概要・あらすじ
日本軍総司令部に呼び出された南部英は、これまでスパイとして働いていた黒い虎一味の裏切りにより6枚の古銭に分けて隠された日本軍の生命を握る軍事機密が盗み出された事を知らされる。世界の各国に潜入し諜報活動を行っていた南部には、6人の男がそれぞれ1枚ずつ持っている古銭を中国政府軍の本部重慶に渡る前に全てを奪い返せという命令が下される。
限られた情報からターゲットとなった男達を探し出し古銭を手に入れていく中で、倒した男のひとりから幼い少年スー・ミンを親元に帰して欲しいと頼まれてしまう。さらに南部の前に敵か味方か分からない謎の片目の男が現れる。その後南部はアラビアの小国で日本と友好関係にあるザンバワの石油資源を狙って侵攻してきたイギリス軍の大隊を食い止めるために、現地で暮らす犯罪歴のある邦人で編成した特別部隊で攻撃を仕掛けよという指令を受ける。
登場人物・キャラクター
南部 英 (なんぶ えい)
日本軍の特務機関員として様々な国に潜入し任務を遂行する。ナイフを弾く強度のヘッドギアを装着し、消音器付の十四年式拳銃やワルサーPPKを使用する。格闘術に優れ特務機関員が独自に用いる体術を会得し、片腕一本で相手をバラバラにする事ができる卍返しという技を使う。総司令部に呼び出され中国大陸に逃げ込んだ黒い虎のメンバーが1枚ずつ持っている、軍の機密情報が隠された6枚の古銭を奪い返すという指令を受ける。 任務中に倒した黒い虎一味のタイガー張に幼い少年スー・ミンを親元に帰して欲しいと託され、道中を共にする事になる。アラビアでは現地で暮らす犯罪歴のある日本人をスカウトしてイギリス軍の侵攻を食い止めるための特別部隊を編成し指揮を執った。
スー・ミン (すーみん)
黒い虎を追っていた南部英が街で出会った幼い少年。南部が自分の父親・タイガー張を探していることを知り、時間稼ぎをして父を逃がそうとするが、誤って馬車に轢かれそうになり、思わず飛び出したタイガー張は南部に撃たれてしまう。タイガー張が死に際に南部に、スー・ミンは幼い頃にタイガー張に誘拐された子供であり、本当の親の元に帰して欲しいと言い残したことから、南部に連れられて黄玉へと向かう事になる。 道中は真実を話す事ができない南部の事を親の仇だと憎しみを露わにして反発を続ける。しかし旅の中で、自分達のような苦しんでいる人々を救うために戦っている南部に対して徐々に惹かれていくようになり、黒い虎が待ち伏せ位していた時にはその事を南部に知らせてピンチを救った。
片目の男 (かためのおとこ)
南部英の正体と古銭の秘密を知る正体不明の男。南部がスー・ミンと共に新京に向かう途中で、乗っていた馬が倒れたと言って車に同乗させてもらう。怪しい行動が多く南部からは、都合によって敵にまわりそうな男だと信頼されず銃やナイフを隠し持っている事も見抜かれてしまう。スー・ミンを見ていると、小さい時に馬賊にさらわれた息子の事を思い出すと話している。 紐の先端に鋭利な刃物が付いた武器を振り回して漁を行い、さらに高速で回転させ獲物を切り刻む秘伝のおぼろ残月という技を使う。度々行方をくらましては突然現れ、南部が黄玉を出た時には黒い虎の白鬼が泊まっている宿を知らせ、南部が対決した同じおぼろ残月の使い手馬玉の事は自分に任せろと言い残して去って行った。
一ノ木 (いちのき)
日本軍の隼隊に所属していた戦闘機乗り。アラビアに不時着して捕虜となり脱走したものの日本に帰る術が見つからず現地の人間に成りすまし、手先の器用さを利用してスリをしながら暮らしていた。イギリス軍大隊の侵攻を食い止めるためにメンバー集めをしていた南部英にスリを働き捕らえられ、顔見知りだった事から急遽仲間として加わる事になる。 調達係として作戦に必要な道具を一人で集め、その技量は戦車まで盗んでしまうほど。老人は国の宝だと言って、土佐が足手まといになると乱暴に振舞った老催眠術師に優しく接する。
