概要・あらすじ
豊臣方の残党の忍者黒い風は、黒太夫の命で新式鉄砲の設計図をアジトに持ち帰る途中、徳川方の忍者に襲われ記憶喪失となる。山中で暮らすこずえの看病を受けたが、現れた追手を体に染みついた忍術で撃退。さらに近寄ってきた味方の忍者を、敵と誤って殺害してしまう。彼らが口にした名前黒い風の素性を確かめるために旅立つが、敵味方の区別ができず苦戦続き。
ついに味方に囲まれて雷撃を受けて失神。そのショックで記憶が戻るが、倒れていた間に味方は徳川方の忍者の急襲を受けて全滅。さらにアジトも知られて、仲間は全滅してしまった。黒い風は単身で徳川家康の命を狙い、寝所に繰り返し侵入。そのため、賞金首となる。
登場人物・キャラクター
小月 風乃進 (おづき かぜのしん)
黒太夫配下の忍者。徳川方にも恐れられた腕利き。黒太夫の命で新式鉄砲の設計図を受け取り、その帰途に徳川方の忍者に襲われて記憶を失う。こずえ親子に助けられたが、追手の出現で自らが黒い風と呼ばれることを知り、用が済んだら帰るとこずえに約束して、黒い風の素性を調べるために旅立つ。 記憶を失ったため裏切り者と思われ、親友の逆巻小二郎らも手にかけてしまう。仲間の術の影響で記憶を取り戻したが、仲間は徳川方の忍者により全滅。単独で徳川家康の命を狙う。そのため賞金首となり、十三人衆の標的となった。
こずえ
山中で父と二人暮らしをしている少女。川を流れてきた瀕死の黒い風を介抱した。怪我の手当をしているうちに黒い風に惹かれていた。黒い風の帰りを待っている。
おとうさん
豊かな眉と鬚が白い初老の人物。娘のこずえと二人で、戦乱を避けて山奥で暮らしている。素性を明かしていないが、元は武士だったらしい。黒い風が豊臣方の残党ではないかと感じていた。
逆巻 小二郎 (さかまき こじろう)
黒い風の親友。黒い風が裏切ったと聞いて信じられず、自分の顔をさらして反応を確認したが、記憶を失っていた黒い風は反応せず、裏切りと確信してしまった。一対一の対決で黒い風に敗れ、いまわの際に黒い風が記憶喪失だと聞かされて愕然とする。
黒太夫 (くろだゆう)
豊臣方の忍者の残党を率いる総髪の武士。九度山の山中のアジトに潜伏して、徳川家康への反撃の機会を狙っている。黒い風に新式鉄砲の設計図を受取ってくるように命じたが、裏切ったと報告を受けて仲間に追討を命じる。だが、黒い風が徳川方にも追われていると知り、情報を確認しようとしたが、徳川方の忍者にアジトをつきとめられて全滅。
徳川 家康 (とくがわ いえやす)
豊臣家を滅亡させ、仲間を全滅させた、黒い風にとっては憎い相手。黒い風が4度も寝所に潜入し「黒い風参上」と張り紙をしていったことに驚怖。黒い風の命を獲った者に、城一つと五千の部下を与えると布告した。歴史上の実在の人物、徳川家康がモデル。
かわらの十兵衛 (かわらのじゅうべえ)
左目に眼帯をした忍者。十三人衆の一人。多数の瓦を投げつけ、その中に紛れ込ませた手裏剣を避けにくくする、忍法「かわらつぶて」を得意とする。「かわらつぶて」で黒い風は深手を負って、これ以降、十三人衆に苦しめられる。
十方傷の与三郎 (じっぽうきずのよさぶろう)
全身に十字傷のある忍者。十三人衆の一人。新しい十方手裏剣術を編み出すためにつけた全身の傷と、編み出した手裏剣術が破られていないのが自慢。水中に投げ込んだ十方手裏剣が相手の背後から飛び出して襲いかかるなど、十方手裏剣を自在に操る。黒い風に十方手裏剣の動きを読まれて術は破られた。接近戦は強くない。
集団・組織
十三人衆 (じゅうさんにんしゅう)
『黒い風』に登場する忍者集団。大きな稼ぎの機会を狙っていた、主君のない忍者集団。徳川家康の出した報奨、城一つと五千の部下を目当てに黒い風を狙う。3人ずつで動くようにするなど、組織的に行動できる一団。火遁、水遁などのオーソドックスな術を得意とする者から、独自の「かわらつぶて」の術を駆使する者まで、メンバーはバラエティーに富んでいる。
その他キーワード
新式鉄砲 (しんしきてっぽう)
『黒い風』に登場する用語。秩父山中で有川八郎が開発した、雨の中でも撃てる連発銃。黒い風が黒太夫の命で設計図を受け取りに向かったが、到着時に有川は病死していた。枕元に遺されていた設計図の流出を恐れた黒い風は、製法をすべて記憶して図面を焼却。だが、九度山への帰途に徳川方の忍者に襲われた黒い風は記憶喪失に陥り、その後、黒太夫たちは全滅したため、新式鉄砲が日の目を見ることはなくなった。