概要・あらすじ
明治時代、会津藩士の血筋に生まれた若き軍人・雪村谺はフランスで作られた最新鋭の軍艦「神威」の回航に、艤装回航員として参加していた。しかし、船は巨大タイフーンに遭い沈没。ロシア戦艦「イゴール」に救助されたものの、他の日本人たちとともに船底の牢のような場所に閉じ込められてしまう。食事も与えられず人間以下の扱いを受け、このままでは帰国も難しいと判断した雪村は、共に神威に乗船していたフランス人の少年・アラン・ジュネの力を借り、日本へ帰るべく仲間たちとともにロシア戦艦からの脱出をはかる。
登場人物・キャラクター
雪村 谺 (ゆきむら こだま)
軍艦「神威」の艤装回航員を務める19歳の男性。海軍少尉候補生の軍人。母親と叔父から「いつ終わりが来てもいいように日々を後悔せずに生きろ」、「だがその時が来るまで絶対に諦めるな」と厳しく教えられて育ったため、逆境を跳ね返す強い精神力を持つ。会津藩士だった父の精神を受け継ぎ、義に厚く頑固。また、剣の腕が立つ。 フランス人の少年・アラン・ジュネとは訪仏中に仲良くなり、彼からはユキと呼ばれている。ロシア戦艦「イゴール」からの脱出劇ではリーダー的役割を果たす。
アラン・ジュネ (あらんじゅね)
フランス人の少年。フランス海軍将校の息子で、軍艦「神威」に同乗し日本へ向かっていた途中、船の沈没に巻き込まれ、雪村谺たちとともに漂流。ロシア戦艦「イゴール」に救助される。雪村とは仲が良く、彼のことを「ユキ」と愛称で呼ぶほど。雪村がイゴールから脱出するさい、必要な道具を用意するなど手助けをする。
セルゲイ・レブロフ (せるげいれぶろふ)
ロシア戦艦「イゴール」の艦長を務める中年の男性。口ひげとあごひげを蓄えている。タイフーンで船が沈没し、漂流していた雪村谺たち日本人やフランス人を救助。フランス人たちは手厚く保護したものの、雪村や他の日本人たちは船底の牢のような場所に閉じ込める。樺太で毛皮商人をしていた父が日本人に惨殺されたため、日本人を強く憎んでおり、雪村たち日本人を人間扱いするつもりも、帰国させるつもりもない。 目的のためには部下を切り捨てる冷酷さを持ち合わせる。
堂本 進五郎 (どうもと しんごろう)
口ヒゲを蓄えた中年の男性。住元商会の専務を務める。軍艦「神威」に同乗し、日本へ向かっていた途中、船の沈没に巻き込まれ、雪村谺たちとともに漂流。ロシア戦艦「イゴール」に救助されるも他の日本人たちとともに船底の牢のような場所に閉じ込められる。精神的に弱く、軍人である雪村や仲間たちに対して居丈高な態度を取る。
杉村 洋介 (すぎむら ようすけ)
海軍少尉候補生の若い男性。萩出身。軍艦「神威」の回航に参加中、船の沈没に巻き込まれ、雪村谺たちとともに漂流。ロシア戦艦「イゴール」に救助されるも、他の日本人たちとともに船底の牢のような場所に閉じ込められる。雪村とは仲が良く、彼のこと高くを評価している。イゴール船底に監禁されている最中、堂本進五郎を庇(かば)い負傷する。
岩田 大悟 (いわた だいご)
軍艦「神威」の機関士を務めていた男性。神威の回航に参加中、船の沈没に巻き込まれ、雪村谺たちとともに漂流。ロシア戦艦「イゴール」に救助されるも、他の日本人たちとともに船底の牢のような場所に閉じ込められる。船底に監禁され、全く外が見えない状態でも、船の速度や向かっている方向などが分かる。
ジャン・アンドレセン (じゃんあんどれせん)
フランスのア・ルーヴル造船所に所属。軍艦「神威」の回航船長を務めるフランス人の男性。船が沈没し、雪村谺たちとともに漂流していたところをロシア船艦「イゴール」に救助される。神威の沈没が責任問題となることを恐れ、イゴール艦長のセルゲイ・レブロフの甘言に乗り、雪村たち日本人を見捨てる。
ニコライ
ロシア戦艦「イゴール」の船員。ロシア海軍水兵の若い男性。雪村谺たちがイゴールを脱出するさい、雪村に人質にされる。
場所
イゴール
ロシア戦艦。セルゲイ・レブロフが艦長を務める。艦長の影響からか、船員たちは日本人に対する偏見が強い。
神威 (かむい)
日本がフランスのア・ルーヴル造船所に発注した最新鋭の軍艦。雪村谺が艤装回航員として乗り込んでいた。フランスから日本への回航中、南方でタイフーンに遭遇し沈没する。