土佐 (とさ)
アラビアの小国ザンバワで特別部隊のために南部英がスカウトした犯罪者。前科2犯のハンターで現在も手配中となっている。猛獣だけでなく街中で喧嘩を仕掛けた相手にも容赦なく鞭を振るう凶暴な性格の持ち主。暴れ回っていた所を南部に拳銃を突きつけられ、儲け話を持ちかけられたために仲間として加わった。 集合時間に姿を見せず逃げ出そうとした安芸博を殺し金を奪い返した。長い間ハンターをしていた経験から動物並みに鼻が利く。追跡してきたアッビート大尉と老催眠術師を捕らえるとスパイとして殺そうとしたが、南部に止められる。短気で南部と対立し、仲間のために危険を冒すような良心は自分にはないと思っている。
大和 (やまと)
アラビアの小国ザンバワで特別部隊のために南部英がスカウトした犯罪者。怪力自慢の前科3犯。サーカスで客を集め紀州とは2人で長年コンビを組んできた親友だが、顔を合わせると喧嘩が絶えない。紀州がいなければ金の計算もできず、困ると大声で怒鳴り散らす単純な性格。若い南部の誘いに、ボスは自分よりも力の強い者でなくては従えないと一度は断るが、隣町に行く所だったと言いながら集合場所に現れ仲間入りを果たす。 紀州が捕らえられた時は、日本の運命よりも親友の方が大事だと作戦を敵に伝え中止させてでも救おうとした。
紀州 (きしゅう)
アラビアの小国ザンバワで特別部隊のために南部英がスカウトした犯罪者。軽業師の前科2犯。サーカスで客を集め大和とは2人で長年コンビを組んできた親友だが、顔を合わせると喧嘩が絶えない。愛国心が強く南部の誘いを断った大和を残してチームへの参加を決める。身軽さを活かして敵の列車が立ち寄る給水所に爆弾を仕掛けたものの、帰りに腐った鉄板を踏み抜き足が抜けなくなって捕われてしまう。 マテニィ大尉による拷問と爆破時刻が迫る恐怖から仕掛けた爆弾の場所を教えてしまい、その事を悔やんで助けに来た南部に自分を置いて逃げるように頼む。大和に必ず救い出すと約束した南部は、最善を尽くしたのだから気にする事は無いと慰め、救出後も仲間達に紀州が敵に情報を漏らした事は知らせなかった。
タイガー張 (たいがーちゃん)
古銭を奪った黒い虎のメンバーの一人。6人の中で南部英が最初に探し当てた人物。居所を尋ねたスー・ミンが父親が追われていると知り、時間稼ぎをして逃がそうとするが、馬車に轢かれそうになったスー・ミンを見て思わず飛び出し南部に撃ち殺されてしまう。今際の際に南部に古銭と一緒に渡した手紙の中で、スー・ミンは馬賊をしていた頃に身代金目当てに誘拐したものの情が湧き息子として育てていた事を明かし、本当の親である王林仲の元へ帰して欲しいと頼んだ。
白林の男 (ばいりんのおとこ)
古銭を奪った黒い虎のメンバーの一人。白林の町に居るという情報を元に南部英が追いかけてきた。町の食堂で三本指の男の事を調べていた南部を見かけ自分達が狙われている事に気付き、返り討ちにして古銭を奪おうとした。軍隊を引き連れて南部が隠れ家にしていた小屋を砲撃するが、片目の男の加勢もあって反撃を受けてしまう。
黄玉の男 (こうぎょくのおとこ)
古銭を奪った黒い虎のメンバーの一人。黄玉の町で物乞いに扮してスー・ミン親子の事を知り、馬玉と2人で連れ去り南部をおびき出すための人質にした。手刀で柱を折り床を破る怪力の持ち主。巨漢ながら身軽で関節技も巧みに使う格闘家として南部を苦しめた。
馬玉 (まーゆい)
古銭を奪った黒い虎のメンバーの一人。黄玉の町でスー・ミン親子を捕らえ、女が母親を偽っていると承知の上で南部英をおびき出すために利用した。片目の男と同じ武器で秘伝のおぼろ残月を使い、顔立ちも似ている事から南部とスー・ミンは同一人物の変装ではないかと疑いを持つ。
白鬼 (ぱいきい)
