概要・あらすじ
月城蒼は、吸血鬼の父と人間の母のあいだに生まれた半吸血鬼(ダンピール)。母を亡くした蒼は、家を出て人間界に暮らしていた。蒼は幼なじみの柏木千鶴のことが好きで、彼女と同じ高校に進学。蒼の右目には吸血鬼の能力である、誘惑(テンプテーション)の力が宿っており、彼はそれを封印するためにメガネを掛けていた。大好きな柏木に対しても、能力を使えば自分の虜にすることはできる。しかし、幼少の頃、誘惑(テンプテーション)の効力が切れて、自殺した母の姿を見た蒼は、能力の封印を誓っていた。一方、柏木は同じ絵画教室に通っていた2学年上の椎名隼人に思いを寄せており、椎名を追って彼と同じ高校に進んだ。蒼は、柏木の初恋を見守り、ずっと彼女の一番近くにいたいと考えながら、柏木の恋が成就しないようにと願っていた。柏木は椎名に再会し、顔を真っ赤にしながら、彼が在籍する美術部への入部を決める。そんなある日、柏木と蒼が廊下を歩いている時、野球のボールが窓ガラスを割って飛び込んでくる。とっさに柏木をかばって、廊下に倒れ込む蒼。その拍子に蒼のメガネが飛ばされ、柏木は彼の右目を見つめてしまう。誘惑(テンプテーション)の力で、魅入られた柏木は、熱に浮かされたような表情になり、蒼に甘いキスをする。あわてて柏木と離れる蒼だったが、すでに遅かった。彼女は蒼の虜になってしまったのだ。柏木とデートすることになり、蒼はなんとも複雑な気持ちでいた。これは「自分が望んでいる世界」ではあるが、吸血鬼の能力によって作られた「間違った世界」なのだ。幸せな時間を過ごしたあと、夜になって公園のベンチに座る二人。愛を告白し、蒼の気持ちを尋ねる柏木に、もうウソはつけなかった。ちょうど雲から満月が顔を出したその時、蒼は中学の時からの思いを打ち明けた。しかし柏木の表情は虚ろだった。そして突如正気に戻った柏木は、デートのことも蒼に好きだと言ったこともすっかり忘れていた。なぜかはわからないが、誘惑(テンプテーション)の効力が切れたのだ。こうして唐突に、蒼が望んだ世界は終わりを告げた。蒼の気持ちだけを置き去りにして「正しい世界」に戻ったのだ。
登場人物・キャラクター
月城 蒼 (つきしろ そう)
吸血鬼の父と人間の母のハーフである半吸血鬼(ダンピール)。高校1年生の男子で、金髪が特徴。右目に、見つめるだけで相手を虜にする、誘惑(テンプテーション)の能力を持つ。それは蒼の母を自死に追いやった力であるため、能力を封印するために、黒縁メガネを掛けている。中学生の頃から、同級生の柏木千鶴のことが大好きで、彼女と同じ高校に進学する。柏木の椎名隼人への思いを知っており、近くでその恋を見守ることを決意するが、複雑な気持ちを抱えている。
柏木 千鶴 (かしわぎ ちづる)
月城蒼と同じ高校に通う女子高生。蒼とは中学時代からの付き合いで、蒼が片思いする相手。同じ絵画教室に通っていた2学年上の椎名隼人に恋をしており、彼と同じ高校に進学。椎名が所属する美術部に入部する。椎名からはちーちゃんと呼ばれる。
椎名 隼人 (しいな はやと)
月城蒼、柏木千鶴と同じ学校に通う、高校3年生の男子。美術部に所属している。柏木の初恋の相手。母親が開いていた絵画教室で、柏木といっしょだった。彼女からはしーちゃんと呼ばれる。早くから絵画を始めていたため、自分が凡人であることに気づく。しかし描くことの楽しさを伝えたいと考え、母親がやっていた絵画教室の再開を目指している。柏木からの告白を受け入れ、付き合うことになる。