境界のエンドフィール

境界のエンドフィール

作者・アントンシクの集英社媒体では初連載となる作品。日本の病院を舞台に、元刑事の理学療法士、瀬戸真人が患者たちのリハビリに励みつつも、世間を騒がせた因縁ある「アララギの子事件」に再び巻き込まれていく医療サスペンス。本作はアララギの子事件を軸にしながらも、現役の理学療法士が監修しているため、現代医学でも治療が難しいとされる症例がリアルに描かれ、医療とサスペンスの融合が実現している。集英社「ヤンジャン!」で2022年3月から配信。2023年、第7回「さいとう・たかを賞」にノミネートされた。

正式名称
境界のエンドフィール
ふりがな
きょうかいのえんどふぃーる
原作者
近藤 たかし
漫画
ジャンル
医療
 
サスペンス
レーベル
ヤングジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊4巻
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「アララギの子事件」の真相を探る

6年前、刑事だった瀬戸真人は、謎多き大量殺人事件として世間を騒がせていた「アララギの子事件」を追っていた。そんな中、違法なおとり捜査で犯人を追いつめた真人は、たまたま通りがかった仙波夏海に激突してしまう。犯人は取り逃してしまったうえに、夏海に脊髄損傷の重傷を負わせたことで、真人は刑事を辞める決意を固める。そして、少しでも夏海の役に立ちたいと、病気や怪我のリハビリをサポートする理学療法士の道に進む。本作は「医療サスペンス」と銘打ち、現代医学でも解明が難しい患者の症状を理学療法士たちが原因を突き止め、患者と真摯に向き合う姿を描いている。真人は理学療法士として忙しい日々を送る中、アララギの子事件の犯人と思しき人物と運命的な再会を果たす。

未知の毒「イグノラムス」の謎

「アララギの子事件」は虐待を受けていた子供たちが親を毒殺した事件で、判明しているだけでも数件発生していたが、当初は単なる変死として扱われており、事件性はないとされていた。しかし、とある変死体に疑惑を抱いた瀬戸真人は、同じような変死事件が各地で起きていることを知り、これが大きな事件であることが発覚する。ここまで事件の発覚が遅れたのは、死体に毒薬の痕跡を認められなかったからで、警察はこの未知の毒を「イグノラムス」と呼び、その毒の正体と出処について調べ始める。そんな中、子供たちに毒を手渡した人物が存在することを突き止めるが、真人が犯人を取り逃したこともあり、捜査は難航を極める。そして6年の歳月を経ても、その真相は明らかになっていない。

6年の歳月を経て巡る因縁

ある日、瀬戸真人の勤務するそよぎ総合病院に、火事で全身に火傷を負った女性、香圧智子が運び込まれるが、彼女は意識不明の重症ながら一命を取り留める。そして真人は、智子のリハビリチームに参加することになり、意識のない智子に早期リハビリを始める。早期リハビリとは患者が寝たきりにならないように、術後の早い段階から体を動かしたり、マッサージをすること。真人は献身的に智子の世話をするが、リハビリを続ける中で、彼女の腕に「アララギの子事件」の犯人と同じ特徴的なタトゥーを発見する。真人は智子が6年前に自分が追っていた犯人ではないのかと疑いを持ち、真人は再びアララギの子事件の渦中に巻き込まれていく。

登場人物・キャラクター

瀬戸 真人 (せと まさと)

そよぎ総合病院の理学療法士(PT)を務める男性。年齢は33歳。精悍(せいかん)な顔つきで、鍛え抜かれたがっちりとした体型の持ち主。6年前までは数々の表彰を受けるほどの優秀な刑事だったが、のちに「アララギの子事件」と呼ばれる事件の捜査で犯人を取り逃したうえ、 逃走中の犯人を追いかけている際に仙波夏海を突き飛ばし、半身不随の大ケガを負わせてしまう。さらに違法な囮捜査をしていたこともあり、その責任を取って刑事を辞める。その後、罪悪感と無力感から抜け殻のようになっていたが、ほかならぬ夏海の励ましもあって再起し、彼女を支えるべく理学療法士の道に進んだ。実直な性格ながら協調性に欠け、刑事時代も独断専行に走りがちだった。瀬戸真人自身もそのことを自覚して後悔しているため、病院では仲間とのチームワークを大切にしている。しかし集中すると顔が怖くなり、周囲に恐れられている。刑事時代に合気道をしていた経験が意外にも理学療法士の役に立ち、患者の体の異常を素早く見抜き、リハビリの腕も確か。そんな中、リハビリを担当することとなった意識不明の患者、香圧智子にアララギの子事件の手がかりを見つけ、再び事件に巻き込まれることとなる。

仙波 夏海 (せんば なつみ)

車いす生活を送っている女性。年齢は28歳。黒髪のストレートロングヘアで、お淑(しと)やかな雰囲気を漂わせている。6年前に街を歩いていた際、「アララギの子事件」の犯人を追いかけていた刑事の瀬戸真人に突き飛ばされ、脊髄損傷で下半身不随となり、一生車いす生活になることを告げられる。取り返しのつかない過ちを犯してしまったことで、真人は警察を辞めて仙波夏海をサポートするため、理学療法士としての新たな人生を歩むことを決める。夏海は真人を恨むことはなく、事件後に抜け殻のようになっていた彼を励まし、お互いに新しい人生を送ることを誓い合う。その際に「嫌なこと」を紙飛行機に乗せて飛ばしたため、二人にとって紙飛行機は大事な思い出となっている。6年経った現在も交流を続けており、良好な関係を築いている。しかしマスコミによって、そよぎ総合病院にアララギの子事件の容疑者・香圧智子が入院していることが報道され、真人と夏海の関係を面白おかしく取り上げられたことから、これまでの平穏な生活が壊れてしまう。

クレジット

書誌情報

境界のエンドフィール 4巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉

第1巻

(2022-08-19発行、 978-4088923604)

第2巻

(2023-01-19発行、 978-4088924946)

第3巻

(2023-07-19発行、 978-4088927817)

第4巻

(2024-02-19発行、 978-4088931425)

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