概要・あらすじ
山形鐘一郎は、車や人生についてのエッセイを書く作家。世間で話題になる有名人に様々な思いをいだきつつも、暇があれば散歩をしたり料理を作ってみたりして悠々とした暮らしを送っている。山形の部屋には、山形が作る料理を食べるために山田やなっちなど、年代も職業もまったく異なる人たちが集まる。面倒見の良い山形は彼らを遠ざけることなく交流していく。
登場人物・キャラクター
山形 鐘一郎 (やまがた しょういちろう)
エッセイを書いて暮らしている男性作家で、年齢は57歳。大食漢の大酒飲みで、日々の暮らしではいかに「美味し」といえるものを食べられるかを重要視している。自宅とは別に仕事場として世田谷にある安アパートを借りているのだが、自宅には週に一回程度しか帰らず、ほぼ仕事場である安アパートで生活をしている。自然第一主義で、どれだけ暑くてもクーラーを使わない。 安アパートの住民たちには料理上手として知られており、時々それを目当てに山形の部屋に遊びに来ることがある。
山田 (やまだ)
安アパートで山形鐘一郎の隣の部屋に住む男性。年齢は35歳。元銀行員ながら今はバーテンダー見習いをしている。山形が料理を作っていると山田の部屋まで料理の匂いが漂ってくるため、たびたび訪れては御馳走になっている。山形のことを慕っており、海や飯屋にもよく一緒に出かけている。
なっち
安アパートに住む女性で、年齢は21歳。渋谷でヘルス嬢をしている。将来の夢はヘルスで貯めた資金で花屋を開くこと。山田ほどではないものの、やはり山形鐘一郎の料理の匂いにつられて、よく山形の部屋に遊びに来ている。アニソン好きでCDをたくさん持っている。
片山 (かたやま)
安アパートの1階に住む男性。独身の高校教師だが、作家を志望している。プロの作家として活動している山形鐘一郎に対するコンプレックスや対抗心がひどく、山形に会うといつもイヤミを言っている。寿司屋に行くと通ぶりたがるので、片山が寿司屋に行こうと誘っても同行する者はおらず、食べることが好きな山形さえも嫌がっている。
門倉 (かどくら)
安アパートに住むおじいさん。山形が住む町の隣町で大豪邸に住んでいたが、わけあって破産してしまい安アパートの住人となった。言いたいことを言って好きなように暮らしている山形鐘一郎の生き方を羨ましく思っている。
ホリエモン
有名な起業家の男性。国会議員になろうとしたり、粉飾決算をしたりと何かと世間を騒がせており、直接の面識はないものの山形鐘一郎に快く思われていない。醜悪な見た目から山形は「ブタエモン」と呼んでいる。バカの見本としてその名を引き合いに出されることが多い。実在の人物、堀江貴文がモデル。
中村 シュンスケ (なかむら しゅんすけ)
山形鐘一郎が注目している有名なプロサッカー選手。スコットランドリーグでMVPを取るなど、世界的に名前が知れ渡っている。しかし山形の興味の対象はもっぱら下ネタ方面の話で、世界的にも誇れるサイズの「モノ」を持っていると評価されている。実在の人物、中村俊輔がモデル。
清原 (きよはら)
山形鐘一郎が注目している有名なプロ野球選手。山形が嫌うプロ野球チーム「巨人」に移籍したが、彼のことだけは例外的に応援し「番長男一匹清原」と評価していた。しかしピアスを付け始めるなど素行がおかしくなり、「タコ入道ピアス清原」となってからは応援する気持ちも冷めてしまった。実在の人物、清原和博がモデル。
愛ちゃん (あいちゃん)
成城のはずれにある「野川」という小川に棲み着いているアヒル。4匹のアヒルで群れて行動しており、まとめて「愛ちゃんとその仲間たち」として近所の人に知られている。数年前から住み着いて、今や町の人気者。山形鐘一郎は愛ちゃんがどこから来たのかなど、さまざまなことが気になっていたが、それらは結局すべてが謎のまま終わる。
場所
安アパート (やすあぱーと)
山形鐘一郎や山田たちが住んでいる、世田谷にあるアパート。木造二階建ての建物で、外装も内装も古めかしく、その名の通り家賃も安い。小説家であることを隠している山形や、破産して仕方なく越して来た門倉など、わけありな住民が多い。壁が薄いためか、住民同士の付き合いが密。
BAR スカッチ (ばーすかっち)
山田が勤める下北沢にあるバーで、山田いわく働きやすくて活気があるいい店。場所柄もあってか若い客が集まる店で、山形鐘一郎が訪れた際も店内は若者で溢れていた。生ビールがないという一点においてのみ欠点が認められるが、山形もこの店の酒は気に入っている。
駅そば (えきそば)
山形鐘一郎が住む町の近くにある、成金の町の駅にあるそば屋。山形は、駅そばといえば立ち食いであるべきと考えているが、この店はホームの外で座って食べるタイプの店。しかし壁に向かって食べるのも哀愁があってよし、とプラス思考で考えている。山形はこの店の甘醤油がどっぷりと入った味が好みで、なんだかんだと言いながら週に一回のペースで通っている。