新宿セブン

新宿セブン

目利きの天才だと一目置かれる「七つ屋(質屋)」の七瀬のもとには、多種多様なモノが持ち込まれる。新宿歌舞伎町を舞台に、アウトローな鑑定士が、モノや人の真贋を見極め、依頼人の悩みを解決する人間ドラマで、1~2話完結の連作短編形式で描かれている。2017年には、テレビ東京系で上田竜也主演でTVドラマ化されている。

正式名称
新宿セブン
ふりがな
しんじゅくせぶん
原作者
観月 昴
作画
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
ニチブンコミックス(日本文芸社)
巻数
全12巻完結
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

「七つ屋(質屋)」の七瀬は、多種多様なモノを見極める目利きの天才として、新宿歌舞伎町で一目置かれていた。ある日、七瀬はある暴力団の組長の愛人、明日香の部屋に、出張査定のために訪れる。バーの雇われママでもある明日香が店の金を使い込んだ事が発覚し、組の若頭から、明日香の私物の査定を頼まれたのだ。七瀬は若頭のロレックスのディトナと、明日香の持っているブランドの趣味から、二人がグルだと見抜く。(第1話「七つ屋の七瀬」。ほか、6エピソード収録)

第2巻

新宿中央公園でモンブランの限定万年筆を拾ったホームレスのレンのおごりで、七瀬達は公園で花見をする事になる。その最中、七瀬は2日前に起きた女子大生殺害事件を調べていた刑事から、事件の概要を知らされる。数日後、レンが何者かに襲われたと知った七瀬は、相場の倍の値を付けた万年筆で、犯人をおびき出す。(第10話「ホームレスと万年筆」。ほか、7エピソード収録)

第3巻

ある日、七瀬は暴力団「稲妻組」の若頭、鈴木健から、余命3か月と診断された組長の形見分けの際、代々組に伝わる名刀「村正」を本物と鑑定してほしいと、話を持ち掛けられる。「稲妻組」では「村正」を貰った者が次の組長になる仕来りとなっており、鈴木は村正を本物だと信じ込んでいる組長を悲しませたくない気持ちが強かったのだ。3時間前、「稲妻組」の蛭田は、自分が村正を貰えなかった場合、村正を偽物と鑑定してほしいと、七瀬に金を握らせていた。組長の形見分けの日、村正の継承者は鈴木に決定する。しかし組長の座を狙う蛭田は、村正の銘は後世に彫られた偽物だとする鑑定書を持ち出す。鑑定を任された七瀬は、村正の銘は偽物だと断言する。(第17話「妖刀・村正」。ほか、7エピソード収録)

第4巻

新宿ゴールデン街の流しのギター弾き、ナベは、肺ガンの手術費用を得るために七瀬の店を訪れる。だが、ナベはロンソンのライター「バンジョー」のオリジナルだけは記念に取って置くと懐にしまう。ナベは七瀬の知り合いである琢也の父親であり、その事を知らない琢也も、幼い頃の唯一の父親の記憶として、バンジョーの復刻版を愛用していたのだ。数日後、琢也の姉、の店で、ナベの引退記念演奏が行われ、七瀬は琢也に父親の存在に気づかせるべく、彼の復刻版バンジョーを隠すのだった。(第31話「父と子」。ほか、7エピソード収録)

第5巻

七瀬が懇意にしていた老舗とんかつ屋の店主が突然死し、七瀬は彼の野球グッズの鑑定に向かう。店主の自宅では、金に困っていた息子の陽一が、妻の純子を金目当ての後妻だとののしっていた。しかし純子は店が窮地に陥った時、給料の未払いがあっても、店主を支え続けていた。七瀬は陽一の目を覚まさせるべく、陽一に古びたグローブを差し出すのだった。(第40話「父のグローブ」。ほか、7エピソード収録)

第6巻

清貧だと評判だった元区議会議員の氷川一徹が亡くなり、二世の氷川透が地盤を引き継いだ。生前、一徹から、遺品整理を頼まれていた七瀬は、透が持ち帰ろうとした切手帳を強引に取り上げる。透は暴対法を利用してヤクザから利権を奪い、チャイニーズマフィアと結託して、歌舞伎町の支配を狙っていたのだ。帰り道、マフィアに襲われた七瀬は、透の黒い欲望を確信。切手帳から高額なエラー切手を見つけた七瀬は、マフィアをあやつる裏金を隠ぺいしようとした透あてに、ある方法で切手帳を送りつけ、透を驚愕させる。(第48話「スーパー・コピー」。ほか、7エピソード収録)

第7巻

歌舞伎町を愛するルポライターのは、麻薬を過剰摂取させられた風俗嬢が死亡した事件に、区議会議員の氷川透がかかわっていると睨んでいた。そんな北と意気投合し、手を組む事にした七瀬だったが、北は決定的な証拠を摑んだ直後、何者かにビルの屋上から転落死させられる。北の仇を取ると誓った七瀬は、北が証拠を託したというショートヘアの若いアメリカ娘を見つけ出す。数日後、七瀬は演説をする透に証拠映像を突きつけ、逃げる透を追い詰める。(第53・54話「歌舞伎町の番犬」。ほか、5エピソード収録)

第8巻

新宿歌舞伎町の伝説のバーテンダー、マーロウが仕事中にシェイカーを落とし、リタイアを決意する。マーロウはヴィンテージのバカラを売りに七瀬の店を訪れる。ほどなくして、マーロウの後輩、木戸が現れ、七瀬に対し、自分にバカラを買い戻させてほしいと申し出る。後日、閉店の話をするためにバー「マーロウ」にやって来たオーナーに、七瀬は木戸が作ったカクテルで飲み勝負を挑む。オーナーは店の定番のギムレットがマーロウと同じ味だと驚くが、マーロウの到着が遅れているのが気になっていた。それを聞いた七瀬は、マーロウが脳梗塞だと察知。病院に運ばれて事無きを得たマーロウは、木戸をバカラにふさわしい男にするまで引退できそうにないと、微笑むのだった。(第64話「老兵のバカラ」。ほか、7エピソード収録)

メディアミックス

TVドラマ

2017年10月から12月にかけて、テレビ東京系のドラマ24枠で本作『新宿セブン』のTVドラマ版が放映された。全11話。監督は藤井道人、植田泰史らが務めた。七瀬役を上田竜也が演じている。加藤健太はTVドラマ版では「大野健太」と名前が変わっており、中村倫也が演じた。

