外天の夏

外天の夏

単車オタクであること以外は取り柄のない主人公、天外夏は、幼いころから2歳上の優秀な兄、天外冬と比較され育ってきた。冬が事故で亡くなったことで家族がバラバラになったと感じた夏は、兄も通っていた地域随一の名門高校への2年次編入を目指すが敢え無く失敗。地域随一の不良高校に通うこととなる。そこでさまざまな出会いを果たした夏が、横浜の暴走族の世界へと足を踏み入れていく。原作を佐木飛朗斗が務め、同氏最大のヒット作である『疾風伝説 特攻の拓』と世界観を同じくするが、時代は下る(例えば両作品に共通して登場する暴走族魍魎の場合、『疾風伝説 特攻の拓』では九代目だが、『外天の夏』では三十六代目となる)。またそれに伴い『疾風伝説 特攻の拓』では最大規模だった夜叉神が、弱小チームと評されるなど勢力図にも大きな変動が見られる。

正式名称
外天の夏
ふりがな
げてんのなつ
原作者
佐木 飛朗斗
漫画
ジャンル
不良・ヤンキー
関連商品
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概要・あらすじ

幼いころから優秀な兄の天外冬と比較されて育ってきた天外夏。しかし両親の期待を一身に背負った冬がバイク事故で死亡したことで、天外家は崩壊してしまう。喪われた物を取り戻そうと、冬が通っていた名門高校への編入を目指すなどなりに努力するが、単車オタクであること以外取り柄のないは編入試験に失敗、地域で随一の不良高校、私立聖蘭高校で新学期を迎えることとなる。

しかし不良の巣窟たる聖蘭高校では、新学期初日は在校生による編入生狩りが行われるのが通例で、も否応無しに巻き込まれることに。絶体絶命のピンチを迎えるだったが、その場に秋川伊織賀来和國という2人の不良少年が登場したことで空気は一変。

伊織と和國のタイマンへと発展した凄絶な状況を、しかし偶然ながらも制止したのはだった。事態が収まったという安心感から気を失ったが、意識を取り戻したのは保健室。そこでは、優等生とばかり思っていた冬が外天という暴走族を結成した初代総長で、横浜の暴走族をまとめ上げようとしていたことを知る。

こうしては、クラスメイトで冬の後を継いだ外天二代目総長である伊織に伴われ、暴走族の世界へと足を踏み入れるのだった。

登場人物・キャラクター

天外 夏 (てんがい なつ)

単車オタクの16歳。幼いころより優秀な兄の天外冬と比較されて育ってきた。冬がバイク事故で死亡したことで家庭が崩壊すると、冬が通っていた名門高校、学謳院への編入を果たすことで家族の絆を取り戻そうと考える。編入試験を突破するための願掛けとして、道路に空いた大穴を愛車のFTRで飛び越そうとするが、何度挑戦しても成功することはなく、編入試験も失敗に終わった。 しかし願掛けの過程でひとりの少年(のちに秋川伊織と判明)と出会い、さらに編入試験の会場で巻島亜里沙と遭遇。学謳院編入に失敗したことで、私立聖蘭高校という地域随一の不良高校に通うことになるが、聖蘭高校で伊織や亜里沙と再会。 さらに彼らの口から、冬が外天という暴走族を起ち上げた初代総長で、横浜の暴走族をまとめ上げようとしていたことを知らされる。伊織がクラスメイトで、かつ冬の後を継いだ外天の二代目総長であったことから、外天と深く関わることになった夏は、横浜および近隣地域の暴走族の世界へと足を踏み入れることに。 やがて冬が遺した愛車CB750 K0に触れる機会を得た夏は、亡き冬の声を聞き、比較され続けてきた自分だが、しかし自分でしかありえないことを悟るのだった。と同時に、それまで黒だった髪の色が、自然と銀髪に変化する。その後、外天の集会に参加することになった夏。 初めて経験した暴走行為は当初こそ和気藹々と進むが、やがて外天と敵対する蝿王や朧童幽霊などが乱入してきたことで大規模抗争へと発展してしまう。しかし夏の、それまで暴走族の対立構造に関わってこなかったゆえの行動が、いがみ合う悪童たちの心に奇跡のような気付きを与えることになる。喧嘩は強くないが、動体視力に優れ、相手からの攻撃を躱すことは得意。 またその動体視力はバイク運転でも発揮され、反対側から向かってくる暴走族の集団を走りながら避けることもできた。

秋川 伊織 (あきかわ いおり)

