世界観
人間の住む世界と、悪魔の住む魔界、そして生と死が交わるとされるイベントホライズンが主な舞台。序盤は、メフィスト・バルト・クカバラが、地獄行きの危機にさらされている人間を救うための活躍が描かれているが、次第に魔界に訪れる危機が表面化し、その真相を追うというストーリーにシフトしていく。
あらすじ
悪魔弁護編
魔界の王子であるメフィスト・バルト・クカバラは、本来の力を奪われたうえに魔界を追放され、相棒のビチュラとともにイベントホライズンで細々と暮らしていた。人間の世界に興味を示すクカバラは、ニュースなどで人間の情報を仕入れていたが、その結果、無実の罪に苦しむ人を救う仕事として、「悪魔弁護」を開業する。死神の妨害を受けつつも、依頼人の無実を信じて奔走するクカバラだが、その最中、魔界に異変が起きているという話を耳にする。
魔界の異変編
「悪魔弁護」の仕事を続けるメフィスト・バルト・クカバラは、強力なダークマターを持つシスターのイダ・マリアと、その保護者であるセルマ神父と親交を持つなど、順調な生活を送っていた。そんなある日、クカバラは親友のフニと再会するが、彼の身体には爆弾が仕掛けられており、フニはクカバラの目の前で爆死してしまう。フニからの情報で、レガートが魔界を我が物にしようとしている事実を知るクカバラ。さらには、セルマ神父の修道院で保護されているジュピターも、レガートの意を受けた悪魔の手によって危険な目に遭う。
デビル・アドベンチャー編
シュガルの尽力で、ジュピターは無事修道院に戻ってくることができた。しかしその際に、ジュピターの両親が無実の罪で地獄に囚われていることが発覚する。メフィスト・バルト・クカバラは、ジュピターの両親を救出するために、そして、レガートの暴挙を止めるために、魔界へ向かう決意を固め、ビチュラとイダ・マリアもそれに同道する。万能の車ジョディに乗り込み魔界を巡り、幾多の死闘の末ようやくジュピターの両親を見つけ出すクカバラたちだったが、彼らは自らの意思で地獄に落ちたと告げ、救出を拒否してしまう。
作風
悪魔や魔界、地獄が題材とされているため、華麗ながらもおどろおどろしいタッチの絵柄が特徴の1つとなっている。主人公のメフィスト・バルト・クカバラと、その相棒であるビチュラは、通常時は弱々しい外見をしているが、戦闘時は屈強な姿へと変貌し、そのメリハリのつけ方も大きな見所の1つとなっている。
作者情報
原作
尹仁完は、韓国出身の漫画原作者。日本におけるデビュー作として、「月刊サンデーGX」にて『新暗行御史』を発表。TVアニメの『STAR DRIVER 輝きのタクト』のコミカライズなども担当している。
登場人物・キャラクター
メフィスト・バルト・クカバラ (めふぃすとばるとくかばら)
魔界に住む悪魔の青年。魔界の王であるメフィスト・バルトの息子であり、かつては父親と匹敵するほどの魔力を持っていた。しかし力を奪われたうえで魔界を追放されており、現在は並の人間ほどの力しか発揮できない。その後はビチュラとともにイベントホライズンでひそやかに暮らしていたが、力を取り戻し魔界に戻るための手段として、「悪魔弁護」を開業する。 普段は穏やかで、やや茶目っ気のある性格。また、家族や友人に対する情が深いうえに、人間、悪魔を問わず、困っている者を放っておけないお人好しな面もあり、「悪魔弁護」に向いているとされている。しかしこのような性格から、周囲からは悪魔らしくないと言われることが多々あり、メフィスト・バルトをはじめ快く思わない者も多い。
ビチュラ
魔界に住む悪魔で、メフィスト・バルト・クカバラの助手を務めている。魔界において屈指の戦闘能力を持つ竜族の出身。現在はクカバラと同様に力を奪われており、普段は人間の子供程度の体格しか持たない。魔界の王であるメフィスト・バルトに住んでいた村を滅ぼされ、復讐のために魔界の中心部へと向かう。そこで出会ったクカバラと衝突するが、次第に絆を育んでいき、やがて忠実な部下としてクカバラに仕えることとなる。 クカバラのお人好しな性格には呆れる一方で憧れており、時には毒舌を吐きながらも、献身的に彼の「悪魔弁護」をサポートする。
