概要・あらすじ
幼い頃から自分の分身トカゲが見えていた羽住衣杏は、世間を騒がす怪死事件をきっかけに、分身に身体を奪われてしまう。魂だけの存在から仮の身体を手に入れ翅人となった羽住衣杏が自分を取り戻すために奔走する姿を描く。
登場人物・キャラクター
羽住衣 杏 (はすみい あん)
穏やかで思いやり深い優しい性格。15歳の男の子。妖精が見える特異体質で、幼いころから妖精や自分の分身トカゲが見えていた。しかしそのせいで小さい頃から嘘吐きイアンと呼ばれている。自分のことを唯一信用してくれる石椛鈴のことが好き。背中に妖精の羽の形のアザがあったが父の羽住一己によって焼かれている。 羽住一己に刺されたことでトカゲに身体を乗っ取られてしまった。
石椛 鈴 (いしなぎ りん)
羽住衣杏の幼馴染で15歳の女の子。気が強くサバサバした性格。母親から日常的に暴力を振るわれている。幼い頃、唯一羽住衣杏の妖精が見えるという能力を信じた。羽住衣杏のことが好き。
トカゲ
羽住衣杏にしか見えない霊体。緑色の髪と赤い目をしている。自分は羽住一己と羽住呉葉に捨てられたと思い羽住衣杏を恨んでいたが、実は羽住衣杏の死産した兄だった。肉体が死んでいたので妖精界で生きられるよう妖精界に送られた後、人間界で羽住衣杏を見つけ出した。
界外 (かいと)
アンティークショップを営む右目に眼帯をしている男性。羽住衣杏にキューブを渡して身体乗っ取り事件を引き起こした張本人。正体は、ガンカナーという妖精。かつてレイヴンの右目を奪った。真の目的は自分のせいで封印の弱まったデイモンズ・ドアをその身を挺して封印することだった。
エインセル
女性型の妖精。虹色の羽と海色の目、薄紅色の髪が特徴。15cmくらいの大きさ。不安定ながら強大な力を持っており界人のことが心から好き。高飛車な性格だが羽住衣杏の翅になる優しい一面もある。実はデイモンズ・ドアの封印が妖精の姿となって具現化したもの。
エリヤ
金髪の少年。両親と車に乗っている時、妖精に取り憑かれそれが原因で両親もろとも事故死している。その遺体にトカゲによって肉体を乗っ取られた後の羽住衣杏の霊体が入った。バレット夫人の孫。
バレット夫人
エリヤの祖母。アイルランド出身でおそらくアイルランド人。エリヤの母である娘とは疎遠にしていたためエリヤに対する態度は厳しかった。若い頃視力を失い、森で界人に出会っていた。そのこともあってか妖精の存在を認めておりエリヤが入れ替わっていたことも受け入れた。
羽住 一巳
羽住衣安とトカゲの父親。昔は羽住呉葉の力によって売れっ子の小説家をしていた。羽住呉葉亡き後、小説も書けなくなり精神的に不安定になり羽住衣安が自分の元から去らないように背中の羽のアザを焼く虐待をした。トカゲに無意識のうちに操作されて羽住衣安を刺した。
羽住 呉葉
羽住衣安とトカゲの母親。その正体はリャナン・シーという妖精。最初は羽住一巳の生気を吸うため取り入ろうとしたが、羽住一巳のことを愛してしまい子どもを身篭った。死んだと思われていたが実は妖精神に捕らえられ子どもの姿に封印されていた。背中に羽根の形のアザがあり、そのアザはデイモンズ・ドアを封印する力の一部だった。
梨世 (りせ)
羽住呉葉の妹。派手な美人で強気な性格をしている。正体は妖精のリャナン・シー。偶然にも久しぶりに人間界にやってきて羽住衣安や羽住一巳のことを手助けしてくれる。昔界人の店の客だったようで界人の正体も知っている。
神門 姿酔 (ごとう しら)
大会社神門グループの新社長。一見して男性のようだが実際は女性。フェミニスト。年は若く高校生くらいに見える。母親のお腹にいる時に母親ごと妖精界に迷い込んでしまい父親に不気味がられ幼少期は監禁状態で育てられた。錯乱した母親を殺してしまい、その際バロールを召還し契約を果たした。心臓が悪くキューブを摂取することで生きながらえている。