登場人物・キャラクター

七瀬

新宿歌舞伎町にある「七瀬質屋」の店主を務める男性。ヤクザの密輸品から、キャバ嬢への貢ぎ物の商品まで、多種多様なモノを見極める目利きの天才として、歌舞伎町で一目置かれている。鑑定では絶対に噓をつかない事がモットーで、その鑑定眼はモノだけではなく人をも鋭く見抜く。自らをアウトローと認めており、殺人と麻薬以外の悪は経験したと豪語する。 粗野で礼儀知らずだが、ホームレスや家出娘など行き場を失くした弱者には優しい。人でもモノでも本物が大好きで、大事なモノには持ち主の思いが宿るという持論がある。「ガキの頃、色々な事があった」と語っているが詳細は不明。喧嘩慣れしており、チャイニーズマフィア相手でも、まったくひるむ事はなく、卑劣な男には自ら鉄槌を下す事も多い。 酒癖の悪さは有名で、巨乳の美人には目がない。通称「七つ屋の七瀬」で、昔の仲間には「セブン」と呼ばれている。

加藤 健太

新宿歌舞伎町にある「七瀬質屋」の見習いをしている若い男性。婚約者の美鈴に全財産を持ち去られ、彼女からの結納品のロレックスを七瀬に査定してもらったのが、七瀬との初対面。その後、飛び降り自殺しようとしたところを、七瀬の荒治療で心身共に救われる。以降は七瀬に一目惚れし、彼のもとで鑑定眼を学ぶ事になる。 お人好しの性格で、かなりの被害者体質。お盆に地元の同窓会に出席した際、幼なじみの裕子と再会。いい雰囲気になり、地元で就職して結婚しようかと心が揺れたが、結果的に失恋して「七瀬質屋」に戻って来た。

ノブ

七瀬の友人の男性。「七瀬質屋」のお得意様でもある。闇金を生業としている。まるで河童のような禿げ方をした特徴的な髪型に小柄な体型で、丸いサングラスをかけている。穴のずれた5円玉を所持しているなど、エラーコインのコレクター。ちなみに、加藤健太がノブを知ったのは刑事の手配写真だったという怪しい人物。

ベテラン刑事 (べてらんけいじ)

ベテラン刑事の強面な男性。七瀬には、いつか化けの皮をひっぺがしてやると睨みを利かせているが、実は話の通じる人情家な一面を持ち、七瀬と協力して犯人を検挙する事もある。

モエ

巨乳の美人女性。新宿歌舞伎町にあるバー「エルドラド」のNo.1キャバ嬢。客からのプレゼントであるブランドバッグをいつも七瀬に買い取ってもらっている。「エルドラド」での七瀬の調査に協力する事も多い。

明日香

新宿歌舞伎町でバーの雇われママをしている若い女性。ある暴力団組長の愛人。店の金を使い込んだとして、若頭が七瀬に明日香宅での出張査定を頼んだ。若頭とグルになって店の金を横領していた事を、七瀬に見抜かれてしまう。

美鈴

加藤健太の婚約者だった若い女性。健太から高価な婚約指輪を受け取り、結納返しとして、父親の形見である古いロレックスを贈った。父親は報道カメラマンで、その時計は海外で購入したもの。幼い頃に母親を亡くし、父親も多忙だったため、結婚したら寂しい思いをさせないでほしいと健太に約束させていた。しかし、通帳を一つにまとめた翌日、それを持って姿を消してしまう。 健太に送ったロレックスは、外側は偽物だが、中身のムーブメントは本物という通称「ベトナムロレックス」だった事から、七瀬には美鈴が最初から健太の事を騙そうとしていたわけではないと見られている。

佐伯 リサ

大学生を自称する女性。年齢は20歳。「質屋七瀬」に50年代ドイツの機械式カメラ絶頂期の名機、ライカM3を預かってくれるように頼む。なにか訳ありの雰囲気を漂わせており、七瀬には一目で「うぶだし(家出少女)」だと見抜かれていた。その後、キャバクラで働いていると推測した七瀬に居場所をつき止められる事となった。実は地方議員を父親に持つ少女で、実年齢は17歳。

黒川 徹

半グレ(暴力団に属さずに犯罪を繰り返す不良達)集団のヘッドを務める男性。目付きが悪い。通称「クロテツ」。七瀬に商品券の預かりを頼むが、額面95パーセントの買い取り以外はしないと断られた。1000円の商品券を1万円で売っており、その噂を聞いた七瀬に、LSDを染み込ませた商品券を取り扱っている事を見抜かれる。

宮家 深雪

旧華族の未亡人。和服姿の上品な美女。天然無垢な性格で、善意に満ちあふれている。昨年、夫が急死して財産整理のために、鎌倉にある自宅の蔵出しを七瀬に手伝ってもらった。それ以来、七瀬を頼りにしており、骨董商の白石壮一郎から、子供の病気の治療費をまかなうためと、30万円で売りつけられた瀬戸焼の茶入れを査定してもらう。

白石 壮一郎

鎌倉で骨董商を営む中年男性。先入観に惑わされがちの底の浅い鑑定士であり、かつて宮家深雪宅の蔵出しの際、七瀬にこっぴどくやりこめられている。その後、子供の病気で手術代が必要になったと、深雪に泣きつき、瀬戸焼の茶入を30万円で売りつけた。それを七瀬が買い取ったと聞き、慌てて2倍の高値で買い戻す。のちに、騙された事に気づき、復讐のために七瀬を茶器コレクターの茶会へ招待する。

田代 五郎

ギャンブル好きの老人。年齢は79歳。周囲からは「競馬ジッちゃん」の通称で呼ばれている。妻は亡くなり、現在は独り暮らし。元企業戦士で、セイコーがスイス時計に追いつき追い越した名品「グランドセイコー」という時計を七瀬の店に預け、競馬を楽しんでいる。しかし、バイクに乗った二人組の男性からひったくりに遭い、意識不明の重体となってしまう。

結衣

直樹が七瀬のところに質入れした美少女。世間知らずのお嬢様のように見えるため、人身売買を心配した加藤健太が預かった。翌日、結衣の写真を持ったベテラン刑事が、彼女が誘拐されたと、「七瀬質屋」を訪ねて来る事となった。

