審判房と女囚霊
本作の舞台、東北地方のF女子刑務所では、受刑者たちの間で「審判房」の存在が噂されていた。審判房と呼ばれる場所では、20年近く前、同房の者たちのリンチで一人の女囚が死んでおり、現在は懲罰房として使われている。それ以来、懲罰房には女囚の霊が出るといわれており、「悪い人間」は自殺や心不全などで命を失うという。受刑者という立場上ほとんどが死ぬわけだが、生きて戻った受刑者がいた場合、彼女が同房の人間に審判を下し「悪くない奴以外、全員死ぬ」ことになるらしい。本作は、町田という受刑者が審判房から生きて帰ってきたことをきっかけに、次々と起きる事件を描いたホラー・サスペンスである。
様々な事情を抱えた受刑者たち
F女子刑務所の2寮では、美山、金子、近藤、町田の四人が共同生活を送っている。施設育ちの美山は、議員に引き取られて議員秘書になった女性。議員の罪を被るが、当の議員に身元引受人を断られ、刑務所に入ることになった。シャブ中でヤクザ崩れの男にすがるしかなかった金子は薬物事犯者であり、近藤は不倫相手の男性を殺しかけたという。また、町田は貧困の中、寝たきりになった姑の介護をしていたが重圧に耐えきれずに殺人犯となってしまった。刑務所という閉鎖された空間で、正体不明の女囚霊は様々な事情を抱えた四人の受刑者を追い込んでいく。
20年前に起きた新興宗教のリンチ殺人
金子と揉め事を起こした町田は、女囚霊が出るという懲罰房に入れられるが生きて帰ってくる。しかし、雑居房に戻ってからの様子は明らかに異常であった。町田は、懲罰房で「タヅエ様」に会って悪人を救う力を授けられたという。「タヅエ様」という言葉を聞いた美山と金子は、それが「真霊光教団事件」の「青木多津枝」のことではないかと推測する。それは、美山らが小学生ぐらいの時に起きた、信者同士のリンチ殺人事件で、その首謀者とされたのが布教広報部門の幹部、多津枝だったという。その後、多津枝はF女子刑務所に服役し、1年後に29歳で獄死している。美山は、多津枝と女囚霊の関係を探り、F女子刑務所に隠された謎を解き明かそうとする。本作は、心霊現象を題材にしたホラーだが謎解き要素を加えたミステリ漫画でもある。
登場人物・キャラクター
美山 雪子 (みやま ゆきこ)
F女子刑務所に入所している女性。チタン製のメガネをかけている知的な雰囲気の女性。母親を早く亡くし、父親はしばしば刑務所暮らしをする人間だったため、施設で育つ。その後、ある議員に引き取られて育ち、議員秘書として働くようになる。ある時、仕えていた議員の罪を被って刑務所に入所することになる。霊は一切信じておらず、理詰めで物事を考えて行動する。
町田 (まちだ)
F女子刑務所に入所している女性。そばかすが目立つ地味めな容姿が特徴。子供の頃は、長女として弟妹たちの世話に明け暮れ、甲斐性のない夫と結婚した後は、貧困の中、寝たきりの姑の介護に追われた。やがて介護の重圧に耐えかね、針金で姑を絞殺して逮捕された。同房の金子とケンカをして、女囚霊が出るという噂の懲罰房に放り込まれる。







