大江戸妖怪かわら版

香月日輪の同名の児童文学シリーズのコミカライズ作品。大首のかわら版屋の記者にして、魔都大江戸で唯一の人間である雀が出会う、魔人や妖怪達との奇想天外な日常を描く人情漫画。「月刊少年シリウス」2013年12月号から連載の作品で、高橋愛の初連載作品でもある。

正式名称
大江戸妖怪かわら版
原作者
香月 日輪
漫画
ジャンル
お化け・妖怪
レーベル
シリウスKC(講談社)
関連商品
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あらすじ

第1巻

妖怪達の棲む魔都大江戸に暮らす唯一の人間、は、大首のかわら版屋の記者をしており、今日も相棒の桜丸と共に、炎蛇の手によって発生した火事の起こった現場へ取材に向かう。炎蛇とは陰の気から生まれた魔が、何かの火種を吸い、大きくなった妖怪で、その火は普通の水では消せない。水神の火消し部隊が結解を張り、聖水をかけて鎮火する様子を間近で見た雀は、やはり妖怪の世は面白い、と胸を高鳴らせる。ある日、桜丸が人間の少女を拾って来る。飛鳥山の田んぼのあぜ道にぽつんと佇んでいた小枝は、人間の江戸の町から魔都大江戸に落ちて来たらしい。もといた世界に戻りたくないという小枝に、雀の尊敬する鬼火は好きにするように言い、雀に面倒を見るように告げる。困惑しながらも、雀は、自身が魔都大江戸に落ちて来た時と同じような状況の小枝が気持ちの整理がつくまで、見守る事を決める。小枝に、魔都大江戸の賑やかな暮らしぶりを案内する雀と桜丸とポー。遊び疲れて眠ってしまった小枝を前にして、桜丸とポーに、妖怪の世界と人間の世界は時間の進み具合が違うため、人間の世界に戻るのならば、早いうちがいいと諭される雀。それを聞き、自身が次元の隙間に落ちて魔都大江戸に落ちて来た当初、拾ってくれた鬼火の前で散々荒れ狂い、この妖怪の世界で生きる事を決めた過程を思い出す。人情あふれる妖怪の世界は居心地がいいが、小枝は育ちもよさそうだし、子供で何より女の子だ。後悔のない選択をさせてやりたい雀は、もとの世界に戻る決心がつかない小枝を連れて、火天宮見物に出かけるのだった。

第2巻

火天宮で火の鳥を見た小枝は、生きる喜びに打ち震えた。これまで過ごしてきた人間界では、形式的な家庭に生まれたため、感情を素直に表す事すらためらわれる生活をしていたのだ。伸び伸びと楽しそうな様子の小枝を海に連れて行ったは、河童の妖怪、タロ吉と相撲を取り、仲を深める小枝を温かく見守る。やがて夕陽が傾き、海へ帰っていくタロ吉を見送る小枝は、この別れが、人間界に戻れば永遠の別れになる事に気づき、ひどく落ち込むのだった。自身の今後に悩む小枝を連れて、雀達は次に吉原へ向かう。最高の花魁、菊月太夫の花魁道中を目にした一行は、彼女のあまりの美しさに息を呑む。人形のような菊月の美しさに恐怖すら感じる小枝だったが、地虫が悪さをし、暴れ馬に轢かれそうになったところを菊月に助けられるのだった。菊月の強さと気高さを知り、昔、母親が同じように暴れ馬から身を挺してかばってくれた事を思い出した小枝は泣きじゃくり、人間界へ戻る事を決める。雀は小枝を笑顔で送り出しながら、戻る場所がある小枝の幸せを羨むのだった。鬼火が無事に小枝を人間界へ送り返すのを見届けながら、雀は自身が人間界へ戻らず、魔都大江戸で生きる事を選択した日々を振り返る。次元の隙間から魔都大江戸に落ちて来たばかりの自分を拾い、親身に世話を焼いてくれた鬼火をはじめ、出会い頭に菓子を御馳走してくれた百雷、空を飛び、自由に生きる喜びを教えてくれた桜丸。すべての出会いは、雀が妖怪の世界で生きる意思をあと押ししてくれたのだ。心の感じるままに、自分の生きたいように、きちんと生きていく。人間界ではできなかった生き方をまっとうする事を、雀は気持ちも新たに決意するのだった。

