あらすじ
第1巻
人の目を惹く美しい容姿と、女心を完璧に把握している矢崎朔良は、何もしなくても女性から告白を受け、身体の関係を持ったら直ぐにポイ捨てするような仕打ちをしても、恨まれるどころか本命の彼女になりたいと迫られる毎日に、退屈さを覚えていた。そんなある日、朔良は偶然通りかかった御堂遼とぶつかり、キスをしてしまう。この時の初心(うぶ)な遼の言動に興味を抱いた朔良は、遼にアプローチを開始する。しかし、これもあくまでヒマつぶしであり、すぐに遼も自分に惚れるだろうと思っていた朔良だったが、兄様に心酔している遼には何をしても響かない。むしろ朔良は遼のペースに巻き込まれ、いつもの女たらしな自分の本領を発揮できない日々が続いていた。しかし、二人で過ごす時間が増えていくうちに、自分の考えを決して曲げようとしない遼に対し、朔良はこれまでの女性とは違った特別な感情を抱くようになっていく。
登場人物・キャラクター
矢崎 朔良 (やざき さくら)
高校生の男子。2年A組に在籍している。言動のすべてが完璧で、狙った女性もそうでない周囲の女性も、落ちない女性はいないといわれているほどのイケメン。初恋の人と再会したからと、あっさり家族を捨てて出て行った朔良の母のトラウマを抱えており、女性に対して愛情を感じることはなく、身体の関係を持ったあとは直ぐにポイ捨てする悪行を繰り返している。一部の女子たちからはその女たらしな言動を「YSP」と揶揄されているが、矢崎朔良自身はまったく気にしていない。ある日、部活動中の御堂遼とぶつかり、偶然にキスしてしまう。その時の遼が見せた初心な振る舞いに興味を抱き、これまで周囲にいなかったタイプの生真面目な遼を自分に惚れさせ、ヒマつぶしにすることを思いつく。しかし、遼からは予想外の反応続きで、大いにペースを乱されていく。
御堂 遼 (みどう はるか)
高校生の女子。2年C組に在籍している。空手部のマネージャーを務めている。ある日、矢崎朔良とぶつかり、偶然にキスしてしまう。それからは朔良から興味を抱かれ、アプローチを受けるようになる。生真面目な、冗談が通じない性格で、一般常識からややずれた感性の持ち主。天然気味で鈍感なところがあり、朔良からのアプローチもまるで響いていない。幼い頃から空手一筋で、大会でも優秀な成績を収めている兄様を心から尊敬しており、いわゆるブラザーコンプレックス。自分も空手を極めたいと人一倍努力しているものの、まったく才能がないため結果がついてこない。兄様からも冷たくあしらわれているが、まったく気にしていない。空手部のマネージャーをしているのも、選手としてのレベルに達していないため。
兄様 (にいさま)
御堂遼の兄の大学生。矢崎朔良と遼が二人でいるところを偶然見かけ、朔良と顔見知りになる。朔良に対しては、遼が一方的に空手の練習に付き合わせていると認識しており、申し訳なく感じている。遼と同様に、生真面目で冗談が通じない性格の持ち主。幼い頃から空手一筋で、さまざまな大会で優秀な成績を収め、将来を嘱望されている。空手を極めようと必死に努力をしている遼に対しては、才能がないのだから早く辞めればいいと突き放している。しかしその言葉には、自分のせいで空手に固執している遼に、早く目を覚ましてほかの道に進んで欲しいという、やさしい思いが込められている。
リナ
高校生の女子。2年A組に在籍している。矢崎朔良の取り巻きの一人で、交際はしていないものの、身体の関係は持っている。朔良が女たらしで「YSP」と揶揄されるほどの悪行を働いていることを知りながらも、本命の彼女になりたいと、積極的にアプローチを繰り返している。朔良と親しくしている御堂遼をはじめ、彼の周囲にいる女性に対してライバル心をあらわにし、攻撃的な態度を取る。
朔良の母 (さくらのはは)
矢崎朔良の母親。現在は離婚して別の場所で暮らしている。つねにやさしく大らかな性格で、朔良に愛情を注いでいた。しかし、6年前に初恋の相手と偶然再会し、あっさりと家族を捨てて出て行った。このことが朔良の中でトラウマになっており、彼が女たらしな言動をする原因になっている。
その他キーワード
YSP (わいえすぴー)
「ヤリ捨てポイ」の頭文字をアルファベット化した言葉。リナをはじめとした矢崎朔良を取り巻く女性たちが、彼の女たらしな言動を揶揄するもの。身体の関係に至るまではマメな朔良が、そのあとは直ぐにポイ捨てするように冷たい態度になることを意味しており、朔良本人もその通りだと認めている。「YSP」されても構わないから、とにかく朔良とかかわりを持ちたいと願う女性も多い。