意外と的を射ていおり、実際に功奏することも多い。 ただ、本人はイマイチな容姿であることや、手当たり次第な性格なためか、彼女ゲットには至っていない。
越苗 純 (こしなえ じゅん)
瀬戸一貴のクラスメイトで、女性的な顔立ちが特徴の男子生徒。修学旅行の際に、葦月伊織を狙うライバルとして一貴に警戒されていたが、実際には誤解であり、それが解けた後は一貴や寺谷靖雅の良き友人となった。ちなみに、越苗純は同性愛者であり、クラス担任である男性教師・花園広巳に好意を抱いている。 また、温和な性格だが、祖父から武術を仕込まれており、必要な局面では容赦なく相手を叩きのめす。
ナミ
瀬戸一貴のクラスメイトで、葦月伊織の親しい友人のひとり。姓は不明。サバサバとしていて気が強い性格の持ち主で、リーダーシップもある。一貴の視点から語られる作風のため、彼が居ない場所での伊織との会話などはほとんど見られず、ナミが寺谷靖雅のようなポジションで伊織を支えていたかは不明。 ただ、彼女の言動の端々には、二人が両想いであることに早い段階から気づいている節が窺える。
森崎 祐加 (もりさき ゆうか)
瀬戸一貴のクラスメイトで、葦月伊織の親しい友人&良き相談相手。取り立てて目立った特徴のない平凡な女の子だが、何を血迷ったのか寺谷靖雅に好意を抱くようになり、告白するも素気無くフラれてしまう。が、その後も変に落ち込んだりする様子はなく、終盤にはお互い憎まれ口を叩きながらも満更ではない雰囲気に描かれている。
木田 (きだ)
瀬戸一貴のクラスメイトの男子高校生。一貴や寺谷靖雅が葦月伊織、ナミ、森崎祐加といっしょに遊ぶ時にはメンバーとして参加する機会が多い。最初は恋愛感情なくグループで友情を育んでいたものの、伊織が芸能人になってからは態度が激変。伊織の大ファンになり、伊織に接近するために危険な思想を抱くようになる。 そのため寺谷やナミからは危険人物として目をつけられ、グループで遊ぶ際にはメンバーから外されるようになったが、それでも居場所を突き止めて参加するなど、伊織のためならば底知れぬ行動力を発揮する。
花園 広巳 (はなぞの ひろみ)
瀬戸一貴のクラス担任で、髭を生やしていることから「ヒゲミちゃん」と呼ばれている。豪快で強引、細かいことは気にしないタイプのマッチョな男。余計な課題を出すため、憎まれ口を叩かれることが多いが、なんだかんだで生徒からの人気は高い様子。
竹沢 隆志 (たけざわ たかし)
瀬戸一貴が通う湾田高校に美術の非常勤講師として赴任してきた造形師。秋葉いつきの雇用主でもある。穏やかで包容力のあるオトナの男であり、秋葉いつきは「師匠」と呼んで慕っていた。造形師としても超一流で、ハリウッドから大作映画のオファーを受けるほどの腕前である。
古川 リエ (ふるかわ りえ)
葦月伊織が所属する芸能プロダクション・イサイプロのマネージャー。葦月伊織を役者として大成させるため、瀬戸一貴を遠ざけようとしている。一貴への手紙や贈り物を内密に処分したり、伊織と別れるよう一貴を諭したりするなど、様々な策を弄した。
カミノギ イサイ
葦月伊織が尊敬する天才舞台演出家。伊織に役者としての大きな才能を感じており、その目醒めのために瀬戸一貴を排除しようと考えている。
マリオネット・キング
瀬戸一貴と同じ湾田高校の生徒で姓名は不明。葦月伊織が初めてグラビアに登場したときから彼女のことを付け狙い、度々暴行を加えようと画策する。最終的にはマリオネット・キングと名乗り、芸能人となった葦月伊織に対してネット上に殺害予告を流し、実行しようとするが、未遂に終わった。