直樹

ヤクザ事務所に出入りしている不良の若い男性。結衣を七瀬に質入れする。結衣の持ち物を質草に七瀬から金を借り、ヤクザ事務所に過去の清算をするために出かけた。実は、結衣の恋人で駆落ちの最中で、事情を知った七瀬に結衣を預けている。

新宿のアパレルショップで働く若い女性。母親は3年前に他界している。実家は宇都宮で、2年前に親元を離れている。惚れっぽく騙されやすいお人好しな性格だが、さっぱりした男前な一面もある。婚活パーティーで知り合った翔からもらった指輪が偽物だと判明し、七瀬の協力で、翔の正体を知る。のちに、借家で一人暮らしをしていた父親が心筋梗塞で孤独死し、七瀬に父親の遺品整理を依頼する。 もっと頻繁に父親と連絡を取ればよかったと、内心ひどく落ち込んでいる。

葵が婚活パーティーで知り合った若い男性。投資コンサルタントを名乗るイケメン。何回かデートを重ねたのちに、指輪を贈って結婚を匂わせ、葵にマンションを契約させた。実は、不動産屋と組んだ典型的なデート商法を行う詐欺師である。大金を借りてはギャンブルにつぎ込み、女性を騙して金を返済していた。

レン

新宿中央公園で暮らすホームレスの男性。いつも手にカップ酒を持ち、とぼけた笑顔を浮かべている。公園でめぼしい拾いモノがあると「七瀬質店」に持って来る、まじめでおとなしい人物。モンブランの「ヘミングウェイ」という限定万年筆を拾うが、それが14万円もするものと知って受け取りを躊躇。その後、七瀬の提案で公園で花見をした際、何者かに襲われる事となった。 また、のちにNPOを名乗る男に監禁され、搾取のため生活保護を申請させられてしまう。

犯人 (はんにん)

新宿中央公園で女子大学生を殺害した犯人。大学関係者で左利きの男性。事件現場で落とした万年筆を、ホームレスのレンに拾われた事から、レンを襲った。のちに大学の准教授を務めており、被害者は教え子で元恋人である事が判明。弱者ばかり狙う性根が気に入らないと、七瀬から痛烈なパンチを浴びる。

福富 大輔

新宿歌舞伎町でキャバクラを流行らせた伝説の実業家。「キャバ王」の通称で呼ばれる初老の男性。七瀬から金はあっても教養がない、美意識は強いがセンスはないと言われた事から、七瀬を信用して出張鑑定を依頼した。一度結婚するが、すぐに離婚したという過去がある。末期ガンを宣告されたため、コレクションを売りさばいた金で豪遊して、豪快に死のうと考えている。

新宿歌舞伎町で働いているキャバ嬢。惚れっぽいわりに恋愛下手で、失恋のたびに思い出の品を七瀬のもとに持ち込み、処分してもらっている。青年実業家を名乗る勝彦と付き合い始め、顔に殴られたような痕がある事から、七瀬が相談に乗る事になる。七瀬のアドバイスに従い、持ち物を次々に質入れするようになる。のちに、クスリが抜けた勝彦と共に仲睦まじい様子で、七瀬の店を訪れた。

勝彦

青年実業家を名乗る男性。楓の彼氏で、楓から現金をせびったり、家から金目のモノを持ち出したりするヒモ男。瞳孔が開いていた事から、七瀬に一目でジャンキーと見抜かれた。七瀬に強制入院させられ、退院した日に礼を言うために七瀬の店を訪ねた。

海斗

新宿歌舞伎町で働く、歌って踊れるホストとして有名なイケメン。ブロードウェイのミュージカルスターになるという夢を持ち、田舎から上京して来た。見た目ほど軽薄ではなく、昼は英会話教室に通い、夜はホストとして渡米資金を貯めている。しかし、ロレックスGMTマスターを七瀬に買い取りしてもらってからは、やさぐれた言動が目立つようになる。 実は父親が亡くなり、二人の兄が遺言に従って高額な家宝を形見分けした中、自分にはGMTマスターだけだった事から寂しさを感じていた。だが、七瀬からGMTマスターが自分に贈られた真の理由を知らされ、再び自らの夢を追う事になる。

鬼頭

鬼頭質店を営む男性。店の実体は偽装質屋で、質屋を装い超高金利で金を貸し出す闇金。老人をターゲットにどんな安物にでも高値をつけ、その代わりに年金手帳を取り上げて、支給日に強制的に引き落とすというのが常套手段。七瀬の馴染みの客である富江がその被害に遭い、生活が困窮して死亡。それを知った七瀬から報復を受ける。

一条 左京

落ち着いた雰囲気のお洒落な中年男性。宝石商を名乗っている。実は「ダンディ」の異名を持ち、その筋では有名な詐欺師である。ここ数年は関西で活動していたが、新宿歌舞伎町に舞い戻って来た。ダイヤモンドの偽鑑定書を使って七瀬を騙すが、本物の鑑定書を使った偽ダイヤモンドで七瀬にやり返される。

鈴鹿 アイカ

日本アカデミー主演女優賞を取った事もある美人女優。本名は「鈴木桜」。新宿歌舞伎町の裏カジノに出入りしている際、ゼロマンと異名を持つ天才ディーラーからルーレットで狙い撃ちされるが、カジノのオーナーの悪だくみを見抜いた七瀬に助けられる。その縁で、病死した父親の遺産整理を七瀬に頼んだ。父親は日本人の貿易商で、仕事先で知り合ったオーストラリア人の母親と結婚。 だが幼い頃に両親が離婚。父親と日本に移住するものの学校でいじめに遭い、父親を嫌うようになり、高校中退して芸能界に飛び込んだという過去がある。父親も鈴鹿アイカ自身もクールな性格で、お互い連絡を取り合う事もなかったが、七瀬により父親の真意を知る事になる。

ゼロマン

ルーレットの天才ディーラーとして知られる韓国人の男性。カジノ公認の自国で修行を積んでいた。ここ一番の勝負で、親の総取りである「0」「00」に確実に入れる事ができるため、「ゼロマン」の異名を持つ。新宿歌舞伎町の裏カジノに現れ、鈴鹿アイカを自分のモノにしたいオーナーの意向により、彼女を負けさせるべく狙い撃ちする。 しかし、七瀬に勝負師としてのプライドを刺激され、「0」を狙わずにはいられない局面での大勝負を挑まれる。

