悪魔と人間が織りなすダークファンタジー
本作は、古くから人間を惑わす異形の存在である悪魔たちが暗躍するダークファンタジー。悪魔たちは人間の姿となり、彼らと契約を交わし、甘い言葉で契約をせまり、願いを叶える代わりに代償を求める。しかし、彼らもまた人間社会のルールに縛られ、時には人間以上の感情や葛藤を抱えている。そんな悪魔と人間のあいだに生まれた菊光は、彼女の人間としての視点を通して、悪魔と人間の複雑な関係性や奇妙な日常、さらに怪事件を描いている。一見、淡白で静かな日常の中に潜む不気味なオカルト描写が、本作の独特な魅力となっている。
悪魔の子が関与する怪事件
人間の母親と悪魔の父親のあいだに生まれた菊光は、ふだんはふつうの女子高校生として生活していた。しかし、母親が心臓を抜かれた変死体で発見され、菊光はやむを得ず母方の親戚に引き取られることになる。だが、菊光の叔父は彼女が本物の「悪魔の子」だと察知しており、昔から気味悪がって近づこうとしなかった。それでも菊光は気にせず、いつか父親に会うためにカフェでアルバイトを始める。そこで出会ったクラスメイトの河城は、以前から店長に取り憑いていた悪魔に襲われる。偶然その場に居合わせた菊光は、悪魔が投げた包丁が頭に刺さったにもかかわらず、まったく無傷だった。そんな菊光に対し、「気持ち悪くない」と語る河城と同僚関係になったことで、次々と起こる悪魔たちの怪事件に巻き込まれていく。
悪魔の少女と詐欺集団の対峙
アルバイト先の店長が「悪魔撲滅の会」のセミナーに参加すると言い出したため、菊光と河城は店長の身を案じ、同行することにした。そのセミナーは怪しげな水を販売する詐欺まがいのもので、店長だけでなく河城も、帰り際に渡された清めの塩の影響で体調を崩してしまう。詐欺に遭ったことに激怒した河城は、悪魔撲滅の会の本部に乗り込むが、会長の竹原があやつる人々に襲われてしまう。一方、菊光は竹原と契約した悪魔の存在に気づき、窮地に陥った竹原と河城を救うために行動を開始する。さまざまな事件を通じて、菊光の母親の死因や、刑務所に収監されている父親の謎も徐々に明らかになっていく。本作では、悪魔だけでなく、人間側の個性的なキャラクターたちも登場し、彼らが悪魔とかかわることで何を考え、どのように変化していくのかが物語の大きな魅力となっている。
登場人物・キャラクター
源間 菊光 (げんま きくみつ)
とある高校に通う女子。河城のクラスメイト。セミロングヘアの美少女だが、その正体は悪魔の父親と人間の母親を持つハーフ、「悪魔二世」。本来の姿は、頭に黒い巻き角とヤギのような下半身に尻尾が生えている。穏やかで上品な物腰ながら、その内には計り知れない強大な力を秘めている。本来生まれるはずのない悪魔の子供であるため、ほかの悪魔たちからは特別な存在として認識されている。悪魔の血を引き継ぎつつも、人間らしい優しさと大らかな心を併せ持っている。お金を貯めて父親に会いに行くことを目指し、河城が働くカフェでアルバイトを始めた。
河城 (かわしろ)
菊光と同じ高校に通う男子。菊光のクラスメイト。黒髪短髪で、眼鏡をかけている。生真面目で堅物な性格のため、同じクラスの男子たちを心底見下している。強い正義感を持ち、詐欺などの悪事には特に厳しい目を向けている。カフェでアルバイトをしているが、店長が突然発狂して奇行に走っても、冷静に対応できる肝の据わった一面もある。悪魔の存在を信じて疑わない店長や、不思議な魅力を持つ菊光との出会いを通じて、否応なく悪魔やそれにかかわる人々の奇妙な出来事に巻き込まれていく。菊光の正体には気づいていないが、その異質な雰囲気に戸惑いながらも、ふつうに接している。