妖怪ハンター

妖怪ハンター

奇説ばかりを発表し学会から異端視されている考古学者を主人公に、日本全国で起こる奇怪な事件を古文書や伝承を手がかりに解読していく物語。事件・題材によってそれぞれが独立した短編あるいは中編作によって構成されている。シリーズタイトルである『妖怪ハンター』とは別に「稗田礼二郎のフィールド・ノートより」あるいは「稗田のモノ語り」という副題がついており、スピンオフシリーズとして『稗田の生徒たち』がある。

正式名称
妖怪ハンター
ふりがな
ようかいはんたー
作者
ジャンル
怪談・伝奇
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概要・あらすじ

専門である考古学をベースに、民俗学や宗教学も用いて歴史的なミステリーを解読する稗田礼二郎が、日本各地で起こる奇妙な事件をその学術知識と独自の歴史解釈で読み解いていく伝奇作品。稗田が現地に赴き、その地に伝わる伝承等を集め、それが現在起こっている事件に繋がっていることを解明する。

登場人物・キャラクター

稗田 礼二郎 (ひえだ れいじろう)

考古学の研究家で、元東京のK大学教授。民俗学や宗教学、古文書学にも造詣が深いが奇妙な研究テーマが多く、学会からは異端視されている。背中までのびた長い黒髪が特徴。一部マスコミや若い学生からは、「妖怪ハンター」ともあだ名される。

大島 (おおしま)

『妖怪ハンター』シリーズの登場人物で、エピソードによっては主人公の立場ともなる。西日本沿岸にある粟木町に住む高校生の少年で、怪事件に巻き込まれやすい友人の渚を助けるため奔走することが多い。奇妙な出来事に遭遇したときは、渚ともども稗田礼二郎に手紙で相談している。スピンオフシリーズ『稗田の生徒たち』の主人公のひとり。

八部 まさお (やべ まさお)

比留子古墳を調査していた郷土史家の父が石室内で首なし死体として発見され、稗田礼二郎に相談の手紙を送った。八部家は古代から祭司を行っていた家柄で、三角の冠と呼ばれる魔除けの力を秘めた冠を代々伝えていた。

瓜生 織江 (うりゅう おりえ)

「幻の木」では東京に住む31歳の会社社長夫人だったが、夫が殺害された後失踪。故郷の上木村に戻っていた。日本各地に伝わる民話「瓜子姫」の伝説を体現した謎の多い女性。「川上より来たりて」では、死亡したアマノジャクが乗り移った状態となっていた。

天野 達雄 (あまの たつお)

瓜生織江と同じ上木村出身者で、織江の夫である会社社長殺害の容疑者。日本の民話「瓜子姫」に登場するアマノジャクの立場で幼少期の瓜生織江と関わりを持っていた。

(たちばな)

ヒゲ面が特徴のアマチュア民俗学者で、稗田礼二郎同様奇説を発表している人物。シリーズの一編「花咲爺論序説」で発掘調査中の稗田に近づき、自身の目的である花咲爺の力の源と考えられる神木の種子を探している。天木薫と天木美加をその種子と繋がる存在と考え、何度もともに行動していた。

天木 薫 (あまぎ かおる)

山中に墜落した旅客機に妹とともに乗っていたが、奇跡的に生きていた少年。シリーズの一編「花咲爺論序説」で妹天木美加を捜していて稗田礼二郎と出会った。「川上より来たりて」では美加と共に上木村を訪れ、「天孫降臨」では記紀神話に登場する天の若日子(若彦)として死から復活する。 後に民俗学を専攻し、夢見沢に実地調査に訪れている。

天木 美加 (あまぎ みか)

天木薫の妹で、同じ航空機事故に遭ったが、花咲爺の遺跡と見られる巨石群の超自然的な力によって復活を遂げる。それ以降、火事を予見するなど身の回りで奇妙な出来事が起こるようになり、数々の超能力を発揮する。

天探女 (あまのさぐめ)

「“光の木”真理教団」という新興宗教団体の教祖である女性。水上歩行などのパフォーマンスを行い、テレビ等にも出演。天木美加を超能力者として教団に取り込もうとしていた。日本の神話に登場し、アマノジャクの原形となったとされる女神の名を名乗っている。

小島 渚 (こじま なぎさ)

粟木町に住む少女で大島の友人であるポニーテールの女子高生。霊感が強く、奇妙な事件に巻き込まれやすい性質があり、そうした際にはぼうっとした顔つきになる。霊媒体質で、「うつぼ舟」や「六福神」等のエピソードでは魂が抜け身体が抜け殻になってしまう事態に陥っており、大島の奔走により助かっている。

赤井 貴信 (あかい たかのぶ)

稗田礼二郎の後輩にあたる若い考古学者で、稗田とともに魔障ヶ岳の遺跡調査を行っていた。岩淵翔子の「天狗の宝器」を持ち去って以降、いくつもの遺跡の場所を言い当て「新たなる神の手を持つ男」などと呼ばれ新発見を繰り返すが、捏造ではないかとも噂されていた。オールバックにした髪形とメガネが特徴。

黒田 (くろだ)

赤井貴信の助手として三輪山の調査を行っていた。鋭い目つきをした怪しい雰囲気の男性で、赤井助教授の周囲で起こる不思議な出来事の原因を知っている素振りを見せる謎の人物。

岩淵 翔子 (いわぶち しょうこ)