第3巻

水天の婚礼の取材で、キュー太に花嫁の写生を頼んだは、桜丸ポーと共に水天宮への花嫁行列を見物に行く事にした。左右に分かれた騎手のあいだから水が湧き出て、うねる川になる様を見て驚いた雀は、空を行く鳥達が口々にくわえていた花をその水の流れに落とし、祝福するのを見て、温かい気持ちになる。華やかな花々の落ちた水の中からは、水神の象が現れ、その巨大な象の上の神輿の中には、美しい花嫁がかしこまって座っているのだった。やがて水天宮の鳥居をくぐった花嫁が水天と対面するのを見届けた雀は、一連の様子を書き留めたキュー太が、それを絵巻物にして大首に提出したのを見て、恍惚とする。キュー太の絵描きとしての腕前に改めて関心したところで、雀は、キュー太が日吉座一の役者、蘭秋の肖像画をも仕上げた事を知る。蘭秋の肖像画の依頼主である油問屋の大河屋に会うために、魔都大江戸一の船茶屋、竹の春へ向かった雀、キュー太、ポーは、大河屋の計らいで蘭秋本人と対面する事になる。実際に会った蘭秋は、大の男と並んで戦えるような力強さを持つ、美しい人型の妖狐だった。離れの庵にいた蘭秋と同席していた百雷に驚く雀達だが、蘭秋は百雷に好意を寄せているらしい。百雷は鈍感なので蘭秋の気持ちに気づいていないようだが、妖怪の世界では、種を超えた結婚はできるのかと気になった雀は、大首のもとへ帰る道すがら、ポーに疑問を投げかける。よほど身分の高い妖怪でない限り、種族を超えてつがいになる事を気にする者はいないと言うポーに、人間の世界よりもよほど自由だと雀は笑い、自分もいつか、この妖怪の世界で誰かと家族になるのだろうかと考えるのだった。それからしばらく経ったある日、雀と桜丸とポーの三人は、大河屋の伝で日吉座の桟敷席で芝居見物をする事になった。身分不相応な高級席に気後れしながらも、雀は、舞台に上がった途端に観客全員を虜にした蘭秋の芝居の迫力に度肝を抜かれる。

第4巻

日吉座の芝居を観劇するは、舞台にあがった蘭秋の美しく、可憐で凛々しい姿に見惚れてしまう。翌日、改めて蘭秋の取材に向かおうとしていた雀は、飛んで来た桜丸に、李角が何者かに殺されたと聞く。現場に急行した雀は、李角の死体の奇妙な点に気づく。調査の結果、李角は事故死と判明したが、それを契機に百雷に告白する蘭秋。蘭秋は美しいが男性であるため、百雷にふられてしまうが、それでも凛とした佇まいを崩さない蘭秋に、雀は何とも言えない色香を感じるのだった。やがて年末が近づき、雀は桜丸とポーと共に海上銭湯に行く事になった。露天風呂で酒盛りを楽しんだ雀は、人間界にいた時と違い、四季を通した行事を重ねる魔都大江戸での充実した暮らしに感謝する。そして大晦日、地天宮に古道具を置きに行った雀は、すでに山のように積み重ねられている古道具に自分のものを混ぜ、この妖怪の世界に来てからずっと生活を支えてくれた古道具達に感謝と別れを告げる。古道具達が、夜に百鬼夜行をする事を教えられて期待に胸を膨らませる雀は、桜丸に連れられて千年榎に灯る狐火の幻想的な光景を見物したあと、鬼火のもとで鍋を囲んで暖まるのだった。夜、楽しみにしていた百鬼夜行を見物しながら、雀は、楽しい年越しを迎えられた事に感謝し、来年もいい年になるようにと祈る。

