地上の楽園

地上の楽園

物心がつく前に親に捨てられ、ホテトル嬢として生計をたてていた女性のカヨが、ある写真展で古いアパートの写真を見つける。小さい頃、そのアパートに住んでいたことを思い出したカヨは、カメラマンの皆吉に協力してもらい、取り壊し寸前のアパートで名字も知らない親の手がかりを探そうとする。表題作『地上の楽園』(「シルキー」2003年2月号)などをおさめた田渕由美子作品集。このほか、自分より背が低く、下僕扱いしてきた陸上部の後輩男性に、自分からプロポーズしてしまう身長172センチのOLが主人公の『ブルー?』(「YOU」2003年No.5)や、小さな広告代理店に採用され、営業からデザインまでやることになったデザイナーの奮闘を描く短編連作『三日目の月』~『六日目の月』(「ヤングユー」2002年12月号、ヤングユーカラーズ2003年No.1、No.3、No.4)、顔も性格も似ていない腹違いの姉妹を描いた『あかねたちばな』(「シルキー」2003年8月号)を収録。2002年から2003年の作品を集めた短編作品集で、田渕由美子の最後のコミックスとなる。

正式名称
地上の楽園
ふりがな
ちじょうのらくえん
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
関連商品
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あらすじ

地上の楽園

アイドル「イブニング娘」のゴマチに似ていると評判のホテトル嬢、カヨ。彼女は3歳の冬に西口公園のベンチに置き去りにされた。わかっているのは「カヨ」という自分の名前だけ。ある日、たまたま訪れたデパート開催の写真展で、古いアパートの写真を見つけ、カヨは自分がそこに住んでいたことを思い出す。3歳の時に自分を保護してくれた刑事とアパートの写真を撮影したカメラマンの皆吉を訪ねるが、そのアパートはすでに取り壊しが決まっており、もう誰も住んでいないという。皆吉に協力してもらい、関係者以外立ち入り禁止となっていたアパートの中に入るが、何も思い出すことができないカヨ。カヨはこのボロアパートの写真に「地上の楽園」と名付けたのはなぜなのか皆吉に尋ねた。

ブルー?

大手商社に勤める27歳の布施今日子は、172センチもある身長がコンプレックス。いろいろな男性と付き合っては失恋し、陸上部の後輩の作田を呼び出して、やけ酒を飲む。今日子は自分より5センチも身長が低い作田を下僕扱いし、司法浪人4年目などと彼をいじる。今日子は作田が自分に好意を持っていることも知ってて、彼に甘えていた。ある日、高身長の佐藤とデート中だった今日子は、銀座の映画館で女連れの作田と会い、作田のことが気になってデートどころではなかった。

三日目の月、四日目の月、五日目の月、六日目の月

勤めていた広告代理店が突然倒産してしまった、26歳のデザイナーの玉乃井待子は必死だった。下北沢のマンションから葛飾区の古いアパートへ引っ越し、新しい仕事を探すがなかなか採用されず、半年がたっていたのだ。所持金は1万円弱。明日の面接はなんとしても受かりたかったが、ガスでタバコに火をつけようとして、髪を焼いてしまう。チリチリ頭を隠そうとおさげ姿で、必死にアピールしたかいがあってか「FIVE OAKS」という会社に採用された待子。しかし、そこは男性二人が大手広告代理店を辞めて立ち上げたばかりの零細で、デザイナーとして採用されたと思っていた待子は営業先リストを渡される。

あかねたちばな

大学4年生になるは、誰もが振り返る美貌を持つ女子大生。高級車に乗るボーイフレンドを呼び出しては、毎晩違う男性と遊ぶ。いっしょに住む腹違いの姉の橘子は、信金に勤め、地味な顔でメガネを掛けた男まさりな女性だった。ある日、姉から彼氏の中畑慎平を紹介された茜。ダサいだろうと思っていた姉の彼氏の中畑は、思いのほか爽やかなイケメンだった。仲のよい二人を見た茜は、姉から彼を奪ってやろうと中畑にモーションをかけ始める。

登場人物・キャラクター

カヨ

『地上の楽園』の主人公。「ルビーフルーツ」という名のお店で働くホテトル嬢の女性。アイドル「イブニング娘」のゴマチに似ている。3歳の時に西口公園に置き去りにされ、親に捨てられたため、わかっているのは「カヨ」という名前だけ。男は体を求めるだけで、愛というものが信じられない。口が悪くて言いたいことをハッキリ言う。

布施 今日子 (ふせ きょうこ)

『ブルー?』の主人公。大手商社に勤めるOLで27歳の女性。172センチと高身長なのがコンプレックスで、周りには169センチと偽っている。学生の頃は陸上部のハイジャンプの選手で、170センチの記録を持っている。髪はショートカットで体型はやせ型。サバサバしていて積極的な性格のため、いろいろな男と付き合っては別れ、そのたびに後輩の作田を呼び出し、やけ酒をあおっている。かつてはロマンチックにベッドでプロポーズされることを夢見ていた。

玉乃井 待子 (たまのい まちこ)

『三日目の月』『四日目の月』『五日目の月』『六日目の月』の主人公。26歳のデザイナーの女性。勤めていた広告代理店がつぶれてしまい、貧乏生活を送る。下北沢のマンションから葛飾区の古いアパートへ引っ越し、「FIVE OAKS」という会社に採用される。ダサいことが嫌いで、押しが強く、明るくて積極的。スーパーやメガネ屋のチラシではなく、もっと大きな仕事がしたいと思っている。

(あかね)

『あかねたちばな』の主人公。大学4年生で、手足が長くてスタイルもよく、すれ違う人が振り返るほど美しい女性。前髪のあるストレートロングが特徴。高級車に乗るボーイフレンドが何人もいて、毎晩のように違う男性とデートしているが、ボーイフレンドと体を重ねても、そのとき愛しているふりをしているだけで愛を信じられない。腹違いの姉の橘子といっしょに暮らしている。出版社でエッセーやコラムを書くバイトをしている。

皆吉 (みなよし)

『地上の楽園』の登場人物。カメラマンの青年。戦前に建てられた江戸山アパートの写真を撮影し「地上の楽園」というタイトルをつけ、展示会に出展した。小さい頃、この江戸山アパートに住んでおり、取り壊される前に写真に残し、一冊の写真集にしようと思っている。

作田 (さくた)

『ブルー?』の登場人物。布施今日子の後輩で26歳の男性。学生時代は陸上部に所属していた。今日子には下僕のように扱われ、彼女が失恋するたびに呼び出される。今日子より身長が低いことがコンプレックス。司法試験に6回も落ちており、今日子に司法浪人と言われ、傷ついている。そんな関係にもかかわらず、ずっと今日子ひとすじで、飲みの席で自分の気持ちを今日子にさりげなくアピールしている。

橘子 (きつこ)

『あかねたちばな』の登場人物。信用金庫で働くまじめで地味な女性。胸がなく男みたいにガサツだが、気さくで明るい。ショートカットで縁の細いメガネを掛けている。腹違いの妹の茜と二人暮らしで、妹の面倒を見るしっかり者の姉。同じ信用金庫の中畑慎平と付き合っている。

中畑 慎平 (なかはた しんぺい)

『あかねたちばな』の登場人物。橘子の彼氏。橘子と同じ信用金庫で働いている、爽やかなイケメン。車は持っておらず、移動手段は自転車。美人な橘子の妹の茜にせまられても、相手を傷つけずきちんと断る誠実な男性。

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