トム
イベントホライズンに現れた少年の霊魂で、メフィスト・バルト・クカバラにとって初となる「悪魔弁護」の依頼人。バイクで走行しつつ、老人を故意にバットで殴り、老人はトラックにはねられ死亡したとされている。そのため地獄行きと判断されてしまうが、トム自らは決して故意ではないと訴えており、クカバラもそれに同調。 トムが故意に人を殴っていないことを示す無罪アイテムを探すため、クカバラと問答を行う。
メイヤ
魔界に住む悪魔の女性で、死神の1人。バーニング・ヘルと呼ばれる地獄を管理している。生前罪を犯したとされるトムを地獄に送るために、イベントホライズンに姿を現す。メフィスト・バルト・クカバラとは知り合いだが、彼が力を奪われてからは「ゴミ」と呼んで軽蔑している。
ナミ
イベントホライズンに現れた少女の霊魂。ホームで電車にはねられたことで死亡した。魔界においては重罪とされる「自殺」をしたとして、ポンゾールに罪人として告発される。心優しく芯の強い女性で、生前はボランティア活動などにも熱心に取り組んでいた。メフィスト・バルト・クカバラは、このような性格の人間が自殺をするとは思えないと主張し、ナミ本人も自殺などしていないと証言している。 しかし命を落とす数日前に恋人に振られており、ポンゾールからはこれを苦に自殺をしたのではないかと疑われている。
ポンゾール
魔界に住む死神。イーティング・ヘルと呼ばれる地獄を管理している。エリート然とした自信家で、ナミが命を落とした原因を自殺であると主張。魔界において自殺は重罪であるため、地獄行きが妥当だと語り、この結論を不服とするメフィスト・バルト・クカバラと争うことになる。
エリモナー
イベントホライズンに魔界のアイテムを売り出す店を構えている、妖艶な女性。メフィスト・バルト・クカバラの良き相談相手でもあり、彼の「悪魔弁護」をサポートしている。魔界で異変が起こっていることに薄々気づいており、クカバラに対しても警告をしている。また、人間界においてもある程度の知識や人脈を持っており、知己の間柄であるセルマ神父を通じて、クカバラとイダ・マリアにタッグを組ませることで2人の成長を促している。
ポール
イベントホライズンに現れた青年の霊魂。素行が悪く、前科を持っている一方で、アリスとともに世話をしている孤児たちからはヒーローと呼ばれ慕われていた。生前、アリスを撃ち殺したという容疑がかかっており、メフィスト・バルト・クカバラによって「悪魔弁護」がなされるが、他の容疑者と異なり、ポール自らはアリスを殺害したことを認めてしまっている。 万事休すと思われたが、クカバラは殺害現場において、ポールがアリスを殺したという事実と矛盾する痕跡を発見する。
アリス
保育園の保母を務めている女性。刑務所から出てきたばかりのポールと知り合い、ともに働くよう勧めた。懸命に働き、子供たちからも慕われるポールをアリス自らも信頼していたが、ある時銃撃を受け、脳死状態に陥ってしまう。ポールは自分がアリスを撃ったというが、その発言は真実ではなかった。
シュガル
魔界に住む死神の青年で、ポンゾールの兄。物事を計算によって片付けようとする癖がある。独特の美学を持ち合わせており、その美学に反する者は誰であろうと容赦はしない。ポールを巡る裁判でメフィスト・バルト・クカバラに敗北し、死神の座を剥奪されてしまう。しかし本人はまったく気にしておらず、魔界における騒動すら、冷めた目で見ていた。 ある時偶然ジュピターと知り合い、彼女に慕われるようになる。シュガルもジュピターに対して心を開くが、ジュピターの両親が無実の罪で地獄に落とされたと聞き、クカバラに遅れてジュピターの両親を助けに向かう。
