四百四病の外

四百四病の外

教師の身辺調査と資格審査を業務としている文科省企画課。その職員である浅尾モモは、悪評ばかりの高校教師・森野青の資格審査に向けて、意気込んでいた。その目的は青から、未来ある子供達を守るためだった。しかし知れば知るほど噂と違う青に、モモは次第に惹かれていく。まじめでがんばり屋のモモの、仕事と恋を描いたドタバタラブストーリー。「Cocohana」2012年9月号から2013年3月号、2013年6月号から10月号にかけて連載された。

正式名称
四百四病の外
ふりがな
しひゃくしびょうのほか
作者
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あらすじ

第1巻

教師の身辺調査と資格審査を実施している文科省企画課に所属する浅尾モモは、女性問題や裏口入学のあっせんなど悪評ばかりの教師・森野青が勤める高校に派遣される事となった。これに伴い、モモは青が家主である学校近くの格安物件で生活を開始する。そんな中、巻き起こった青の女性問題に眉をひそめるモモだったが、青はこの件は誤解であり、しっかり自分の人となりを見てほしいと語る。さらには、モモは先入観で人を判断していると指摘されてしまう。実際にモモが調べてみると、青がいっしょにいた女性はストーカーであり、青こそが被害者であった。さらに裏口入学の噂は、病気で高校に通えない吉見結のために、青の勤める高校に籍を置いただけに過ぎなかった。結局噂とは裏腹に、青には悪いところは一切ない事が判明し、戸惑うモモ。そんな中、青とモモが同棲を始めたという噂が広がる。その無責任な噂を流したのは、以前青と痴話げんかをしていた、ストーカーの女性であった。モモが青と婚約していると噓をついて彼女を追い返すと、青はモモに指輪を渡し、プロポーズするのだった。

第2巻

森野青のプロポーズを断った浅尾モモは、突然滋賀への転勤を言い渡される。今回の立ち入り調査は、モモを試験するためのものだった。仕事を評価されなかったうえに愛用の鞄も壊れてしまいモモは落ち込むが、そこにやって来た青が、鞄を直してくれる。その手際のよさを見て、改めて青の人となりを何も知らない事に気づいたモモは、青の申し出を受け入れ、交際を開始する。だがこれまで仕事ばかりしてきたため、モモには異性との付き合い方がよくわからなかった。そんな中、モモは青の車を運転し、物損事故を起こしてしまう。怪我をしたという相手に高額の示談金を要求されるも、青が相手の噓を見抜き追い返す。そのてきぱきした姿を見て、モモは改めて青を見直すのだった。 その後、モモは青といっしょにいる事を願い、課長に退職願を出すが、青は自宅に帰って来なくなってしまう。気になって青のあとをつけたモモは、ストーカーの女性に再会し、青の事情を知る事になる。一方で、恋するあまりストーカーに近い行為までするようになった自分が怖くなったモモは、退職願を撤回。青に何も告げず、滋賀に行ってしまう。

登場人物・キャラクター

浅尾 モモ (あさお もも)

教師の身辺調査と資格審査を行う文科省企画課の女性職員で、年齢は25歳。小柄で細身、童顔なため、年上の教師達からは「こんな小娘に評価されるなんて」と、嫌われている。しかし浅尾モモ本人は、嫌がられてもしっかり査定して、本当に一生懸命に生徒達の事を考えている教師を見極める事こそ、自分の仕事と考えている。尊敬する課長のように仕事に生きる事が目標で、そのためには睡眠時間を削る事もいとわない。あえて厳しい態度で職務に臨んでいるのも、年配の教師たちに馬鹿にされないようにするためである。 基本的にまじめで他人に迷惑をかける事を嫌い、いい加減な事は許せない性質。そのため、森野青と同棲しているという噂が出た時には、言っても無駄という青に対して、断固として戦う姿勢を見せた。一方で、気が小さく流されやすいところもあり、中学3年生の時、好きでもない男子に告白されて付き合った事があり、後悔した経験がある。また料理や片付けが苦手で、部屋は散らかり放題。一途ながんばり屋だが、モモ自身は自分の事を、忘れものも多く靴下の左右を間違えてしまうくらい間抜けと評している。

森野 青 (もりの しょう)

高校の男性教師で、年齢は28歳。両親が早逝したため、陶芸家の祖父・森野翆砕と祖母、叔母に育てられた。大学の理工学部と航空工学部を卒業し、一等航空整備士の資格を取得した。その後航空会社に2年間勤めたものの、わけあって退職。教員資格を取り、現在は高校で数学の臨時教員をしている。遅刻や欠勤が多く、職場での恋愛問題、裏口入学のあっせん疑惑など悪い噂が絶えなかったが、実際はどの噂も事実ではない。 本来の森野青はまじめで穏やかな性格をしており、女性関係の噂は相手に一方的にしつこくされたがゆえで、ストーカー被害にまで発展している。裏口入学の話は、親戚で闘病中の吉見結の入学にかかわったからであり、遅刻や欠勤についても、結に勉強を教えるためだった。 青本人も、これらの話が周囲に歪曲されて伝わっている事は承知していたが、訂正するのが面倒だからと放置していた。本気で女性を好きになった事がないため、付き合いが始まっても相手に対しては基本的に無関心。相手を傷つけている事も知らないまま、最後に女性が怒って別れるというパターンが多かったが、浅尾モモに好意を抱いてからは、勇気を振り絞って積極的な行動に出るようになる。

