概要・あらすじ
島の分校から土佐南中学へと進学した主人公おにやん(吉田茂)は入学早々、学校を支配する風紀部と激突。風紀部団長岩倉具視は、自分の野望のための使い捨ての道具としておにやんを利用しようとする。妹の久美子の病気治療で借りができたおにやんはやむなく風紀部入りし、岩倉の配下として近隣の中学との戦いにのぞむ。
しかし、妹の病気を悪化させたのが岩倉だと知ったおにやんは全力で立ち向かい、一度は岩倉を叩きのめす。完全に失脚したかと思われた岩倉だったが、巨大なクジラが出現したことを利用し、クジラ狩りを企画。地域の活性化と金に目がくらんだ町の人々を取り込んで再び大きな力を掴む。
一方、子クジラと仲良くなったおにやんはクジラ親子を故郷の海に帰してやるため、岩倉のみならず、ヤクザや警察にも敢然と立ち向かっていく。
登場人物・キャラクター
吉田 茂 (よしだ しげる)
左の額から頬にかけて傷がある。高知県仁居田浜に祖父と妹と居住。小学校までは分校で学ぶ。土佐南中学へは渡船を利用して通っている。便秘になると機嫌が悪い。喧嘩好きで、正義感が強い。
岩倉 具視 (いわくら ともみ)
土佐南中学第三十代風紀部団長。ヒトラーの演説録音を愛聴する。頭脳明晰で身体能力も高く、中学生とは思えない政治力で、中学どころか地元の有力者たちや一般住民まで操ってしまう。岩倉総合病院の一人息子で、自分の野望のためならば、使えるものはすべて使う。フェンシングの達人。
早瀬 一美 (はやせ かずみ)
南海小学校出身。家は料亭を営んでいる。精神を病んだ姉がいる。男に命令されたり、束縛されたりすることを嫌う性格。常に土佐犬シーザーをお供に連れている。おにやん(吉田茂)を利用して岩倉具視を潰そうと企んだ。
板垣 退助 (いたがき たいすけ)
おにやん(吉田茂)の分校仲間。頭がいい。
岡田 以蔵 (おかだ いぞう)
土佐南中学風紀部行動班幹部。二番隊隊長。久美子の心臓病を悪化させるための企てに加わる。極北中学攻略に失敗。後に、おにやん(吉田茂)の妹、吉田久美子を罠に落としたことの口封じのため高松に転校させられる。
佐々木マリア (ささきまりあ)
ハーフであることを隠すためサングラスをかけて岩倉具視に仕えている。失意の岩倉を身をもって慰めるなど、一途な愛情を捧げている。生徒会選挙では会長に立候補。岩倉同様、フェンシングの達人で乗馬鞭を使う。
井原 勲 (いはら かおる)
土佐南中学風紀部若頭。全国中学拳法大会で2年連続ベスト4。ヤクザも一撃で倒す片眼の実力者。団長の留守に実力を誇示するため入学式翌日、新入生の番長たちを集めてケンカ大会を開催。おにやん(吉田茂)の一本背負いで岩に頭から叩き付けられて敗北。その責任を問われる。 団長に挑戦するが、団長が指一本で飛ばしたグラスの破片を額に受けて出血。視界を失って、行動班幹部たちにリンチを受け、片腕を複雑骨折。
定岡 (さだおか)
須崎小学校の番長だった。容貌魁偉な巨漢。巨大なゴム長靴を履き、磯のカニを殻ごと食べてしまう。ケンカ大会ではおにやん(吉田茂)に敗れる。
大泉寺 静 (だいせんじ しずか)
極北中学姫ゆり会番格。大きな体格で、右頬に傷がある。
熊野灘の源次 (くまのなだのげんじ)
岩倉具視がクジラ狩りのために招集した九人の狼の一人。最初は身元不明で長い学生服を着用しているところから長ランと呼ばれている。誰の味方なのかもわからない。クジラを守る戦いで、おにやん(吉田茂)と生死を共にして懐に飛び込むが、実は捕鯨船団を率いる熊野灘の源次がその正体だった。
西郷 隆盛 (さいごう たかもり)
おにやん(吉田茂)の分校仲間。小太りでメガネかけている。女の子が大好き。
土方 歳三 (ひじかた としぞう)
土佐南中学風紀部副団長。行動班幹部。新選組の羽織を羽織っている。格闘技の達人。おにやん(吉田茂)の両手両脚の関節を外してしまう。冷酷だが、おにやんの根性を認めている。独立独歩の武人的な精神の持ち主で、やがて岩倉具視から離れ、風紀部を脱退する。
メガネ
ひ弱で小柄で泣き虫だが、おにやん(吉田茂)と知り合って仲間になる。
石松
向島分校の番長だった。ケンカ大会でおにやん(吉田茂)に負けたが、その意気に感じて子分になる。
校長 (こうちょう)
土佐南中学の校長。常に羽織袴姿で古武士の風格がある。職員やPTAが反発する風紀部を存続させている。
教頭 (きょうとう)
土佐南中学の教頭。自分の地位を高めるために風紀部を廃止したがっている。
吉田 久美子 (よしだ くみこ)
おにやん(吉田茂)の妹。小学3年生。病弱でよく寝込んでいる。後に心臓病であることがわかり、岩倉具視は、それを利用しておにやんを支配しようとする。
吉田 タメ蔵 (よしだ ためぞう)
おにやん(吉田茂)、久美子の祖父で漁師。
総統 (そうとう)
