戦奏教室

戦奏教室

十森ひごろの初連載作品。高度な文明の遺産で、時代を超越した技術の宝庫「塔」を巡って戦争が繰り広げられている、中世ヨーロッパ風の世界を舞台にしている。異能を使用できる「枝憑き」として覚醒したラッパ手(しゅ)の少年・リュカが、帝国に立ち向かう姿を描いた軍楽戦記ファンタジー。異能バトルものながら、主人公の能力がサポートに特化しており、個人プレーよりもチームとしての戦いに重きが置かれているのが特徴。集英社「ジャンプSQ.」2022年7月号から連載の作品。

正式名称
戦奏教室
原作者
空 もずく
作画
ジャンル
ダークファンタジー
 
戦争
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊8巻
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「塔」を巡って争い続ける世界

本作で描かれる中世ヨーロッパ風の世界には九つの「塔」がある。「塔」は高度な文明の遺産で、その管理権限を得ることは国力の増強に直結する。教皇領の最高指導者「塔下」は「塔」に遺(のこ)された技術を用いて中世レベルの技術では設計すら困難なピストン式トランペットを作り出し、リュカに提供した。「塔」の管理権限を用いれば、死者の記憶を転写した複製を作り出すことすら可能である。「塔」は信仰の対象にもなっており、「塔」そのものを崇める塔教が主流の教皇領と、「塔」に茂る樹木を崇(あが)めるオーク教が主流のエリン帝国は1000年以上も争い続けている。なお、「塔」は目に見えない「何か」を発しており、その「何か」の及ぶ範囲を「教区」と呼ぶ。

異能を駆使する「枝憑(えだつ)き」たち

頭部から枝の生えた人間を「枝憑き」と呼ぶ。「枝憑き」は14歳を目安に「発芽」し、異能に目覚める。異能は未来の自分から力を前借りする「時編(ときあみ)」、血液を自在にあやつる「血結(けっけつ)」などさまざまで、本人の性格や経験が反映される傾向が強く、リュカのように発芽前から異能の兆候が現れる場合もある。「枝憑き」の生き方はさまざまだが、軍に所属して力を役立てる者も少なくない。中には国家の有り様を一変させるような別格の「枝憑き」も存在する。たとえば、鏡に空間を超える力を与える「鏡面」の能力は通信や物流に革命を齎(もたら)し、ガリア王国を「鏡の国」と呼ばれるまでに発展させた。自らの分身(わけみ)を生み出す「複命(ふくめい)」の能力も奴隷産業が成立するほどの破格の異能で、ノルマンディー公国が「奴隷の国」と称される由来となった。なお、「枝憑き」が異能を発動できるのは「教区」と呼ばれるエリアに限られている。また、「枝憑き」は「教区」の外側では1か月ほどしか生存できないとされている。

徐々に明かされていく「枝憑き」の謎

異能の使い手である「枝憑き」には「開花」と呼ばれる次の段階がある。「開花」した「枝憑き」は頭部の枝に花が咲き、能力が強化される。たとえば、「鏡面」の能力は鏡に空間を超える力を付与するものだったが、「開花」したことで鏡を介さずに空間を超える規格外の異能に進化した。エリン帝国が擁する「花冠の枝憑き」の隕石(いんせき)を落とす能力も「開花」を遂げた力と推測されており、それを裏付けるように、彼女の頭部にある枝には花が咲いている。「枝憑き」が精神的な成長を遂げることが「開花」の条件と考えられており、「開花」の近い「枝憑き」は自らの強大な力に耐えられるように、肉体が強靭(きょうじん)になるとされている。なお、「枝憑き」の異能は一定の条件を満たすことで取り出すことができる。エリン帝国は障害となる「枝憑き」を抹殺する一方で、一部の「枝憑き」を「苗木」候補に指定し、生け取りを狙っている。

登場人物・キャラクター

リュカ

養父・ゲルハルトの傭兵団でラッパ手(しゅ)を務める少年。小柄な体型で、肩の下まで伸びた金髪を後頭部で短くまとめている。左側頭部に「枝」が生えており、右こめかみには傭兵団の印が刻まれている。傭兵として生きるうちに世の中の醜さを目の当たりにして、演奏を除くすべてが嫌いになった。音を光の筋として視認することが可能で、その光を見ていると醜悪なものから目を背けられるため、ヒマさえあれば、一人でラッパを吹いている。また楽師にあこがれを抱き、読めもしない楽譜や楽器を集めている。ある戦いの最中、異能を扱うことのできる「枝憑き」として覚醒。これをきっかけに教皇領の最高権力者である「塔下」に引き抜かれ、異能者の集まりである枝憑き分隊の隊長として、「塔」を巡る戦いに身を投じることになった。目覚めた異能は、ラッパからリュカの思考を乗せた「導きの音色」を発して味方を指揮するというもの。この音色はリュカ以外の者にも視認可能で、戦場に線を引いて道標にすることもできる。

ゲルハルト

傭兵団長を務める中年男性。リュカの育ての親でもある。右頰から顎に掛けて傷痕があり、ヒゲをショートボックスに整えている。用兵は巧みだが、捕虜の額に印を刻んで組織の宣伝に利用するなど、やり口は悪辣で容赦がない。また兵站(へいたん)に不安が生じれば、部下に略奪を命じることもある。ぶっきらぼうながら、頭に「枝」が生えていて奴隷商にも引き取り拒否されたリュカを育てるなど、面倒見のいい一面もある。赤子から育てたツケとうそぶいてリュカに支払うべき報酬を踏み倒しているが、リュカのラッパ手としての貢献は認めており、彼の働きに口を出す部下を嗜めている。また、略奪に参加して仲間と打ち解けるように指導したり、用兵の手解きをしたりと、不器用なりにリュカの世話を焼いている。ある戦いでリュカを助けるために単身で戦場を駆け、深手を負いながらも教皇領の最高権力者である「塔下」に保護されたリュカを発見。リュカを預ける条件として、音楽を学ばせる約束を取り付け、リュカの背中を見送ったあとに絶命する。

クレジット

原作

空 もずく

書誌情報

戦奏教室 8巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第1巻

(2022-09-02発行、 978-4088832364)

第2巻

(2023-01-04発行、 978-4088833446)

第3巻

(2023-04-04発行、 978-4088835150)

第4巻

(2023-07-04発行、 978-4088835709)

第5巻

(2023-10-04発行、 978-4088836737)

第6巻

(2024-02-02発行、 978-4088837789)

第7巻

(2024-06-04発行、 978-4088840277)

第8巻

(2024-09-04発行、 978-4088841823)

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