第5巻

桜丸ポーは、蘭秋に招待され、正月から日吉座の舞台を見に行く事になった。その日の芝居が人間界の絵本、シンデレラと酷似した内容であった事から、雀は脚本を書いた妖怪に興味を持ち、会いたいと思う。日吉座の座長、菊五郎に脚本家について尋ねてみたところ、最近の新しい芝居の脚本のほとんどは、菊五郎の娘である雪消が書いている事を知る。さっそく雪消に会いに行った雀だが、厳重な結界符を貼られた座敷牢に入れられた雪消を目にして驚愕する。雪消は、人やほかの妖怪を喰う白鬼であるため、一生を座敷牢の中で過ごすのだという。長く座敷牢にいるため、外界を知らず、そのため仙人のように浮世離れしたところのある雪消は、非常に美しい女性に見え、雀は彼女の一生がそこで終わる事を寂しく思う。雪消は雀の人間界での話の新鮮さに喜び、雀もまた、雪消との語らいを楽しみに、頻繁に彼女のもとに足を運ぶようになるのだった。語らいを重ねるうちに、過去に惹かれた相手を喰い殺した事で自身のコントロールできない人喰いの本性を恐れ、自らの意思で一生座敷牢にいる事を決めている雪消の芯の強さを知り、雀は雪消にどんどん惹かれていく。ある日、雪消に縁談話が持ち上がった。相手は上級武士、旗本の三男坊、保坂栄之進という猪の妖怪だが、非常に外聞の悪い男で、雪消の力欲しさに言い寄って来ているのだと判明。武力で無理やり縁談を押し通そうとする栄之進だが、菊五郎により、雪消が一生座敷牢から出られない身の上である事を知らされると、退散するよりほかなかった。雀が、平和だとばかり思っていた魔都大江戸にも、相手を見下したり暴力で物事を解決しようと考える者がいる事にショックを受ける。そんな中、栄之進の守役が現れ、雪消をさらっていってしまう。虚栄心から雪消を思い通りに動かそうとする栄之進だが、特殊な結界符の貼られた座敷牢を出た雪消は、無差別に他者を襲う人喰い鬼へと変貌。雪消を助けに栄之進の屋敷に来た雀は、白鬼となり理性を失いつつある雪消に襲われ、絶体絶命の状況に陥る。

第6巻

は、保坂栄之進の屋敷で雪消に襲われ、絶体絶命の状況に陥るが、間一髪のところで鬼火に助けられる。雀の身代わりに、白鬼となった雪消の長く鋭利な爪に貫かれた鬼火は、自身の血を使い、雪消の額に封印を刻み、白鬼の姿を封じる事に成功。難を逃れた雀は、鬼火の出血量の多さに驚くが、鬼火は雪消を再び日吉座の座敷牢に封じ込める封印符を書くために自身の血を提供。雀は、再び座敷牢に入れられた雪消と面会し、雪消にとっての安息の場所は、この座敷牢の中しかないのだという事を痛感するのだった。季節は巡り、春になり、桜の綺麗な名所で花見をする事になった雀と桜丸ポーキュー太。途中から百雷蘭秋も参加し、楽しい酒の席が展開される中、雀は大蟒蛇の妖怪にからまれている少女の姿をした妖怪の夏初と出会う。ぶつかった詫びに大蟒蛇の酒のお酌を強要されて困っていた夏初を守るために、雀に代わって酒飲み対決を受ける事にした蘭秋は、見た目と違って酒には非常に強く、大蟒蛇を負かして拍手喝采を浴びた。後日、その酒飲み対決の様子を雀がかわら版にして雪消に見せたところ、雪消が面白がり、鬼と蘭秋が酒飲み対決をするという筋書きの脚本を書き、さっそく日吉座で上演される事になる。日吉座の舞台効果もあり、酒飲み対決のかわら版は何度も版を重ね、草紙も作られるほどの大ヒットを記録した。大首に特別報酬をもらい、懐の温かくなった雀は、ある日、空から落ちて来た天空人魚の息吹と出会う。息吹は花見で夏初を助けてもらった礼をしたいと言い、雀を天空の竜宮城へ連れて行ってくれるという。快諾した雀は、息吹に抱きかかえられて空を飛び、天空の竜宮へと向かうのだった。

