幻影少年

幻影少年

ゴルフ漫画「DAN DOH!!」シリーズ(原作:坂田信弘)でも知られる万乗大智の代表作の一つ。人の心が作み出す異世界「間世界(ミッドワールド)」と現実世界を舞台にしている。間世界を行き来できる不思議な力を持つ秋月サトワと、「天才ちゃん」を自称する小川水音が、さまざまな事件を通して人々の心を癒し、救っていく姿を描いた心温まるヒューマンドラマ。小学館「クラブサンデー」で2009年3月から2011年2月にかけて配信。

正式名称
幻影少年
ふりがな
げんえいしょうねん
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
少年サンデーコミックス(小学館)
巻数
全6巻完結
関連商品
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心の中に広がる世界

間世界(ミッドワールド)は、人の心の中に存在する異空間とされており、主にサトワやロックフォードといった特殊能力者が対象者の身体に触れることで進入することが可能となる。また、ほかの人間を間世界に連れて行くこともできる。間世界の風景は、その主の心象を直接反映することが多いため、間世界に進入すると嘘や隠し事が困難になる。ただし、間世界の対象者が防衛本能を具現化することで、進入者を攻撃することもできる。間世界の状態は対象者の神経活動と連動しているため、対象者が死亡すると間世界も崩壊し、進入した人間も巻き込まれて消滅する。さらに、能力者は一度進入した間世界から脱出する際に体力を著しく消耗し、同伴者がいる場合はさらに疲労感が増す。これらの理由から、間世界への進入は非常に危険な行為とされている。

間世界で紡がれる人間模様

間世界(ミッドワールド)に進入する能力を得たサトワは、通っていたカフェ、ビクトリアの経営者である水音を助けたことをきっかけに、彼女が新たに設立した事務所「ミッドワールド」に所属する能力者として活動を始めることになる。活動内容は、間世界に進入することで対象者の心を直接説得したり、隠された真意を知ることで人々の絆を深めたりすることを主な目的とした人助けである。サトワに救われた人々は、水音のほかにも、彼女の友人である幸子や弟の弘一、父親との確執を抱える敏腕刑事の黒須マイ、過去に罪を犯したヤクザの男など、世代や立場もさまざまで、そのほとんどがサトワに対して深い感謝の意を示している。

間世界を駆ける師弟の絆

サトワが間世界(ミッドワールド)で人助けを続けているのは、彼の師である人物、ロックフォードの存在が大きく影響している。10年前、サトワは両親に見捨てられたと信じ込み、自暴自棄になり、幻影をあやつる能力を使って悪事を働いていた。しかし、サトワは自ら作り出した間世界に現れたロックフォードから、母親がサトワを出産するために命を賭け、出産後すぐに衰弱死してしまったことを知らされる。親に愛されていたことを理解したサトワは、間世界に進入する能力を得て、心身を鍛えるために現実世界と間世界の両方でロックフォードから剣術の修行を受ける。そんな中、ロックフォードは麻薬カルテルの幹部であるサムエル・モンテロに襲撃され、意識を失ってしまう。このままではロックフォードが命を落とすと考えたサトワは、幻術でモンテロを欺き、彼の間世界に侵入する。そこで待ち受けていたモンテロの悪しき思念体を、ロックフォードの思念の助けを借りて打ち倒す。こうして間世界での最初の事件を解決したサトワは、ロックフォードに対する思慕を深め、別れた今でもその絆は永遠のものと信じ続けている。

登場人物・キャラクター

秋月 サトワ (あきづき さとわ)

事務所「ミッドワールド」で人助けを請け負う少年。イギリス人の父親と日本人の母親を持つハーフで、父親はサトワが生まれる前に事故で亡くなり、母親も出産直後に他界したため、幼少期はロンドンの孤児院で過ごした。生まれつき幻覚を見せる能力を持つが、その特異な能力から孤児院で周囲に気味悪がられ、両親に見捨てられたという思い込みも相まって、自暴自棄に陥る。そんなサトワを救ったのがロックフォードで、彼から現実世界と間世界を行き来する能力を学んだ。さらに、ロックフォードとの厳しい特訓を経て、間世界を自在に行き来できる力を得ると同時に、現実世界でも高い身体能力を身につけた。ふだんは穏やかな性格だが、幼少期から数々の試練を乗り越えてきたため、並外れた度胸を持つ。また、物欲が薄く、助けた相手から高額な報酬を提示されても、理由をつけて断ることが多く、そのためにサトワを雇っている水音を困らせることもしばしば。間世界での出来事を依頼者や関係者以外には決して話さないという信条を持っており、水音にもいっさい明かしていない。仕事の際には、ロックフォードの形見である黒いシルクハットとスーツを身に纏う。

小川 水音 (おがわ みずね)

事務所「ミッドワールド」とベーカリーカフェ「ビクトリア」を経営する少女。お金を稼ぐことに生きがいを感じる経営の天才で、ビジネスチャンスを見つけることに全力を注ぎ、学業は時間とお金の無駄だと考え、高校には通っていない。過去に危機的な状況に陥った際、サトワに救われたことがきっかけで、彼の能力や間世界の存在を知り、それをビジネスに活かすためにミッドワールドを立ち上げ、サトワを助手として迎える。自己主張が強く、押しの強い性格で、ふだんは温厚なサトワを尻に敷くことが多い。しかし、内心ではサトワを深く信頼しており、彼が自分の過去を語らないことに寂しさを感じている。口癖は「こまんたれぷー」で、調子が悪い時や物事が思い通りにいかない時にこの言葉を口にする。

書誌情報

幻影少年 全6巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉

第1巻

(2009-09-17発行、978-4091217691)

第6巻

(2011-04-18発行、978-4091228604)

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