イダ・マリア (いだまりあ)
セルマ神父の教会でシスターを務める、エクソシストの少女。悪魔であるメフィスト・バルト・クカバラを毛嫌いしているが、共通の目的のためなら息のあったコンビネーションを見せることもある。人間の身でありながら、悪魔すら凌駕するほどのダークマターを体内に内包しており、その力は元の姿のクカバラやビチュラに匹敵する。 ただし、時折力をコントロールできずに暴走してしまうことがあるため、イダ・マリア自ら諸刃の剣であることを自覚しており、負い目を感じている。
セルマ神父 (せるましんぷ)
修道院の神父で、イダ・マリアの保護者的存在。神父らしい穏やかな性格の持ち主で、子供たちから慕われている。反面、人間ながら強力な戦闘力を持つエクソシストで、並の悪魔が束になってかかってもまったく寄せ付けない。また、時折別人のような恐ろしい形相を見せることもある。エリモナーと面識を持っており、彼女の提案を受けてメフィスト・バルト・クカバラとイダ・マリアを引き合わせた。
フニ
魔界に住む悪魔の青年。メフィスト・バルト・クカバラの学友で、魔界を追い出されたクカバラも、フニのことだけはいつも気にしていた。「悪魔弁護」を続けていたクカバラの前に突如現れ、魔界に戻るよう懇願する。しかしその体には、レガートの手によって爆弾が仕掛けられており、クカバラの前であえなく命を散らしてしまう。
レガート
メフィスト・バルト・クカバラの弟で、魔界の第4王子。小柄な少年で、クカバラを強く慕っていた。一方で、父親であるメフィスト・バルトの影響を強く受けており、内心ではクカバラの悪魔らしくない性格に苛立ちを覚えていた。ある時凶悪な本性を現し、クカバラを急襲。重傷を負わせるとともに、彼の持つ力を奪い取ってしまう。 さらにその力によって一気に青年のような姿へと変貌。メフィスト・バルトから魔界の王の座を奪い取り、フニに爆弾を埋め込むことでクカバラを挑発するなど、その暴虐は留まることを知らず、クカバラもレガートと決着をつける決意を固める。魔界を我が物にするため、人間や悪魔を顧みない一方で、クカバラたちと仲良く過ごしていた時期を懐かしむ素振りを見せることもある。
メフィスト・バルト (めふぃすとばると)
魔界の王で、メフィスト・バルト・クカバラの父親。厳格かつ容赦のない性格で、悪魔に優しい心は不要であると考えている。クカバラの持つ力に早くから目をつけており、さまざまな手段を用いて彼を非道な性格に矯正しようとしたが、上手くいかないまま、レガートの下剋上を許してしまう。悪魔らしい心を持つ男性だが、人間を襲うことは固く禁じており、クカバラは死神たちが人間の死に細工を仕掛けたことに疑問を抱いている。
ジュピター
セルマ神父の修道院で保護されている幼い少女。1か月前に起きた交通事故で両親を失い、ジュピター自らも心に深い傷を負ってしまっている。さらに、修道院を襲撃したヤマハに人質として魔界に連れ去られてしまうが、居合わせたシュガルの気まぐれによって一度は救出される。しかし、レガートによって奪い返され、メフィスト・バルト・クカバラを怒らせるために利用されてしまう。
ヤマハ
魔界に住む悪魔の青年。メフィスト・バルトの命令によって、メフィスト・バルト・クカバラを魔界におびき出す役割を担う。調子に乗りやすい性格で、優しい性格のクカバラを心底馬鹿にしきっている。また、ビチュラとも因縁があるが、実力差は歴然としており、ダークマターを使って元の姿に戻った彼にはダークトルネードの一撃で重傷を負わされてしまう。 しかし、そこにちょうど通りがかったジュピターを魔界へ連れ去り、クカバラをおびき寄せる任務だけは果たした。
ジョディ