第7巻

は、息吹に連れられて天空の竜宮へ降り立ち、桃源郷のように厳かな竜宮村の暮らしに歓喜する。天空魚と天空魚の餌である風点を売る事で生計を立てている竜宮村では、天空魚職人が一番偉く、ただの村役場の勤め人でしかない息吹は、邪険に扱われている様子。これに怒った雀だが、息吹は、親も家も田畑も持たない自分が、役場勤めをさせてもらえるだけありがたいのだと言って、笑う。天空魚の飼育場で夏初と再会した雀は、夏初が天空魚職人の見習いをしている事を知り、蘭秋へのお土産にと、「紫」と名付けられた天空魚を持たされる。天空にあり、結界により雨も通さない空飛ぶ要塞である天空の竜宮村の水源はどこにあるのか、と疑問に思う雀は、息吹により、村役場裏の鎮守の森へと連れていかれる。鳥居をくぐって森を進むと、無限水という石があり、そこから滾(たぎ)るように水があふれている。無限水が天空の竜宮村の暮らしを支えているのだと知った雀がさらに奥へ進むと、広い湖があり、水神の象とよく似た象が佇んでいた。象と意識を通して会話できる事を知った雀は、象により、この妖怪の世界が地球ではない場所にあるのだという事を教えられる。何でも知り尽くしている、竜宮の守護神のような象に、雀は自分が地球から妖怪の世界に来た理由を尋ねるが、答えは自分にしかわからないものだと返される。雀はその深い言葉に、鬼火達に支えられて自分らしく生きる事が答えなのだと悟るのだった。珍しいものをたくさん見聞きした雀は、息吹に連れられて意気揚々と魔都大江戸に帰還するが、道中、刺客に襲われる。迎えに来てくれた桜丸に助けられて事なきを得たが、息吹が天空の竜宮の神守りであるために狙われたのだと知った雀は、移動可能な飛ぶ要塞を作る事も可能な無限水が狙われている事をも知る。平和に見える妖怪の世界も案外穏やかではない事を知り、驚愕する雀だが、天空の竜宮で出会った象の言葉を胸に、日々を楽しく生きていきたいと改めて感じるのだった。

第8巻

は、ある秋の日、ポーから魔都大浪花の秋の風物詩、雷馬の話を聞く。巨大な台風のような雷馬は、毎年秋に魔都大浪花沖を南から北へと通過していくが、魔都大浪花城から海上警備が雷馬を食いとめる姿は壮観だという。天空の竜宮に行って以来、魔都大江戸の外に広がる世界への関心が俄然高まっている雀は、是が非でも魔都大浪花に取材旅行に行きたいと、必死にかわら版を売り、大首を説得できるだけの稼ぎを出そうと奮闘する。だが、いくらかわら版を売っても、大首は首を縦に振ってくれない。だが、見かねた雪消が大金を貸してくれたため、雀は桜丸と共に魔都大浪花へと旅立つ事が叶った。雀は、鬼火の計らいで魔都大浪花を気に入り、よく出入りしている鬼火とそっくりの人間、修繕屋と出会う。修繕屋の案内で魔都大浪花観光を楽しむ雀は、派手で華やかだが、着飾らない町人達とすぐに打ち解ける。さらに、非常に発達した食文化や、町中に水路が通り、どこへでも舟で行く事ができる魔都大浪花の面白みに目を輝かせる。だが、その平和な町に、今年は雷馬が直撃するという。雀は、京の伏見一族が総出で結界を張り、魔都大浪花を雷馬から守ろうと躍起になっている事を知る。伏見一族の腕を信じ、雷馬が無事に魔都大浪花のそばを通り過ぎる様を漏らさず書き留められるよう、雀は気を引き締めるのだった。

第9巻

魔都大浪花見物を楽しむは、いよいよ明日、雷馬が魔都大浪花に到達する事を知る。やきもきしながらも見物を続ける雀は、修繕屋の案内で、異邦人達の集まる町、唐人町を訪れた。唐人町で人間界にある肉まんそっくりの食べ物を食べたり、修繕屋自前のたこ焼きプレートでたこ焼きを楽しみながら、雀は、人間界にいたころの仲間と飲み食いした楽しい思い出を振り返る。必ずしも嫌な思い出ばかりではなかった人間界の事を考えるうちに感傷的になり、雀は落ち込む。しかし、この妖怪の世界で頑張ってきたからこそ、今の、心のままに生きる自分らしい自分が在るのだと思い直すのだった。やがて雷馬の到達する時刻が迫り、魔都大浪花沖のかなたに落ちた稲妻であたりが真っ白になり、あたりは騒然となる。次の瞬間、魔都大浪花沖に雷馬が現れ、ものすごいスピードで魔都大浪花に迫るが、それを迎え撃つ伏見一族ら術士が総出で結界を張り、なんとか雷馬の進行方向を変える事に成功。かくして魔都大浪花の平和は保たれたのだった。雷馬と伏見一族の闘いを間近で見ていた雀は、素晴らしいかわら版が作れそうだと満足し、修繕屋に別れを告げ、魔都大江戸に帰ろうとする。帰り際、術を使って人間界へ戻してやろうかと持ち掛けてくる修繕屋の言葉に一瞬躊躇した雀だが、今の家族が待つ場所へ戻ると言い、魔都大江戸へと帰っていくのだった。雀が魔都大江戸に戻ってしばらくしたある日、今度は修繕屋が魔都大江戸にやって来た。5~6年に一度の割合で次元を超えてやって来る渡来船を見物に来たという修繕屋を連れ、雀はさっそく渡来船の船着き場である魔都大江戸城へと向かう。魔都大江戸城で人のごった返す中、渡来船見たさに家を抜け出してきた箱入り娘の初花と出会った雀は、彼女と共に、現れた渡来船の豪華さに驚く。そこへ百雷が現れ、初花が百雷の妹だという事が判明する。