ヒョウのボス。いくらやられても立ち上がる頑健な肉体と悪知恵で君臨する。ケンカは猪突猛進スタイルで体力と執拗さで圧倒してきたが、岩倉具視のフェンシングの技でアキレス腱を断ち切られて敗北。
原 政 (はら まさし)
海南中学ヒョウ副将。
讃岐の独眼竜 (さぬきのどくがんりゅう)
高松の中学を仕切っている。名前通り、片眼に刀の鍔の眼帯をしている。
大前田 (おおまえだ)
岩倉がクジラ狩りのために招集した九人の狼の一人。琴平の番長。讃岐の独眼竜の部下。
中村 一夫 (なかむら かずお)
生徒会選挙に二年代表として立候補した。
白本 (しらもと)
土佐新聞仁井田浜支局勤務の新聞記者。
長老 (ちょうろう)
仁居田浜の高台に居住。クジラの恐ろしさを知る数少ない生き残り。クジラが出現する直前に異変を感じ、自宅を燃やして漁師たちに危険を知らせる。
権藤 (ごんどう)
讃岐の中学生。おにやん(吉田茂)の額にタバコの火を押しつけ、お返しに太ももにタバコの火を押しつけられて悲鳴を上げた。
堂島 (どうじま)
野球部城東中九人の侍の主将。サングラスをかけている。野球勝負を通しておにやん(吉田茂)と友達になる。
山村 (やまむら)
おにやん(吉田茂)がケガをするたびに治療する接骨医。校長の長男とは海軍で同期だった。
シーザー
『土佐の鬼やん』に登場する土佐犬。クレオパトラの愛犬。クレオパトラの命令で岩倉具視を襲うが、土方歳三によって殺害される。
キュルル
『土佐の鬼やん』に登場する子クジラ。おにやん(吉田茂)と友達になる。おにやんはキュルルと親クジラを外海に逃がそうとして苦闘するが、キュルルは捕鯨船に殺され、怒った親クジラが浜を襲うこととなる。
集団・組織
土佐南中学 (とさみなみちゅうがく)
『土佐の鬼やん』の舞台となる中学校。前身は海軍航空予備校(作中では別に「海軍予科練校」とも呼ぶ)で、旧時代の気風が色濃く残っていて、風紀部が実効支配している。
風紀部 (ふうきぶ)
『土佐の鬼やん』の舞台となる土佐南中学の生徒会組織。学業優秀な生徒から選抜された知能班、武道に長けた行動班に分かれていて、その下には風紀部準構成員、風紀部候補生が存在する。伝統と権威のシンボルとして太平洋戦争末期の特攻兵器人間魚雷回天を保有し、時に応じて誇示する。
海南中学 (かいなんちゅうがく)
『土佐の鬼やん』に登場する中学校。不良グループヒョウが仕切っている。
極北中学 (きょくほくちゅうがく)
『土佐の鬼やん』に登場する中学校。スケ番グループ姫ゆり会が仕切っている。
城東中学 (じょうとうちゅうがく)
『土佐の鬼やん』に登場する中学校。刑務所に隣接しているため入りたがる生徒が少なく、他の中学に入れないワルの吹きだまりになっている。岩倉具視の奸計に落ち、風紀部入りしたおにやん(吉田茂)は、心ならずも平定のために単身乗り込むことになる。
城東中九人の侍 (じょうとうちゅうきゅうにんのさむらい)
『土佐の鬼やん』に登場する城東中学を仕切る野球部。おにやん(吉田茂)たちと野球勝負をすることになる。おにやんの試合放棄で勝つが、おにやんの侠気に打たれて、仲間になる。
ヒョウ
『土佐の鬼やん』に登場する不良グループ。海南中を仕切っているが、風紀部の侵攻に対抗して極北中の姫ゆり会と手を結ぶ。
姫ゆり会 (ひめゆりかい)
『土佐の鬼やん』に登場するスケ番グループ。極北中学を仕切っているが、風紀部の侵攻に対抗して海南中学のヒョウと手を結ぶ。
岩倉総合病院 (いわくらそうごうびょういん)
『土佐の鬼やん』に登場する大病院。岩倉具視の父が経営している。
場所
仁居田浜
『土佐の鬼やん』に登場する高知県の島にある漁村。クジラ漁で栄えたこともあるらしいが70年前、クジラが大暴れして大きな被害を受け、それ以来、普通の漁村になっていた。
南海道場 (なんかいどうじょう)
『土佐の鬼やん』に登場する柔道場。手加減なしの荒稽古で中学生にケガをさせて以来、入門者をライバル道場に奪われ、道場主は昼間から道場で酒を飲んでいる。土方歳三に敗れたおにやん(吉田茂)は自分を鍛え直し、柔道の技を磨くために連日、道場破りに押しかける。
ほとけ島 (ほとけじま)
『土佐の鬼やん』に登場する無人島。市内より4キロ離れている。ヒョウの多くが生ま育った母島に近く、ヒョウには地理に詳しい者が多い。ヒョウ、姫ゆり会連合と風紀部の決戦の場に選ばれる。元は流刑の島で、毒蛇と毒虫が群生している。
五手岬 (ごてみさき)
『土佐の鬼やん』に登場する手の平を拡げたような形の岬。ヒョウと岩倉具視の決戦の場。岩倉は海南中学の一般生徒や、校長たちを集めた前でヒョウを撃破。群集心理を操作し、英雄となる。
クジラ神社 (くじらじんじゃ)
『土佐の鬼やん』に登場する仁居田浜の裏山にある神社。周囲はクジラ漁で亡くなった人々の無縁墓が無数に残っている。