鈴木 健

暴力団「稲妻組」で若頭を務める男性。新宿歌舞伎町を仕切るバリバリの武闘派で、通称「鈴健」。気の優しい性格ながら、男気がある。代々組に伝わる名刀「村正」を本物と信じ切っている組長のため、生前の形見分けの際に贋作であろうと本物だと鑑定してほしいと持ち掛けた。ちなみに「稲妻組」では、その村正を貰った者が次の組長になるという仕来りがある。

蛭田

暴力団「稲妻組」の若手のホープといわれている男性。脱法ハーブとオレオレ詐欺で成り上がったならず者で、超の付くほどの野心家。生前の形見分けの際、代々組に伝わる名刀「村正」を、自分が貰えなかった場合は贋作と鑑定してほしいと七瀬に金を握らせた。

美姫

新宿歌舞伎町にあるバー「エルドラド」のキャバ嬢で、クールを装って接客のプロとして生きて来た。「ジュ・ルビアン」というフランス製の香水を「七瀬質店」に質入れし、なぜか利子を払い続けている。1年前、自分に香水を渡し、海外へ行くと姿を消した藤枝に未練を持ち続けており、香水の質流れの日、七瀬から香水の名前の意味を「再会」だと聞かされる。

藤枝

アメリカ留学経験のあるIT関連の実業家。メガネをかけたインテリ風の男性。美姫の客で相思相愛だったが、仕事で海外に行くといって「ジュ・ルビアン」というフランス製の香水を美姫にプレゼントして姿を消した。のちに、たくましくなった姿で美姫と七瀬を訪ねて来る。実は、会社が倒産して借金を背負い、返済のためにマグロ漁船に乗っていた。

目高

新宿歌舞伎町でも最古参の暴力団「目高組」の組長を務める男性。典型的な昭和の博徒で、現代的なシノギには無頓着。強面で非常に存在感がある。七瀬にターコイズの指輪をはめている女性の写真を見せ、この指輪が店に持ち込まれたら、自分が2倍の値段で買い取ると凄んだ。実は、五月の祖父である。指輪が質入れされた事から、五月の窮状を知り、志村のいる「日文組」に殴り込みをかけた。

五月

新宿歌舞伎町にある24時間営業の花屋「ひまわり」の看板娘。先代の店主である母親は長期入院中。不景気で傾いた店をやりくりするうち、莫大な借金を作ってしまい、祖母のターコイズの指輪を七瀬の店に持ち込んだ。志村から借金の元本の返済を強要され、愛人になれと脅されている。目高が自分の祖父だという事実は知らない。

志村

暴力団「日文組」に所属する男性。「闇のシムタク」と呼ばれている。オレオレ詐欺などの今風のシノギで頭角を現した人物で、金はもちろんの事、女の扱いも汚い下衆野郎。五月が作った借金の債権を買い取り、花屋の利権だけではなく、五月の身体を奪おうとしている。

新宿歌舞伎町にあるバー「エルドラド」のキャバ嬢。七瀬がかつて入れ上げていた相手。実家は世田谷でコンビニを営んでいる。母親が過労で倒れた際に見舞いにも来なかった父親に反発し、高校卒業後に家を飛び出した過去がある。水商売を始めた事もあり、父親とはここ数年絶縁状態だった。しかし結婚式直前、父親が過労死してしまう。 遺品の時計は、仕事に明け暮れて過労死した父親の象徴であり、嫌悪感を持っている。

安部

食品会社「AB フーズ」の社長を務める中年の男性。期限切れ商品を売ったとして世間を騒がせている人物で、安部本人は日本人は「もったいない」の精神を忘れていると、開き直りとも取れる記者会見を行った。七瀬に、時間がよくわからないからと、フランクミュラーの「クレージーアワーズ」を買い取ってもらう事となった。夜間高校を出てから働きづめで、やっと築いた会社が営業停止となってしまい、家に妻と息子の姿がなかった事から、金の切れ目が縁の切れ目だと落ち込んでいる。 焼身自殺を図ろうとした際、七瀬から息子がクレージーアワーズを贈った真意を聞かされる事となる。

本田

新宿歌舞伎町で客引きをしている男性。通称「ポンタ」。呑む・打つ・買うのダメ男で、風俗嬢の妻に逃げられ、幼い息子の本田勇樹を抱えて困窮している。子供にはいいパパを装っている。闇金業者の依頼で出張査定に来た七瀬の計らいで、夜逃げして裸一貫でやり直す決意を固める。

本田 勇樹

本田の息子。まだあどけなさが残る幼い少年。闇金業者の依頼で自宅に出張査定に来た七瀬から、外で遊んで来いと、自身のお気に入りの超合金ロボットを渡された。のちに、七瀬からそのロボットをくれれば、パパを助けてやると、男の約束をしていた事実が判明する。

佳絵

新宿歌舞伎町にあるバー「エルドラド」の人気キャバ嬢。高校生の時からプチ家出を繰り返し、そのたびに家から持ち出して来たモノを七瀬の店に持ち込んでいた。最近、両親が離婚し、母親と弟の三人暮らしであり、佳絵自身が生活費を稼いでいる。明るい性格だが、自身の着替えの映像が盗撮されてネットに流出し、多感な年頃の弟を心配して心を痛めている。 客からプレゼントされたDVDプレイヤーに、盗撮カメラが仕込まれていた事が七瀬の調査で明らかになる。また、頼んでもいない商品を勝手に人々に送り付けて代金を請求する詐欺商法「送りつけ商法」の被害に遭い、その際にも七瀬に頼っている。

青山 智美

メガネをかけた美人女子大学生。骨董コレクターである祖父の青山太一の遺言に従い、七瀬に遺品整理を依頼した。数年前に両親を相次いで亡くし、寝たきりの祖父の介護をしながら二人暮らしをしていた。しかし、祖父の死後に叔父と叔母から家を出るよう言い渡され、大学を中退して九州の母親の実家に住む事が決まっている。形見分けの際には、自分が修学旅行のお土産で買って来た祖父の湯呑を選ぶなど、祖父思いの優しい性格の持ち主。

石神

紙物コレクターで弁護士の男性。長めのパーマヘアで、色メガネをかけたあやしい雰囲気を漂わせており、七瀬と同じニオイがする。青山智美の湯呑を包んでいた英字新聞を、リンカーン暗殺を報じた貴重な物だとして10万円で購入。智美のために、代襲相続(祖父の遺産は親が亡くなっている場合、直系の孫にも権利がある)の件を引き受ける。

