星明かりグラフィクス

星明かりグラフィクス

山本和音の初連載作品。埼玉芸術大学を舞台に、潔癖症で人間嫌いの女子大学生、吉持星が、才能だけでは乗り越えられない壁に直面しながらも、唯一の友人である園部明里との交流を通じて、さまざまな経験を積んでデザイナーとしてだけでなく、一人の人間としても成長していく姿を描いた青春グラフィティ。青春の葛藤や友情の大切さをテーマにしており、星と明里を中心にした1話完結のストーリーが展開される。KADOKAWA「ハルタ」vol.40(2016年12月15日)からvol.59(2018年11月15日)にかけて連載の作品。

正式名称
星明かりグラフィクス
ふりがな
ほしあかりぐらふぃくす
作者
ジャンル
職人・芸術家
 
青春
関連商品
Amazon 楽天

若き芸大生たちの青春群像劇

星はデザインの才能にあふれているが、潔癖症でコミュニケーション能力に欠けているため、周囲からは円滑な人間関係を築くのが難しいコミュ障と見なされている。そんな星の唯一の理解者である明里は、芸術的才能はないものの、他人との交流を得意としており、人心掌握にも長(た)けている。当初、明里は星のことを少々面倒な友人として扱いつつも、彼女の才能に目を付けていた。そんな中、星が学内の賞を受賞すると、明里はほかの学生たちが彼女に近づかないように画策するようになる。一方の星は、明里を信頼しており、彼女に嫌われることを恐れている様子が見受けられる。この二人の関係は友情と共依存の境界が曖昧であり、穏やかな日常の中で関係が変化していく様子が本作の魅力となっている。

黒沢清純の存在が大きな変化をもたらす

コミュ障の星は他人からの評価に無関心であり、自らの作品に対して絶対的な自信を持っていた。しかし、学内コンクールで大賞を受賞した黒沢清純との出会いが、星に明確な変化をもたらす。清純との会話は短時間だったが、そのわずかな時間で清純の人格破綻者ぶりと才能を目の当たりにし、さらに自分の作品が貶(おとし)められたことで、星は「他人から見た自分」「他人から見た作品」を意識するようになる。そしてこの出来事が、星の作品に対する考え方に大きな影響を与えることとなる。

コミュ障の天才とコミュ充の凡人が選んだ道

星は優れたデザインの才能を持ちながら、他人との円滑なコミュニケーションを取ることに問題を抱えている。特に人前で話すことが苦手で、潔癖症のためクライアントであろうと不快と感じた相手に対しては暴言を吐いて過剰な反応をすることもある。そんな星をいつも支えているのが明里であり、彼女は授業中であっても星に対して「人前で話す必要はない」と助言している。しかし、そんな二人の関係に周囲からの懸念が高まり、彼女たちはやがて深刻な問題に直面することになる。 

登場人物・キャラクター

吉持 星 (よしもち せい)

埼玉芸術大学に通う2年生の女子。デザイン学科ビジュアルデザイン専攻に在籍している。金髪ミドルヘアで、フード付きパーカーを好んで着用している。極度の潔癖症で、他人を泥の塊にしか思えないと公言し、老若男女問わず身体に触られることを嫌悪している。コミュ障のため、無礼な行動や自己中心的な考え方が目立ち、さらに生活力も欠けているが、デザインの才能は高く評価されている。大学では唯一、明里とだけは良好な関係を築けており、明里と縁が切れることを恐れている節が見受けられる。学祭の際に、明里と「チームほしあかり」を結成し、明里のサポートを受けながら創作活動を行なった。自分の作品に自信を持ちながらも、3年生の清純をライバル視し、彼との出会いが創作活動への意欲を高めるきっかけとなっている。のちに下宿先が火事になり、明里の家に泊まり込むようになる。ちなみに星が潔癖症になったのは、中学1年生の時にパンツ一丁の父親が無断で部屋に入り、汗ばんだ足で枕を踏んだことに起因している。

園部 明里 (そのべ あかり)

埼玉芸術大学に通う2年生の女子。美術学科油絵専攻に在籍している。茶髪をお団子にまとめ、黒縁眼鏡をかけている。星の唯一の友人で、星と大学の学生たちの仲介役を務めている。明里自身は美術系大学に通う意義を、才能を磨く場所ではなく、本当に才能のある人々とコネを作る場所だととらえている。このため明里は、八つのサークルに所属して交友関係も広く、さまざまな学科に友人がいる。星のデザインの才能を高く評価しており、星と「チームほしあかり」を結成し、彼女の創作活動をサポートしている。チーム内の明里の役割は星の創作意欲を高めること、チームの宣伝や営業と多岐にわたる。しかし明里と星の関係は、周囲から「過保護な親子」「教祖と信者」といった偏った印象を持たれることもある。

SHARE
EC
Amazon
logo