セルマ神父が所有する、特殊な自動車。キリスト教による技術の粋が集められており、自ら意志を持ってしゃべることができる。さらに、どのような悪路でも自在に走れるうえ、飛行機能まで持っているため、メフィスト・バルト・クカバラたちの魔界における移動手段として重宝されている。イダ・マリアとは、彼女が中学生の頃からの知り合いで、今でもよく彼女をからかっている。 古風なしゃべり方が特徴で、語尾に「ござる」と付ける。
ブリルハート
魔界に住む死神の女性。王族から下される案件を処理しているエリートで、死神となる悪魔の教育や選抜なども行っている。見た目は若々しいが、実際は1000年以上生きている老婆で、その外見も他者からダークマターを奪い取ることで維持している。現在はレガートの命令により、人間を捕らえてサラマンダー・ヘルに突き落とし、ケルサ・マルカーティを使って人間たちのダークマターを搾取している。 エリモナーとは知り合いで、彼女に対しては敬いの念を抱いている。
ケルサ・マルカーティ (けるさまるかーてぃ)
サラマンダー・ヘルの上空を浮遊している、ハリセンボン型の悪魔。サラマンダー・ヘルに落とされた人間たちの苦悶の感情を吸収し、ダークマターを悪魔たちに分配している。サラマンダー・ヘルの人間たちを助けようとするメフィスト・バルト・クカバラから攻撃を受けるが、通じずに飲みこんでしまう。しかし、体内で直接クカバラの攻撃を受けたことにより、消滅した。
サムス
魔界に住んでいる悪魔の女性。友情などの絆を嫌悪しており、それを破壊することを喜びとしている。当初はブリルハートの部下として活動していたが、これもブリルハートと、彼女に付き従う死神たちの絆を破壊するためであった。しかし、ブリルハートが倒されたことで計画は頓挫してしまい、次いでメフィスト・バルト・クカバラとビチュラの絆を破壊しようと企む。 ここまで絆を憎悪する原因は、かつて手ひどい裏切りを受けたためであるが、いくら揺さぶっても諦めようとしないクカバラたちに、次第に興味を抱くようになる。
エリカ
メフィスト・バルト・クカバラの妹。無邪気な性格で、クカバラやレガートを慕っていた。しかし、生まれつき身体が弱かったため、5歳という幼さで命を落としてしまう。その際に、最期に兄たちの力になりたいと願った結果、分身となるバードを生み出した。また、形見として懐中時計を遺しており、クカバラは今でも、その時計を肌身離さず持ち歩いている。
バード
魔女を自称する少女。箒(ほうき)にまたがり、ウィッチハットをかぶっている。ハリケーンが渦巻く地帯でメフィスト・バルト・クカバラと出会い、ビュンビュンバードを使うことで次の地獄へと導いた。その正体はエリカによって生み出された分身体で、クカバラにしか見ることができない。
フェニックス
フェニックス・ヘルを統括している、死神の男性。フェニックス・ヘルにそびえる塔の中に鎮座している。穏やかな性格だが、道理にそぐわないことを嫌っており、ジュピターの両親を助けにきたメフィスト・バルト・クカバラに、彼らが無罪である証拠の提示を求める。死神の中でも抜きんでた力を誇り、塔から降りる術のないクカバラとビチュラを一瞬で地上に送るなど、親切な面も持ち合わせている。
ブランネン・クーパー (ぶらんねんくーぱー)
魔界に住む死神で、レガートの側近。フェニックス・ヘルに送られたジュピターの両親を王宮に移送するため、レガートから差し向けられた。かつて闘技場で名を馳せていた戦士で、無敗のまま引退したという過去を持つ。その経歴に偽りはなく、イダ・マリアやビチュラを軽々と戦闘不能に追い込み、ジュピターの両親を助けるべく現れたシュガルとも、互角の勝負を繰り広げる。
ケリア
メフィスト・バルトの第2夫人で、メフィスト・バルト・クカバラの母親。クカバラ以外の兄弟たちとは血が繋がっていないが、実の子として接しており、レガートもケリアを慕っていた。現在の魔界における異変の真相を知っており、出会ったジョディに対して、クカバラとレガートの戦いを止めるように懇願している。
