暴力的な世界をかわいい女の子キャラだけで描く
本作最大の特徴は、かわいい絵柄とハードな内容のギャップである。登場人物はすべて美少女ながら、やっていることは暴力や犯罪、ドラッグ密売といったアウトローなものばかり。「FRIDAYデジタル」掲載のインタビューによると、作者は北野武監督のファンであり、本作を「北野武監督の暴力的な世界を、女の子キャラだけで描いている感覚」と表現している。また、キャラクターの多くにモデルがあり、主人公・紗音琉(シャネル)はある男性、紅麗亞は知人の彼女がモデルだという。さらに、担当編集者との取材も反映されており、泥棒市でシャネルが発する「そのクスリは遊べるけど、大事なものたくさん落としちゃうから気をつけてね」というセリフは作者が実際に聞いたものである。こうした、身近な人物の存在や取材で得た経験が、本作にリアリティを与えている。
無知ゆえに不幸に気づかない底辺少女たち
本作の舞台である「地元」は、都市から離れた貧困地区である。シャネルの家には、家具がまったくなく、母親が彼氏を連れ込むと邪魔にならないよう、妹と窓から外に出ていくのが当たり前。また、ごはんにケチャップとコショウをかけた食事を「マック」と呼んで喜んで食べ、盗んだコンビニの廃棄弁当はごちそうである。シケモクを拾って吸い、クスリに手を出しフラフラしているうちに、半グレの先輩・紅麗亞の仕事を手伝うようになるが、その仕事内容は、傷害、強盗、薬物密売といったもの。いつの間にか立派な犯罪者になっているが、紅麗亞の巧みな話術に騙され、いい先輩や仲間に囲まれてラッキーだと感じている。そして自分たちの「地元」は世界最高だと信じているのである。本作は、「地元」しか知らない無知ゆえに、どんなに不幸でも「地元最高!」と叫ぶ底辺少女たちを描いた悲喜劇である。
不穏な空気が絶えない「地元」の勢力図
シャネルは「地元」の東地区に住んでおり、親友のちひろと一緒に、半グレの紅麗亞グループに所属している。彼女たちの主なしのぎは、アサガオ(◯麻)の栽培、密売である。一方、西地区は、最近刑務所を出てきた元ヤクザ・しづかをリーダーとするグループが仕切っており、東西のグループには停戦協定が交わされている。しかし、紅麗亞の幼なじみでメンヘラのしづかは、面倒なかまってちゃんであり、バルーンという新しいドラッグで東西の均衡を崩そうとする。ほかにも、「地元」で最もヤバイ無所属の女の子・●ちゃん(まるちゃん)、闇バイトを仕切ろうとする紅麗亞やしづかの先輩たち、ゆなちぃやモモカといった個性的な面々が登場し、「地元」は常に不穏な空気に包まれている。
登場人物・キャラクター
紗音琉 (しゃねる)
金髪のポニーテールと舌ピアス、欠けた前歯、ピンクの上下スエットが特徴の女の子。母親と、可子(ここ)という名の妹と暮らしている。小学校中退で漢字が苦手。生活は貧しいが、本人に自覚はなく性格は明るい。ワスレールという薬物の常習者で、物事をすぐに忘れてしまう。片方だけの靴や磨いた10円玉などを売る「泥棒市」でお金を稼ぐこともある。いつの間にか紅麗亞グループに所属することになり、先輩こはるの指導の元、アサガオ(◯麻)を栽培する。
ちひろ
紗音琉の幼なじみで親友。黒髪のポニーテールが特徴の女の子。中卒で、紅麗亞グループに所属しており、おにぎり屋でアサガオ(◯麻)を密売している。しづかグループが配っていたバルーンという薬物でジャンキーになるが、紅麗亞に2週間監禁されて立ち直った。
紅麗亞 (くれあ)
「地元」の東地区を仕切る、半グレ集団・紅麗亞グループのボス。褐色の肌と金髪ロングヘアー、全身のタトゥーが特徴の女の子。多頭飼いするほど猫が大好き。胸元に猫の顔と、猫に由来する「9LIVES」のタトゥーがある。冷静沈着な策略家で、部下はもちろん、敵をも意のままに操ることがある。また、ためらいなく暴力や拷問を行う。
しづか
「地元」の西地区を仕切る、しづかグループのボス。シャブ中で元ヤクザ、メンヘラの女の子。黒いロングヘアーを一つにまとめている。幼なじみの紅麗亞が大好きだが、ある事で恨んでおり、愛憎入り交じった感情を抱いている。刑務所に服役していたが、出所後はバルーンという新しいドラッグを流行させ、紅麗亞にちょっかいをかける。
書誌情報
地元最高! 6巻 彩図社
第1巻
(2022-08-29発行、 978-4801306097)
第2巻
(2023-02-22発行、 978-4801306448)
第3巻
(2023-06-27発行、 978-4801306714)
第4巻
(2023-11-28発行、 978-4801306950)
第5巻
(2024-03-27発行、 978-4801307148)
第6巻
(2024-08-27発行、 978-4801307353)