概要・あらすじ
姫のサミールが、魔王シャザールに連れ去られた。王は国中に号令をかけ、サミールを救うための軍勢を差し向けるが、誰一人としてサミールを救うことはできなかった。そんな中、カマル・ザム・ハッサンは営んでいた自分の店を畳み、単身でサミール救出に向かう。冒険の中、ハッサンはさまざまな怪物を退けていき、怪魚ガーリブの胃の中に閉じ込められていた二人の小さな魔女を救出。
ハッサンは魔女たちの協力を得て、共にシャザール城を目指す。
登場人物・キャラクター
カマル・ザム・ハッサン (かまるざむはっさん)
アラビア風のターバンを巻いた黒髪の凛々しい若者。ごく普通の町の商人だったが、かつてサミールとは一度だけ目を合わせた事があり、彼女に一目惚れした。サミールがシャザールにさらわれたと聞いて店を畳み、サミールを救う旅に出る最後の戦士となる。それに際して、妃からカメを与えられた。そのカメには、「ご主人はん」と呼ばれている。 旅の途中で飛びエイに海に落とされ、怪魚のガーリブに飲み込まれてしまうが、ガーリブの腹の中で出会った魔女たちを助けて脱出し、以後は彼女たちといっしょにシャザール城を目指す旅を続ける。
サミール
黒く長い髪を持つ、美しいお姫様。人々には「姫」と呼ばれ慕われている。かつて一度だけ目を合わせた町の商人カマル・ザム・ハッサンに恋をし、以後はため息ばかりの元気のない日々を送っていたため、王や妃に心配されていた。ある日突然、サミールを嫁にしようとするシャザールに連れ去られてしまう。額の上に、おばばからもらった魔よけの髪かざりを付けているため、シャザールに手出しされずに済んでいるが、彼のもとから逃げ出すこともできず、一人囚われの身となっている。
魔女 (まじょ)
外見は人間の5~6歳くらいの小さな二人の少女。金髪の長い髪をポニーテールにし、尖った耳を持つ。二人の外見はそっくりで、それぞれ「イーニィ・ミーニィ」「マーニー・ムー」と名乗っているが、見分けはつかない。かつてシャザールと戦ったが敗れてしまい、魔力を奪われて怪魚ガーリブの中に囚われていた。しかし、同じくガーリブに飲み込まれたカマル・ザム・ハッサンに助けられ、いっしょに脱出に成功。 以後は、自分たちの魔力を取り戻すため、ハッサンと協力してジュダルやシャザールの軍勢を退けながら、シャザール城へ向かう。ハッサンがシャザールを倒したあとは魔力が戻り、人間より巨大な3~5メートルサイズの大人の美女の姿になった。
王 (おう)
アラビア風のターバンを巻き、白く太い眉と同じく顔半分を覆う真っ白なひげを生やした壮年男性。国王であり、サミールの父親。サミールの元気がない様子を心配し、妃やおばばに相談していた。のちにサミールが恋煩いをしている事を知るが、その矢先に、サミールをシャザールにさらわれてしまう。シャザールに連れ去られたサミール救うために大軍勢を送ったものの、救出はならなかった。
妃 (きさき)
明るい髪をアップにしてティアラを付けた、上品な中年女性。薄いベールで髪と顔を隠している。王の妻で、サミールの母親。サミールの元気がない事を王に相談され、サミールが恋煩いをしている事を知った。おばばの占いにより、サミールの恋の相手が商人の若者カマル・ザム・ハッサンである事を知り、サミールを救う旅に出ようとしていたハッサンに、空を飛ぶ力を持つ大きなカメを与えた。
おばば
サミールの名付け親で、彼女に魔よけの髪かざりを贈った老女。王と妃にサミールの元気がない事を相談され、サミールが恋煩いをしている事を言い当てた。水晶玉占いによりサミールの恋の相手がカマル・ザム・ハッサンである事を突きとめ、その事実を妃に知らせた。
シャザール
東の国のシャザール城に住む魔王。普通の人間を片手でつかめるほどの巨体で、吊り上がった眉に顎ひげを生やした強面。サイドを深くそり込んだモヒカンのような髪型で、後ろ髪は長く一つに結んで垂らしている。上半身には棘の付いたベルトのみで、下半身は腰巻きとアラビア風のズボンを穿いている。心臓は体の中になく、別に場所にあるため、それを破壊しない限りは不死身である。 サミールを気に入り、自分の嫁にするべくをさらったが、魔よけの髪かざりのせいで手を出す事ができず、塔に閉じ込めている。
カメ
サミールを助けようとしていたカマル・ザム・ハッサンに妃が与えた、人を乗せられるほどの大きさのカメ。マッハの速さで空を飛ぶことが可能で、「ガメラ」のいとこを自称している。大阪弁でしゃべり、ハッサンの事は「ご主人はん」と呼ぶ。ハッサンを乗せて海の上を飛んでいる時に、シャザールの手下の飛びエイの集団に襲われてハッサンを海に落とし、カメ自身は連れ去られてしまう。
飛びエイ (とびえい)
シャザールの手下の空飛ぶエイ。カメに乗っていたカマル・ザム・ハッサンを襲って海に落とし、カメはシャザール城に連れ去った。普段はシャザール城の周りを飛び交っており、近づく者に襲いかかっているが、攻撃方法は一直線にぶつかるだけ。のちにハッサンたちがシャザール城に近づいた際は、その性質を見抜いていた魔女たちの分身の術に惑わされ、全員が城壁に突っ込み無力化された。
ガーリブ
シャザールの手下の怪魚。巨大なピラニアのような外見をしている。海に落ちて来たカマル・ザム・ハッサンを丸飲みにした。胃の中にはハッサンのほかに、魔女たちも捕えていた。しかし、ハッサンが持っていたナイフで内側から破られ、倒されてしまう。
ジュダル
シャザールの手下の巨大な毒グモ。闘争本能が強く、砂漠にいたカマル・ザム・ハッサンと魔女たちを倒すために差し向けられた。しかし魔女たちの策略により、同じく砂漠に送られた大サソリと同志討ちをさせられる羽目になる。
大サソリ (おおさそり)
シャザールの手下の巨大なサソリ。闘争本能が強く、砂漠にいたカマル・ザム・ハッサンと魔女たちを倒すために差し向けられた。しかし魔女たちの策略により、同じく砂漠に送られた巨大毒グモ・ジュダルと同志討ちをさせられる羽目になる。
軍勢 (ぐんぜい)
シャザールの手下でもある、約三万人の大軍勢。外見はいずれも普通の人間だが、非常にノリやすい陽気な性質で、楽しい踊りや歌を見たり聞いたりすると、すぐに戦うことを忘れてしまう。その性質を知っていた魔女の助言を受けたカマル・ザム・ハッサンが、彼らの前で東村山音頭を歌い踊った結果、それから数十年、東村山音頭を踊り続ける事になった。
場所
シャザール城 (しゃざーるじょう)
魔王シャザールが住む城で、断崖絶壁の巨大な山の上にある。周りはイバラの森で囲まれ、空には飛びエイの大群が飛び交っている難攻不落の城。塔の一番上には光る宝石が取り付けてあり、それこそがシャザールの心臓である。
その他キーワード
魔よけの髪かざり (まよけのかみかざり)
おばばがサミールに送った美しい髪飾りで、魔法の力や魔物を退ける力を持つ。魔よけ髪かざりにより、シャザールはサミールをさらって捕えながらも、手を出すことができなかった。のちにサミールを助けに現われたカマル・ザム・ハッサンは、この魔よけの髪かざりを使ってシャザールの魔法を封じた。
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