集団・組織
スイーパー
魔界の扉周辺の警護を担っている、悪魔の集団。とにかく数が多いため、メフィスト・バルト・クカバラからも警戒されていた。魔界に潜入を果たしたクカバラに向かってくるが、イダ・マリア1人に蹴散らされてしまう。最後の手段として、隊の全員が融合することで「モルビト」と呼ばれる巨大な悪魔に変身するが、イダ・マリアとクカバラの連携により、易々と撃破された。
ギガデス
魔界に住む巨大な死神の集団で、ストーン・ヘルを管理している。レガート直属の部下であり、彼の命を受けてメフィスト・バルトを殺害したという。外見に反して人格は幼く、まともにしゃべることすらできない。しかし残虐性においては他の死神を圧倒しており、捕らえた霊魂を使って恐ろしいゲームを行っている。 イダ・マリアを捕らえたうえに、助けに向かったメフィスト・バルト・クカバラを窮地に陥れるが、子供以下の知能という弱点を突いたクカバラの戦略と、サムスの援護によって全滅する。強力な死神ではあるが、メフィスト・バルトを殺すには到底力不足であったため、クカバラは、メフィスト・バルトを殺したのは彼らではないと考えている。
場所
イベントホライズン
人間の住む世界と魔界の狭間にあるという空間。生前に罪を犯した疑いがあり、なおかつ事故や事件などに巻き込まれて命を落とした霊魂たちは、この空間へと送られる。罪が確定した場合、死神の手によって地獄へと送られてしまうが、逆に無罪が確定した場合は、死自体が不合理であるとみなされ、命を落とす事件、事故自体がなかったことにされる。 なお、無罪が確定し生き返った被疑者に、イベントホライズンにおける記憶は一切残らない。
魔界 (まかい)
悪魔の住む世界。人間界とはイベントホライズンによって隔たれており、人間界から魔界へ直接移動するには、特別な手段が必要となる。王であるメフィスト・バルトに統治されており、人間界とは、特別なケースを除いて不干渉を貫いてきた。しかし、レガートが政治に携わるようになってからは、人間を巻き込んだ騒動が各地で発生するようになってしまう。
地獄 (じごく)
魔界に存在する施設。生前、罪を犯した人間の魂が落とされ、罪の重さに応じた苦痛を与え続けるための場所である。受ける責め苦は、罪人を招いた死神によって変化するが、いずれも想像を絶する苦痛を伴い、まさに地獄と呼ぶべき場所と言える。さらに最近では、レガートによって魔界の法が歪められた影響により、無実の人間が地獄に送られるといったケースも目立ってきている。
バーニング・ヘル (ばーにんぐへる)
メイヤが管理している地獄。魔界で最も熱いとされる溶岩で、罪人に責め苦を与える。ビルの廃墟が立ち並んでおり、その下では絶えず溶岩が燃え盛っている。トムは生前の罪によってこの地獄に落とされかけたが、メフィスト・バルト・クカバラの「悪魔弁護」により、間一髪のところで助かっている。
イーティング・ヘル (いーてぃんぐへる)
ポンゾールが管理している地獄。荒涼とした大地に、木製のやぐらが立ち並んでいる。ポンゾール曰く、苦痛を与えるのではなく、生み出す地獄とされており、この地獄に存在する魂は、絶えず想像を絶する飢えに襲われる。魂は不滅であるため、永遠に共食いを強いられることとなる。
ローテーション・ヘル (ろーてーしょんへる)
シュガルが管理している地獄。無数の球体がらせん状に絡み合っており、外からでは、中の様子を見ることはできない。自然界における苦痛に苛まれる地獄とされており、さまざまな生物に変化させられ、餌として捕食されるなど、弱肉強食による死を体現させられる。ポールは罪を被るため、自らこの地獄に足を踏み入れようとしたが、メフィスト・バルト・クカバラの手によって阻止されている。
ダンテの峡谷 (だんてのきょうこく)