古銭を奪った黒い虎のメンバーの一人。片目の男が持ってきた情報を元に現れた南部英に、宿で仲間と一緒にいる所を襲われる。銃撃戦の中で一人逃げ出すものの逃走の際に肩を撃たれてしまう。酒場に逃げ込んで身に着けていた古銭も隠し南部の追跡をかわそうとした。店を出ようとした南部の事を日本のスパイだと大声で叫び警察に追われるように仕向けた。
三本指の男 (さんぼんゆびのおとこ)
古銭を奪った黒い虎のメンバーの一人。唯一写真がなく日本軍も正体を掴んでいなかったため、分かっていたのは特徴として後頭部に刀傷があり指が3本である事のみだった。身分を偽り油断させ南部英に近付き古銭を奪い高く買い取ってくれる軍に売りつけるつもりだった。狭い船の中に南部を追い込むとキセルに見せかけた針の飛び出す武器で攻撃をしてきた。 中国古武道の弓張で首の骨を折ろうとし、南部からは一番の強敵だと言われている。
安芸 博 (あき ひろし)
アラビアの小国ザンバワで特別部隊のために南部英が酒場で最初にスカウトした犯罪者。命を失う可能性もある危険な任務であるため、日本で犯した罪を帳消しにした上に成功報酬として10万円をもらうという条件で雇われる。借金を理由に前金として1万円を受け取り集合場所で落ち合う事を約束するが、姿を見せなかったために様子を見に来た土佐に金を持って逃亡しようとした事を知られてしまう。
犯罪博士 (はんざいはかせ)
アラビアの小国ザンバワで特別部隊のためにスカウトした犯罪者。時限爆弾や機械に詳しい金庫破り。元々南部英が用意した犯罪者リストに入っていなかったが、悪人達からの評判の高さを知っていた一ノ木が、人員不足に悩む南部に紹介した。捕らえられアテイ市に護送される所を襲い仲間に引き入れた。 作戦の開発担当として、線路に仕掛ける超小型爆弾や給水所のタンク用の小型防水爆弾といった南部から指定された数々の爆破装置を製作する。針金一本で手錠を外してしまう。
老催眠術師 (ろうさいみんじゅつし)
かつては一流の催眠術師だった事が自慢だが、現在は術が掛けられず酒浸りの生活を送っていた老人。相手の精神が集中された状態であれば一度に大勢の人間に術を掛ける事ができる実力の持ち主。スカウトに来た南部英に日本のために働きたいと申し出るが、歳を取り過ぎて役に立たないと口止め料を渡され断られてしまう。 何度も南部に日本に連れて行ってくれと頼みに来る。アッビート大尉に利用され南部達の様子を探るために後をつけていた所を土佐に捕らえられ、その後は一行と共に行動するようになるが、繰り返しうわ言のように日本へ帰りたいとつぶやいては作戦の邪魔をするために足手まといな扱いを受ける。
アッビート
イギリス軍大尉でスパイ探しの名人。酒場で日本の事を口にしていた老催眠術師を見つけると酒を勧めて秘密を聞き出しリーダーの南部英にまで辿り着く。さらに一行の後を追って情報を探り出そうとするが、砂漠で土佐に捕らえられると老催眠術師に頼まれたと言い逃れ、馬賊のいる危険地帯なので一緒に連れて行って欲しいと申し出る。 その後は南部達と行動をともにしながら行く先々での作戦が失敗するように仕向けていく。
大隊長 (だいたいちょう)
イギリス軍のザンバワ侵攻の指揮を取る。戦線に日本軍やドイツ軍がいないと警戒心が無くなっている事をマテニィ大尉に咎められる。南部英の立てた作戦によって、800名いた大隊の兵の数を徐々に減らされていってしまう。自分の失態をマテニィ大尉に当たり散らし南部一味を死刑にするように命令する。
マテニィ
イギリス軍侵攻のために司令部が大隊へと送り込んだ特別警備隊長。階級は大尉。日本軍特別工作員が動き出したという情報を得て自ら見張りを行い、大隊長にも油断は禁物と苦言を呈す切れ者で慎重な性格。紀州を捕らえると脅しと拷問に加え金を与えて口を割らせようとした。敵の作戦を素早く察知する事に長け、列車に仕掛けられた爆弾やオアシスに撒かれた毒に気付いて味方の被害を最小限に留めようとした。 無線の届かない砂漠の部落間を太鼓の音を使って連絡し部族に南部を襲わせる。