私立聖蘭高校に通う男子高校生で、暴走族外天の二代目総長を務める。もともとは同じ暴走族の魍魎に所属し、次期統領になる予定だったが、天外冬に心酔し外天のメンバーになった。このため、幼なじみで魍魎にも共に所属していた賀来和國が統領になることになり、関係がこじれて険悪な間柄に(幼いころは伊織と和國とで、巻島亜里沙を屋敷から連れ出すなど非常に仲が良かった)。 冬が事故死すると外天の二代目総長に就任するが、修理した冬の愛車CB750 K0で事故を起こした亜里沙を身を挺して守ったことで昏睡状態となり、長らく病院に入院していた。だがある夜、意識を取り戻し外出。 願掛けのため道路に空いた大穴を愛車のFTRで飛び越そうとする天外夏と出会う。その際は名乗り合うことすらせず、伊織は再び昏睡状態に。紆余曲折を経て聖蘭高校に通うこととなった夏が初登校した当日、運命に導かれるように目を覚ました伊織は聖蘭高校へと赴き夏と再会。さらに夏が冬の弟であることを知った伊織は、夏を外天の集会へと誘うのだった。 冬は生前、自らが率いる外天に、有力な暴走族である魍魎および泥眼を加えた三頭体制で横浜の暴走族世界をまとめあげようと考えていたが、伊織は魍魎とも泥眼とも対立する道を選択。誰かれ構わず事を構えることこそないものの武闘派路線をひた走る。 愛車はカワサキZ400 FXで、その運転技術は卓越しており、また外天は“神音爆速”を標榜する。

巻島 亜里沙 (まきしま ありさ)

巻島宗親と巻島怜子の娘で、巻島亜芽沙という名の双子の妹がいる。また、賀来和國とは異父兄妹の関係だが、幼いころはその事実を知らなかった。秋川伊織とは幼なじみであり、和國を含めた3人で幼少時を過ごす。やがて和國と恋人関係になる。しかし関係は破綻し、横浜の暴走族をまとめるべく天外冬が外天を起ち上げると、冬に惹かれるようになった。 だがその冬も事故死。冬が遺した愛車CB750 K0を伊織が修理すると、亜里沙はそれを駆って無謀な暴走を行い、自身も事故に遭ってしまう。通常であれば命を落とすところだったが、後を追ってきた伊織によってすんでのところで救われる。 一方、身を挺した伊織は意識不明の重体となり、病院で昏睡状態に。冬に惹かれながらも伊織へも気持ちがあった亜里沙は、後ろめたさから事故で顔に刻まれた大きな傷を治療せずにいた。天外夏とは、冬が通っていた名門高校、学謳院の編入試験会場で席が隣になったことで知り合う。亜里沙本人は白紙答案を提出したため不合格となり、手も足も出なかった夏が聖蘭高校に通うことになり再会。 やがてそのひととなりに惹かれていく。恋多き女性である面は否めないが、その背景には両親が互いに軽蔑し合いながら互いを利用し合っていること、亜芽沙から憎悪の視線を送られていること、異母姉である真梨椰と由梨椰が隙あらば自分たちを陥れようとしてくること、そして亜里沙自身は愛を信じたいと思っていること、という複雑な家庭環境がある。 なお、小学生時代からモデルをしていたが、事故で負った顔の傷のために引退することになった。音楽一家である巻島家ではピアノを担当する。

巻島 亜芽沙 (まきしま あがさ)

巻島宗親と巻島怜子の娘で、巻島亜里沙の双子の妹。天外冬と同じ名門高校の学謳院に通う。足が不自由で、無理をすれば歩けないことはないが、普段は車いすを使用。なお足が不自由になった経緯は作中で明示されていないが、初登場時、亜里沙に対し「せめてアタシの脚を返してよ」と述べており、亜里沙に原因があることが仄めかされている。 願掛けのため道路に空いた大穴を愛車のFTRで飛び越そうと何度も挑戦する天外夏の様子を自室の窓から眺め、その一生懸命さに惹かれ恋に落ちる。しかし亜里沙が夏と出会い、親しく接していることで嫉妬心を募らせることに。音楽一家である巻島家ではバイオリンを担当、難曲として知られるパガニーニの綺想曲を弾きこなすなど実力は非常に高い。 常にゴスロリの衣装を身にまとう。

賀来 和國 (がらい わくに)

横浜で最凶の暴走族と恐れられる魍魎で、三十六代目の統領を務める。私立聖蘭高校在籍。秋川伊織とは幼なじみで、長く仲の良い親友同士であり、魍魎にもともに所属していた。しかし伊織が天外冬に心酔し、冬が結成した外天に入ったことで関係がこじれ、相憎みあう関係に。 また巻島亜里沙とも幼なじみで幼いころは伊織を含めた3人で遊び、やがて亜里沙と恋に落ちる。だが亜里沙が異父妹であることがのちに発覚し、関係は破綻した。父親はかつて世界的指揮者だった賀来道國。道國が落ち目になるや見切りをつける一方、道國の弟子で資産家の巻島宗親の妻になった母、巻島怜子を憎悪する。 また裏切者である怜子や宗親にへりくだる道國のことを軽蔑している。愛車は日章カラーのインパルス。