鈴麗 (りんりー)

新宿歌舞伎町にある「上海クラブ」のホステス。家族への送金のために働いており、強制送還を恐れ、客である加藤健太に偽装結婚を持ち掛けて来た。国を出る時に父親からもらった家宝である香合(お香を入れて置く小箱)を、「上海クラブ」のオーナー、王浩守に狙われており、その申し出を断った際には、日本にいられなくしてやると脅されている。

王 浩守

鈴麗が働く「上海クラブ」のオーナーを務める中国人男性。「上海王」と呼ばれている。不法就労斡旋や麻薬、売春など合法違法を問わず扱うビジネスマンで、中国の秘密結社「幇(ぱん)」の上海ファミリーの親玉。頭も切れるが気性も激しく、骨董品コレクターに多いという執念深い性格。鈴麗が持つ家宝の香合を狙っている。

豪 大造

「強欲・豪」と忌み嫌われている金貸しの中年男性。資産隠しのため現金を骨董品に変えており、国税局査察部から依頼された七瀬に、骨董品の鑑定を受ける事となった。娘が心臓手術のために渡米する費用が必要で、巧みに資産を隠していたが、七瀬にことごとく見つかってしまう。大正初期に起きた「菊切手偽造事件」で少数出回った高値の付く偽切手を所有している。

老人

元都庁の職員だった老人。終活のため骨董品を売りに七瀬の店を訪れ、以降毎週来店し、売れた骨董品で七瀬達と飲み歩くようになる。バカがつくほどまじめな性格をしている。妻に続いて息子にも先立たれ、よくできた嫁の桂子のおかげで終活を考えるようになった。子供の頃、漫画家になりたいという夢があり、足塚不二雄(藤子不二雄のデビュー初期のペンネーム)の『UTOPIA 最後の世界大戦』に、嫁への感謝の手紙を挟んでいた。

多恵

メガネをかけた太った中年女性。老人の娘。父親の死後、遺産はもっとあるはずだと大騒ぎするなど強欲な人物。死に際に老人が「ユートピア」とつぶやいた事を知り、父親の本棚にあったトマス・モアの『ユートピア』を、自分が貸していた本だと言い張って持ち帰る。

組長

元暴力団の幹部組員だった強面の初老の男性。その風貌から「組長」と呼ばれている。息子夫婦と別居しており、孫の昌樹を名乗ったオレオレ詐欺に騙され、七瀬の店に現金を作りに訪れる。七瀬に挑発され、やり返すべく詐欺軍団を追い詰め、次第に昔の元気を取り戻していく。

ユマ

新宿歌舞伎町のキャバ嬢。20年以上前に人気を博したアイドルの田中麻里の娘。父親はカメラマンで、長患いの末に亡くなった。看護婦になるのが夢で、専門学校へ通うため、父親の遺品のライカM4を七瀬の店に売りに来た。母親が謎の転落死をしたせいで、自分は母親に望まれずに生まれて来た子供だと思い込んでいる。

田中 麻里

20年以上前にアイドルとして人気を博した女性。通称「マリリン」。抜群の歌唱力と愛くるしいルックスで大人気だったが、人気絶頂期に電撃引退し、結婚して出産した。出産直後に病院の屋上から謎の転落死を遂げた事で、アイドル業界では伝説の人物として名を残している。

新宿ゴールデン街にあるバー「澪」のママを務めている女性。七瀬のお気に入りで、七瀬からティファニーのオープンハートをプレゼントされている。弟の琢也が店を手伝う事になり、リニューアルオープンを決める。ちなみに弟とは血はつながっておらず、弟からティファニーのティアドロップをプレゼントされている。のちに、店のリニューアルオープン時には、弟の本当の父親である流しのギター弾き、ナベを店に呼んだ。

琢也

澪の弟。ギャンブル好きで意思が弱いところがあるが、根は優しい性格。姉の店の開店資金を持ち逃げしたと思われていたが、「涙は流させない」というモチーフのティファニーのティアドロップを姉に贈ったと知った七瀬により、悪徳金融業者の罠にハメられていたと判明。実は、姉とは血がつながっていない。のちに、姉の店「澪」を手伝う事になる。 幼い頃の父親の記憶がロンソンのライター「バンジョー」だった事から、その復刻版を愛用しているが、自分の父親が流しのギター弾き、ナベだとは知らない。

ナベ

新宿ゴールデン街の名物ギター弾きの男性。肺ガンが見つかり、手術費を作るため、「昭和の男の三種の神器」と呼ばれるオメガの時計、パーカーの万年筆、ロンソンのライターを七瀬の店に売りに来たが、ロンソンの「バンジョー」のオリジナルだけは自分の懐にしまった。売れっ子シンガーソングライターだった時代に、天狗になって妻子に愛想を尽かされた過去がある。 実は琢也の父親。

若葉

新宿歌舞伎町にあるバー「エルドラド」のキャバ嬢。田舎の母親の入院費が必要となり、七瀬の店で買った中古のロレックスをネットオークションで売るが、時計の中身が偽物だと返金を迫られている。七瀬に相談し、ネットオークション専門の詐欺師と対峙する事になる。また、売れない漫才師の直人と付き合っており、プライドを傷つけずに、貧乏な彼を秘かに助けるという内助の功を見せる。

ネットオークション専門の詐欺師 (ねっとおーくしょんせんもんのさぎし)

ネットオークション専門の詐欺師の男性。若葉がネットオークションで売ったロレックスを落としたが、中の機械が偽物だとして返金を求めている。その際、若葉に時計を売った質屋の七瀬が怪しいと発言し、激怒した七瀬から鉄槌を下される。

陽菜

新宿歌舞伎町にあるバー「エルドラド」のキャバ嬢。お腹の子供が、今彼である放送作家の森田か、元彼でチャラそうなヒデの子供かわからず、七瀬に相談する。性格は少しだらしないが、顔と心はキレイな女性。

詩織

婚活パーティーにサクラとして紛れ込んでいる美女。恋愛力啓発セミナーの主催者と組み、無料セミナーに参加した男性が参加する婚活パーティーで、知り合った男性に記念としてペアの指輪を買わせる仕事を生業としている。