底なしの谷が延々と続いている、魔界の名所。谷には足場となる岩が存在するが、わずかに体重をかけただけで崩れ落ちてしまうため、突破は極めて困難とされている。さらに、メフィスト・バルト・クカバラたちは移動手段として、車であるジョディを利用しているため、迂回を余儀なくされると思われていた。しかしジョディには飛行機能が備わっていたため、難なく突破することに成功している。
サラマンダー・ヘル (さらまんだーへる)
ブリルハートが管理している地獄。巨大な大蛇型の悪魔が配置されており、その口から吐き出される炎で罪人に責め苦を与える。バーニング・ヘルに似た特徴を持つが広さが段違いで、エリートであるブリルハートが管理するにふさわしい地獄となっている。現在は、霊魂ですらない人間を直接拉致し、生きたまま放り込むという暴挙が行われており、メフィスト・バルト・クカバラたちの怒りを買っている。
天空の岩 (てんくうのいわ)
魔界の氷雪地帯に点在している岩場。恒星の周りを回る惑星のように、風に乗って移動するという性質を持っており、洞窟の中で夜を明かせば目的地にたどり着けるという仕組みになっている。メフィスト・バルト・クカバラは、かつて兄弟たちと氷雪地帯に遊びに出かけており、休む際にその光景を懐かしんでいた。しかし、その先にレガートが現れ、メフィスト・バルトを殺害したことを告げる。 クカバラはその発言を受け、改めてレガートを止める決意を固めた。
ストーン・ヘル (すとーんへる)
ギガデスが遊び場として利用している地獄。災害で大勢の死者が出ると、罪の有無に関係なく霊魂を捕獲し、ゲームの駒として利用している。霊魂たちは、ギガデスたちのゲームに付き合わされる形で大きな岩を運ばされ、絶えず重量による苦痛に苛まれている。
フェニックス・ヘル (ふぇにっくすへる)
フェニックスが管理している地獄。ここに落とされた罪人たちは、生前の行いを永遠に懺悔し、思考の苦痛を味わい続ける。逆に言えば、罪悪感を感じていなければ、苦しみを味わうことがないため、無実の霊魂がこの場で苦しむことはあり得ないとされている。ジュピターの両親たちは、死後、この地獄で懺悔を続けており、メフィスト・バルト・クカバラたちが救出に駆け付けても、人間界に戻ることを拒否してしまっている。
魔界の大階段 (まかいのだいかいだん)
異なる地獄同士を繋げているとされる回廊。無数の階段によって構成されており、一度足を踏み外してしまえば、地面に足をつけないまま永遠にさまよい続けることになる。メフィスト・バルト・クカバラとレガートの決戦の舞台として利用された。
その他キーワード
無罪アイテム (むざいあいてむ)
悪魔弁護において最も重要なものであり、被疑者が無罪アイテムを手にしつつ無実を訴えると、無罪が確定する。無罪アイテムは、被疑者が罪を犯したという事実と矛盾する要素が含まれていれば問題はないため、事件現場において発見できることが多い。
ペンソード
メフィスト・バルト・クカバラが用いる武器。普段は万年筆のような形状をしているが、クカバラによる「封印解除」の詠唱によって、ペン先から光の刃が発生する。死神を一撃で撃破するほどの威力を持つが、この武器を使用するためには、ダークマターを大量に吸収する必要がある。
デビルリトマスカード
ダークマターを付着させることにより、そのダークマターの持ち主である悪魔の能力を一度だけ使用できる。太陽が描かれているカードは日中のみ、月が描かれている場合は夜間のみ使用可能となっている。
ダークマター
人間より抽出できるという、闇のエネルギー。悪魔はダークマターが多ければ多いほど、強く若々しい肉体を維持できるため、これを求めて活動する悪魔も多い。ダークマターの獲得方法は複数存在するが、メフィスト・バルト・クカバラは、「悪魔弁護」によってダークマターを獲得している。かつて魔界ではダークマター目当てに人間を襲うことが禁じられていたが、レガートが王位に立ってからはこれが解禁されている。