間宮 龍人 (まみや りゅうと)

横浜最大の暴走族泥眼の総長で、同時に私立聖蘭高校と並び称される不良校の蓮之葉学園を支配する。強いカリスマ性の持ち主で、200台規模の泥眼を掌握。天外冬が生前目指していた外天、魍魎、泥眼による横浜暴走族の三頭体制には一定の理解を示していた。だが、冬の死後、二代目を継いだ秋川伊織が悲しみのあまり抗争に明け暮れたことで見切りをつけ、自身が“族の王様”として君臨しようとする。 なお、恋人の樹里村優麻は、かつて冬と付き合っていた女性。

多宝丸 (たほうまる)

横浜の暴走族蝿王(ヴェルゼブブ)の頭。泥眼本部がある蓮之葉学園に在籍しながらも、泥眼総長の間宮龍人に敵対する。私立聖蘭高校に通う従兄弟の阿波野聖美が、編入初日に天外夏に打倒されたことを受け、夏を標的として付け狙うようになった。泥眼に対抗するため、朧童幽霊の犀村百瀬と同盟しており、外天の集会に参加することになった夏を襲うべく、朧童幽霊傘下の蛇破美會と遊魂境を従え乱入。 しかし百瀬の裏切りに遭い危機に陥ってしまう。愛車はKH400。また、小柄な体躯をしているため、敵対する者からはハエのチビと呼ばれる。

犀村 百瀬 (さいむら ももせ)

暴走族朧童幽霊の三十二代目総長で、横浜の暴走族随一の戦略家として知られる。秋川伊織が目を覚ましたことを知り私立聖蘭高校へ向かった間宮龍人の留守を狙って間宮が支配する蓮之葉学園を襲撃したり、それにもかかわらず間宮率いる泥眼の集会が行われている場に単身訪れ同盟を申し入れたり、手を組んでいたはずの蝿王を裏切ったりなど、切れ者ぶりを遺憾なく発揮。 ただし喧嘩に劣るわけではなく、伊織や賀来和國ともタイマンで互角の実力を有する。愛車はCB1300スーパーボルドール。

巻島 宗親 (まきしま むねちか)

巻島亜里沙・巻島亜芽沙の父親であり巻島怜子の夫。前妻との間にも真梨椰と由梨椰という2人の娘がいる。巻島宝飾グループの総帥として莫大な財力を有する。若かりしころは指揮者の賀来道國に師事し、音楽家を志すが、その才能はなく断念。以来、実存しないものを否定するようになった。 その一環として、管理通貨制度を否定し、日本で金本位制度を復活させようと企図。一方、道國の妻だったソプラノ歌手の怜子を娶り、4人の娘たちにも音楽を嗜ませている。怜子や娘たちについてすら、自分の人生を彩るための装飾品と嘯くものの、怜子に対しては強く執着。別人を怜子そっくりに仕立て上げて縋り付く様子を見せた。

巻島 怜子 (まきしま れいこ)

巻島宗親の妻で、巻島亜里沙と巻島亜芽沙の母親。宗親に嫁ぐ前は、世界的指揮者だった賀来道國と結婚していた。長男の賀来和國を授かるが、その後、道國が落ち目になると早々に見切りをつけ、道國の弟子で音楽の才能はなかったが資産家になっていた宗親の後妻の座に収まる。 自身も音楽を嗜み、ソプラノ歌手だったが、その実力は決して高くはなく二流と評される程度。なお、道國が落ち目になったのは、そんな怜子を無理やり起用し続けたためとされる。女の価値は「男の尊い人生をいかに支払わせたか」で決まると述べ、宗親についても自身の渇望を満たすための消耗品だと認識。他者に対して常に艶然かつ尊大に振る舞うが、そうした自分の有り様にどこか寂寞たる思いも抱いている。

天外 冬 (てんがい ふゆ)

天外夏の兄で、名門高校の学謳院でも首席になるなど非常に優秀な人物だった。だが、あるときバイク事故で死亡。冬が喪われたことで、父親は愛人のもとに走り、母親はアイドルに執心するか仏壇を拝むかで、天外家は崩壊してしまう。家族はまったく知らなかったが、多くの暴走族が群雄割拠する横浜の状況を憂い、自らその世界に飛び込むことで横浜の暴走族をまとめあげようと決意。 自身で新たなる暴走族外天を起ち上げ、既存の有力チームである魍魎および泥眼を含む三頭体制をもくろんだ。

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