概要・あらすじ
高校生の倉永絲は、明るい性格で、何かと頼りにされる女の子。優しい彼氏もおり、充実した高校生活を送っているかのように見えた。しかし自宅では、父親の倉永純一から暴力を受け続け、体中いたるところに痣ができて消えない状態となっていた。そんなことを誰かに相談できるはずもなく、絲は怯えながら自宅に帰る日々を過ごしていた。
そんななかで出会った若村伊吹は、絲に何かと冷たい言葉を投げかけ、突き放すような態度を取る。絲はそんな伊吹が理解できずにいたが、あるとき、父親の暴力が伊吹に知られてしまう。絶望する絲だったが、そんな彼女を優しく理解しようとする伊吹に、絲はどんどん惹かれていく。だが、伊吹には深い繋がりを持った婚約者がいた。伊吹を求めてはいけないことを察し、心の拠り所を失った絲は、冷たい冬の海に入ることを決める。
登場人物・キャラクター
倉永 絲 (くらなが いと)
フィオーレ大学付属高校に通う女子生徒。学校では努めて明るく、先生方にも友達にも頼りにされる存在であろうとしている。しかし、自宅では父親の倉永純一から暴力を受け続け、体中が痣だらけ。誰にも相談できず、心に大きな傷を抱えている。何かと自分に対して冷たい態度を取る若村伊吹に、嫌悪感を抱きながらも次第に惹かれていく。
若村 伊吹 (わかむら いぶき)
フィオーレ大学医学部の男子学生。自分の父親が、病院経営に失敗して作った多額の借金を、日吉に肩代わりしてもらう約束をしている。その条件は、若村伊吹が日吉沙夜子と結婚すること。こうして、沙夜子の父親が経営する病院を継ぐため、医師になるべく日夜勉強に励んでいる。しかし、子供たちにピアノを教えて暮らす、という本当の夢が叶わないと悟る。 自分の思うように生きられないジレンマからか、若干自暴自棄になっている。倉永絲に冷たく当たり、傷つける言動が多いのは、彼女に惹かれていく自分を戒めるため。
佐藤 (さとう)
フィオーレ大学付属高校に通う男子生徒。倉永絲の同級生で彼氏。ところかまわずキスをねだるほど、絲に対する気持ちは情熱的に見えた。しかし、絲が父親の倉永純一から暴力を受けていることを知るや否や、掌を返したように、絲と距離を置き始める。そればかりか、絲と父親の関係について憶測で話を広げ、面白がって、学校中にあらぬ噂をふりまく。
さく
フィオーレ大学付属高校に通う女子生徒。倉永絲の親友。学校では絲と行動を共にし、絲を心から慕うっている。いつも笑顔の明るい女の子。のちに1人となった絲の家に2人で住み、一緒に暮らすことになる。
日吉 沙世子 (ひよし さよこ)
日吉の娘。若村伊吹の婚約者。高校生のとき、伊吹に反感を持つ複数の男子生徒から乱暴されそうになるが、伊吹に助けてもらった。その際、怪我を負った伊吹に、自分の血液を輸血した。それ以降、伊吹との関係は現在も続いている。彼に近付こうとする倉永絲に対して、表面上はいい姉のように振る舞うが、実際は、絲を傷つける非道な行いを繰り返す。
日吉 (ひよし)
日吉沙世子の父親。病院の医院長。母校で教鞭をとっている教授でもある。若村伊吹の父親の借金を肩代わりする条件として、娘の沙世子と伊吹を結婚させ、病院を継ぐことを挙げた。娘を溺愛しており、伊吹が沙世子を大切にしていないと感じれば、釘を刺すこともしばしば。
芳実 (よしみ)
フィオーレ大学医学部の男子学生。若村伊吹の親友。倉永絲との関係に、何かと不安定になりがちな伊吹を心配している。伊吹にとっては、良き相談相手としてストレートに話ができる人物。
香沢 若菜 (かざわ わかな)
葉庭大付属中学に通う男子生徒。倉永絲が、家庭教師として教えている教え子。絲に対しては先生と生徒というよりは、姉と弟のような関係。少し頼りない絲を支える役割もしている。
余市 綾子 (よいち あやこ)
倉永絲の母親。夫と、まだ幼かった絲を残して家を出て以来、7年間行方知れずとなっていた。絲が実習中の病院に入院していたことがきっかけとなり、絲と再会。現在は恋人である薫奈と共に、銀座の画廊のマダムとなっている。
薫奈 (ゆきな)
香沢若菜の兄。余市綾子の恋人。恋人と過ごすために家を出て以来、7年間家族と連絡を取らずにいた。入院していた綾子の退院時に、迎えに来たことがきっかけとなり、偶然居合わせた弟の若奈と再会する。
倉永 純一 (くらなが じゅんいち)
倉永絲の父親。妻である余市綾子が、恋人と家を出てしまう。それ以降、やりきれない思いを抱え始め、それを理由に絲に暴力を振るうようになる。娘を愛していないわけではなく、本人も頭では分かっているが、暴力を止めることができない状態にある。