レイヴン
グリフォンの長である妖精。人間界では自身の意思に反して神門姿良のボディガードをさせられている。誇り高い性格で次元を左右する目を持っている。かつては界人と共に奴隷として捕らえられていたが、故郷ではデイモンズ・ドアの正統な門番として崇められていた。許婚のカナリィの命と引き換えにカイトに右目をあげた。
妖精アーチン (ようせいあーちん)
森に住むいたずら好きな妖精。人型の姿もしているがハリネズミに化けることもある。妹を人質にされているため他の妖精をナックラヴィーの元に誘き寄せる役目を負っている。
ナックラヴィー
上半身が人間で下半身が巨大な馬の形をしており、体に黒い静脈が走る海の怪物と呼ばれる獰猛で恐ろしい妖精。他の妖精の魂を食べる。テリトリー外の真水の川を渡ることができない。
美優
翅人。神門姿良によって羽住衣安の学校へ送り込まれた。美しい容姿をしており蝶の妖精に擬態しているが実は蛾の妖精。人間の脳髄に自分の因子を植え付けて自在に操ることができる。
ドーシー
小さな妖精村に住む妖精。とても愛情深く妖精界に捨てられたトカゲの母親代わりをしており、一緒に暮らしていた。言葉を発することはできない。村八分にされるのが怖くて自分の子ども代わりの妖精をグィンアップニーズの生贄にされることを渋々ながらも容認していた。
グィンアップニーズ
トカゲとドーシーが暮らしていた妖精村に封印されていた古き戦と死の神。何年かに一度妖精の子どもを生贄として差し出されることで封印されている。トカゲによって解放された後はドーシーを殺し、村を壊滅させた。
デレック
ひねくれものの妖精。15cmくらいの大きさ。ひねくれているが本当はいい子だと言われている。人が言ったことと逆の行動をとる。松ぼっくりに化けることができる。石椛鈴の遺言を羽住衣安に伝えた。
オーナ女王 (おーなじょおう)
界人とレイヴンが奴隷として攫った国の女王。界人を可愛がり強制的に性的な関係を結んでいた。フィンヴィラ王にその火遊びがばれた時、全てを界人のせいにしようとした。
フィンヴィラ王 (ふぃんびらおう)
界人とレイヴンを奴隷として攫った妖精貴族。オーナ女王と界人との火遊びを聞きつけ界人と、界人をかばったレイヴンを砂漠へ流刑にした。
カナリィ
レイヴンの許婚。グリフォンの血族の姫。レイヴンの自分への愛情を疑っており界人のガンカナーとしての魅力に見入られて気が触れてしまう。界人が自分を誘惑したのはレイヴンへのあてつけだと言うことに気づき界人ともみ合いになり、その際デイモンズ・ドアを開けてしまった。
バロール
神門姿良によって召還された妖精神。デイモンズ・ドアからわずかな意識だけ逃げ出してきた。神門姿良の父親の魂を殺し、その身体をのっとっている。デイモンズ・ドアを完全に開き人間界に混沌をもたらそうと計画していた。
その他キーワード
キューブ
契約した妖精を閉じ込めている掌大の立方体の標本。キューブに入っている妖精はキューブを手にした人間の身体を乗っ取ろうとするが不適合な場合は妖精が人間の背中を突き破ってしまうことになる。
デイモンズ・ドア
『妖精標本』に登場する異界へ繋がる扉。古代の神々へ通じる道を封じている。レイヴンの一族が代々門番をしていた。カナリィによって封印が壊されてエインセルと羽住呉葉の背中の羽根のアザに形を変えて二分されてしまった。バロールが悪霊を呼び寄せるために完全に封印を解こうとした。
楽土計画 (えりじうむぷろじぇくと)
『妖精標本』に登場する用語。神門姿良とバロールが神門グループの力を利用して構想している計画。表向きは地球の生態系のことを考える世界規模のプロジェクトだが実際は人間を妖精で乗っ取りデイモンズ・ドアを開き人間界に混沌をもたらそうという計画。