「天狗の宝器」と呼ばれる、鉄と石と土が一緒くたになった不思議な遺物を伝えていた岩淵家の娘。

合田 (ごうだ)

魔障ヶ岳に入山していた修験者のひとりで、「先達」と呼ばれていたリーダー格。

信田 昭一 (しのだ しょういち)

合田とともに魔障ヶ岳に入山していた修験者のひとり。神奈川に住み、各地の山岳霊場を巡っている修行オタク。羽黒山の修行場で知り合った祈祷師の家に婿入りしている。魔障ヶ岳から神様を連れて戻ったといわれており、それ以来験力が強くなったと噂されていたが、奇妙な事件が連続で起こり行方不明となった。

小野寺みゆき (おのでら みゆき)

信田昭一を捜していると稗田礼二郎に同行した女性。父親が信田から「天狗の宝器」を譲り受けて以来様子がおかしくなったので、宝器を返そうとしている。

岩田 狂天 (いわた きょうてん)

若者に人気の新興宗教「狂天騒神会」の教祖。モヒカン頭に法衣を身につけ、ライブハウスでラップ風に託宣を行う。元々は信田昭一の弟子だったが、信田から「天狗の宝器」を譲り受けて霊感を得、教祖となった。信田の行方を捜す稗田礼二郎と小野寺みゆきに助言を与えた後、複数回に渡って稗田を助けるような行動をとる。

神上 嵩 (こうがみ たかし)

岩淵翔子とともに東京のマンションに暮らしていた謎の人物で、手近なものを手にとってもてあそんでいるうちに混ぜ合わせてしまう力を持っている。

岩淵 光一 (いわぶち こういち)

岩淵翔子の弟。姉を心配してマンションを訪ねたところで、そこを訪れた稗田礼二郎と出会い同行することになる。

シズエ

夢見沢に実地調査をしに行った天木薫に接近してくる、最近夫を亡くしたばかりの未亡人。

後藤 カオリ (ごとう かおり)

大島や小島渚の中学時代の同級生。中学卒業後、海女になった。ある日、砂浜に打ち上げられていたところを小島渚が助けたが、海に消えた。

宮沢 (みやざわ)

後藤カオリの行方を捜している大島と小島渚が出会った民俗学者。海女を調べるため、中尾由紀とともに集落を訪れていた。

中尾 由紀 (なかお ゆき)

宮沢とともに海女の写真を撮りに集落を訪れていた女性カメラマン。

場所

加美島 (かみじま)

『妖怪ハンター』シリーズの一編「海竜祭の夜」の舞台となる島。島民の多くが平家の落人の子孫と伝えられ、毎年旧暦の3月24日に、海からやってくる「海竜様」を迎える「海竜祭」が行われていた。島には壇ノ浦の戦いで入水した安徳天皇を祀る安徳神社があり、御神体として海底から引き上げられた宝剣が納められている。

比留子古墳 (ひるここふん)

『妖怪ハンター』シリーズの一編「黒い探求者」の舞台となる、九州の小さな村にある史跡。古墳内の石室にさまざまな文様が施された装飾古墳。一帯には「ヒルコ」と呼ばれる地中に棲み人を祟るとされる存在が信じられている。

軽張山 (かるばりやま)

『妖怪ハンター』シリーズの一編「生命の木」の舞台となる東北の山奥の村近くにある丘。300年前にかくれキリシタンが大勢処刑されて以来、聖地と考えられていた。稗田礼二郎がこの地を訪れたとき、軽張山を「ゴルゴダの丘」に見立て、村の善次という男が磔刑の状態で殺害されていた。

上木村 (かみきむら)

『妖怪ハンター』シリーズの舞台となる東北にある山村。日本の民話として広く伝わる瓜子姫を祭神とする姫子神社が村の中心に存在し、「天の岩戸」や「鬼の俎板」等いくつもの巨石が近辺に残る。「瓜子姫とアマノジャク」の民話との縁が深い土地であり、瓜生織江と天野達雄の故郷でもある。

枯野村 (かれのむら)

『妖怪ハンター』シリーズの「天孫降臨」の舞台となる中部日本にある集落。過疎化が進み、廃村が決まっていた。稗田礼二郎が訪れ鏃を手に入れているが、異形と化した村の老人に襲われている。

粟木町 (あわぎちょう)

『妖怪ハンター』シリーズに登場する舞台のひとつ。西日本の沿岸地域にある町で、風変わりな伝承や風習の残る土地として知られている。別伊弉諾神社には音岬から紙で作った形代を流す神事「禊流し」が行われ、蛭子神社には7年ごとに漂着物を御神体として取り替えている。

魔障ヶ岳 (ましょうがたけ)

『妖怪ハンター』シリーズに登場する舞台のひとつ。釈迦ヶ岳、涅槃岳とともに「御霊山」と呼ばれ山岳信仰の対象となっている荒々しい山稜を持った山。

三輪山 (みわやま)

『妖怪ハンター』シリーズの「魔障ヶ岳」の舞台となる奈良県に実在する山。ふもとに三輪山自体を神として祭る「大神神社」があり、神は大国主と同一視される大物主とされている。

夢見沢 (ゆめみざわ)

『妖怪ハンター』シリーズの「稗田の生徒たち(1) 夢見村にて」の舞台となる山奥の土地。昔奇妙な夢を買い取った男が長者となった言い伝えが残る夢見村があり、そこは「夢買い村」とも呼ばれている。

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