夢みる惑星

夢みる惑星

中世の国を思わせるアスカンタ王国を舞台とし、巨大地震やそれに伴う噴火といった大陸崩壊から人々を救うために大神官となったイリスの行動を描く、壮大なSFファンタジー作品。佐藤史生の代表作のひとつ。

正式名称
夢みる惑星
ふりがな
ゆめみるわくせい
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
 
ファンタジー
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概要・あらすじ

主人公イリスは、アスカンタ王国の第一王子であるが、出生の問題のため、母と各地を転々とし、隠れ住んでいた。しかし、母は死に臨み、各地の神殿を統括する宗教の中心であるで一生を終えるよう言い含め、イリスに託す。父モデスコ王はイリスを王にと望むが、の神官ライジアは、イリスには幻視という、テレパシーや予見が出来る能力があると告げ、数百年来、該当者の無かった大神官になるよう推戴する。

大神官となったイリスは、腹違いの弟である第二王子タジオンの戴冠式の日に、遷都するよう神託を受けたと宣誓し、これが果たされなければ大厄災が来ると予言する。

登場人物・キャラクター

イリス

銀の瞳と銀の髪を持つアスカンタ王国の第一王子。アスカンタ王国の王である父モデスコと母ルキソーヤの間に生まれる。ふたりは父が同じ異父兄妹であったため、母はこの関係を忌み、父の前より身を隠し、各地を転々としながらイリスを育てた。母の死後、谷の神官に見いだされ、父、モデスコの庇護下となる。 モデスコに後を継ぎ、王となることを望まれたが、予知やテレパシー能力を持つという幻視者であるとされ、大神官となるために神殿のある谷へと下る。しかし、本当はイリスには幻視者としての能力はなく、幻視者であるライジアが予見した大陸崩壊から人々を救うため、あえて芝居を打っている。 頭脳は明晰で、機転がきく。

ライジア

谷と呼ばれる、各地の神殿を統括するの中心部の神官。未来を予見し、テレパシーのような能力を使うことの出来る幻視者。大陸崩壊を幻視し、その崩壊から人々を救うためにイリスを数百年来該当者のなかった大神官に推戴する計画を立てた中心人物。過去、幻視の能力を上げようとしたさいに使用した薬の副作用で盲目となる。

モデスコ

アスカンタ王国の王。イリスとタジオンの父。強引で傲慢な部分はあるが、威厳に満ち、剛胆で政治的手腕も高く、アスカンタ王国を発展させた。黒髪にひげを生やした中年男性。

タジオン

アスカンタ王国の第二王子。イリスとは母が別の腹違いの弟。性格は父であるモデスコ王に似ており、強引で傲慢な部分はあるものの、公正で武人としての気概も高い。突然現れたイリスが気に入らず、顔を合わせると口論になることも多々あるが、お互いに能力は認めており、時に無茶なことをするイリスを不器用な形ながら心配している。 婚約者のフェーベのことを愛している。

フェーベ

東イスハンタルの公女で、次代の王の王妃となるべく、アスカンタ王国の王城に滞在する黒髪の少女。明るく活動的な性格。はねっかえりながら、他者を気遣う優しさを持つ。

カラ

黄金の戦士族と呼ばれるベニ・アスラの一族の少年。一族の特徴でもある褐色の肌に金の髪を持つ、端麗な容姿をしている。口が悪く、物怖じをしない。携帯型の竪琴のようなリュタンという楽器と歌の名手でもある。族長のひとり息子だが、イスファとの戦いに敗れ、父は戦死、一族は離散した。 カラ自身は捕らえられ、イスファの王の奴隷となっているが、イリスに助け出され、その後は共に行動する。散り散りになった一族を集め、国を再興することを夢見ている。

シリン

各地で自身の踊りを興行する舞姫。舞の能力が高いこともさりながら、幻視の能力を持っており、これを発揮しながら踊るため、人々の心に強い影響を及ぼす。ただし、本人は幻視の能力を持っていることに気づいておらず、能力の発揮も自然に行われている。カラと縁があり、追われていた彼を助け、カラの祖父にもらったというリュタンという楽器をカラに返した。 そのさい出会ったイリスに興味を持ち、惹かれていく。

ゲイル

モロー族と呼ばれる、暗殺を生業にする一族の生き残りの青年。殺人という重い罪の意識と孤独から言葉と自身の名を忘れてしまっている。ラジ・アヌイの依頼により、イリスの暗殺を企てるものの、これに失敗。そのさい、自身の名をイリスが呼んだことから、イリスにのみ心を開く。