ストーカーの女性 (すとーかーのじょせい)

森野青の大学時代の彼女。別れたあとも青にストーキングをしており、たびたび青の家を訪れては、警察沙汰の騒ぎを起こしている。浅尾モモが青が家主をしているアパートに引っ越したあとには、青とモモが同棲しているという噂を流し、邪魔者のモモを失職させ、アパートから追い出そうとした。望まぬ結婚が決まっており、青ならこの流れを止めてくれると思った事で、ストーキング行為をしていた。 何かと問題を起こしているものの、青とモモが付き合い始め、青が自宅に戻らなくなった時には、モモに多くの情報を提供した。その後、モモが青に何も言わぬまま引っ越した際、青から大学時代の事を謝罪されて以降は、ストーキング行為をやめている。最終的には、モモの転居先を探す手伝いをし、追いかけるよう青の背中を押した。

森野 翆砕 (もりの すいさい)

有名な陶芸家の男性で、森野青の祖父。早くに両親を亡くした青を、青の祖母といっしょに面倒を見てきた。まじめで穏やかな性格をしており、かつて一目惚れしていっしょになった妻について、「これ以上嫌われないようにがんばらないといけない」と笑顔で語る一途さがある。

祖母 (そぼ)

森野青の祖母で、森野翆砕の妻。両親が早くに亡くなった青を、親がわりとして育ててきた。はっきりした性格で、闘病中の吉見結のところにやって来た浅尾モモを、青の結婚相手と勘違いしていきなり「結婚したら仕事はどうするのか」となどと聞いてきた。

叔母 (おば)

森野青の叔母。親を早くに亡くした青を、森野翆砕や祖母といっしょに育ててきた。夫の妹で闘病中の吉見結が入院している帝都大学病院で、初めて浅尾モモと出会う。優しく穏やかな人柄で、突然現れたモモに自作のお弁当を勧め、食事に誘った。結の高校進学に尽力し、勉強を教えてくれる青に感謝している。

吉見 結 (よしみ ゆい)

帝都大学病院に入院している女子高校生で、叔母の夫の妹。生まれつき腎臓が悪く、学校に迷惑をかけるからという理由で、高校受験はしなかった。今は教師をしている森野青に頼んで、青が勤める高校に籍だけ置いてもらっている。青が休みの日に勉強を見てもらっているが、数学があまり得意ではない。

課長 (かちょう)

文科省企画課所属の女性課長で、浅尾モモの直属の上司。ショートカットの髪型で眼鏡をかけおり、モモを厳しく指導している。陶芸家・森野翆砕の大ファンで、翆砕が個展のためにやって来たあとに、モモに誘われて食事に同席した。スーツ姿できりっとしている仕事中とはまったく違い、少女のように愛らしい姿を見せ、モモを驚かせた。 その際、「仕事の時のような無理な気負いがなくてかわいらしかった」と、初めてモモを褒めた。

カリナ

浅尾モモの女友達。おかっぱ頭で小太りの体型をしている。芝居をしているが、そのチケットはほとんど自分で買っている。ナナオといっしょにモモの話をよく聞いており、モモが森野青に惹かれていくのを知った時には、相手に流されているだけではないかと心配して、ナナオと共に青を見に行った友達思いの女性。モモが課長に退職願を出した際、「男のために仕事をやめるなんて」と責めた事でモモとケンカになったが、ナナオといっしょに滋賀に転勤後のモモを訪ね、すんなり仲直りをした。

ナナオ

浅尾モモの女友達。細身で黒髪を一つ縛りにしており、眼鏡をかけている。カリナといっしょにモモの話をよく聞いており、モモが森野青に惹かれていくのを知った時には、相手に流されているだけではないかと心配し、カリナと共に青を見に行った友達思いの女性。モモが課長に退職願を出した際、「男のために仕事をやめるなんて」と責めた事でモモとケンカになったが、カリナといっしょに滋賀に転勤後のモモを訪ね、すんなり仲直りをした。

西沢 (にしざわ)

浅尾モモのとなりの部屋に住む女性漫画家。仕事中は髪をひっつめにして、眼鏡をかけている。森野青とモモの恋愛を細かに観察しては、アシスタントの松原と噂話を楽しむ、野次馬的性格の持ち主。モモが青に渡された指輪を本人に返す際には、大好きなゲームソフトをもらう代わりに仲介役を担った。しかしこの時、青からもゲームをもらって、指輪をモモに渡すように言われてしまったため、最終的にはどちらにも渡せずに、自分預かりとしていた。 ちなみに休みの日は、髪を肩に流し、不動産屋の男性に「これからパーティーでもあるのか」と聞かれるほど、派手な格好をしている。

松原 (まつばら)

浅尾モモの隣の部屋に住む漫画家・西沢のアシスタントをしている女性。仕事中はヘアバンドで前髪を止め、後ろ髪はひっつめにしている。青とモモの恋愛を細かに観察しては、西沢と噂話を楽しむ、野次馬的性格の持ち主。埼玉から西沢のもとに通っていたが、のちにモモがいなくなったあとの部屋に住む事になった。ちなみに休みの日は、髪を肩に流し、不動産屋の男性に「これからパーティーでもあるのか」と聞かれるほど、派手な格好をしている。

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