第10巻

初花は、人狼の雌に生まれた宿命で、生まれつき体が弱く、そのため大事をとって田舎暮らしを強いられてきた。何かあっては心配だと、一刻も早い帰郷をうながす百雷を説得したは、修繕屋と初花を連れて、魔都大江戸観光を再開した。道中、佐保風という少女と出会った雀だが、彼女は非常に不思議な娘で、雀と初花には少女に見えるが、修繕屋には少年に見えてしまう。修繕屋は佐保風のその現象を雌雄同体の一種だと結論付ける。しかし佐保風は、雀のかわら版屋稼業や魔都大浪花からたまたまやって来ていただけの修繕屋の個人情報にも詳しく、二人は彼女の正体に首をかしげるのだった。さらに雀は、魔都大江戸観光を進めるうちに、佐保風が鬼火の知り合いである事を知る。だが、鬼火の家に立ち寄った際、佐保風を見て鬼火が顔色を悪くし、佐保風の言いなりになって、食事や寝床の世話をする姿を見て動揺する。鬼火にわがままを言えるのは、本来なら魔都大江戸将軍の東方くらいであるはずだったが、結局佐保風の正体はわからないままだった。翌日、雀達は、百雷の計らいで日吉座に観劇に行く事になった。日吉座の舞台を初めて見る修繕屋と初花の喜ぶ様に、魔都大江戸の魅力を余す事なく伝えたと満足する雀だが、夜になると、犬族の眷属が理性を失い、凶暴化する事態が発生。人狼である百雷も凶暴化し、雀と修繕屋を襲うが、鬼火によって拘束される。満月の浮かぶ夜空に魔狼を見つけたポーが、犬族の眷属が凶暴化したのは魔狼の災厄という伝染病にかかったからで、魔狼を倒せば、みんな元に戻ると教えてくれる。そして、鬼火の兄弟子である佐保風の力で狼の姿に変身した初花の活躍により、無事に魔狼は成敗され、魔都大江戸は平和を取り戻すのだった。

登場人物・キャラクター

主人公

魔都大江戸で、大首のかわら版屋の記者をしている少年。つねに大福帳を首からぶらさげており、ネタ探しに奔走している。妖怪の棲む魔都大江戸で暮らす唯一の人間である事から、その独自の目線でつづられた記事は毎回... 関連ページ:

大首

魔都大江戸でかわら版屋を営んでいる妖怪。雀の上司で、真っ赤な大きな大首。仕事の出来には人一倍厳しいが、魔都大江戸に落ちて来たばかりの雀に仕事を与え、生活の世話をしてやるなど、人情にもろい一面を持つ。雀やポーには「親方」と呼ばれて親しまれている。

魔都大江戸で、大首のかわら版屋の挿絵師をしている妖怪。いつも雀の版下に挿絵を描いてくれるが、雀のつたない説明でも、非常にリアルな絵を描き上げる才能を持つ。その才能は魔都大江戸中に知られ、名のある歌舞伎... 関連ページ:キュー太

魔都大江戸で大首のかわら版屋の記者をしている妖怪。雀の同僚で、文芸担当。探偵のような服装をした猫の妖怪で、雨の日は元気がなくなる。キザな性格で、「いい朝だね。生まれ変わった気分だよ」と毎朝のように言っ... 関連ページ:ポー