悪魔弁護 (でぃふぇんすでびる)
生前の罪を問われた霊魂の無実を主張し、無罪を勝ち取るための弁護活動。力を奪われたメフィスト・バルト・クカバラが生業としている。被疑者の無罪は、その証拠となる無罪アイテムを獲得し、被疑者自身に無実を訴えさせることで確定するため、その手助けが主な役割となる。なお、弁護可能な被疑者は人間に限らず、極端な話、神であっても可能とされている。
死神 (しにがみ)
生前に罪を犯した死者を裁く悪魔。イベントホライズンに落ちた霊魂に対し生前の罪を突きつけ、死神が管理する地獄へ叩き落とし、その際に発生するダークマターを搾取している。被疑者の無罪を立証された場合、ダークマターを獲得することはできないため、「悪魔弁護」を妨害する死神も多い。また、人間を罪人に仕立て上げるために死の状況に細工を施す死神もいるが、これが発覚した場合、死神の権限を剥奪されてしまう。
霊魂 (あんのうん)
死を迎えた人間の魂。生前に罪を犯したと疑われた霊魂はイベントホライズンに誘われ、罪の真偽を問われる。その際に有罪が確定した場合は地獄へ落とされ、責め苦に苦しむこととなる。なお、罪を犯したことが確定している場合は、イベントホライズンへ行くことはなく、直接地獄に送られてしまう。
エターナル・サークル (えたーなるさーくる)
メフィスト・バルト・クカバラが使用する、必殺技の1つ。ペンソードを使い、対象の周囲に髑髏型のオーラを展開し、爆発させることで大きなダメージを与える。シュガルとの戦いで、ポールの無罪を証明したことで得られたダークマターを使い、これが放たれた。トドメを刺すには至らなかったが、シュガルはこの攻撃を受けることで負けを認め、撤退した。
ホーリーネスデビルブレード
メフィスト・バルト・クカバラが、イダ・マリアと協力して放つ必殺技。イダ・マリアのホーリーオーラめがけて、ペンソードを構えたクカバラが突っ込み、斬撃の威力を倍加させる。スイーパーの集合体である「モルビト」との戦いによって使用され、強敵であるはずの彼を一撃で撃破した。
デビル・ゼログラヴィティ・アタック (でびるぜろぐらゔぃてぃあたっく)
メフィスト・バルト・クカバラが使用する、必殺技の1つ。ペンソードを高速で振るい、発生した斥力の刃で敵を切り裂く。連続して放つことも可能となっている。フェニックスとの戦いにおいて使用されたが、フェニックスの持つ強力なバリアによって、全弾を防がれてしまう。
ダークトルネード
ビチュラの使用する必殺攻撃。ダークマターで身体を強化したうえで放つ、渾身の右ストレートである。言い換えれば何の変哲もないパンチと言えるが、ヤマハはこの一撃によって大きなダメージを負い、ビチュラに対して強い危機感を抱いた。
ホーリーストーム
イダ・マリアの必殺技の1つ。ロザリオに思念を集中し、イダ・マリアの身体に溢れるダークマターを鞭の形に具現化し、辺り一帯を薙ぎ払う。名前こそ神聖なものだが、効果は神聖とは程遠いものである。しかしイダ・マリアはそのことに気づいておらず、悪魔を倒すための神聖な手段としてこの技を放っている。
ホーリーオーラ
イダ・マリアが得意とする技の1つ。目の前に、高濃度のダークマターを具現化した結界を発生させる。このオーラを受けることは高濃度のダークマターを浴びる効果と同じであるため、イダ・マリアはこの技を使うことで、メフィスト・バルト・クカバラやビチュラの強化を促進させている。
ビュンビュンバード
バードが使用する移動用の魔法。両手に魔力を集中し、呪文を詠唱。魔力をオーロラ状に分散させ、虹の橋の形に再構成する。バードはこの魔法を「超特急魔術」と呼称しており、その呼び名通り、虹の橋を渡ることで、安全かつ確実に難所を突破することができる。
クレジット
- 原作
-
尹 仁完