ズオー

アスカンタ王国の国務大臣。ヒゲを蓄えた男性。大地震がおこるとの予言とイリスの計画を聴き、協力を申し出る。若い頃、イリスの母、ルキソーヤに恋をしていたが打ち明けることができなかった事を後悔している。

ラカン

タウリシュの長。谷の科学者だったが、意見の相違があり、出奔後、タウリシュとなる。谷への反乱をかね、ラジ・アヌイに協力する。

ラジ・アヌイ

イスファの執政長官。政治的能力は高いが、狡猾で残忍な性格。アスカンタ王国を配下に従えようとしている。

アッサ

マヌ族の族長の孫娘。一族の者がイリスを暗殺しようとしたため、その代償として谷へ連れて来られる。しかし、暗殺はマヌ族の仕業に見せかけたものだとわかっていたため、イリスによって解放された。まだ年若い女性だが、男勝りな性格で、一族を率いての戦闘もこなす。「~だべ」といった方言で話す。

ルキソーヤ

イリスの母で、イリスと同じく銀の瞳と銀の髪を持つ女性。父を同じくすると知らず、モデスコと恋をし、イリスを授かるが、それと知った後、モデスコの元を離れ、各地を転々としながらイリスを育てる。美しいが心身ともに弱い。故人。

『夢みる惑星』の登場する恐竜のような生物。アスカンタ王国ではこれらを飼い慣らし、家畜として使役している。首長竜のような姿をした式典用の王竜、荷物や人間を乗せて運ぶ四足歩行の剛力、小型で愛玩・鑑賞用の金目や銀目、ティラノサウルスを思わせる戦闘用の青鬼、赤鬼、騎竜として人を乗せ空を飛ぶ、プテラノドンのような姿をした翼竜などが存在する。

集団・組織

タウリシュ

『夢みる惑星』の登場する結社。谷以外では禁じられている科学を研究する。そのため、異端として扱われ、犯罪者として取り締まりの対象となっている。科学知識を利用して武器を制作する一方、建築の技術開発や貧民に勉強を教える学習塾を開くなどの行為も行っている。

ベニ・アスラ

『夢みる惑星』の登場する一族。褐色の肌の金色の髪を持つ、眉目秀麗な容姿が特徴。勇猛で名高く、戦士としての能力も高いため、黄金の戦士族とも呼ばれる。高潔で、屈辱は決して聞き流さないため、時として一族をあげた争いとなることもある。小さな竪琴のようなリュタンと呼ばれる楽器と槍(重籐槍)を魂としており、謡や演奏も上手い。

モロー族

『夢みる惑星』の登場する一族。男性は暗殺を生業とし、その技は舞とも呼ばれるほど美しく無駄がないとされる。体の入れ墨と、外科手術で植えつけられた真鍮の爪が成人男性の特徴。暗殺は儀式と呼ばれ、神聖なものとされる。幻覚を見せる効果のあるルフという植物の根を焚き、幻覚の中で依頼者が暗殺の標的を殺すことが出来なければ依頼を受けないという。 男性は早死にすることが多く、一族はすでにバラバラとなり、村は死に絶えている。

マヌ族

『夢みる惑星』の登場する一族。野生の竜を狩って生計を立てるため、竜の生態に詳しい。特徴的な山刀を使って戦う。ピアス穴をあけるといった、自身の体に手を加えることは禁忌とされる。語尾に「~だべ」のつく、方言のようなしゃべり方をする。

場所

アスカンタ王国

作品世界で最古、最大の都市。開祖は聖船に乗り、星の海を渡ってやってきたとの神話がある。都市と王城の他、谷と呼ばれる神殿や王立学院が集められた場所がある。都市の人口が多いため、建物が階層状に建てられており、下町は迷路のような様相を見せる。

イスファ

砂漠の中に栄える隊商都市。交易が盛んで、税収が多いため、勢いが盛ん。近隣の岩場の上にトロ・ノイと呼ばれる神泉があり、この水を中央広場に引いて街を水中庭園となすことができる。

アスカンタ王国に存在する、神殿と王立学院が集められた場所。竜の産地としても知られる。川を挟んで西が神殿、東が王立学院となっている。それぞれ、神殿は信仰の、学院は学問の中心となっている。開闢から伝えれた知識として、科学を学ぶ事のできる唯一の場所だが、科学の知識および技は谷より外に持ち出しが禁止されている。

その他キーワード

リュタン

『夢みる惑星』の登場する楽器。携帯型の竪琴のような小型の弦楽器。軽く、持ち運びが便利で、操作が単純ながら、音通りもよく、様々な曲との相性も良い。ベニ・アスラの一族が好んで使用する。

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