魔都大江戸で刷り師をしている妖怪。末とそっくりな背格好をしており、腕が六本ある蜘蛛の姿をしている。非常に兄貴肌で、雀の至急の依頼にも嫌な顔をせずに応じてくれるため、雀に篤い信頼を寄せられている。

魔都大江戸で刷り師をしている妖怪。留とそっくりな背格好をしており、腕が六本ある蜘蛛の姿をしている。非常に兄貴肌で、雀の至急の依頼にも嫌な顔をせずに応じてくれるため、雀に篤い信頼を寄せられている。

魔都大江戸で暮らす、雀といつもつるんでいる魔人の男性。「風の桜丸」の異名を持ち、風を捕まえて、空をも自在に駆ける事ができる。ただし、鳥のように空を飛行し続ける事はできず、あくまで高い跳躍力と風の力を利... 関連ページ:桜丸

魔都大江戸の食事処「うさ屋」の店員をしている妖怪。人間の女性の姿をしているが、一つ目である。いつも取材に追われて奔走している雀を労ってくれる、うさ屋の看板娘。

魔都大江戸で暮らす魔人の男性。魔都大江戸の神田に居を構えている。人間の男性の姿をしており、つねにサングラスをかけてキセルを口にくわえている。魔都大江戸に落ちて来た雀を最初に発見し、家へ連れ帰ってケガの... 関連ページ:鬼火

人間の江戸の町から魔都大江戸に落ちて来た少女。魔都大江戸に落ちた当初、飛鳥山の田んぼのあぜ道にぽつんと佇んでいたところを桜丸に拾われた。6歳で、大きな呉服商の家に生まれた事から、裕福だが堅苦しい暮らし... 関連ページ:小枝

魔都大江戸で暮らす妖怪。吉原で月下楼の花魁をしている。花魁道中で闊歩する際の美しさは、まるで人形のようだと小枝に評されたほどで、男性のみならず、女性の目をもくぎ付けにし、花魁道中はつねに人だかりになる... 関連ページ:菊月太夫

タロ吉

魔都大江戸で暮らす河童の妖怪。海に住んでおり、相撲が大好き。小枝と相撲勝負をし、意気投合した。最終的に小枝に一本取られるが、次に会った時には新しい相撲の技を教えると約束し、上機嫌で海へと帰っていった。

魔都大江戸で暮らす人狼。八丁堀同心をしている。侍然とした立ち姿で、悪人を取り締まっている。職業柄、非常に厳格な性格をしているが、甘いものに目がなく、魔都大江戸に落ちて来たばかりの雀を、問答無用で菓子屋... 関連ページ:百雷

魔都大江戸で人気の一座、日吉座の看板役者を務める妖怪。水も滴るいい男の見本のような美麗な容姿をしている。魔都大浪花出身で、子供の頃から舞いが好きで、京の神舞いの名手といわれる華節師匠のもとで3年ほど修... 関連ページ:藤十郎

魔都大江戸で人気の一座、日吉座の看板役者を務める妖怪。非常に体格がいい男性の姿をしている。同じく日吉座の看板役者を務める藤十郎とは、違った意味での男前である。酒癖が悪く、酔っては好意を寄せている蘭秋に... 関連ページ:李角

魔都大江戸で人気の一座、日吉座の看板役者。伏見一族出身の妖狐だが、兄弟姉妹16人の中でただ一人妖力を持たずに生まれてきた。唯一できる変化の術を繰り返し行い、腕を磨いていたところ、女型に変化したまま狐に... 関連ページ:蘭秋

魔都大江戸で人気の一座、日吉座の座長を務める妖怪。雪消の父親で、非常に大らかな性格の持ち主。蘭秋と藤十郎をスカウトし、彼らの容姿を存分に活かした舞台を作り上げる事で、伸び悩んでいた日吉座を一気にトップ... 関連ページ:菊五郎

魔都大江戸で人気の一座、日吉座の脚本家を務める白鬼の妖怪。日吉座の座長、菊五郎の娘である。型にはまらない脚本を書くところが蘭秋や藤十郎に評価されており、特に蘭秋は、雪消を「雪消師匠」と呼び、自身に似合... 関連ページ:雪消

