概要・あらすじ
和泉式部は、既婚者でありながら、身分違いの男性である弾正宮との恋に溺れた。父親も夫も娘をも捨てて、貫いた恋であったにも関わらず、弾正宮は若くして亡くなってしまい、あっけなく2人の恋は終わりを告げる。こうして和泉式部は、恋だけでなく、社会的基盤も家族も失い、空虚さを抱えることとなった。そんな彼女を心配して、弾正宮の弟で真面目な貴公子である帥宮が見舞いにやって来る。
お互いに相手との恋を自身に禁じつつも、いつしか2人は互いに愛し合うようになっていく。そして、2人は社会的な制約や数々の障害を乗り越え、愛を貫くことを決意するのだった。
登場人物・キャラクター
和泉式部 (いずみしきぶ)
身分は低いが、素晴らしい歌を詠み教養もあるうえ、美人と評判も高い26歳の女性。夫である橘道貞とうまくいっていなかった頃に弾正宮と出会い、身分差を越えて愛し合うようになる。結果、夫からは離婚され、父からは勘当された。弾正宮の死後は、1人で寂しく過ごしている。自身のすべてを賭けて臨んだ恋があっけなく終わったことで、恋愛に対しては恐怖感のようなものを持っている。 以後は自身に恋愛を禁じていたが、弾正宮の弟である帥宮を、少しずつ愛するようになっていく。実在の人物、和泉式部がモデル。
弾正宮 (だんじょうのみや)
和泉式部の恋人で、身分は親王。無邪気で情熱的な性格で、権力者の意向などを一切気にせずに、自分のやりたいように生きている。自身よりも身分がはるかに低い和泉式部を、対等な存在として深く愛した。和泉式部に会うために毎夜外出した結果、流行っていた伝染病に罹患し、26歳で亡くなった。実在の人物、為尊親王がモデル。
帥宮 (そちのみや)
弾正宮の弟で、身分は親王。年齢は23歳。犯しがたい気品を持つ真面目な男性で、女遊びの激しかった兄の弾正宮を反面教師としている。道を誤りたくないという思いが非常に強く、妻とは政略結婚でありながら、他の女性とは一切の関わりを持たないよう心掛けていた。だが、和泉式部が弾正宮の死後、落ち込んでいると聞き、弟として儀礼的に見舞っているうちに、激しい恋情を抱くようになっていく。 実在の人物、敦道親王がモデル。
父 (ちち)
和泉式部の父親。良識的な人物で、同じ主人に仕えていた橘道貞を好ましく思い、娘婿とした。和泉式部が弾正宮と不倫をしたことを恥ずかしく感じて勘当を言い渡し、和泉式部が生んだ娘を彼女から取り上げて育てている。実在の人物、大江雅致がモデル。
橘 道貞 (たちばなの みちさだ)
和泉式部の夫。時代の流れを読むのが得意で、権力者との縁を深めて出世していく才覚を持つ。その一方で、情熱や無邪気さが一切なく、妻である和泉式部に空虚さを感じさせていた。弾正宮と和泉式部が浮気をしていることを知って、和泉式部と離縁した。和泉式部との間に娘がいる。実在の人物、橘道貞がモデル。
藤原道隆女 (ふじわらのみちたかのむすめ)
帥宮が17歳の時に結婚した一番目の妻。政略結婚ということもあり、夫の帥宮を愛してはいない。心を病んでおり、帥宮が客人と会話をしているところに、上半身裸で現れて笑い転げるなどの奇行を見せることがある。
北の方 (きたのかた)
帥宮の二番目の妻。身分の高い女性で、帥宮とは政略結婚をした。自己愛が激しく、自分以外の人間のことはどうでもいいと考えている。夫である帥宮に対しては愛情を一切持っておらず、結婚時から冷めた関係が続いていた。よそよそしい態度を崩さず、夫婦としての肉体関係も拒絶する傾向にある。
乳母 (めのと)
帥宮の乳母。常に帥宮の行動に目を光らせていて、和泉式部に帥宮が惹かれていることにも気づいている。身分差があることから2人の恋愛には反対しており、和泉式部には他にも多くの恋人がいるなどと話を捏造し、2人の関係を壊そうとする。また、帥宮の外出を禁じることもある。
僧 (そう)
石山寺の僧。和泉式部の理解者で、弾正宮の供養をしている。和泉式部の懺悔を聞いたり、相談に乗ったりしていて、自分らしく生きるように助言をしている。帥宮と和泉式部の恋に対しても理解を示しており、何よりも情熱を大切にすべきだと主張し、和泉式部の生き方に大きな影響を与える。
クレジット
- 原作
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和泉式部