概要・あらすじ
自宅マンションの駐輪場から自転車を盗まれてしまった上野原譲二は、数日後に保管所へと出向き、自分の自転車を探すも徒労に終わる。運悪く帰りのバスを逃した譲二は、なりゆきから見知らぬ街を散歩することを決める。普段だったら気にもとめない都会の路地を足の向くまま気の向くままにぶらりと探索し、面白そうな雑貨屋に立ち寄ったり、街角にたたずむ家を見て自身の過去を思い出しては、1人物思いにふけるのだった。
登場人物・キャラクター
上野原 譲ニ (うえのはら じょうじ)
小規模な文具メーカーの部長職に就く男性。都内在住で妻と2人暮らしをしている。勤務中であれ休日であれ、空いた時間と機会があれば、目的もなくふらりと街を散歩をして、あれこれと物思いにふける自称「散歩の天才」。「上へ上へ開発する」未来型の都市計画を好かないと部下に公言しており、昔ながらの情緒ある街を好んで散歩している。
妻 (つま)
上野原譲二の配偶者。時々小さなポカをやらかす譲二に対しては口うるさい面もあるが、基本的にはしっかり者の女性。夫婦仲は良好で、譲二と2人で連れ立って街を散歩することもある。
石井 (いしい)
上野原譲二の友人の男性で、大学時代は譲二とともにバンド「ブルーゼッツ」のメンバーだった。メンバーからギタリストとしての腕を見込まれ、大学卒業後は大手企業の内定を蹴ってバンド活動に専念。バンドの解散後もアルバイトをしながらミュージシャンになる夢を追っていた。妻帯者で6歳になる娘がいるが、今は2人と別居中。
井森 (いもり)
上野原譲二の友人の男性で、若い頃は2人で内装のアルバイトをしていた。今も定職にはつかず、健康食品などの紹介をするライター業を営んでいる。譲二からは、その自由気ままな暮らしをうらやましがられていた。
小林 (こばやし)
上野原譲二と同じ会社に勤めている後輩の男性。武蔵野の公園で行われた、70年代にもてはやされた自由人「ヒッピー」が集まる祭りに、若いにもかかわらず友人と共に参加していた。
場所
ハーモニカ横丁 (はーもにかよこちょう)
「ハモニカ横丁」とも呼ばれる、吉祥寺駅前の狭小な敷地に飲食店を中心とするさまざまな店舗が軒をつらねた、昭和の雰囲気を濃厚に残す商店街。上野原譲二はこの狭く雑多な街に大きな魅力を感じており、飲食店の客を相手に柄にもなく街のありようについて語っていた。
その他キーワード
川上 宗薫 (かわかみ そうくん)
仕事の席で外国人ビジネスマンから川上宗薫の作品について語られた上野原譲二は、彼の晩年の作品「死にたくない!」という小説の一節を反芻しながら、神田川のほとりを散歩する。
幸福な王子 (こうふくなおうじ)
上野原譲二が幼少の頃にお気に入りだった児童書に掲載されていた作品。散歩中に立ち寄った絵本専門の古書店でこの本を見つけた譲二は、懐かしさのあまり思わず購入。自身と友人の境遇を物語に重ね合わせていた。
クレジット
- 原作