あらすじ
第1巻
鳴加見地区の特務影喰捜査機関の宗光隊で活動する織田日高は、同僚の多呂好実といっしょに二人の影喰を発見し、一人の捕獲に成功した。もう一人の武治慎一郎は逃したものの、逃げる前に「慎一郎の妹である武治茜が影喰となったため、明日18時に捕獲予定」という情報だけを慎一郎に伝える。この情報は慎一郎をおびき寄せるための偽りの情報で、日高は茜の家で慎一郎を待ち構える作戦だった。翌日、予定どおり茜の家を訪れた日高は、協力者であるはずの茜に裏切られ、逆に部屋で潜伏していた慎一郎に拘束されて影界と呼ばれる世界へ引きずり込まれるのだった。
登場人物・キャラクター
織田 日高 (おだ ひだか)
鳴加見地区の特務影喰捜査機関の宗光隊で活動する男子高校生。年齢は17歳。先月宗光隊に異動してきてすぐに副隊長に抜擢されるほど優秀な人物で、つねに冷静沈着で客観的な分析ができる。ゲームコイン(game coin)を檻(cage)に、ホチキス(stapler)を革紐(strap)にという具合に、物質の名称をアルファベットで浮かび上がらせ、入れ替えと不要な部分を消去したうえで別の物質の名称になるように並び替えると、その物質に変えられる特殊能力を持つ。高校の教師には特務影喰捜査機関で活動していることは伝えているが、友達やクラスメイトには秘密にしている。
多呂 好実 (たろ このみ)
鳴加見地区の特務影喰捜査機関の宗光隊で活動する少女。同僚の織田日高からは「タロー」、兄の零樹からは「一葉」と呼ばれている。感情の起伏が極端に乏しいが、任務を淡々とこなす。身体能力が非常に高く、影喰とは徒手空拳や小型のナイフを使った接近戦で戦う。周囲には秘密しているため、知っている者もごく僅かであるが、生まれながらの影喰で、「多呂好実」という名前と戸籍はあとから与えられたもの。零樹と宗光篤人の手助けもあって、ふつうの人間として問題なく生活できている。
宗光 篤人 (むねみつ あつと)
鳴加見地区の特務影喰捜査機関の宗光隊で活動する男性。宗光隊の隊長を務めており、指揮能力が高く、リーダーシップにも長けていて、問題児の多い宗光隊員をうまくまとめるいる。多呂好実が影喰であることも知っており、周囲にばれないように手助けしている。
板谷 常盤 (いたたに ときわ)
鳴加見地区の特務影喰捜査機関の宗光隊で活動する人物。布のようなもので頭部全体を覆っており、性別は不明。口調が荒くて非常に喧嘩っ早い、粗暴な性格をしている。異動早々に副隊長になった織田日高と、日高のパートナーの多呂好実のことを快く思っておらず、多呂を挑発して騒動を起こす。対象を任意の方向にひっぱる特殊能力を持つ。
七五三 菖 (しめぎ あやめ)
鳴加見地区の特務影喰捜査機関の宗光隊で活動する女性。物静かで冷静な性格で、任務に私情を挟まない。仲間の板谷常盤から煽られても相手にしなかった。隊長の宗光篤人から出された指示を淡々とこなす。
零樹 (あまき)
多呂好実の兄。織田日高の幼なじみ。半年前に失踪するまでは、鳴加見地区の特務影喰捜査機関で活動していた。現在は「影喰と人間が共存でき、影喰にとって住みやすい世界を創る」ことを目標に影喰側に立って活動している。
武治 慎一郎 (たけち しんいちろう)
半年前に影喰となった男性。特務影喰捜査機関からは「影喰No.301」とも呼ばれている。火を発生させたり、火球を飛ばしたりする炎系の特殊能力を持つ。23人もの犠牲者を出した極悪人だが、自らの身より妹の武治茜を心配するなど、妹思いの一面もある。
武治 茜 (たけち あかね)
武治慎一郎の妹。慎一郎のことを大事に思っており、特務影喰捜査機関に協力する態度を取りながら、慎一郎に情報を流している。そして慎一郎の捕獲のために家を訪れた織田日高を罠にはめる。
集団・組織
特務影喰捜査機関 (とくむかげくいそうさきかん)
影喰による社会秩序の崩壊をさけるべく、政府によって設立された特殊部隊。通称「特影隊」。隊員は特殊能力を持つ人間で構成されており、能力に目覚めた者はほぼ強制的に入隊させられ、活動も義務化させられる。
その他キーワード
影喰 (かげくい)
影を捕食することで生命を維持する生命体。捕食頻度は1週間に約1回で、1週間影を食べないでいると、影喰は死亡する。影を食べられた者は、食べられた身体の部分が真っ黒になって動けなくなる。ふだんは人と同じ姿をして社会に溶け込んでいる。捕食から日が経つにつれて影喰の影が薄くなるため、特務影喰捜査機関はそこで影喰か否かを判断している。生まれながらに影喰の者もいれば、武治慎一郎のようにある日突然、影喰に目覚める者もいる。影喰と特務影喰捜査機関で活動する能力者は表裏一体で、目覚める際にどちらになるかは運任せ。また目覚める確率は先天性で、身内に影喰または能力者がいる者は、いない者より格段に確率が上がる。