魔都大江戸で旗本を務める保坂家の三男坊。猪の妖怪で、当主を務めていた長男が跡取りを残さず亡くなり、次男が病気がちである事から、次期当主の座を継ぐ予定となっている。腰に魔剣を刺しており、その剣は古く貴重... 関連ページ:保坂 栄之進

天空の竜宮村の村長の姪。天空魚の飼育職人の見習いをしており、勤めて3年目になる。少女の姿をしている天空人魚で、村から魔都大江戸に花見観光に来ていたところを雀と出会った。花見の席で大蟒蛇に絡まれたところ... 関連ページ:夏初

天空の竜宮村の村役場に勤める天空人魚の男性。一人称は「儂」で、非常に気さくな性格をしている。親も家も田畑も持っていない事から、勤め先である村役場の2階に寝泊まりしている。表向きは冴えない村役場の役人で... 関連ページ:息吹

天岡

天空の竜宮村の村長を務める男性の妖怪。夏初の母親の兄であり、姪の夏初を非常にかわいがっている。あごのあたりまで垂れ下がった福耳が特徴的で、非常に気さくな性格をしている。息吹が神守りである事を知る、数少ない者のうちの一人。

水野大老

魔都大江戸の魔都大江戸城に勤めている男性の妖怪。魔都大江戸城では将軍の次に偉く、魔道士と手を組み、天空の竜宮にある無限水を狙い、天空の竜宮の神守りである息吹を襲った。非常に野心家である。

令月

魔都大浪花城の家老を務める男性の妖怪。魔都大浪花将軍、西方の第一の部下であると同時に、西方に意見できる唯一の存在。つねに冷静でどっしり構えている大男で、血の気の多い西方を叱咤激励したり、甘い菓子でなだめるなど、その扱い方をよく心得ている第一人者。

人間界に暮らす男性。次元の狭間で鬼火に会った際、互いにそっくりな容姿である事から、違う次元の同一人物である事に気づく。以来、鬼火と親交を持つ。魔都大浪花が気に入っており、よく出入りしている。鬼火に教え... 関連ページ:修繕屋

百雷の妹の人狼で、14歳の少女。百雷から雀のかわら版の評判をよく聞かされており、雀の書く記事のファンとなった。人狼だが、女性なので獣面ではなく、少女の姿をしている。人狼の雌に生まれた宿命で、幼い頃から... 関連ページ:初花

魔都大浪花城で将軍職に就く男性の妖怪。魔都大浪花一の権力者だが、非常に気さくな性格で、そのため城下の民に好かれている。性格は少々子供じみているところがあり、甘い物が好きであったり、威圧的な魔都大江戸の... 関連ページ:西方

鬼火の姉弟子にあたる女性の妖怪。術を使わない時には少女の姿をしているが、見る者によっては少年にも見える。つねにキセルをくわえており、立場上、鬼火は逆らう事ができない。鬼火は彼女の訪問を嫌うあまり、家に... 関連ページ:佐保風

集団・組織

魔人

妖怪と共に魔都大江戸に存在している血種の一つ。鬼道が使える事と、体に入れ墨のような彫り物があるのが特徴。魔都大江戸城を固める要職のほとんどが魔人で占められている。

日吉座

魔都大江戸で劇場を構える人気歌舞伎一座の一つ。大江戸三大座の筆頭一座である。座長を務めているのは菊五郎で、看板役者は蘭秋、藤十郎、李角。蘭秋を一座に加えて、和事と荒事を融合させる芝居ができるようになっ... 関連ページ:日吉座

伏見一族

京に棲む妖狐の一族。みんな美しい白狐姿をしている。京の伏見一族として名を馳せており、妖狐の中で最も由緒正しい大妖怪の集団。代々、魔都大浪花で要職を務めており、その権力は魔都大浪花の殿様に匹敵するといわ... 関連ページ:伏見一族

鬼族

妖怪世界に存在する種族のうちの一つ。鬼族には眷属が多く、赤鬼、青鬼、山姥、山爺などが鬼族の一種である。鬼族の中でも白鬼は稀少で、その稀少性からほかの血と混ざりやすい傾向にあるが、まれに先祖返りで純血種... 関連ページ:鬼族

