概要・あらすじ
平氏の繁栄する12世紀終盤、低級貴族の息子遮那王は山深い寺に幽閉され、外の世界を夢見て脱走を企てる日々を過ごしていた。ある時、功を求めてやってきた平氏の武士と諍いを起こし、付近を根城とする山賊との三つ巴の争いに巻き込まれた遮那王は、山賊に囚われていた少女静の助けで山賊を壊滅させる。山賊の残党と天狗、静と共に京都へ出た遮那王は、彼のために母が平清盛の妻となったことを知って怒りにかられ清盛を襲撃。
しかし、道中、勘違いで遮那王を追ってきた武蔵坊弁慶との戦いで負った傷のため、失敗してしまう。京都を追われる身となった遮那王は、天狗こと源義朝の忠臣鎌田正清の伝手で西国に渡り、海賊の一党や源氏の残存勢力との争いの末、これらを従える。
彼は源義経と名乗り、打倒平氏を掲げて戦いを繰り広げていく。
登場人物・キャラクター
遮那王 (しゃなおう)
源氏の血を引く少年だがその身分を隠して鞍馬の山寺で育てられていた。外界への憧れが強く、何度も脱走を図っている。ある時天狗と呼ばれる謎の男に出会い、その後山賊との抗争の末に脱走に成功した後、京の町で母を奪った平清盛暗殺を企てるが失敗、その過程で武蔵坊弁慶を仲間にして西国に落ち延びる。 その後生まれ持った頭領の資質を徐々に開花し、義経を名乗って源氏の残党や海賊を仲間に引き入れることに成功、反平氏勢力として成長していく。そして富士川の戦いで平氏を破り、兄源頼朝と再会。平氏勢力との戦いに身を投じていく。しかしその過程で多くの人を殺めてきたことに苦悩する。
天狗 (てんぐ)
鞍馬の山に棲むと恐れられた謎の男。初めて遮那王と出会った時は彼を追ってきた僧兵に引き渡したが、後日、彼が山賊を撃退した時は遮那王を保護し、一命を取りとめた山賊をも配下として平氏に共に復讐するよう誘った。その正体は源義朝の元部下の鎌田正清で、源氏の再興を願っていた。 九州に遮那王らと落ち延びた際、平氏の追撃をかわして遮那王を逃がすため自ら囮となり、討たれる。
静 (しずか)
山賊に捕らえられていた少女。遮那王と平維盛、そして山賊の三つ巴の戦いの末、遮那王に助けられる。平維盛に気に入られて平氏の庇護をうけるようになるが、遮那王が京に来た際に再会。同行を申し出るが、打倒平氏のため過酷な戦いが続くことが予想されたため京を落ちのびる際に置き去りにされる。 しかし、それでも遮那王を想い続け、白拍子(今でいう踊り子)の名人として成長する。
武蔵坊 弁慶 (むさしぼう べんけい)
延暦寺の僧兵。平氏の配下にある人物だが、町で横暴を働く平氏の者をいさめるなど正義感にあふれる好漢。善良な市民を殺した平氏の者を成敗しようとするが、先にその者を殺して着物を奪っていた遮那王に人違いして立ちはだかる。その後平教経に敗れた遮那王を保護し、共に平氏への怒りに燃える間柄ながら、彼が修羅の道に入らないよう目付をするという名目で一行に加わる。
平 維盛 (たいら の これもり)
平氏の若き武士。鞍馬の山寺に視察に来た際、山賊との抗争に巻き込まれ遮那王や静と出会う。平清盛暗殺未遂時や、その後の源平の戦いにおいて何度も遮那王と戦うことになる。山賊との戦いにおいて命を救ってくれた静に心を寄せており、何とか自分のものにしたいと強く思っている。
平 教経 (たいら の のりつね)
平維盛と同じく平氏一門の武士で武芸の達人。美丈夫だが、風流を解さない無骨者と呼ばれている。遮那王が平清盛暗殺を狙って平氏の屋敷に乱入した際に立ちはだかり、彼を圧倒した。しかし逃げた彼を追った先で武蔵坊弁慶の妨害にあい、以降自身の誇りのため、平維盛と共に遮那王の一行を追うようになる。
源 頼朝 (みなもと の よりとも)
遮那王の兄。源氏勢力の中心人物として東国の武士にまつりあげられた人物。富士川の戦いの後、参陣した遮那王と兄弟として再会する。その際は温かい言葉をかけ、共に涙するほどだったが武蔵坊弁慶には演技と受け取られ、警戒される。その見立ては正しく、決して自らの腹の内をさらけ出さず、他者を巧妙に利用する計算高い性格をしている。
木曽 義仲 (きそ よしなか)
遮那王や源頼朝の従兄弟。木曽源氏の頭領。平清盛の病死を知って平氏に反旗を翻す。倶利伽羅峠の戦いで、牛を使った奇策で数に勝る平氏を圧倒し、その勢いのまま京へと入る。しかし京の公家勢力と敵対し、源頼朝軍と合戦となる。彼の息子源義高と親交のあった遮那王は投降を薦めるが、それを拒否し、妻巴御前を逃がして最後まで戦い、討ち取られる。
平 知盛 (たいら の とものり)
平清盛が病没した後の平氏を率いる人物。木曽義仲が敗れたあとの京に単身現れる度量と、義仲軍の残党数人を一瞬で斬り伏せる武力の持ち主。かつ智謀にも優れ遮那王を鞍馬に預けたのは、いずれ再興を図る源氏勢力を二分するためだったと遮那王に告げ、たとえ天下を取っても源頼朝と争うことになると予言する。 常に忍びを身近に配しており、激昂した遮那王が斬りかかった時も容易にこれを制圧した。
山本 義経 (やまもと よしつね)
九州にて源氏の再興を狙う一党の頭領。源為朝の子を自称する。遠く離れた岩場から吊り橋を渡る人間を狙撃できる弓の達人。共闘を申し出る遮那王の誘いを断って大宰府の平氏を討とうとするが平維盛に敗れる。その後遮那王の配下となり、天狗と共に彼を逃がすために囮となる。 その後落ち延びて木曽義仲の配下となり、後の京で遮那王と敵として再会する。