マサシ

新宿歌舞伎町でキャッチをしている若い男性。七瀬の知り合い。神待ち少女(家出娘)の風花を家に泊め、金目のモノを盗まれた。自身は父親のDVに耐えかねて家出したという過去があり、多少の下心はあったものの、風花の事は可哀想に思っていた。

風花

神待ち少女(家出娘)を名乗り、インターネットで宿泊先を探す女性。マサシの家に泊まり、金目のモノを盗んだ。加藤健太の家に泊まり、健太が外出した際、クラスメートの男子といっしょに部屋を荒らしていたところを七瀬に見つかる。実は名門校に通う女子学生だと判明する。

大木 晴彦

新宿歌舞伎町のキャバクラで黒服として働いている中年男性。七瀬のギャンブル仲間。コインショップの金貨を借金で買い、その利息で借金を増大させた。ちなみにコインショップは利息制限をすり抜けるための偽装で、「換金ヤミ金」とも呼ばれている。七瀬の店で金目の物を買い取ってもらい、借金を返そうとするが、ギャンブルにつぎ込んでしまう。

関 雅也

「押し買い」という詐欺商法を専門とする詐欺師の男性。水商売の女性のジュエリーを狙い、訪問して不当に安く買い取っている。趣味と実益を兼ねてバー「エルドラド」に現れ、女性を物色している。モエを使って仕込みをした七瀬に、まんまとハメられる。

夏帆

かわいい容姿の女子高校生。父親は経営していた町工場が倒産し、その心労で突然死した。母親は幼い頃に亡くしており、家宝の掛軸描かれている観音様に似ていたと父親から聞かされて育った。その掛軸は、谷文晁の弟子の作品だった。谷文晁は貧乏な弟子が贋作を売るのを許しており、しかも落款も貸していたせいで、弟子の描いた贋作は科学分析では本物と鑑定される。 出張鑑定に来た七瀬が、その掛軸の価値を見抜いた事で、父親の借金の返済に成功する。

夏帆の父

町工場の社長だった男性。夏帆の父親。工場が倒産し、その心労で突然死した。妻は夏帆が幼い頃死亡し、男手ひとつで娘を育てて来た。日本画のコレクターで、困った時には谷文晁の掛軸を売るように、生前夏帆に語っていた。

アン

若い頃に日本に働きに来たフィリピーナ。新宿ゴールデン街でバー「ムーンデート」を営んでいる。日本人のマスターと結婚したが、夫が浮気した罰として、彼の時計のコレクションを売りに七瀬の店を訪れる。

マスター

新宿ゴールデン街で、妻のアンとバー「ムーンデート」を営んでいる男性。結婚前にアンに言い寄っていた男性が高級クロノグラフをつけていた事に対抗心を持ち、NASAのアポロ計画にも選ばれた質実剛健なオメガのスピードマスターを、自分に重ねて愛用していた。

老舗とんかつ屋の店主 (しにせとんかつやのてんしゅ)

七瀬が学生の頃からの行きつけの老舗とんかつ屋「鐘屋」で店主を務める男性。早くに妻を亡くし、パートして長年働いて来た純子と再婚したが、突然脳溢血で倒れて死亡する。熱狂的なジャイアンツファン。

陽一

老舗とんかつ屋の店主の息子。家業は継ぎたくないと言って、家を飛び出した不肖の息子。怪しげな連中から金を借りており、父親の死を知って、財産目当てで戻って来る。事情も知らず、純子を金目当ての後妻と思い込んで辛く当たる。だが、七瀬に古いブローブを渡され、父親が遊んでくれた事が無性に嬉しかった昔を思い出し、心を入れ替える。

純子

長年、とんかつ屋「鐘屋」でパートをしていた女性。老舗とんかつ屋の店主の後妻。かつて鐘屋が経営危機に陥った際には、店存続のため、給料未払いでも残ったという芯の強い人物。陽一の借金を返すため、老舗の味を守るという条件で夫のサインボールを売る事を承諾する。

咲希

新宿歌舞伎町で働くキャバ嬢。母親を1年前に亡くし、骨董趣味の父親も最近亡くした。唯一の血縁である兄が、自分が父親の骨董品を売り払ったのではないかと疑われている事に耐えられず、七瀬に父親の骨董品の鑑定を頼む。

咲希の兄

新宿西口のビジネス街に勤めるエリート会社員の男性。咲希の兄。母親を1年前に亡くし、骨董趣味の父親も最近亡くした。幼い頃、家に来た骨董商が、父親に3000万円で家宝を売ってくれと頼む姿を目撃しており、妹がその骨董を秘かに売り払ったと疑心暗鬼になっている。

瀬名

高級クラブ「華」の若手ホステス。新宿歌舞伎町No.1美女の誉れ高い女性。その美貌とクールさから「アイスドール」と呼ばれ、どんな上客とも一線を越えないという評判。七瀬の店の常連で、七瀬の前ではふと少女のような顔を見せる。実は、母親が病死してから再婚相手だった義父のDVを3年間受け続けた家出少女で、歌舞伎町区立公園で七瀬に拾われたという過去がある。 その際、祖母の形見のというスイスの超名門ブランド「ヴァシュロン・コンスタンタン」の時計を七瀬に買い取ってもらい、それを元手に歌舞伎町でやり直すよう勧められた。本名は「奈美」。

瀬名の義父

弁護士を務める男性。瀬名の義父。妻が病死して以来、3年にわたり瀬名に暴力を振るっていたDV男。七瀬が瀬名の働く高級クラブに来店していた際に、運悪く瀬名を指名した事をきっかけに、監視カメラの届かないエリアで、七瀬からボコボコにされる。

直人

売れない漫才師の男性。コンビ名は「直人・正人」。万年金欠に苦しんでおり、ようやく売れ始めたところで胆石で入院する事となり、家賃や手術代が払えない緊急事態となってしまう。恋人のキャバ嬢、若葉に心配されているが、そのままズルズルとヒモになってしまいそうだと、彼女の助けを拒んでいる。

葵の父

葵の父親。妻を2年前に亡くしている。趣味は将棋。大家のとなりの借家で一人暮らしをしていたが、心筋梗塞で死亡した。この事が、孤独死させたと葵が自分を責める原因となっている。だが部屋が綺麗に片付けられていたため、七瀬に孤独死ではなかったと見抜かれ、将棋仲間を中心に大勢の友人がいた事も明らかになる。死後のどさくさに紛れ、大家に天才駒師の宮松影水が彫った将棋の駒を盗まれている。