人狼

妖怪世界に存在する種族のうちの一つ。雄は獣面人身だが、雌は完全人型で生まれ、体が弱く短命である事が多い。雌が短命のうちに生涯を終えるのは、その力筋の強さのせいで「雌」という性に相当な負担がかかるためで... 関連ページ:人狼

場所

魔都大江戸

妖怪の棲む都市の一つ。昼空に龍が飛び、夜空を大蝙蝠が舞い、墨田川には大蛟、飛鳥山には化け狐、魔都大江戸城には巨大な骸骨やがしゃどくろが棲んでいる。卵売りが鶏の妖怪だったりする珍妙な世界だが、人情あふれる妖怪達が平和に暮らしている。時々違う次元の隙間から人間が落ちて来る事がある。

竹の春

魔都大江戸で一番高級な船茶屋。敷地内にいくつもの庵を所有しており、小路を通って行き来できる。主が蛍の妖怪のため、夜景の美しさには趣向が凝らされており、小路を飾る竹林が発光する様は非常に幻想的。また、小... 関連ページ:竹の春

竜宮

妖怪の棲む地域の一つ。川と海と空に一地域ずつ存在している。空の竜宮は天空魚の特産地として有名であり、天空魚職人がヒエラルキーの頂点にいる。また、天空の竜宮は重力がないため、階段の非常に多い造りの村であ... 関連ページ:竜宮

魔都大浪花

妖怪の棲む都市の一つ。魔都大浪花城を中心に栄えており、町中に水路が通っていて、舟でどこへでも行ける仕組みになっている。水龍の棲む琵琶湖を内包しているため、水は非常に澄んでおり、水の都と呼ばれるほどきれ... 関連ページ:魔都大浪花

唐人町

魔都大浪花にある町の一つ。獣面人身や異邦人の集まる町で、異国文化にあふれている。ずっと遠くの唐から来た者も多い。肉まんなど、人間界にあるものとほぼ同じ食品が店に並んでいるため、修繕屋のお気に入りの場所である。

うさ屋

魔都大江戸で営まれている食事処。雀や桜丸が朝、昼、晩と通っている。店主はうさぎの妖怪で、見た目はうさぎそのもの。大柄で二足歩行をし、エプロンを着用している。旬の食材を多く取り入れた料理には舌鼓を打つ者が多い。人気の食堂ながら、出前もしているため、日吉座などにいつも弁当を届けに行っている。

その他キーワード

天空魚

妖怪の世界で見られる、空を飛ぶ魚の総称。天空の竜宮の特産品であり、風点という鞠のように小さい風の精を食べて育つ。金持ちが観賞用に購入する事がつねである。

無限水

天空の竜宮村の中心地・鎮守の森にある石。つねに水を湛えており、天空に隔離されている竜宮村の貴重な水源となっている。また、空間を曲げる力を持っており、その力を手に入れようと多くの権力者達に狙われている。

雷馬

魔都大浪花に、毎年秋になるとどこからともなく現れる台風のようなもの。魔都大浪花沖を南から北へと通過していく正体不明な突風だが、雲のあいだに見え隠れする姿はとてつもなく巨大な人型の女のようで、下半身は百... 関連ページ:雷馬

渡来船

5、6年おきに次元を渡って魔都大江戸にやって来る船の通称。魔都大江戸には物資交換を目的に渡来する。異邦人や渡来犬が多く乗船しており、渡来船が来ると、異文化交流が活発に行われる。

魔狼の災厄

かつて大欧州で流行した伝染病の一種。満月の日に門が開き、魔狼が現れると、周囲の犬族はみんな理性を失って凶暴化する。魔狼を滅し、門を閉じる以外に凶暴化した犬族をもとに戻す方法はない。大欧州でこの伝染病が... 関連ページ:魔狼の災厄

炎蛇

陰の気から生まれる魔が、何かの火種を吸い、大きくなった姿。妖の一種で、見た目は炎に包まれた大蛇に見える。普通の水ではその炎は鎮火できず、水神の聖水でのみ鎮火できる。

水神

魔都大江戸の火消し屋をしている妖怪軍団。普通の水では消せない炎蛇の火消しで特に活躍し、聖水を放ち、魔の炎を鎮火させる事ができる。水神の火消しの中でも、背骨から生やした翼で空を飛ぶ空火消しは、花形職業と... 関連ページ:水神

クレジット

原作

香月 日輪

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