大家

葵の父に自宅のとなりを貸していた大家の男性。孤独死された事が迷惑だと葵に散々悪態をつき、通夜をする事も拒絶した。実は、高値がつく将棋の駒を、葵の父の死後こっそり盗んでいた。

NPOを名乗る男

NPO法人が持つ寮の寮長を務めている男性。福祉の名のもと、ホームレスから生活保護費を搾取している。強面で眉毛がなく、レンに生活保護申請をさせて寮に閉じ込め、彼が逃走しようとすると、渋谷の質屋にレンのライターを持ち込んだ。これにより、弱者を喰い物にする最低のクズだと、七瀬の鉄拳を食らう事となる。

田中 真帆

七瀬の悪友が経営するぼったくりバーで働く女性。社内恋愛していた彼氏にふられ、退職に追い込まれた。ぼったくりバーで働いているのは、荒れた生活の中で作ってしまった借金返済のため。

真帆の父

新潟県糸魚川市在住の漁師をしている男性。田中真帆の父親。真帆を心配し、見合い写真を持って上京した。律儀な性格で、最終バスに乗るまでのあいだ、真帆のアルバイト先に挨拶しようと訪ねて来る。店に来ていた七瀬に出身地と職業を当てられ、いっしょに酒を飲む事になる。実はかなりの酒豪である。

新宿歌舞伎町にあるバー「エルドラド」のキャバ嬢。左眼元にホクロがある女性で、年齢は27歳と言っているが、実際は3歳ほどサバを読んでいる。自分の誕生祭に一番高価なプレゼントをくれた客と結婚を前提で付き合うつもりでおり、七瀬に協力を頼む。基本的に恋愛が苦手。

クロ

新宿歌舞伎町にあるバー「エルドラド」の黒服の男性。ピュアな性格で、蘭を陰日向に支えて来た人物。蘭とは相思相愛だが、彼女の美貌に気後れし、自分の気持を言い出せずにいる。

氷川 一徹

元区議会議員の男性。氷川透の父親。頑固一徹の清貧な政治家だった。息子の性根を生前から憂いており、七瀬に遺品整理を頼む。その際、遺品に贋作があったらしかるべき対処をしてほしいと意味深長な発言をしていた。

氷川 透

氷川一徹の息子。父親の地盤を引き継いだ区議会議員。清潔なイケメンで主婦層に人気がある。歌舞伎町を清く正しく美しい街にするという持論を有する偽善者で、実際はチャイニーズマフィアと結託し、ヤクザから利権を奪い、街の支配を狙っている。父親の遺品整理の際、七瀬と揉め、最も凶悪な福建マフィアに七瀬を襲わせる。のちに、風俗嬢に麻薬を過剰摂取させて死亡させたが逃亡。 さらにその事件の犯人を追っていたルポライターの北をビルの屋上から転落死させる。北が入手していた防犯カメラの映像を、公衆の面前で七瀬に流され、政治生命を断たれる。ちなみにその際、七瀬から制裁を受け、大ケガを負わされている。

李 真一 (り じんいる)

七瀬の昔の仲間。七瀬と同じく危ない匂いのするギャンブラーの男性。韓国ソウルの施設育ち。写真を撮るように鮮明に記憶する事ができる「直観像」という能力を持つ。お互い貧乏ツーリストだった10年以上前、七瀬とマカオの安酒場で出会い、カジノに繰り出して大儲けした仲。大金が必要になり、新宿歌舞伎町の裏カジノで大勝負するつもりだと、七瀬に協力を求める。

桃子

出会い系の居酒屋で、七瀬と加藤健太が相席した若い女性。健太のイタリアの高級ブランド「フェリージ」のバッグを持ち逃げする。のちに、入れ上げているホストの亜蓮にプレゼントした事を、七瀬につき止められ、年末年始に一人ぼっちという寂しさを抱えての行為だと涙ながらに謝罪する。

都庁職員のイケメン男性。バー「エルドラド」の人気キャバ嬢、佳絵の客。佳絵にストーカー行為をした挙句、彼氏がいるとわかると「送りつけ商法」で嫌がらせをした。ふられた腹いせに嫌がらせをするカッコ悪さが七瀬の逆鱗に触れ、ボコボコにされる。

ルポライターの男性。新宿歌舞伎町のラブホテルで起こった風俗嬢怪死事件を追っている。風俗嬢は麻薬の過剰摂取で変死しており、その犯人を区会議員の氷川透の仕業だと見て調査を開始。透を追い詰めるべく、七瀬と手を組んだが、1週間後ビルの屋上から何者かに転落死させられた。殺害される前、ショートヘアの若いアメリカ娘のジェニーに決定的な証拠を託したと七瀬に告げた。 のちに七瀬の調査により、ジェニーは猫である事が判明する。

石田

女優の鈴鹿アイカの父親が、生前世話になっていたという初老の男性。アイカに父親の骨董品を鑑定してもらった方がいいとアドバイスした人物。アンダーグラウンドの匂いを七瀬に嗅ぎつけられ、故人が隠していた高額品を見つけて、相続放棄の期限切れ3か月が過ぎるよう企んでいる闇金である事が判明する。弁護士が出て来ないよう、アイカに相続放棄させないで、多額の金を彼女からむしり取ろうと画策していた。

飯島 真紀

地方から上京して来た大学2年生の女性。年齢は20歳。「耳かき屋」でアルバイトを始めたが、帰りに尾行されたり、女子寮のポストにプレゼントが置かれるようになり、七瀬に相談を持ち掛けた。その後、まるで近くで監視されているかのようなプレゼントが届くようになり、さらに不安を覚えるようになっていく。しかし、犯人が判明した際には甘ったれた態度をあらわにし、美を換金する仕事は大火傷につながる事もあると、七瀬の叱責を受ける。

川崎

新宿歌舞伎町で台湾料理店を営む男性。詩の夫。通称「カワさん」。生まじめで腕のいい料理人だがお人好しな性格で、友人の連帯保証人になり、多額の借金を背負って破産してしまう。高卒のために美術大学を出た妻を尊敬している。

(すー)

新宿歌舞伎町にある台湾料理店の美人女将。11歳年下の川崎の妻。美術大学出身で、絵画に対する確かな審美眼を持つ。破産した川崎に離婚を切り出し、慰謝料として高額な絵を持ち出すという悪妻ぶりを発揮するが、これは夫の再起のためにした行動だと七瀬には見破られていた。自分のダイヤを売り、夜逃げした友人を装って夫に入金するなど、実際は非常に献身的な女性。

亜蓮

新宿歌舞伎町でホストとして働く男性。幼なじみの西園寺桜子の家の蔵と、桜子の婚約者、赤木浩一郎の鑑定を七瀬に依頼する。無垢な桜子を案じており、蔵から出て来た古銭を盗み出そうとした赤木に、七瀬より先に殴りかかる。

西園寺 桜子

亜蓮の幼なじみで、大学の研究者というリケジョ(理系女子)。実家は都心の一等地にある名門の旧家。メガネをかけた知的な女性で、赤木浩一郎の婚約者。亜蓮とは幼なじみで、幼い頃、祖父から蔵に宝が埋まっていると言われていっしょに宝探しした仲。

赤木 浩一郎

仮装通貨の交換業の会社「ファンタスティックコイン」の代表を務める男性。西園寺桜子の婚約者。全身ブランド品で身を包み、骨董に造詣が深いと言いながら、瀬戸焼と安い湯呑茶碗の区別もつかない。実はブランド品は偽物で、それらを怪しいと睨んだ七瀬の罠にハメられる。

魔子

新宿ゴールデン街にあるスナック「魔子」のママを務める女性。年齢は40歳を超えているが、非常に若く見える美魔女。実は、刑務所に入っている佐々木英一を待つために店を始めたという健気な性格で、英一からもらったブルガリのペア時計をずっと腕につけている。本名は「真子」。

佐々木 英一

暴力団員を刺殺した罪で8年間服役し、仮出所して来た男性。もともと腕のいいバーテンダーだった。魔子とは恋人同士で、8年前に七瀬の店でブルガリのペアウォッチを購入している。暴力団員を刺したあと、七瀬にブルガリの買い戻しを頼み、有り金全部を手切れ金代わりに魔子に渡して自首したという経緯がある。

スナック「カリブ海」でホステスをしている女性。新宿歌舞伎町で丸々10年間、夜の仕事をしている。七瀬の店に傷物のカメラ「ライカⅢ」の預かりを頼み、バツイチで子供がいる彼氏の香との結婚に迷いを抱いている事を打ち明ける。

スナック「カリブ海」の用心棒を務める男性。スキンヘッドに強面の元プロレスラーで、傷害の前科がある。同じ店のホステス、恵に、バツイチで子供がいる事を明かしたうえで、結婚してほしいと伝えた。何年か前に、泥酔した七瀬と揉めた事がある。その際、七瀬の歯を折ったが、香自身は鼻骨を折られ、痛み分けに終わっている。

愛海 (あいみ)

新宿歌舞伎町にあるバー「エルドラド」の新人キャバ嬢。年齢は20歳で、沖縄出身。女優を目指して上京し、平日は劇団に通い、週末の夜だけ「エルドラド」でアルバイトしている。映画監督を目指す彼氏のタッちんと同棲している。ノーメイクでも眩しいほどの愛らしさで周囲を魅了する天然娘。愛海自身の持つ真珠のネックレスを売り、タッちんにカメラ用の最新レンズを買おうと七瀬の店を訪れる。

タッちん

映画監督を目指している男性。愛海の彼氏。夜はラーメン屋でアルバイトをしている。オーディションに合格しそうな愛海のために、自分のビデオカメラを売り払ってドレスを買おうと、七瀬の店を訪れる。

裕子

地元の市役所に勤めている女性。加藤健太と仲のよかった幼なじみ。お盆の同窓会で健太と再会し、当時あこがれていた事を打ち明ける。トオルと付き合っており、地元の同級生達のあいだでは周知の事実だが、健太だけがその事実を知らない。

トオル

加藤健太の地元の友人。昔はヤンチャをしていた男性。健太に家宝のダイヤを鑑定してほしいと頼み、本物なら、付き合っている彼女の裕子にプロポーズするつもりだと打ち明ける。ちなみに、裕子と付き合っている事は地元の同級生達のあいだでは周知の事実だが、健太だけがその事実を知らない。

貴腐人

質屋を専門に狙うサギ師「置き込み屋」の女性。その上品な外見から「貴腐人」と呼ばれている。大金の入った財布を店に忘れ、店員がお人好しかどうかを見抜き、翌日ルイヴィトンのダミエの偽物を買い取らせるのが常套手段。その偽物をエリカママにプレゼントした稲妻組の若頭、鈴木健の怒りを買う事となった。七瀬の店におびき出されてひどく脅されたせいで、自ら警察に自首。 その際、年齢が66歳だった事が判明する。

マーロウ

バー「マーロウ」の伝説のバーテンダーとして知られる男性。新宿歌舞伎町で半世紀のあいだシェイカーを振り続けている。若かった七瀬に、酒の飲み方を教えた人物でもあるが、米兵と日本人とのハーフという事以外は、その素性のすべてが謎に包まれている。仕事中、初めてシェイカーを取り落とした事に老いを感じ、リタイアを考えてバカラのグラスを七瀬の店に持ち込んだ。 もともと時間を厳守する律儀な性格で、オーナーとの約束の時間に店に来なかった際に七瀬達に脳梗塞を疑われた事で、一命を取り留める。

木戸

バー「マーロウ」で働く、マーロウの後輩バーテンダーの男性。通称「キッド」。これまでなにをやっても長続きせず、親にさえ見放されていたが、そんな自分を厳しくも根気強く使ってくれたマーロウを慕っている。彼に恩返ししたいという気持ちが強く、マーロウが七瀬の店に持ち込んだバカラを、自分が買い戻そうと考えている。

オーナー

バー「マーロウ」でオーナーを務める男性。まだ木戸の仕事ぶりには疑問を持っており、マーロウの引退宣言を受けて、閉店を考えている。七瀬の提案を受け、木戸の作ったカクテルを、アルファベット順に飲み比べする事になる。舌は肥えているが、実は泣き上戸。

クレジット

原作

観月 昴

書誌情報

新宿セブン 全12巻 日本文芸社〈ニチブンコミックス〉

第2巻

(2015-09-19発行、 978-4537133387)

第3巻

(2016-05-28発行、 978-4537134445)

第6巻

(2017-12-09発行、 978-4537136654)

第12巻

(2020-11-30発行、 978-4537143096)

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